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序章 いずれたどり着く結末
勇者と魔女
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霧が濃く、前の様子すらよく見えない村。並ぶ家々は半壊していてボロボロなものばかり。少し自然があると思えばそれらすべては枯れている。そこから少し歩けば、たくさんの建物が並んでいる人々の住む町並みが見える。ただ、以前として霧に包まれており、すべての建物が壊れかけていたり、すでに壊れているものばかり。人のいる気配すら感じられない。まさに、廃墟だ。
「ふんふんふーん」
そこを歩く少女が一人。歪な形の短剣を携えて、汚れて数ヵ所の部位が壊れている薄くて軽い鎧をつけている。この町に人はいない。彼女がすべて追い出してしまったからだ。そんな彼女をよしとしなかった集団だって当然いる。
彼女は化け物同然の扱いだった。人々からしてみればこの少女は倒されるべき敵なのだ。
そんな彼女を討伐しようとする集団がどたばたとやってくる。頑丈な鎧をつけて剣や槍を構えて少女を狙う。全員が訓練されたどこかの正規軍だろう。少女の様子を確かめるよりも先に彼らは踏み出す。重装備なはずなのに、その動きは機敏だ。最低限の歩数で少女に攻撃できる範囲まで近づく。
そして、剣は振り下ろされる――が、歪な短剣で少女はそれを弾く。小柄な体のどこにそんな力があるのかわからない。弾かれた兵士はあまりの力で体勢を崩す。少女はその隙を追撃することもなく、ゆっくりと手を翳す。何か嫌な予感がしたのか、兵士の一人が少女の短剣の届かない位置から槍で攻撃を始めた。
「邪魔しないでくれますか?」
繰り出される突きを身軽に避けてイライラしながら少女はすっと距離を詰める。軽く槍の兵士を切りつけようと短剣を振るうが、鎧を切り裂くことはできずに軽く金属音を鳴らすだけで済んだ。
「あなたももう終わりですね」
クスクスと少女は笑う。鎧ごと切り裂くつもりは元々なかった。鎧は短剣の当たった部分から紫の塵を吹き出しながら変色して、そのままひび割れていく。先ほど短剣で弾かれた剣も同様にひび割れて砕け散った。残りの兵士たちも少女へ一気に攻撃するが、すべて回避されて短剣の攻撃を受けて、装備を壊されてしまった。
「ぐっ、この魔女め! 灰になれ!」
「まだ逃げ帰らないんですか?」
兵士の一人は手から太い光線を放つが、少女は手でそれを弾く。他の兵士たちもこぞって同様に光線を放つ。それでも、少女には通用しない。少女に届く前に何かに阻まれて消されてしまう。
「けほっ、けほっ……」
兵士の一人が咳き込む。喉に何か詰まったような嫌な感覚だ。この霧の中にいるだけで、いつもよりも調子が悪い。万全のコンディションで目の前の少女に対処できない。視界がだんだんと霞む。
「それでは、ごきげんよう」
少女の一言を聞いて、体から力が抜けて、ふらついてそのまま倒れる。それを皮切りにして、兵士たちは次々と倒れていく。
少女は再び、歩き始める。霧の濃い町の様子を一人で眺めながら。
「おい、まだ終わってねえぞ」
背後から声を掛けられる。兵士はすべて倒したはずなのに。渋々後ろを振り返ると、鮮やかに光輝く剣を持った少女だ。
「勇者、ですか」
「お前は魔女だな?」
「そうなりますね」
勇者の少女は魔女の少女と同じように薄くて軽い鎧を着ている。ただ、魔女と同じようなボロボロのものではない。
勇者がぶんっ、と剣を振るう。剣から放たれた光が霧を一気に消し去る。
「こんな気味悪いところで戦ってられるかっての」
「……」
勝ち気な勇者の様子を見て、魔女は苛立っていた。目の前の勇者は特別な存在だ。まあ、ある意味では魔女もそういう存在かもしれない。
それでも、この勇者は光を浴びて育ってきた恵まれた存在。疎まれる魔女とは雲泥の差がある。選ばれた存在という勇者が許せなかった。嫉妬だ。魔女はいつだって、まともに生きられるようなものではなかった。なんだか、世界に「生きるな」と言われているような気がして、それでも死を恐怖して生に執着し続けていた。普通に生きるのすら不自由だったのにも関わらず、さらには恵まれているなんて、とても許せるものではない。
「どうしたよ、勇者相手は怖じ気づくのか? 魔女さんよ」
「ああ、煩わしい……よくない。よくないですね、あなた」
「何いってんだ、わけわかんねえぞ」
「あなたが生きてるときっとよくないです。ダメです」
「だったら死なせてみろよ」
「……」
鋭い殺気を放って、魔女は勇者に詰め寄る。それに勇者も対応する。勇者の重い一撃に、魔女は体勢を崩す。そこを逃さず、勇者は魔女に剣を振り下ろす。勇者の剣が魔女を切り裂く。
「ぐぅぅぅぅぅ……!」
魔女は呻いて、ふらふらと後に下がる。血がだばぁっと溢れて吹き出す。
が、一瞬にしてその傷は塞がる。
「まあ、まだ終わりじゃねーわな!」
「……殺す」
勇者と魔女の激しい戦いは続く。金属音が絶え間なく激しく響く。魔女は炎や電気を放ち、勇者は剣から光線を放つ。廃墟当然の町並みが二人の戦いで壊れていく。徐々に二人の戦いは苛烈になり、轟音を撒き散らしつつ、破壊行為を繰り返す。黒煙が上がり、お互いが相手を殺すための攻撃を放つ。勇者は魔女の攻撃を受けても装着している鎧がそれをはね除け、魔女は勇者の攻撃を受けても瞬時に回復する。
二人の絶え間ない殺し合いを続ける。数時間に渡り、その戦いは続く。凄まじくなっていく戦いによる破壊の跡はまるで大国同士全面戦争しているほどのものだ。
「はぁ、はぁ……」
魔女は息を荒げる。全身が痛い、傷もだんだん癒しきれずになって小さな傷がたくさん増えてきている。
「……」
それに対する勇者も険しい。着ている鎧は神によって作られたとされる伝説の鎧。どんな攻撃であれ、その威力を軽減して無力かさせる。それでも、魔女の攻撃は完全に殺しきれずにその衝撃を受けてしまう。体にダメージが蓄積している。
お互い、もう後一撃が限界だろう。勇者は光輝く剣、聖剣と呼ばれた剣を掲げ、魔女も歪な短剣を構える。
そして、同時に動いて二人の剣がそれぞれ相手の命を刈り取るために振るわれ、相手の体を抉る。両者は血を吹き出して倒れる。
――二人の戦いはそこで終結した。
「ふんふんふーん」
そこを歩く少女が一人。歪な形の短剣を携えて、汚れて数ヵ所の部位が壊れている薄くて軽い鎧をつけている。この町に人はいない。彼女がすべて追い出してしまったからだ。そんな彼女をよしとしなかった集団だって当然いる。
彼女は化け物同然の扱いだった。人々からしてみればこの少女は倒されるべき敵なのだ。
そんな彼女を討伐しようとする集団がどたばたとやってくる。頑丈な鎧をつけて剣や槍を構えて少女を狙う。全員が訓練されたどこかの正規軍だろう。少女の様子を確かめるよりも先に彼らは踏み出す。重装備なはずなのに、その動きは機敏だ。最低限の歩数で少女に攻撃できる範囲まで近づく。
そして、剣は振り下ろされる――が、歪な短剣で少女はそれを弾く。小柄な体のどこにそんな力があるのかわからない。弾かれた兵士はあまりの力で体勢を崩す。少女はその隙を追撃することもなく、ゆっくりと手を翳す。何か嫌な予感がしたのか、兵士の一人が少女の短剣の届かない位置から槍で攻撃を始めた。
「邪魔しないでくれますか?」
繰り出される突きを身軽に避けてイライラしながら少女はすっと距離を詰める。軽く槍の兵士を切りつけようと短剣を振るうが、鎧を切り裂くことはできずに軽く金属音を鳴らすだけで済んだ。
「あなたももう終わりですね」
クスクスと少女は笑う。鎧ごと切り裂くつもりは元々なかった。鎧は短剣の当たった部分から紫の塵を吹き出しながら変色して、そのままひび割れていく。先ほど短剣で弾かれた剣も同様にひび割れて砕け散った。残りの兵士たちも少女へ一気に攻撃するが、すべて回避されて短剣の攻撃を受けて、装備を壊されてしまった。
「ぐっ、この魔女め! 灰になれ!」
「まだ逃げ帰らないんですか?」
兵士の一人は手から太い光線を放つが、少女は手でそれを弾く。他の兵士たちもこぞって同様に光線を放つ。それでも、少女には通用しない。少女に届く前に何かに阻まれて消されてしまう。
「けほっ、けほっ……」
兵士の一人が咳き込む。喉に何か詰まったような嫌な感覚だ。この霧の中にいるだけで、いつもよりも調子が悪い。万全のコンディションで目の前の少女に対処できない。視界がだんだんと霞む。
「それでは、ごきげんよう」
少女の一言を聞いて、体から力が抜けて、ふらついてそのまま倒れる。それを皮切りにして、兵士たちは次々と倒れていく。
少女は再び、歩き始める。霧の濃い町の様子を一人で眺めながら。
「おい、まだ終わってねえぞ」
背後から声を掛けられる。兵士はすべて倒したはずなのに。渋々後ろを振り返ると、鮮やかに光輝く剣を持った少女だ。
「勇者、ですか」
「お前は魔女だな?」
「そうなりますね」
勇者の少女は魔女の少女と同じように薄くて軽い鎧を着ている。ただ、魔女と同じようなボロボロのものではない。
勇者がぶんっ、と剣を振るう。剣から放たれた光が霧を一気に消し去る。
「こんな気味悪いところで戦ってられるかっての」
「……」
勝ち気な勇者の様子を見て、魔女は苛立っていた。目の前の勇者は特別な存在だ。まあ、ある意味では魔女もそういう存在かもしれない。
それでも、この勇者は光を浴びて育ってきた恵まれた存在。疎まれる魔女とは雲泥の差がある。選ばれた存在という勇者が許せなかった。嫉妬だ。魔女はいつだって、まともに生きられるようなものではなかった。なんだか、世界に「生きるな」と言われているような気がして、それでも死を恐怖して生に執着し続けていた。普通に生きるのすら不自由だったのにも関わらず、さらには恵まれているなんて、とても許せるものではない。
「どうしたよ、勇者相手は怖じ気づくのか? 魔女さんよ」
「ああ、煩わしい……よくない。よくないですね、あなた」
「何いってんだ、わけわかんねえぞ」
「あなたが生きてるときっとよくないです。ダメです」
「だったら死なせてみろよ」
「……」
鋭い殺気を放って、魔女は勇者に詰め寄る。それに勇者も対応する。勇者の重い一撃に、魔女は体勢を崩す。そこを逃さず、勇者は魔女に剣を振り下ろす。勇者の剣が魔女を切り裂く。
「ぐぅぅぅぅぅ……!」
魔女は呻いて、ふらふらと後に下がる。血がだばぁっと溢れて吹き出す。
が、一瞬にしてその傷は塞がる。
「まあ、まだ終わりじゃねーわな!」
「……殺す」
勇者と魔女の激しい戦いは続く。金属音が絶え間なく激しく響く。魔女は炎や電気を放ち、勇者は剣から光線を放つ。廃墟当然の町並みが二人の戦いで壊れていく。徐々に二人の戦いは苛烈になり、轟音を撒き散らしつつ、破壊行為を繰り返す。黒煙が上がり、お互いが相手を殺すための攻撃を放つ。勇者は魔女の攻撃を受けても装着している鎧がそれをはね除け、魔女は勇者の攻撃を受けても瞬時に回復する。
二人の絶え間ない殺し合いを続ける。数時間に渡り、その戦いは続く。凄まじくなっていく戦いによる破壊の跡はまるで大国同士全面戦争しているほどのものだ。
「はぁ、はぁ……」
魔女は息を荒げる。全身が痛い、傷もだんだん癒しきれずになって小さな傷がたくさん増えてきている。
「……」
それに対する勇者も険しい。着ている鎧は神によって作られたとされる伝説の鎧。どんな攻撃であれ、その威力を軽減して無力かさせる。それでも、魔女の攻撃は完全に殺しきれずにその衝撃を受けてしまう。体にダメージが蓄積している。
お互い、もう後一撃が限界だろう。勇者は光輝く剣、聖剣と呼ばれた剣を掲げ、魔女も歪な短剣を構える。
そして、同時に動いて二人の剣がそれぞれ相手の命を刈り取るために振るわれ、相手の体を抉る。両者は血を吹き出して倒れる。
――二人の戦いはそこで終結した。
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