バンディエラ

raven11

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新しい挑戦

2-3

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 ミキのパスは巻いてある(時計周りのカーブ回転が掛けてある)ことにより右サイドの位置で受ける際、綺麗に右足に入ってくる。
 ピンポイントというよりは、前方の空間に出されたパス。それでも、追いつくのは余裕だ。
 スタートが早かったおかげで、フリーの状態でパスを受けられる。
 敵の左サイドバックは、守備力に定評がある佐々木。
 ただ、この試合は、4(DF)2(MF)3(WG・OMF)1(FW)のフォーメーションが採用されている。
 佐々木はディフェンス4枚の左サイドをするにしては、ちょっと守りに重きを置きすぎてる感は否めない。
 本来ならスリーバックの左がベストかな。まだセンターバックをやらせた方がいいかも。
 現に、さっきまで逆サイドにボールがあったことで、佐々木は中央の方まで絞る(中にディフェンスを固める)ため、ここまで急にボールが振られた(パスを横に動かして出す)ことに対してのプレッシング(ディフェンスの寄せ)の準備が全くできていない。
 敵の左ウイングの押野には、ボールも逆サイドにあったためか厳しくマークされてなかった。
 それに、抜け出しの時に、わざとスタート位置を後ろめにした。これは我ながら上手い駆け引きだ。
 押野はテクニックを駆使して、中に入っていくドリブルは脅威になるが足は速くない。
 つまり、単純なよーいドンではこちらが速い。
 相手のウイングとサイドバックのちぐはぐさを突いた抜け出しなのだ。勿論、そこに気づいてパスを出したミキは偉い。
 ファーストタッチでボールの勢いを落としつつ、前方に転がす。
 さて、今日の王様(久遠寺)の調子はどうでしょうかね。
 ようやく、寄せてきた佐々木を目視しつつ、中の様子を窺う。
 ボールを運びつつ、ターゲットを決める。
 寄せてきた、佐々木をサイドにボールをスライドさせて躱す。
 ドリブルは赦されないけど、クロスを上げるコースぐらいなら開いている。
 ん? ヤス? 
 視界の端に右サイドバックのヤスがインナーラップ(内側に入りつつ上がる)しているのが見えた。
 ぱっと見、敵陣が新たにヤスにディフェンス出すの難しそうだし、ヤスの後方にいる相手ミッドフィルダーの追手のプレスバック(戻りながらディフェンスする)は追いつきそうにもない。
 王様(久遠寺)はディフェンスのマークきついし、こっちの方が面白いか。
 佐々木が釣られるようなら、こっちでもう一回受けるのもありだし。
「ヤス!」
 左斜め後ろの泰英にパスを出す。もうちょっと、佐々木を引きつけるべきだったか……まぁ、しゃあない。
 自分はさらにパスの選択肢を増やすため、また、ディフェンスをかき乱す意味を込め、外側を回る。
 さぁ、どうする?
 完全に出遅れた。
 陣形をコンパクトにと、中に絞っていたのは俺の判断ミス。
 でも、一つ言えることは外(サイド)をいくら自由に走り回ろうと、中に入ってこなければ怖くはないということ。
 それよりも中で待っている敵のエース、久遠寺さんにパスを通されることの方がやばいと思ったからだ。
「佐々木」
「分かってます」
 センターバックの飛田さんから、プレスに行けと声が飛ぶ。
 俺のせいだとはいえ、押野の戻りも遅くないか?
 ったく、どうすんだよ。古橋さんの突破は止めれなくないけど、村山まで上がってきやがって。手に負えない。
 今、村山にパス出されたくないな。
 でも、下手に村山へのパスコースを切り(防ぎ)に行ったら、古橋さんと入れ替わられるかもしれない。それだけは、何としても避けたい。
 とりあえず、古橋さんにこれ以上の侵入は許さない。一発で行かないように慎重に。
「ヤス!」
 考えている間にパスを出された。どうする?
「佐々木、そのままお前はヤスについていけ。中を割らすな(中央突破させるな)。押野、お前は早く引け。佐々木と一緒にヤスを挟みこめ。ボランチ、一枚降りてこい。そう、田澤お前でいい、下がれ。俺が左のカバーリングに入ったら、中の久遠寺見とけ」
 飛田さんから、矢継ぎ早にディフェンスへと指示が伝えられる。

 だろうな。
 ヤスは外を走る古橋に、もう一度パスを出した。
 読み筋だ。
「俺が行く」
 マークを田澤に受け渡し、プレスに行く。
 中には王様(久遠寺)が待っている。クロスを上げさせるわけにはいかない。
 古橋のファーストタッチでこちらも追いついた。
「飛田……」
 古橋がこちらを一瞥して、ドリブルのコースを探すように左右に視線を流す。
 ゴールへのコースは開けさせない。
 ここで奪いきる。
 バックステップを交えつつ、上体をなるべく低くゴールに背を向ける状態で半身を意識しつつ、いつでもボールを奪いに行けるように身構える。
 古橋は得意のスピードを駆使し、緩急で躱そうとしてくる。
 古橋は右利き。中に切り替えしてのシュートは、逆足の左で打つことになる。
 精度は高くないだろうし、カットインからのシュートはないだろう。
 ヤスには、佐々木をそのままついていかせているし、押野も追いついてくるからパスは出せない。
 だったら、古橋の選択肢はスピードを使って、ゴールライン沿いを抉って中へのパスしかない。
 古橋は一度、止まった状態から右足のサイドでボールに触れる。
 今! 古橋が急加速するタイミングで強引に体をぶつける。
 古橋はよろめき、バランスを崩す。
 その隙を逃さず、ボールと古橋の間に体を入れる。外に出ればゴールキックになる。
 古橋が後ろからプレスを掛けてくるが、それぐらいでは揺るがない。
 ピッ!
「ゴールキック」
 ボールはラインを割り、マイボームへと変わった。
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