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十五話
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【才能なんて必要ない!】
十五話
俺はベットから落ちることによって目を覚ました。
「……寝相の悪さは変わってねえんな」
皮肉たっぷりでそう言って眠ってる彼女の頬をちょちょいと抓ってやると「ううん……」と、可愛らしい唸り声を上げた。
なんか開放感があるななんて思って視線を下ろすと、なにも装着していなかった。昨日はそういえば全裸のまま眠ったんだった。
さっさと下着をつけてパジャマ姿になると、彼女の分の白シャツを用意してやる。普通の男子高校生の俺は女性用下着を持っていないのでそればかりは勘弁して欲しい。
彼女はまだ幸せそうな顔で寝息を立てていた。
お互い初めてだったし俺も加減とかわからなかったから疲れているのかもしれない。
彼女にできるだけ負担をかけないよう、俺は料理を作ることにした。
冷蔵庫を覗くと、卵にベーコン、ウィンナーなんかが入っていた。食パンをオーブントースターに挟んでから、フライパンを取り、油をしき火をかけた。ベーコンに卵といえば目玉焼きだろう。ベーコンを先に入れるとジュージューといい音を立てる。その上にすぐ四つ卵を割り、落とすと香ばしい匂いが漂う。塩コショウを振り掛け皿に半分に分ければ完成だ。多分、半熟くらいで行けたと思う。
そして、次はウインナーを焼こうとしたところで、俺の用意した白シャツを身にまとった彼女が寝ぼけ顔でこちらにひょいっと顔を出した。
「おはよ」
「……んだ。グッモーニング」
「風呂場の方に洗面器あるから顔洗ってこい」
そう言うと、彼女はフラフラとふろ場の方へと足を向けて行った。
なにかの小説のワンシーンのように精巧された憧れるような日常に、大人になったような気分だ。
いい具合に弾けたウインナーを新たな皿に出し、火を止める。
「そういえば、歯ブラシあったっけ?」
キッチン横に置いてある収納ボックスを開くと歯ブラシがあった。それ片手に風呂場の引き戸を引きながら「歯ブラシ使うか?」なんて入ると風呂場には誰も居なかった。いや、その奥からシャーッと音がする。
「シャワー浴びてんのか」
歯ブラシと予備に置いておいたタオルを出して、いつも服を脱ぎ捨てるかのように置いてる買い物カゴの横に置いてからそこから出ていく。
本当ならサラダも作ってやりたい所だが、野菜室には何も無かった。
テレビをつけると時刻は八時十二分と左上に表示された。丁度ニュースがやってる。
それを確認し、再び戻ると盛り付けた皿と割り箸とマイ箸を持って腰を下ろした。
一人では少し大きかったテーブルが少々小さく感じた。
そして、暫くすると彼女が下着の上にシャツ一枚という格好で戻ってきた。
「これ、まーくんが?」
「まあな。てか、さっきから作ってたろ?」
俺の真正面に彼女の分と割り箸を置いてやったのだが、彼女は俺の横に腰を下ろした。
「な、なんだ?」
「ちゅー」
そんなことを言って彼女は唇を尖らせる。
「……一回だけな」
柔らかな感触が唇をとおして伝ってきた。彼女は「えへへ」なんて惚気顔をしてる。
「早く食べな。お前半熟好きだったろ?」
「え!んじゃいーと!」
彼女は割り箸を割って直ぐに卵に箸を入れた。すると、トロっと中身が出てくる。
「わー!」
嬉しそうに笑う彼女の顔にはもう悩みはなかった。
彼女はスタイルも容姿もよく整ってる。だからこそ、俺は手を出すのに戸惑った。体目的で俺が彼女と付き合ったと思われたくなかった。
ちょっと強引な気がしたが、上手くいってよかったと、胸をなでおろした。
それから朝食を済まし、暫く二人で部屋でだらけていたが、一本の電話のおかげでぶち壊された。
「あ、松岡か!今すぐに出てこい!まずいぞ!」
緊迫した声は相川のものだった。
「は?口説いてんのか?」
「そんな余裕ねえよ!男女共有スペースに今すぐにこい!」
そう言って一方的に電話を切られた。こりゃただ事じゃない。俺のあのボケをほぼスルーと来たもんだ。
「なんか、ヤバそうだ。行こうか」
「りょー!」
そう言って彼女は昨日着ていた服に着替え、俺もすぐに私服に着替えて飛び出し、男女共有スペースへと急いだ。
すると、人混みの中心に見覚えのある子供のような大人が噴水を壊したりして暴れているのが見えた。
「本当に俺はなんでこんなのに目をつけられちまったんだよ!」
イライラしつつもその暴動を止めに向かう。多分、先生は俺を求めてるんだろう。それは容易に想像出来た。祭りであんなことをしたんだ。なら、なにをしたっておかしくない。
「校長!なにやってるんですか!あんたの学園でしょうが!」
声が届くか届かないかギリギリくらいの距離だったが走るよりかはマシだ。さっさとあれを止めないと学園が崩壊しそうな勢いだ。
叫ぶとまだ300メートルくらいはあろうが、先生はピクリと耳を震わせて消えた。
そして、背後に猛烈な殺意を持った誰かがいるのがわかった。
振り向くといつもニコニコしていた先生が、憎悪の化身とも言えるような表層で俺、いや、俺の彼女を睨みつけていた。
「こん人誰?」
白銀は首を傾げてそう言った。転校してきたんだし、先生とは会ってなかったよな。
「……白銀みこと。君が生きていたんじゃ彼は私のものにならないみたいだ。だから、私は」
先生はそう言って白の膝上くらいまでのミニスカートのポケットに手を突っ込み、一枚の紙を手にした。因みに、上は黒の半袖をダボッと着ている。
そして、その手に持ってる紙を彼女に優しく渡した。
もう、その顔はいつものようにニコニコしていて本心は何一つ読めない。
彼女は渡された紙を開くと、先生に向かって頷いた。
「……ソーリ。あーし、今日はバックホーム」
強い眼差しで言われ、俺は彼女の背中を眺めるしかできなかった。
そして、暫く気が付かなかった。彼女が寮の方向ではなく、噴水の方向へと歩んでいることを。
はっと気がついたのは自分が寮にたどり着いてからだ。
大急ぎで戻ったがもう既に彼女の姿はなかった。スマホに着信を入れても出ない。
あの紙に何が書いてあったんだ?
十五話
俺はベットから落ちることによって目を覚ました。
「……寝相の悪さは変わってねえんな」
皮肉たっぷりでそう言って眠ってる彼女の頬をちょちょいと抓ってやると「ううん……」と、可愛らしい唸り声を上げた。
なんか開放感があるななんて思って視線を下ろすと、なにも装着していなかった。昨日はそういえば全裸のまま眠ったんだった。
さっさと下着をつけてパジャマ姿になると、彼女の分の白シャツを用意してやる。普通の男子高校生の俺は女性用下着を持っていないのでそればかりは勘弁して欲しい。
彼女はまだ幸せそうな顔で寝息を立てていた。
お互い初めてだったし俺も加減とかわからなかったから疲れているのかもしれない。
彼女にできるだけ負担をかけないよう、俺は料理を作ることにした。
冷蔵庫を覗くと、卵にベーコン、ウィンナーなんかが入っていた。食パンをオーブントースターに挟んでから、フライパンを取り、油をしき火をかけた。ベーコンに卵といえば目玉焼きだろう。ベーコンを先に入れるとジュージューといい音を立てる。その上にすぐ四つ卵を割り、落とすと香ばしい匂いが漂う。塩コショウを振り掛け皿に半分に分ければ完成だ。多分、半熟くらいで行けたと思う。
そして、次はウインナーを焼こうとしたところで、俺の用意した白シャツを身にまとった彼女が寝ぼけ顔でこちらにひょいっと顔を出した。
「おはよ」
「……んだ。グッモーニング」
「風呂場の方に洗面器あるから顔洗ってこい」
そう言うと、彼女はフラフラとふろ場の方へと足を向けて行った。
なにかの小説のワンシーンのように精巧された憧れるような日常に、大人になったような気分だ。
いい具合に弾けたウインナーを新たな皿に出し、火を止める。
「そういえば、歯ブラシあったっけ?」
キッチン横に置いてある収納ボックスを開くと歯ブラシがあった。それ片手に風呂場の引き戸を引きながら「歯ブラシ使うか?」なんて入ると風呂場には誰も居なかった。いや、その奥からシャーッと音がする。
「シャワー浴びてんのか」
歯ブラシと予備に置いておいたタオルを出して、いつも服を脱ぎ捨てるかのように置いてる買い物カゴの横に置いてからそこから出ていく。
本当ならサラダも作ってやりたい所だが、野菜室には何も無かった。
テレビをつけると時刻は八時十二分と左上に表示された。丁度ニュースがやってる。
それを確認し、再び戻ると盛り付けた皿と割り箸とマイ箸を持って腰を下ろした。
一人では少し大きかったテーブルが少々小さく感じた。
そして、暫くすると彼女が下着の上にシャツ一枚という格好で戻ってきた。
「これ、まーくんが?」
「まあな。てか、さっきから作ってたろ?」
俺の真正面に彼女の分と割り箸を置いてやったのだが、彼女は俺の横に腰を下ろした。
「な、なんだ?」
「ちゅー」
そんなことを言って彼女は唇を尖らせる。
「……一回だけな」
柔らかな感触が唇をとおして伝ってきた。彼女は「えへへ」なんて惚気顔をしてる。
「早く食べな。お前半熟好きだったろ?」
「え!んじゃいーと!」
彼女は割り箸を割って直ぐに卵に箸を入れた。すると、トロっと中身が出てくる。
「わー!」
嬉しそうに笑う彼女の顔にはもう悩みはなかった。
彼女はスタイルも容姿もよく整ってる。だからこそ、俺は手を出すのに戸惑った。体目的で俺が彼女と付き合ったと思われたくなかった。
ちょっと強引な気がしたが、上手くいってよかったと、胸をなでおろした。
それから朝食を済まし、暫く二人で部屋でだらけていたが、一本の電話のおかげでぶち壊された。
「あ、松岡か!今すぐに出てこい!まずいぞ!」
緊迫した声は相川のものだった。
「は?口説いてんのか?」
「そんな余裕ねえよ!男女共有スペースに今すぐにこい!」
そう言って一方的に電話を切られた。こりゃただ事じゃない。俺のあのボケをほぼスルーと来たもんだ。
「なんか、ヤバそうだ。行こうか」
「りょー!」
そう言って彼女は昨日着ていた服に着替え、俺もすぐに私服に着替えて飛び出し、男女共有スペースへと急いだ。
すると、人混みの中心に見覚えのある子供のような大人が噴水を壊したりして暴れているのが見えた。
「本当に俺はなんでこんなのに目をつけられちまったんだよ!」
イライラしつつもその暴動を止めに向かう。多分、先生は俺を求めてるんだろう。それは容易に想像出来た。祭りであんなことをしたんだ。なら、なにをしたっておかしくない。
「校長!なにやってるんですか!あんたの学園でしょうが!」
声が届くか届かないかギリギリくらいの距離だったが走るよりかはマシだ。さっさとあれを止めないと学園が崩壊しそうな勢いだ。
叫ぶとまだ300メートルくらいはあろうが、先生はピクリと耳を震わせて消えた。
そして、背後に猛烈な殺意を持った誰かがいるのがわかった。
振り向くといつもニコニコしていた先生が、憎悪の化身とも言えるような表層で俺、いや、俺の彼女を睨みつけていた。
「こん人誰?」
白銀は首を傾げてそう言った。転校してきたんだし、先生とは会ってなかったよな。
「……白銀みこと。君が生きていたんじゃ彼は私のものにならないみたいだ。だから、私は」
先生はそう言って白の膝上くらいまでのミニスカートのポケットに手を突っ込み、一枚の紙を手にした。因みに、上は黒の半袖をダボッと着ている。
そして、その手に持ってる紙を彼女に優しく渡した。
もう、その顔はいつものようにニコニコしていて本心は何一つ読めない。
彼女は渡された紙を開くと、先生に向かって頷いた。
「……ソーリ。あーし、今日はバックホーム」
強い眼差しで言われ、俺は彼女の背中を眺めるしかできなかった。
そして、暫く気が付かなかった。彼女が寮の方向ではなく、噴水の方向へと歩んでいることを。
はっと気がついたのは自分が寮にたどり着いてからだ。
大急ぎで戻ったがもう既に彼女の姿はなかった。スマホに着信を入れても出ない。
あの紙に何が書いてあったんだ?
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