俺の妹になってください

クレハ@WME

文字の大きさ
上 下
42 / 57

四十二話

しおりを挟む
【俺の妹になってください】

四十二話

~ あらすじ ~

柏木と付き合うという選択をし、その翌朝、早速姉に文字通り嗅ぎつかれた。姉はかなり取り乱し、遥か彼方へと走り去っていってしまった。そして、それから学校に行くと三ヶ森さんが横を泣きながら通り過ぎていった。追いかけたあと話を聞いてみると山口に振られたという。

*****

学校で文化祭の練習し、忘れようとした。

だが、やっぱり頭から離れない。あの三ヶ森さんのしょんぼりとした顔。

それと、姉さん。………なんで帰って来ないのかな?って、理由なんてひとつしかないか……

考えれば考えるだけ憂鬱になる。

全部、俺のせいだ……

ピンポーン。

そんな時、家のチャイムが鳴った。

姉さんかな?

なんて思いながらも家から出ると、ちっこい童女がいた。

「春樹。来ちゃった!」

「なんだ舞か」

「えー!!!彼女が来たというのにその反応!?」

「ごめん。まだ付き合ったばかりなのにな……」

倦怠期という訳では無いのだが、今は一人にしていてほしい。時間がどうにかしてくれるはず。そのはずなんだ……

「………はぁ。悩んでいたって仕方ないでしょ?」

「まあ、それもそうだけど………」

「風見!!歯を食いしばれっ!!しっかりしろっ!!ここでうじうじしてても何も変わらねえだろっ!!」

そう言いながら腹にパンチを入れられる。

「いってぇ!!!」

「目、覚めた?」

「あ、あぁ………歯を食いしばった意味がまるで無いけど、そうだよな。何もせずに後悔しても気持ち悪いもんな。ありがとう舞。ちょっと今から出てくるわ」

「しっかり埋め合わせしなさいよねっ!!」

「おう!!」

家から飛び出ていき、あてもなく走り始めた。

どうしたものか。

アテのある場所なんて俺にはいつものファミレスくらいしかなかった。

居てくれよ……頼む。

そんな願いで俺はファミレスへと足を向けた。

だが、やはり三ヶ森さんも姉さんも居なかった。

「お客様?どうされました?」

「あ、い、いえ……ごめんなさい」

店を後にし、次どこに行くかを考えながらそれなりの交通量のある交差点の信号待ちをしている時、正面に見覚えのある少女が居た。

「三ヶ森さん?」

車の音やいろいろでかきけされてしまうような独り言が漏れる。

三ヶ森さんはあからさまに落ち込んでいた。

早くなにか言ってあげたい。言葉なんて決まってないけど、なにかを早く………

早く青になれ……早くっ!!

なぜこんなにも信号長いんだよっ!早くしてくれ……

向かい側の信号が赤になったのを見計らって、飛び出し、三ヶ森さんの方へと駆けた。

「み、三ヶ森さんっ!!」

「……え?風見くん?」

「あ、うん………なんというか、その…大丈夫?」

「ま、まあ……それなりに?」

「そうか……」

頭が真っ白でなんて言えばいいのか全然わからない。でも、なにかなんか言わないと……でも、謝るのはだめだ。三ヶ森さんが山口に振られたことなんて思い出したらまずい。だから……

「えーっと………辛かったらいつでも相談乗るから………だから、頼ってね」

「う、うん……ありがと……」

俺には多分、これ以上のことは出来ない。あとは三ヶ森さんがどうにか立ち直ってくれるのを待つしかないのか………

でも、おかげでスッキリした。心のモヤみたいなものが少し晴れたような気がした。

「じゃ、また学校でっ!」

「うん。またね」

あとは姉さんだが、どうしたものか。

あれ、本当にめんどくさいからな………

というか、ナタ持って走って出ていったんだし、警察か?

いや、流石にそれはないとは思うけど、本当にめんどくさいからやめて欲しいな……

そんな時、電話がなった。

知らない番号だ………

まさかな?

「もしもし?」

「こちら警察のものですが、風見さんの携帯でよろしいでしょうか?」

「は、はい……」

「至急警察署までいらしてください……お願いしましたからね!」

俺の予想はまんまと的中してしまった。

当たらなくていいようなことはよく当たるんだよな………

でも、なんであんなに焦ってたんだろ?

まあ、いいか。俺は渋々警察署へと足を向けた。

警察署に入ると皆が皆そわそわしていた。

とりあえずどこに行けばいいかもわからないので受付のような場所の人に話しかけて聞いてみる。

「あの、すいません。風見春樹と申します」

「あぁ!風見さんですねっ!早くこちらへっ!」

そして、俺はその警察官らしき人物に地下に連れていかれた。中は薄暗く、小さな牢屋のような物が並んでいた。

「春樹ぃ………春樹………」

よく見えないが奥の方からそんな声が聞こえてくる。

並の人間ならば怖いっ!逃げろっ!ってなるほどのホラー演出であるが、あの声は姉さんだ……

はぁ………

全く姉さんは………俺が通報してもしなくても結局姉さんは捕まるのか………

だったらせめて「いつかやると思ってました」と、一言言わせて欲しかったな………

そんなことを考えながらも声のする方へと、その警察官の後ろをついていくと、一つの牢屋の前で止まった。中では姉さんが死んだ魚の目をしながらくるくると同じルートを回りながら俺の名前をくり返し呼んでいた。

「ね、姉さん……?」

「は、春樹!?」

一言声をかけるとまるでネコ科の動物を驚ろかせたかように飛び上がった。

「なっ!ななななんで!?なんで春樹がここに!?」

「そりゃー警察にお世話になってるんだし親はアテにならないんだから俺に連絡がきてもおかしくはないだろう?」

「そ、それもそうねっ!」

「いや、それ元気に言うことではないからね?普通に犯罪犯してるんだから反省しなさい」

「は、はい……」

姉さんはしゅんとその牢屋の中で大人しくなった。

「あ、警察の方。すいませんけど、この馬鹿な姉を今から説教するので席を外していただけませんか?」

「は、はい………」

警察の人は意外とあっさりと席を外してくれた。

そして、その人が見えなくなってから俺はまた説教を始める。

「姉さん?なぜこんなに大事にしたの?」

「え、えっと………無我夢中で………春樹があの女と一緒にどこかへ行ってしまうって考えたらなんか、ここに居ました」

そんなことだけで警察のお世話になるとはさすがですね。

「俺はどこにも行かないぞ?確かに付き合うことにはなったけど、まだ先のことなんてわからないじゃん?」

「………だから怖い……そう。だから怖いんだっ!」

怒りとともに姉さんはガッシャーンっ!!と、牢屋の鉄部分を殴りつけた。

「…………昔はお姉ちゃんのお嫁さんになるって言ってたくらいなのに………」

「そ、それはっ!本当に小さい頃の事でしょ!?」

「今はどう?そう思ってくれる?」

そんなわけないじゃんっ!なんて返せるようなそんな優しい雰囲気ではなかった。姉さんはふざけたことを言っている訳では無いのだ。あの目は本気だ。

「いや、そうは思わない」

真面目にそう答えた。

「はぁ………だよね………知ってた。だから嫌なの!!」

「い、嫌って………仕方ないだろ?俺だって成長するんだから」

「時間が春樹を変える……それは仕方ないこと……そんなの分かってるけど………でも、春樹が私の前から居なくなるってこともあるじゃないっ!!」

全く、泣くなよな………女の涙ってのはチートなんだよ。使われたら結構来るものがあるんだよ……

「俺は姉さんの弟だ。時間もなにも関係ないだろっ!!」

「………そうだよね。春樹は私の弟……はぁ………」

「よし、なら、そろそろ家に帰ろうか」

「う、うん………」

姉は涙を拭い、いつもの憎めない笑顔でそう答えた。

それから釈放までになんか色々あり、家に帰るともう十時を回っていた。

「ふぅ……疲れた」

「それはこっちのセリフだってのに」

ソファーに腰をかけながらため息混じりにそういうのでとりあえず悪態をついておく。

「それもそっか!ごめんねっ!」

「本当に反省してるんかねこいつは……」

「あっ!そうだ春樹。文化祭、そのさ?あの子と回るの?」

多分、あの子っていうのは柏木のことだろう。

「あ、あぁ。うん」

「なら、頑張ってね……」

こんなに頑張って欲しくなさそうな声援は初めてだった。

「お、おう……今日は疲れたから先に寝るわ」

でも、よかった。あの百獣の王のような姉さんと三ヶ森さんにできるだけのことは出来た。………舞に感謝しないとな。

そう一言残して俺は自分の部屋までふらふらしながらも歩いていくと、そのままベットへ倒れ込み夢の中へ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...