上 下
24 / 57

二十四話

しおりを挟む
【俺の妹になってください】

二十四話

~ あらすじ ~

貞操を守るために柏木家に逃げたが、柏木が俺の布団に入ってきてそのまま寝ちまったZE!

******

ジュージューとフライパンかなにかで肉やらをを焼くような音と、香ばしい香りにつられて俺は目を覚ました。

「なにしてるの?」

フラフラとソファーから立ち上がり、その匂いのする方へ歩いていくと、キッチンに行きたった。そこで柏木が明るい水色が主体の涼しそうな薄手のパジャマの上に、ピンク色のエプロンをつけてフライパンを振っていた。

「…………見ればわかるでしょ?」

「まあ、わかるけど………なんでそんな不機嫌なの?」

「はぁ。もういいわよっ!………私なんかどうせ色気なんてないわよ………」

俺に怒鳴りつけた後に、俯いてなにかを呟いた。

………全然わかんねえ。なんでそんなにキレてるの?

「用意して」

「は、はいっ!」

俺は不機嫌そうな柏木の機嫌をとるために柏木に従う。やることと言えば皿やらを用意したり、食パンを焼いたりして、様子を伺いながら、何気なく話しかけてみようとしてみるがダメだ。隙が無さすぎるっ!!

そして、食卓にはベーコンエッグとサラダとカリカリに焼かれた食パンが並べられた。

「いただきます」

柏木は小さくそういって手を合わせると、パンにバターを塗り始めた。

「か、柏木………さん?」

「なに?」

「ぱ、パン塗るやつ貸してくださいっ!」

「あー。はい」

「ありがたき幸せ」

なんで睨むの?怖え…………

そこからは全く会話がなかった。

何度か話しかけようとしてみるが、嫌なのか睨まれる。酷いね。

飯を食い終わり皿を洗い終わると、腹に飯を入れたからか少し、微小ながらも柏木の機嫌が先程と比べるとよかった。

「柏木…………今日暇か?」

「………暇だけど?」

つまらなそうにスマートフォンをいじりながらそう答える柏木。全く予定にはなかったが仕方ない。柏木を家から連れ出して憂さ晴らしさせよう。狂犬を家に閉じ込めっぱなしだから不機嫌になるんだ。犬のストレス発散には散歩をさせよう。

「どっか行くか?」

柏木のスマートフォンをいじる手が止まった。

あと一押しだ。

「なんなら昼、奢るけど?」

勢いで言っちまった………そんな金あるのかよ俺っ!

「…………く」

「なに?」

「焼肉奢ってくれるなら、いいよ?」

「さすがに……いや、奢るよっ!」

やっちまった………

「やったー!!じゃ、私着替えてくるから。あんたも準備したら玄関前で待ってて」

子供のように無邪気に笑ってそう言い残すと、柏木はスタスタと二階へ駆け上がって行った。

金なんて世の中いくらだってあるんだし………あの狂犬……柏木の機嫌が取れるなら肉なんて安いもんだぜ。

俺は涙を袖で拭って持ってきた着替えから服を取り出した。

*******

俺は柏木に言われた通り、リビングを借りて着替えやらをさせてもらった。服なんてそんなに持ってないので、いつもと同じようなジーパンとポロシャツって感じのどこにでもいる中高生ってところだろう。

そして、諸々の準備も終わり玄関先で待っていると階段から柏木が降りてきた。

「おまたせ」

白のワンピースを着て麦わら帽子をかぶった小さな幼女は夏に舞い降りた純白の天使のようだった。

「どう?かわいい?」

俺の前まで来ると、くるっと一回転してみせる。

「…………うん」

くそ。なんだよ。可愛いじゃねえか。俺は反射的に目を逸らしながらそう答える。

「そう。ならいいんだけど。じゃ、行きましょうか」

「そうだな」

家を颯爽と出たのはいいけれど、行く場所なんて決まってない。とりあえず駅に着いた。

「どこ行く?希望あればそこ行こうか」

「うーん。じゃ、焼肉はここの駅近くのあそこでいいから帰りでいいとして………」

「あそこの焼肉屋いくなら昼のランチ安いから昼に…………」

「肉はディナーに限るっ!!」

提案するように少し小声でそう言ってみるが、一瞬でかき消された。

「分かりました………」

お金。無くなっちゃう………

「で、行き場所は………じゃ、千葉行きましょ千葉っ!!」

千葉というのは本千葉町という地名の場所を指す。大体の千葉県民は千葉って言われたらそこを思い浮かべるだろう。生まれも育ちも千葉県民である俺もそう思う。

無邪気に笑う奴に反抗する気もなくなり、俺は言われるがまま、モノレールやらに揺られて千葉についた。

流石に自分の分の交通費は出してくれました。

「千葉なんて来てどこ行くの?」

「あんたは黙ってついてらっしゃいっ!!」

「了解致しましたっ!!」

そして、連れてこられたのは駅から徒歩数分の建物の中の4階にある映画館だった。

「何見るの?」

「特に決めてないけど?」

「質問を質問で返すなっ!」

「なんてのは冗談で………これですっ!」

と、柏木が指を指したその指の先を見ると、あなたも恋に落ちる!?王道青春ラブコメ!とか書いてある。

「お前、こういう乙女チックなの好きだよな。」

「あ?」

「すいません。ごめんなさい」

なんでそんなにガン飛ばすの?どこのヤンキーだよ。反射的に財布出して謝っちまったじゃねえか。むっちゃ怖いしよ………

「あ、早くしないと始まっちゃう」

「じゃ、俺チケット買ってくるから柏木はポップコーンとか買ってきてくれ」

「わかった」

俺は柏木とエスカレーター付近で別れて、柏木は売店へ、俺はチケット売り場へ向かった。

「いらっしゃいませ。どちらの映画をご覧になりますか?」

若い店員さんが受付をしていた。

「あー。えっと、恋に落ちているってやつ二つで」

「かしこまりました」

そしてチケットを受け取り、柏木の行った売店に向かうと、柏木はジュース二つと、顔より大きなポップコーンを黒の受け皿のようなものに乗せていた。

小さい子が大きいもの持ってるのって、いいよね。

そんなことを思いながら柏木に駆け寄ると、それを無造作に渡された。

「お、おいっ!」

「早く行きましょ。始まっちゃう」

「まあ、そうだな………」

そう言って、映画館内に入った。

********

あー。眠い。

休みの日くらいはゆっくり寝ていたいのだが、柏木のお陰で結局寝るもの遅れたし、色々興奮気味であまり寝れてなかったので、すごく眠い。

俺はうつらうつらとしながら映画をみる。

そんな俺が大きな音も出ない。アクロバティック的な演出もない。そんなつまらないラブコメを見て寝落ち寸前の俺が寝ないわけがなく………

俺が目を覚ましたのは映画が終わったあとだった。

「で?あんたはどこまで見てたの?」

映画を見終わりそこから出て、エスカレーターで降りながら柏木が少しムッとしながら訊いてきた。

「主人公と幼馴染が出てきたところらへんから記憶無い」

「それ、序盤じゃないっ!」

「そうなの?」

「じゃ、全然会話になりそうにないわね……」

映画の後って人と少し話し合いたいよなぁ。だから、柏木が残念そうなのもわかる。

「すまんな」

「まあ、いいわよ。これから付き合ってもらうし……」

「ほう。どこ行くの?」

「黙ってついてらっしゃいっ!」

「了解!」

全く、狂犬の散歩は疲れるな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の低田悠真のクラスには『高嶺の花』と呼ばれるほどの人気がある高嶺結衣という女子生徒がいる。容姿端麗、頭脳明晰、品行方正な高嶺さんは男女問わずに告白されているが全て振っていた。彼女には好きな人がいるらしい。  ゴールデンウィーク明け。放課後にハンカチを落としたことに気付いた悠真は教室に戻ると、自分のハンカチの匂いを嗅いで悶える高嶺さんを見つける。その場で、悠真は高嶺さんに好きだと告白されるが、付き合いたいと思うほど好きではないという理由で振る。  しかし、高嶺さんも諦めない。悠真に恋人も好きな人もいないと知り、 「絶対、私に惚れさせてみせるからね!」  と高らかに宣言したのだ。この告白をきっかけに、悠真は高嶺さんと友達になり、高校生活が変化し始めていく。  大好きなおかずを作ってきてくれたり、バイト先に来てくれたり、放課後デートをしたり、朝起きたら笑顔で見つめられていたり。高嶺の花の高嶺さんとの甘くてドキドキな青春学園ラブコメディ!  ※2学期編3が完結しました!(2024.11.13)  ※お気に入り登録や感想、いいねなどお待ちしております。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる

春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。 幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……? 幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。 2024.03.06 イラスト:雪緒さま

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。  後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。  しかし、そこに香奈が現れる。  成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……  オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕! ※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。 「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。 【今後の大まかな流れ】 第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。 第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません! 本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに! また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます! ※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。 少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

私はお世話係じゃありません!

椿蛍
恋愛
幼い頃から、私、島田桜帆(しまださほ)は倉永夏向(くらながかなた)の面倒をみてきた。 幼馴染みの夏向は気づくと、天才と呼ばれ、ハッカーとしての腕を買われて時任(ときとう)グループの副社長になっていた! けれど、日常生活能力は成長していなかった。 放って置くと干からびて、ミイラになっちゃうんじゃない?ってくらいに何もできない。 きっと神様は人としての能力値の振り方を間違えたに違いない。 幼馴染みとして、そんな夏向の面倒を見てきたけど、夏向を好きだという会社の秘書の女の子が現れた。 もうお世話係はおしまいよね? ★視点切り替えあります。 ★R-18には※R-18をつけます。 ★飛ばして読むことも可能です。 ★時任シリーズ第2弾

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...