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八話
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【俺の妹になってください】
八話
そんな訳で、俺らは班ごとにあのどでかい荷物置き場の玄関である広間のような場所に並ばせられていた。
「なんで私が一番前なのよ……」
ボソッと小さく先頭の柏木が呟いた。
「リーダーだからな。仕方ないだろう」
しょんぼりと落ち込む肩に一言そういう。
並び順はリーダー、副リーダー、炊飯、時間と、決まっていた。なので、前から、柏木、俺、三ヶ森、山口………そして、四班の最後尾になぜか姉さん。
「………チッ!」
一番前に恨みでもあるのだろうか?舌打ちして怒りを露わにする。
「全員前ならえっ!」
始まりの挨拶も何もなしで突然に号令がかかる。柏木の背中に当たらないように腕を前に出す。一番前の人は腰に手を当てるようなポーズをとる。
「………高校に入ってまでこのポーズ……毎日牛乳飲んでるのに……」
なんだか痛く悲しい声が、前から小さく聞こえてきた。
そうか……そういうことね。
背の順。前から背の低い人が前になる。俺の通っていた中学、小学校は大体なにがあっても背の順だった。なので、必然的に一番のチビだった柏木が大体前にいた。
俺も席替えして一番前になった時は嫌だったなぁ。それが九年ずっと続く訳だ……それは辛い。なら、たまにあった出席番号順の時に、すげえ嬉しそうに俺の上履きの踵踏みまくってたのも納得………ん?
………俺はなにに納得してるんだ?
………あー。そうか。柏木らしさ。奴の性格そのものに納得した訳で、俺は奴の行動の趣旨を納得した訳ではない。なんで俺の踵踏むの?というか、踏みまくって喜んでるとかどんだけ頭お花畑なんだよ。同情して損したわ。………クソッ!
「直れ」
先生のその声でみんなは元の体制に戻る。あーあ。もっとやらせればよかったのに。
「えー、では今日は海に行きます」
今日も黒澤先生が前に立ち、そういう。ほう。またこの流れですね。じゃ俺らは放置されるのかな?
「………異論反論あるものはいるか?」
昨日は問答無用で始まったが、今日は質問コーナーがあるだと?というのに誰一人として手を上げないし発言もしない。
集会のような集まりの時は、最後に大体こんな風に質問コーナーが設けられる。その集められた人数がクラスならまだしも、学年全員やら全校やらと多くなればなるほど、質問する奴ってのは比例して少なくなる。というか居なくなる。俺もその一人だ。
だが、今日ばっかりは質問せざるおえなかった。
昨日が昨日だからな……俺ら多分姉さんがいなければ昨日死んでたと思う。
死ぬくらいならここで恥でも手を上げて質問するしかなかろうっ!
「先生。海に行って海水浴なら寒いんじゃないですかね?」
どうにか質問をする。
「なにをいうかと思えば………いいか?風見。私は海に行くと言ったが、海水浴なんていったか?」
先生は不敵な笑みを浮かべ、そう言い放つ。
「いや………」
「いつから君はキャッキャウフフの水着だ!ポロリだ!の、リア充イベントだと錯覚していた?」
「いや、微塵も……」
「………キャッキャウフフのリア充イベントなんて私が許さない」
先生がなんかすげえことを言った気もするけど……気のせいかな。
「では、行きましょうか」
全く、あの先生自分勝手すぎるだろ。
*****
潮の香りと生暖かい風が俺を包みこむ。そして、雲の後ろから出たり隠れたりを繰り返す太陽。
昨日みたいに太陽がギラギラしてたら、多分俺はここの浜辺の砂みたいにサラサラになってたな。
なんて思いながらも、俺らは浜辺にいた。ツイートしちゃうならば、『浜辺なうっ!』なのであった。
携帯なんて持って来てないのだけれどね。
そして、先ほどと同じ並びをして暫くまっていると、ドサッ!と、一つ大きなクーラーボックスと釣り道具を二つ柏木の前に置いて、先生は他の班にもそれを配る。
そして、他の班にも配り終わると先生は前に立つ。
「プーッ……あ、えーっと、君たちには夕食である魚を釣って貰います」
メガホンで音を拡張させて話す先生。
「昼飯やらはクーラーボックスに入ってるから、それを勝手に食べなさい。でも、夕飯はない。火とかも勝手にここら辺でつけてやりなさい。以上。質問は受け付けません」
と、言い残すとクルッと踵を返してどっかに去ってしまう。
またこうなるのね……
また、周りがガヤガヤ言い始めたが、んなことはどうでもいいか。
「一年たってもやることは変わらないのねー。ささっ!みんな着いてきてねー」
姉さんは先陣を切って歩き始める。
荷物は誰が持つんでしょうね。まあ、俺なんだけど……
「僕も持つよ」
「………あぁ。サンキュな」
イケメン君がイケメン行動をとる。イケメンってだけで犯罪なのにイケメン行動しちゃうと犯罪係数上がっちゃうよ?骨も残らねえよ?
なんて思いながら俺と山口君は、配られた荷物を持って女性陣の一歩後ろからついて行く。
こっちをチラチラ見ては心配そうな顔をする三ヶ森さん。相変わらずかわいいなぁ。このクーラーボックス妙に重いけど、お兄ちゃん頑張っちゃうっ!
「あそこが一番いいの!!」
姉が指をさしたのは防波堤だった。
「そうなの?」
「一年前は攻略の鬼、閃光の美香と呼ばれたわ」
ふっ!と鼻を鳴らして満足げにドヤ顔を決めている。それを軽く流して姉の横を通り過ぎる。
「お姉ちゃんショックだよっ!」
「へー」
振り返らずにズンズンその防波堤に向かって進んでいく。
「三ヶ森ちゃーんっ!姉に優しくない弟ってどう思う?」
「そ、そうですね……」
姉さんせこい手を………足を止めてその後の話に耳を立てる。
「そんなに良くはないですね」
…………くっ!
「だよねー!!」
姉のけらけら笑う声が後ろから聞こえる。
やりやがったな?チート姉さん。
「姉さん。行くよ?」
振り返って笑ってみせる。
「あー。聞いてたの?ガールズトークを盗み聞きとは感心しないなー」
嘲笑に近い笑みを浮かべてそう言う。ちくしょう。わざと聞こえるように話してたくせに………お前、後で覚えてろよ?
****
「餌付まだ?」
「あー。うん。待ってね」
姉は竿を持って餌付が終わるのを今か今かと待っている。
待ってろそのまま。今、三人はなぜか釣り竿一つ持ってどっかに行ってしまったので、今が好機だ!!
俺はゆっくりと餌であるうじゃうじゃしたミミズのようなものを付けないで、それを摘んで足音を立てずに目標に近づき、後ろの襟を掴んで中に放る。
「春樹?なに?姉によくじ………」
なんか、姉が言いかけたがそんなことは知ったこっちゃない。
背中であれが蠢いているのか、どんどんと姉の顔が曇って青くなる。
そして、数秒シャットアウトしたのかパンクしたのかは知らないが、一旦停止。
「…………ぎゃぁぁぁ!!と、とってぇぇー!とってよぉ~」
その刹那、ワンワンと泣きわめきながら、背中に腕を回したりしてのたうちまわってみせる。
「どうしたの?姉さん?急に踊り始めて」
「いやぁぁ!!!とってぇー!!」
泣きわめく姉さんを眺めて五分くらい。そろそろ反省した頃合だろう。そろそろ取ってやるか。
「姉さんじっとして?今取ってあげるから」
「ぎゃぁぁぁ!!無理ぃー!!」
姉さんが暴れまわるため、無理くり体を抑えて地面にうつ伏せにさせて、のしかかるような状態になってしまったが、この際仕方ない。そして、俺は姉のシャツと上着の間に手を突っ込んでなんとかあれをとると、海に投げ込む。
「………ふぅ。取れた。よかったね姉さん。地肌じゃなくて」
「………ぐずっ」
姉は泣きかけていた。というか、泣いていた。声には出していないとはいえ、泣いていた。
「………ちょっとあんた……」
後ろを振り返ると柏木が冷たい目でこっちを見ていた。
そして、今の体制。うん。姉を押し倒したって思われてもおかしくねえな。
「………変態さんなんですね」
ギルティ判決きましたぁぁ!!
「み、三ヶ森さん…違う……違うよ!」
なんとか『異議あり!!』弁解しようとするが、三ヶ森さんは呆れたようにそう言い放つと、俺の心は散り散りになり、浜辺の砂のようになった。
八話
そんな訳で、俺らは班ごとにあのどでかい荷物置き場の玄関である広間のような場所に並ばせられていた。
「なんで私が一番前なのよ……」
ボソッと小さく先頭の柏木が呟いた。
「リーダーだからな。仕方ないだろう」
しょんぼりと落ち込む肩に一言そういう。
並び順はリーダー、副リーダー、炊飯、時間と、決まっていた。なので、前から、柏木、俺、三ヶ森、山口………そして、四班の最後尾になぜか姉さん。
「………チッ!」
一番前に恨みでもあるのだろうか?舌打ちして怒りを露わにする。
「全員前ならえっ!」
始まりの挨拶も何もなしで突然に号令がかかる。柏木の背中に当たらないように腕を前に出す。一番前の人は腰に手を当てるようなポーズをとる。
「………高校に入ってまでこのポーズ……毎日牛乳飲んでるのに……」
なんだか痛く悲しい声が、前から小さく聞こえてきた。
そうか……そういうことね。
背の順。前から背の低い人が前になる。俺の通っていた中学、小学校は大体なにがあっても背の順だった。なので、必然的に一番のチビだった柏木が大体前にいた。
俺も席替えして一番前になった時は嫌だったなぁ。それが九年ずっと続く訳だ……それは辛い。なら、たまにあった出席番号順の時に、すげえ嬉しそうに俺の上履きの踵踏みまくってたのも納得………ん?
………俺はなにに納得してるんだ?
………あー。そうか。柏木らしさ。奴の性格そのものに納得した訳で、俺は奴の行動の趣旨を納得した訳ではない。なんで俺の踵踏むの?というか、踏みまくって喜んでるとかどんだけ頭お花畑なんだよ。同情して損したわ。………クソッ!
「直れ」
先生のその声でみんなは元の体制に戻る。あーあ。もっとやらせればよかったのに。
「えー、では今日は海に行きます」
今日も黒澤先生が前に立ち、そういう。ほう。またこの流れですね。じゃ俺らは放置されるのかな?
「………異論反論あるものはいるか?」
昨日は問答無用で始まったが、今日は質問コーナーがあるだと?というのに誰一人として手を上げないし発言もしない。
集会のような集まりの時は、最後に大体こんな風に質問コーナーが設けられる。その集められた人数がクラスならまだしも、学年全員やら全校やらと多くなればなるほど、質問する奴ってのは比例して少なくなる。というか居なくなる。俺もその一人だ。
だが、今日ばっかりは質問せざるおえなかった。
昨日が昨日だからな……俺ら多分姉さんがいなければ昨日死んでたと思う。
死ぬくらいならここで恥でも手を上げて質問するしかなかろうっ!
「先生。海に行って海水浴なら寒いんじゃないですかね?」
どうにか質問をする。
「なにをいうかと思えば………いいか?風見。私は海に行くと言ったが、海水浴なんていったか?」
先生は不敵な笑みを浮かべ、そう言い放つ。
「いや………」
「いつから君はキャッキャウフフの水着だ!ポロリだ!の、リア充イベントだと錯覚していた?」
「いや、微塵も……」
「………キャッキャウフフのリア充イベントなんて私が許さない」
先生がなんかすげえことを言った気もするけど……気のせいかな。
「では、行きましょうか」
全く、あの先生自分勝手すぎるだろ。
*****
潮の香りと生暖かい風が俺を包みこむ。そして、雲の後ろから出たり隠れたりを繰り返す太陽。
昨日みたいに太陽がギラギラしてたら、多分俺はここの浜辺の砂みたいにサラサラになってたな。
なんて思いながらも、俺らは浜辺にいた。ツイートしちゃうならば、『浜辺なうっ!』なのであった。
携帯なんて持って来てないのだけれどね。
そして、先ほどと同じ並びをして暫くまっていると、ドサッ!と、一つ大きなクーラーボックスと釣り道具を二つ柏木の前に置いて、先生は他の班にもそれを配る。
そして、他の班にも配り終わると先生は前に立つ。
「プーッ……あ、えーっと、君たちには夕食である魚を釣って貰います」
メガホンで音を拡張させて話す先生。
「昼飯やらはクーラーボックスに入ってるから、それを勝手に食べなさい。でも、夕飯はない。火とかも勝手にここら辺でつけてやりなさい。以上。質問は受け付けません」
と、言い残すとクルッと踵を返してどっかに去ってしまう。
またこうなるのね……
また、周りがガヤガヤ言い始めたが、んなことはどうでもいいか。
「一年たってもやることは変わらないのねー。ささっ!みんな着いてきてねー」
姉さんは先陣を切って歩き始める。
荷物は誰が持つんでしょうね。まあ、俺なんだけど……
「僕も持つよ」
「………あぁ。サンキュな」
イケメン君がイケメン行動をとる。イケメンってだけで犯罪なのにイケメン行動しちゃうと犯罪係数上がっちゃうよ?骨も残らねえよ?
なんて思いながら俺と山口君は、配られた荷物を持って女性陣の一歩後ろからついて行く。
こっちをチラチラ見ては心配そうな顔をする三ヶ森さん。相変わらずかわいいなぁ。このクーラーボックス妙に重いけど、お兄ちゃん頑張っちゃうっ!
「あそこが一番いいの!!」
姉が指をさしたのは防波堤だった。
「そうなの?」
「一年前は攻略の鬼、閃光の美香と呼ばれたわ」
ふっ!と鼻を鳴らして満足げにドヤ顔を決めている。それを軽く流して姉の横を通り過ぎる。
「お姉ちゃんショックだよっ!」
「へー」
振り返らずにズンズンその防波堤に向かって進んでいく。
「三ヶ森ちゃーんっ!姉に優しくない弟ってどう思う?」
「そ、そうですね……」
姉さんせこい手を………足を止めてその後の話に耳を立てる。
「そんなに良くはないですね」
…………くっ!
「だよねー!!」
姉のけらけら笑う声が後ろから聞こえる。
やりやがったな?チート姉さん。
「姉さん。行くよ?」
振り返って笑ってみせる。
「あー。聞いてたの?ガールズトークを盗み聞きとは感心しないなー」
嘲笑に近い笑みを浮かべてそう言う。ちくしょう。わざと聞こえるように話してたくせに………お前、後で覚えてろよ?
****
「餌付まだ?」
「あー。うん。待ってね」
姉は竿を持って餌付が終わるのを今か今かと待っている。
待ってろそのまま。今、三人はなぜか釣り竿一つ持ってどっかに行ってしまったので、今が好機だ!!
俺はゆっくりと餌であるうじゃうじゃしたミミズのようなものを付けないで、それを摘んで足音を立てずに目標に近づき、後ろの襟を掴んで中に放る。
「春樹?なに?姉によくじ………」
なんか、姉が言いかけたがそんなことは知ったこっちゃない。
背中であれが蠢いているのか、どんどんと姉の顔が曇って青くなる。
そして、数秒シャットアウトしたのかパンクしたのかは知らないが、一旦停止。
「…………ぎゃぁぁぁ!!と、とってぇぇー!とってよぉ~」
その刹那、ワンワンと泣きわめきながら、背中に腕を回したりしてのたうちまわってみせる。
「どうしたの?姉さん?急に踊り始めて」
「いやぁぁ!!!とってぇー!!」
泣きわめく姉さんを眺めて五分くらい。そろそろ反省した頃合だろう。そろそろ取ってやるか。
「姉さんじっとして?今取ってあげるから」
「ぎゃぁぁぁ!!無理ぃー!!」
姉さんが暴れまわるため、無理くり体を抑えて地面にうつ伏せにさせて、のしかかるような状態になってしまったが、この際仕方ない。そして、俺は姉のシャツと上着の間に手を突っ込んでなんとかあれをとると、海に投げ込む。
「………ふぅ。取れた。よかったね姉さん。地肌じゃなくて」
「………ぐずっ」
姉は泣きかけていた。というか、泣いていた。声には出していないとはいえ、泣いていた。
「………ちょっとあんた……」
後ろを振り返ると柏木が冷たい目でこっちを見ていた。
そして、今の体制。うん。姉を押し倒したって思われてもおかしくねえな。
「………変態さんなんですね」
ギルティ判決きましたぁぁ!!
「み、三ヶ森さん…違う……違うよ!」
なんとか『異議あり!!』弁解しようとするが、三ヶ森さんは呆れたようにそう言い放つと、俺の心は散り散りになり、浜辺の砂のようになった。
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