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33話

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33話

でも、文化祭でデートってのも変な感じなんだよな……

なにをしていたってそれは、所詮高校生が生み出した幻想であり、幻。そりゃ、本気で面白いものを作ろうとしている大人達がつくるものより圧倒的につまらない。

だから、やる事がないんだ。

どこのクラスに行ってもなにしてるかわかんねえし、というか意味わかんねえよ。「ホラー映画やります」とか言ってたから入ったけど、ホラーどころかなに言ってるかわかんねえし、最後の最後で、何人もクラスメイトを失った。とか書かれててもよくわからねえよな。

「……し、しかりん」

「………い、行きましょうか」

和気藹々としたこの文化祭の中。沈黙を保つ二人がいた。

それは僕らだった。

本当に気まずいんだけど……

あんなくだらねえの見させてなにを話せと?

でも、だんまりはダメだ。それはあいつが教えてくれたじゃないか。

「……あ、あのー。しかりん。えっとー。あの映画どうでした?」

「あ、えーっと、ま、まあ……」

ですよねー。

本当にもうどうしようか。映画はダメ。お化け屋敷もホラーがこんなんだし、多分ダメだ。

なら、他には……なにがあるんだ?

「しかりん。どこ行きたい?」

「うーん……」

文化祭だ。そりゃー行きたい場所なんて……

「今から軽音部体育館でライブやりまーすっ!暇なそこのあなたたちっ!きませんかー!?」

なんて、叫びながら看板のようなものを持って、回っていた。

「しかりん。やることもないし、あれ行ってみる?」

「そ、そうだねっ!行ってみよー!」

そして、僕らは体育館に向かう。

丁度そこでは演劇部が劇をしていた。

「おお…ロミオ…あなたはなんでロミオなの……」

「おお……ジュリエット……」

二階でジュリエットと地上にいるロミオが語り合っている所か。結構いいシーンじゃないか。

それでここは結構暗いし、ここで後夜祭までのんびりするのもありなんじゃないかな?

で、このあとどうなるんだっけか?

確か……僕の記憶が正しければ、ロミオとジュリエットはこの現世から離れて、あっちの世界で二人仲良く幸せに暮らしましたとさ。みたいな話だったような……

「ジュリエット!?なにしてるの!?落ちるわよっ!」

「うわぁ!!!」

ドカドカドドン……

どうやら焦ったのか二階から転げ落ちたようだ。

ロミオは二階から落ちたジュリエットに駆け寄って話しかける。

「大丈夫か!?ジュリエット!」

「ここ……は?」

「ふぅ。良かった。無事なんだね?君が死んでしまったら…僕は……」

「あの……」

「よかったよ。本当に……」

と、泣いてジュリエットが生きていることを喜ぶロミオだが、ジュリエットの様子が変だ。

やけによそよそしいというか……

「あの、貴方は誰なんですか?」

「…………え?な、なんで?」

「あの、私は誰なんですか?」

「えっと……貴方はジュリエット。僕はロミオです」

「ありがとうございます。えっと…」

「あ、あのさ。ジュリエット。本当に忘れちゃったの?」

と、言いながらロミオはジュリエットの手を掴む。

「キャー!やめてください!キモいです」

「え?ぼ、僕は心配で……」

そして、舞台が暗くなりナレーションがはいる。

「こうして、ロミオとジュリエットは新たな道へと進んでいく」

そして、劇場はくらくなる。

……これって、本当のロミオとジュリエットではないよね?

あんまりしっかりロミオとジュリエット見たことないから、比べようがないんだけど……

でも、なんなの?さっきのていたらくと比べて、ここは引き込まれるというか、普通に面白いじゃねえか。

電気がつき、どうやら場面がかわったようだ。

「ジュリエット……綺麗よ。さぁ、行きましょうか」

純白で綺麗なウエディングドレスに身をまとっているジュリエットに、高貴な女性が話をしに、控え室に来たようだ。

どうやら、お母さんが結婚式前のジュリエットに会いに来た。というシーンらしい。

「はい!お母様。あの、お母様。これは私にとって一番最善のことなのでしょうか?」

「はぁ。なにを言っているの?私の言うことを聞いてれば大丈夫よ。ジュリエット」

「……はい。わかりましたわ」

「ふふふ。あの、ストーカー野郎をやっと………」

というナレーションが入った。

うん。内容もいいし、ジュリエットかわいいな。

そりゃ、僕だって男ですから…ね。

いや、浮気というわけでは決してない。

そして、また電気が消えて、暫くしてまたつく。

これは、結婚式場?ステージ中央に神父みたいな人と十字架。その人の前にウエディングドレス姿のジュリエットと結婚相手だろうか?そこには赤色の蝶ネクタイをした小太りの背の低い、いかにもいいとこ育ちの坊ちゃんみたいな人がいた。

その会場にはロミオと思われる人物も見える。変装みたいなのしててよくわからないが、多分ロミオだろう。

すげえな。現世に絵に描いたような坊ちゃんがいて、あの服。絶対にオリジナルだよ。間違いない。

にしても、すげえ力入ってんな。

「ボルケーノ。貴方は今ジュリエットを妻とし、神の導きによって夫婦になろうとしています。汝、健康の時も病めるときも、富ときも貧しきときも、幸福なときも災いにあうときも、これを妻にし、愛し敬い共に助け合い永久に節操を守る事を誓いますか?」

「はい。誓います」

…………え?なに今のイケボは…全然キャラと違うじゃねえかっ!

今の台詞はどう考えても新郎のだよな?

あのお坊ちゃまな感じで、あのイケボ………

まじふざけんなよ……

「ジュリエット。貴方は今ボルケーノを夫とし、神の導きによって夫婦になろうとしています。汝、健康の時も病めるときも、富ときも貧しきときも、幸福なときも災いにあうときも、これを妻にし、愛し敬い共に助け合い永久に節操を守る事を誓いますか?」

「はい。誓います」

「はい。では、誓いのキスを………」

「ちょっと待ったァァ!!」

と、言って新郎新婦の間に割り込む奴がいた。ああ、やっぱりロミオか。

「え?貴方はあの時の……」

「ああ。ジュリエット待たせたね。少し待っててね。今救ってあげるから」

と、言ってロミオは内ポケットから短剣を取り出す。

「………やめて。私そんなの望んでないわ。貴方なに?なにが望みなの?」

と、怯えながらも勇敢に訊くジュリエット。

「……僕は……君に幸せになって欲しくて……だって……そうだろ?愛しているんだから、僕も君も互いに愛し合っている。なら、その二人が一緒にいた方がいいじゃないか!!だから、この邪魔者を消すっ!!」

「くっ!!」

本当にイケボだな。

「本当にやめてっ!!私望んでない。だから、やめて!」

その言葉を聞いた瞬間、ロミオは発狂して短剣を振り回し始めた。

「う、うわぁぁぁ!!!!」

「グサッ!!」

その短剣がジュリエットの腹部を抉る。

なにも言わず、ジュリエットはその場に倒れ、それからピクリともしない。

「ち、違う……ぼ、僕じゃない……僕じゃ………」

と、四つん這いになってしまうロミオ。そして、周りは消灯し、ロミオだけが光を浴びる。

「なにを言うんだ。君がやったんじゃないか。なにが違うんだい?」

左の方から子供が出てきた。

小さい男の子だ。

その子は白い羽を生やし、頭には輪っかがついている。これは天使だな。

「おお……かわいそうなジュリエット……」

そして、右からはまた男の子。こっちは黒い羽を生やして、頭にはツノを二本生やしている。これは悪魔か。

天使と悪魔か。最初から見てなかったからわからないけど、多分ロミオの心の中みたいな感じなんだろう。

「あはは。ねえねえロミオ。綺麗なウエディングドレスが血塗られてるよ!きゃはっ!ねえねえ、これロミオがやったんだよっ!」

「そうだね。これはロミオがやったことだ……」

あれ?天使もなんか病んでるぞ?

「これはもう、死んで詫びるしかないでしょー!」

「そうだよ。死ねばあの世で一緒にいられる。なら、一石二鳥だ」

えー。マジ天使天使してねえよ……

「はっはっはー。死ね!死ねぇ」

「そうだね。そうしよう。じゃ、その短剣ジュリエットから引き抜こう。それを自分に刺せば楽になれるよ」

本当に天使があの世に連れてこうとしてる。「なんだか僕疲れちゃったよ」とか言いわせて、連れて行くやつだよ。これ!

そして、また周りの電気がつき、天使悪魔役の子供達は退場した。そして、時は動き出す。

ロミオはジュリエットの腹部に刺さった短剣を抜いて、自分の方にはを向けて持つ。

「や、やめろっ!君が死んだからって罪滅ぼしになるとでも思っているのか!?」

「……もう、ジュリエットのいない世界に僕のいる意味はない。だから、僕は死ぬっ!!」

と言うと、自分の腹に勢いよく短剣を突き刺す。

「う、うぅ……」

と、もがきながらロミオはジュリエットの上に被るように倒れる。

……エンドは同じだけど、なんというか、バットエンドだな。

「……ほら、起きろよ。ジュリエット。終わったぞ」

と、イケボがロミオの死体をどけるながらそう言うと、ジュリエットは何事もなかったかのように立ち上がる。

え?なんですとぉぉ!?なんで、生きてるの?

「というか、本当にこの人だったんだね。ストーカー。というか、このトマトケチャップすごい嫌な臭い。早く着替えたいわ」

あの血みたいなやうはトマトケチャップか。すごい力入ってんな。

「あぁ。これで僕らも一つになれるね」

「え?貴方は結婚相手ではないんですよね?あと、お母様とお父様はどこ?なんでさっきは神父さんと私らとこのストーカーしかいなかったの!?答えて!」

「だって……僕がストーカーですから……あはは」

「……え?お母様とお父様は?そして………この人は?」

「君の両親はこの人と同じ、一緒のところさ。この人はストーカーさ。僕と一緒のね」

「え?じゃお母様……お父様は…もう…」

と、言いながらその場に突っ伏して泣くジュリエット。

「最高だよジュリエット。その顔。苦痛恨みそんな負の感情混ぜ合わさった顔。ぐちゃぐちゃな心。僕を恨む目。それが見たいんだよ。さっきの人は良かったね。ロミオとか言ったかな?君とあの人くらいいいよ。ジュリエット」

「あ、貴方は……」

と、言いながらイケボを睨みつけて、その今にもイケボを殺してしまいそうな殺意がこっちにまで伝わってくる。

「ははは……最高だよ君はっ!」

グサリっ!!

「……え?き、貴様……まだ生きていたか……」

バタン。とイケボは倒れた。

「…ジュ、ジュリエット……君には罪を負わせたくない。幸せに……なってくれ……」

ジュリエットはロミオに駆け寄る。そして、ロミオを抱きしめて必死に問いかける。

「ろ、ロミオ……だ、ダメよ。死んではならないわっ!死なないでっ!ロミオ……」

「う……あ、愛しているぞジュリ……エット………」

「ろ、ロミオ?ろ、ロミオォォォ!!」

と、ジュリエットは叫ぶ。いや、叫ぶなんてものではない。狂ったように、いや、これでもまだ足りないだろう。そう、言うならば、号哭とか慟哭とかいう言葉を使ったほうがいいかもしれない。

そして、それとはうらはらに静かに幕は閉じていく。

なんていう、バットエンド……だけど、ロミオのジュリエットを想う気持ちはきっとジュリエットに届いているのだろう。

「う、うぅ……いい話ですねぇ……グスン…グスン……」

「し、しかりん!?これ、ハンカチ。使って」

「あ、ありがとうございます。グシューン」

あ………鼻かまれた。

「洗って返しますね…グシューン」

マジっすか。

「はい。演劇部のみなさんありがとうございます!!次は、軽音部ですっ!!」

と、女性司会者が幕のしまったステージの前にたって、かなりのハイテンションでそう言う。

えー?この雰囲気で軽音部普通にやるの?少し余韻に浸りたいんだけど…

司会者が、その場から立ち去ると共に、幕は上がり、そこに立っていたのはおちゃらけた格好の女性五人。みるからにロックな感じだ。

「いぇーーい!!みんな!!乗ってるかー!?」

いやいや、そんな気分になれねえよ……

あんなに辛くて悲しい話。

「ねえ、しかり……」

「いぇーーい!!ふぅー!!」

………マジかよ。さっきまであんなに泣いていたのに、むっちゃくちゃ元気じゃねえか。

………あれ?周りの人たちもハイテンションだな。ということは、うん?僕がおかしいのか?

「じゃ、聴いてくれ!まずは一曲め。好きなのかな?好きなんです!」

え、ええ!!!

まじかよ。こんな雰囲気で恋愛曲かよ。絶対にウルトラ魂とかだろ。

そして、歌が始まる。完璧にロック調ではないというか、全く普通の恋愛曲だった。

厨二病やり過ぎて、ロック風になっちゃいました。みたいな格好して、なんでその歌なんだよ……

で、その人たちが歌い始めたと同時くらいに横、前というか四方八方から妙な呻き声がする。

「へい……へい……」

え?なにこの人達……なんか、頭を上下動かし始めてるんだけども?

これって……ヘドバンとかいうやつじゃないのか?

客よ。歌は全然違うタイプだ。だから、やめてくれよ…

「うわぁぁ!!」「うぇーい!!」「キャッハー!!!」

全くもう……僕は静かに劇の余韻に浸っていたかったのに、周りの奴らが異常なまでに発狂していたのでふと周りを見渡すと、みんながみんなモヒカンつけた雑魚キャラみたいになっている。白崎さんも例外ではなかった……


おいおい……勘弁してくれよ。みんなチンピラだ。これは………ノリに乗って、僕の隠された力。北斗……んんん。全員指先ひとつでダウンさせてやろうじゃないか。

よし、後ろにいたれんにでも試しにやってみよう。

「おりゃ!」

と、やつのおでこに人差し指を当てる。

「あべし!!」

と、いいながら奴は眠ったように倒れる。

おお!モヒカンも取れたし静かになったな。これ全員にやれば黙ってくれそうだな。やってやろう。

思いついたら前からやっていってやる。

「おりゃ!」「あべし!!」「おりゃ!」「あべし!!」…………

そして、最後の一人だ。

ごめん。白崎さん。モヒカンになってもやはり白崎さんはかわいかったよ。

だけど、普通の白崎さんが僕は好きだ。だから、今だけは眠っててくれ。

「うぉりゃぁぁぁ!!!」

「あべし……」

……ふう。完了。

でも、これからどうしようかな?

全員眠らせたのはいいが、どうしたらいいんだろうか?

僕はこの静かな体育館で、一人座っていた。

あー、暇だなぁ。

「士郎……むにゃむにゃ……」

うわーなんだ?この萌える生き物は。さすが僕の彼女。かわええなぁ。

…………これ。いつになったらみんな目を覚ますんだろう?

そろそろ文化祭も終わるよな?

時計を見ると、もう二時になっていた。

あと一時間か。

というか、二時からって他になんかやるよな?なのに、始まらねえな。

仕方ない。白崎さんを強制的に起こそうか。

「しかりん。起きて!」

軽く揺さぶってみるが、反応はない。

はぁ………

「あれ?士郎くん?」

「ん?」

声のする方に向くとそこには金髪のあの小さいのに似たような人がいた。

「あ、流美さん」

「お久しぶり……かな?」

「お、お久しぶりです」

「ねえ、士郎くん。一つ訊きたいんだけど、これは?」

げっ!ど、どうしようか。僕が人差し指でダウンさせたとなんか言いようがないし……

「あー。なんか、軽音部が子守唄歌って………」

「へー。そうなんだ」

と、言いながら僕の横に腰を下ろした。

ん?騙せたのか?

おお!すげえ……

でも、なんでここに流美さんがいるんだ?井上先輩のところに行けばいいのに

「あのさ、士郎くん。あの二人どう思う?」

「え?なんの話ですか?」

「あれ?知らないの?渚と汐が付き合ってるの」

「あ、あー。その話ですか」

付き合ってるってのは聞いたけど、特になにもないよな。デートはあの時、僕が修羅場ってる時に一回。ってかんじかな?でも、それが普通なんじゃないかな?僕らもそのくらいだし、今だってデートやってんじゃないかな?

「え?なに?なんか知ってるの?」

「いや、特には……」

「じゃ、士郎君からみて二人はどう?」

「うーん……」

どうって言われてもなぁ。でも、答えないわけにはいかないし……

少し悩んでからまた僕は口を開く。

「えーっと、二人は二人なりにうまくやってると思いますよ?」

「………そっかー。はぁ……」

「あれ?なんか、心配ごとでもあるんですか?」

「いや……べ、別にそんなことはないのよ?」

うん?なんだこの反応は……

妹と同じだとぉぉ!?

でも、ツンデレではないんだよな。

なら、なんだ?

「聞きたいなら教えてあげるけど、あの子には内緒ね?」

「いや、頼んでないんですけど!?」

「なに?文句あるの?話したいんだから聞きなさい!」

「は、はぁ……」

先輩そっくりだな。この強引なところとか特に……

「あの二人って幼馴染でしょう?」

でも、なんでこんなにも色っぽいのだろう?先輩には色のいの字もないというのに、なんか理不尽ではないかっ!

「でね、先のこととかを考えると幼馴染で付き合うってのもどうなのかな?って思うのよ」

うんっ!実にけしからんっ!

「どう思う?……って士郎君!?なんで私のおっ……ってなに言わせるのよっ!!」

バリバリバリッ!!!

と、落ち葉を踏んだような音が僕の肋骨あたりから出た。

え?……痛い?

痛いということさえもわからないくらいの腕力。ゴリラを越しているっ!!これは先輩より数段上だ。なんて火力っ!これは折れたかもしれねえ。

「で、どう思う?」

「は………」

あれれ?言葉が喋れないぞ?

……この息苦しい感じ。溺れた時のようだ。こ、呼吸が……

みぞおちって訳じゃないのに……

「士郎君?大丈夫?」

大丈夫……な訳がない。ゴリラのパンチの方がまだマシって思えるようなのをもろに貰ったんだ。大丈夫な訳が……

「……大丈夫です」

あれ?大丈夫だわ。これは…毎日毎日朝起こすために蹴ってくれた妹と先輩のゴリラパワー感謝だな。

多分、一般人では死んでいただろう。

「で、どう思う?」

「あー……」

「士郎君?聞いてた?」

「…………すいませんでしたぁ!!」

全く僕というやつは……あんなのに目がいって話を聞いてなかった。

「じゃ、もう一度説明するわね?」

「はいっ!」

今回こそはしっかりと最後まで聞いてやるっ!!

「って訳なのっ!」

「あー。はいっ!でも、なんで幼馴染が付き合うのがよくないと思うんですか?」

「えーっとね、異性と幼馴染だったら二つパターンがあると思うのっ!で、一つは物心ついて、友好関係がぷっつり切れてしまって、高校とかで離ればなれになり、 そのまま。ってタイプと、いつもぴったりで物心ついても仲がよくて、友達以上恋人未満になるタイプがね」

「後者だったら、いいんじゃないんですか?」

僕だって白崎さんに会う前。というか中学校時代は火憐の事が好きだったし、後者だったらあいつらバカップルみたいに仲良くやっていけるんじゃないかな?

「良さそうに思うでしょ?」

と、流美さんは不敵に笑ってみせた。

「え?よくないんですか?」

「えーっとね?友達以上恋人未満ってのは、一番刺激的で幸せな時なのよ。付き合えたら一気に熱が冷めて別れる。みたいなこともよくある話なのよ」

「……でも、二人に限ってそんなことはないと思いますよ。二人を遠目で見てたら夫婦にしかみえませんもん」

「そ、そう?」

と、自分のことかのように顔を赤らめてそう言う流美さんからは姉としての風格のようなものが感じられた。

「なら、もう心配はないわっ!あなたたちみたいなしっかりとしたお友達もいるみたいだし、私ももう自分の家庭が作れそうだわ!」

「おー!ご結婚おめでとうございますっ!」

「へへっ!ありがとう。じゃ、私はこれで失礼するわねっ!」

「はーい。幸せにー!」

やっぱり先輩と似てるな。容姿も性格も。あんなに妹を心配する出来た姉なんてそうそういるものではない。

流美さんが体育館から出て行った直後、僕の横でふわっと起き上がった超かわいい僕の彼女。

「ふぇ?士郎?」

……これで可愛くないとかぬかすやつはちょっと前に出てこいっ!!
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