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35 邪魔者はどちらでしょう?
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「え? 他国に潜入する?」
「ああ。ちょっとトラブルがあってな」
「トラブル、ですか」
そんなことをしたら、国際問題になるんじゃないの?
言葉を濁しているので、私には詳しい話をしてはいけないのかもしれない。
わかってはいるけれど、余計に気になるので駄目元で聞いてみる。
「一体、どういうことでしょうか」
「話を聞いたら、アーティアも一緒に行かないといけなくなるかもしれないぞ」
「行ってもいいんなら行きますよ」
「どんな所かわからないのに、簡単に言うなよ」
「自分の身は自分で守りますし、セナ殿下が今、どんな状況にあるのかわからないほうが嫌です」
「そ、そうか」
当たり前のことを言ったはずだ。
それなのにセナ殿下が照れるから、私も恥ずかしくなってきた。
その後、セナ殿下が話をしてくれたのは、とある王国の王家に近づくという話だった。
しかも、女装をして女性のふりをするのだという。
相手は国王で妻になる人を求めているから、女性でないと駄目らしい。
「女性じゃないと駄目だけど、危険だから、他の人は行かせられないということですね」
「最初はアーティアに行かせようという案も出てたんだ」
「どうして私が……って、そうですよね。一部の貴族からは私は疎ましがられてるんでした」
私を亡き者にして、自分の娘をセナ殿下に嫁がせたいという魂胆が見え見えね。
「さすがに多くの人が反対したから、その案は通らなかったけどな」
「王子を女装させて行かせる案は通ったんですか」
「各国から一人ずつ女性を出さないといけないんだ。しょうがないだろ」
「よくわからないですが、危険そうですし、私は一緒に行きますからね!」
他国に潜入だなんて、面倒といえば面倒だし危険だけど、何だかワクワクするわ。
「そう言うだろうと思ったよ。じゃあ、アーティアは俺の付き人として来てくれ」
「承知しました」
「即答だな。まあ、いいや。じゃあ、準備を頼むな」
「楽しみですね!」
「そんなわけないだろ。……それと、向こうに着いてから少しだけ時間がとれそうなんだ。せっかくだし、二人で街へ出かけないか」
「女装したセナ殿下とですか」
「まだ、その時は女装はしない!」
ムキになるセナ殿下は相変わらず可愛らしい。
笑顔で見つめていると、セナ殿下が立ち上がる。
「とにかく今日は帰る。また、改めて連絡するよ」
「ゆっくりはできないんですね」
「会いに来ないよりかは良いだろ」
「私に会いたかったんですか」
「うるさいな。そうだよ。アーティアの憎まれ口を聞かないと落ち着かなくなった」
「じゃあ、今日は私は暇なんです。セナ殿下について行っても良いですか」
「駄目だ。見張ってないとジッとしてられないだろ」
酷い言われようだわ。
でも、あながち間違ってはいない。
セナ殿下が話題を変えてくる。
「そういえば、君の元婚約者が放牧してた馬に蹴られて重傷らしいぞ」
「何があったんです?」
「馬を邪険に扱ったらしい」
「馬って賢いですもんね。ふざけんな、この野郎といったところでしょうか」
「アーティアに看病に来てほしいって言ってるらしい」
「落ち着いたら行ってもいいですが、その時は一緒に行ってくださいね」
「結婚報告する時に行ってやってもいいかもな」
早足で歩くセナ殿下の背中に問いかける。
「それはどちらの?」
「両方だといいな」
セナ殿下は決して振り向かない。
耳が髪に隠れて見えないのが残念だわ。
きっと、赤くなっているんでしょうね。
まずは片付けないといけないことができたから、結婚はまだ先ね。
私の結婚が決まったら、きっとお母様達の結婚も決まるはず。
私への結婚祝いは二人の結婚だと素敵ね。
ニューシルバートレイもあるし、セナ殿下もいる。
お母様とも再会できたし、レモンズ侯爵邸にいたメイド達も呼び寄せた。
幸せになる準備は着々と進んでいる。
あとは、障害を取り除くだけ。
さあ、邪魔者はどちらでしょう?
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後までお読みいただきありがとうございました!
ティアトレイ誕生の話にお付き合いいただき、ありがとうございます。
『どちらでしょう』
は『二つのうちのどちらか』と『どこにいる』で使ってみました。
楽しんでいただけたなら嬉しいです!
このお話は他作品「私には関係ありませんので、どうぞお好きになさって?」の前日譚みたいなものですが、そのお話はアーティア達がメインのお話ではないので、続き、とは言えないものです。
ですので、気になった方だけ読んでもらえましたら嬉しいです。
昨日にも書きましたが、新作投稿始めています。
「私の人生は私のものです」になります。
よろしければ読んでいただけますと幸いです。
お気に入り登録、しおり、エール、いいねを本当にありがとうございました。
また違う作品でお会いできれば幸いです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
「ああ。ちょっとトラブルがあってな」
「トラブル、ですか」
そんなことをしたら、国際問題になるんじゃないの?
言葉を濁しているので、私には詳しい話をしてはいけないのかもしれない。
わかってはいるけれど、余計に気になるので駄目元で聞いてみる。
「一体、どういうことでしょうか」
「話を聞いたら、アーティアも一緒に行かないといけなくなるかもしれないぞ」
「行ってもいいんなら行きますよ」
「どんな所かわからないのに、簡単に言うなよ」
「自分の身は自分で守りますし、セナ殿下が今、どんな状況にあるのかわからないほうが嫌です」
「そ、そうか」
当たり前のことを言ったはずだ。
それなのにセナ殿下が照れるから、私も恥ずかしくなってきた。
その後、セナ殿下が話をしてくれたのは、とある王国の王家に近づくという話だった。
しかも、女装をして女性のふりをするのだという。
相手は国王で妻になる人を求めているから、女性でないと駄目らしい。
「女性じゃないと駄目だけど、危険だから、他の人は行かせられないということですね」
「最初はアーティアに行かせようという案も出てたんだ」
「どうして私が……って、そうですよね。一部の貴族からは私は疎ましがられてるんでした」
私を亡き者にして、自分の娘をセナ殿下に嫁がせたいという魂胆が見え見えね。
「さすがに多くの人が反対したから、その案は通らなかったけどな」
「王子を女装させて行かせる案は通ったんですか」
「各国から一人ずつ女性を出さないといけないんだ。しょうがないだろ」
「よくわからないですが、危険そうですし、私は一緒に行きますからね!」
他国に潜入だなんて、面倒といえば面倒だし危険だけど、何だかワクワクするわ。
「そう言うだろうと思ったよ。じゃあ、アーティアは俺の付き人として来てくれ」
「承知しました」
「即答だな。まあ、いいや。じゃあ、準備を頼むな」
「楽しみですね!」
「そんなわけないだろ。……それと、向こうに着いてから少しだけ時間がとれそうなんだ。せっかくだし、二人で街へ出かけないか」
「女装したセナ殿下とですか」
「まだ、その時は女装はしない!」
ムキになるセナ殿下は相変わらず可愛らしい。
笑顔で見つめていると、セナ殿下が立ち上がる。
「とにかく今日は帰る。また、改めて連絡するよ」
「ゆっくりはできないんですね」
「会いに来ないよりかは良いだろ」
「私に会いたかったんですか」
「うるさいな。そうだよ。アーティアの憎まれ口を聞かないと落ち着かなくなった」
「じゃあ、今日は私は暇なんです。セナ殿下について行っても良いですか」
「駄目だ。見張ってないとジッとしてられないだろ」
酷い言われようだわ。
でも、あながち間違ってはいない。
セナ殿下が話題を変えてくる。
「そういえば、君の元婚約者が放牧してた馬に蹴られて重傷らしいぞ」
「何があったんです?」
「馬を邪険に扱ったらしい」
「馬って賢いですもんね。ふざけんな、この野郎といったところでしょうか」
「アーティアに看病に来てほしいって言ってるらしい」
「落ち着いたら行ってもいいですが、その時は一緒に行ってくださいね」
「結婚報告する時に行ってやってもいいかもな」
早足で歩くセナ殿下の背中に問いかける。
「それはどちらの?」
「両方だといいな」
セナ殿下は決して振り向かない。
耳が髪に隠れて見えないのが残念だわ。
きっと、赤くなっているんでしょうね。
まずは片付けないといけないことができたから、結婚はまだ先ね。
私の結婚が決まったら、きっとお母様達の結婚も決まるはず。
私への結婚祝いは二人の結婚だと素敵ね。
ニューシルバートレイもあるし、セナ殿下もいる。
お母様とも再会できたし、レモンズ侯爵邸にいたメイド達も呼び寄せた。
幸せになる準備は着々と進んでいる。
あとは、障害を取り除くだけ。
さあ、邪魔者はどちらでしょう?
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最後までお読みいただきありがとうございました!
ティアトレイ誕生の話にお付き合いいただき、ありがとうございます。
『どちらでしょう』
は『二つのうちのどちらか』と『どこにいる』で使ってみました。
楽しんでいただけたなら嬉しいです!
このお話は他作品「私には関係ありませんので、どうぞお好きになさって?」の前日譚みたいなものですが、そのお話はアーティア達がメインのお話ではないので、続き、とは言えないものです。
ですので、気になった方だけ読んでもらえましたら嬉しいです。
昨日にも書きましたが、新作投稿始めています。
「私の人生は私のものです」になります。
よろしければ読んでいただけますと幸いです。
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また違う作品でお会いできれば幸いです。
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最後までお読みいただき、ありがとうございます✨
楽しんでもらえたなら嬉しいです✨
潜入のお話はヒロインが別なので、そちらのヒロインが合うようでしたら、ぜひ♪
お祝いのお言葉をありがとうございます✨
ティアトレイの書籍が😂
私も買いに行かねば!
出遅れて買えなかったらどうすれば😱
最後までお読みいただきありがとうございました✨
読んでいただき、ありがとうございました。