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13 両親の約束とはなんなのか
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なんだか面白くなってきたわ。
本人にその気がないにしても、他国の王族を馬鹿にしているだなんてありえないことだ。
だけど、セナ殿下の性格がなんとなくわかってきたせいか、危機的状況とは思えない。
それに、家族に何があってもどうでも良いということもある。
お父様たちが甘やかせすぎたのよね。
それだけ考えると、アフォーレが可哀想だ。
でも、彼女はまだ子供だしね。
それはお父様も感じているのか、慌ててフォローに入る。
「セナ殿下! 娘が失礼なことを申し上げてしまい誠に申し訳ございませんでした! 責任はアーティアが取りますので、アフォーレの命はお助けください!」
「それくらいで命を奪ったりするかよ!」
セナ殿下はお父様を睨みつけて言った。
でも、そのあとすぐに大きく深呼吸しているから、怒りが収まったわけでもなさそうだ。
「大丈夫ですか。妹が申し訳ございません」
「いいよ。俺は気にしないって決めてるんだ」
いや、かなり、気にされてますよね。
こほんと咳払いをしたあと、セナ殿下は話題を戻す。
「あなたの言葉通り、アーティアに責任を取ってもらうことにする。だから、アーティアはリシャール王国に連れて帰らせてもらう。あと、今回の件は、こちらの国王には許可もとっている。国際問題にはならないから安心してくれ」
「そ、そんな! まさか、彼女はまだアーティアを諦めていなかったんですか!?」
お父様が顔を真っ青にしてセナ殿下に尋ねると、彼は可愛い顔を歪めて答える。
「メイティは諦めなかったんじゃない。自分のせいで娘が死んだと思い込んで、泣いて暮らす毎日を送っていたんだ。今は元気にはなってきたが、未だに自分を責め続けている。だから、アーティアを連れて帰るのは、メイティが諦めていないからではなく、メイティの幸せのために連れて帰るんだ」
セナ殿下はそこで言葉を区切り、私を見る。
「それにアーティアもここから出たそうだし、アーティアのためでもある」
「アーティアを渡すわけにはいきません! この子は私の娘です!」
お父様が信じられない発言をしたので、私は眉根を寄せて尋ねる。
「お父様、今まで私のことを娘だなんて思ったことがあるのですか?」
「ある! 今だって思っている!」
「信じられません。一体、何を考えていらっしゃるのですか」
セナ殿下が私の面倒を見るという発言をするまでは、私を追い出そうとしていたじゃないの。
それなのに、どうして私が出ていくことを嫌がるのかしら。
まさか、お父様はお母様に未練がある?
そんなわけないわよね。
パララー様と結婚しているんだもの。
じゃあ、他にどんな理由があるのかしら。
私とセナ殿下の婚約は知らないはず。
お母様がした約束をお父様が知っていたとしても、セナ殿下のお兄様が結婚した時点で無効になっていると思っているはず。
お母様から聞いていたとしても、婚約の話は無効になっていると思っているはずだ。
その時、また頭痛がした。
過去を思い出そうとすると、警告するように頭がズキズキと痛む。
頭を押さえていると、セナ殿下が私の異変に気が付いて顔を覗き込んできた。
「どうした、大丈夫か? 頭痛がするのは無理に思い出そうとするからじゃないか。考えるのはやめたらどうだ」
「大丈夫です。でも、思い出さないといけないんです」
表情を歪めて答えると、お父様が反応する。
「セナ殿下! その子は昔、頭を強く打って、数十日間、眠っていたんです! その後遺症です! 無理に思い出させないほうが良いかと思います!」
「……数十日間、意識不明?」
セナ殿下ではなく、私が反応した。
すると、パララー様も首を傾げる
「アーティアが反抗的なことをしたから、意識不明の時期があったと言っていましたわよね。今、考えると意味がわかりませんわ」
「やめろ! お前は黙っているんだ!」
お父様はパララー様を叱ると、私を睨みつける。
「お前は寝ていただけだ! 意識不明になどなっていない!」
「……似たようなもののような気もしますが、寝てるほうが聞こえは良いですね」
そういえば、あの時、聞いた日よりも日数がかなり経っていたように感じていた。
でも、お父様や使用人に丸一日寝てしまっていただけだと言われて、信じ込んでいただけなのかもしれない。
幼い時は人を疑う心なんてなかったもの。
「お父様は、あの時、丸一日だけと言ってましたよね。私に嘘をついたんですか?」
「違うと言っているだろう! アーティア! お前は今まで育ててやった恩を忘れると言うのか!?」
「あなたは私の父親なのでしょう。それは義務です」
「約束を破ったのはお前だろう」
私に続けてセナ殿下がお父様に言った。
そうだわ。
色々と思い出してきた。
約束のことが気になる。
お母様が私を連れて出ていく時、お父様が約束を破ったと言っていた。
「お父様」
「何だ!?」
「お父様とお母様がしていた約束とは、どんなものだったんですか?」
私の質問に、お父様は表情を歪めた。
本人にその気がないにしても、他国の王族を馬鹿にしているだなんてありえないことだ。
だけど、セナ殿下の性格がなんとなくわかってきたせいか、危機的状況とは思えない。
それに、家族に何があってもどうでも良いということもある。
お父様たちが甘やかせすぎたのよね。
それだけ考えると、アフォーレが可哀想だ。
でも、彼女はまだ子供だしね。
それはお父様も感じているのか、慌ててフォローに入る。
「セナ殿下! 娘が失礼なことを申し上げてしまい誠に申し訳ございませんでした! 責任はアーティアが取りますので、アフォーレの命はお助けください!」
「それくらいで命を奪ったりするかよ!」
セナ殿下はお父様を睨みつけて言った。
でも、そのあとすぐに大きく深呼吸しているから、怒りが収まったわけでもなさそうだ。
「大丈夫ですか。妹が申し訳ございません」
「いいよ。俺は気にしないって決めてるんだ」
いや、かなり、気にされてますよね。
こほんと咳払いをしたあと、セナ殿下は話題を戻す。
「あなたの言葉通り、アーティアに責任を取ってもらうことにする。だから、アーティアはリシャール王国に連れて帰らせてもらう。あと、今回の件は、こちらの国王には許可もとっている。国際問題にはならないから安心してくれ」
「そ、そんな! まさか、彼女はまだアーティアを諦めていなかったんですか!?」
お父様が顔を真っ青にしてセナ殿下に尋ねると、彼は可愛い顔を歪めて答える。
「メイティは諦めなかったんじゃない。自分のせいで娘が死んだと思い込んで、泣いて暮らす毎日を送っていたんだ。今は元気にはなってきたが、未だに自分を責め続けている。だから、アーティアを連れて帰るのは、メイティが諦めていないからではなく、メイティの幸せのために連れて帰るんだ」
セナ殿下はそこで言葉を区切り、私を見る。
「それにアーティアもここから出たそうだし、アーティアのためでもある」
「アーティアを渡すわけにはいきません! この子は私の娘です!」
お父様が信じられない発言をしたので、私は眉根を寄せて尋ねる。
「お父様、今まで私のことを娘だなんて思ったことがあるのですか?」
「ある! 今だって思っている!」
「信じられません。一体、何を考えていらっしゃるのですか」
セナ殿下が私の面倒を見るという発言をするまでは、私を追い出そうとしていたじゃないの。
それなのに、どうして私が出ていくことを嫌がるのかしら。
まさか、お父様はお母様に未練がある?
そんなわけないわよね。
パララー様と結婚しているんだもの。
じゃあ、他にどんな理由があるのかしら。
私とセナ殿下の婚約は知らないはず。
お母様がした約束をお父様が知っていたとしても、セナ殿下のお兄様が結婚した時点で無効になっていると思っているはず。
お母様から聞いていたとしても、婚約の話は無効になっていると思っているはずだ。
その時、また頭痛がした。
過去を思い出そうとすると、警告するように頭がズキズキと痛む。
頭を押さえていると、セナ殿下が私の異変に気が付いて顔を覗き込んできた。
「どうした、大丈夫か? 頭痛がするのは無理に思い出そうとするからじゃないか。考えるのはやめたらどうだ」
「大丈夫です。でも、思い出さないといけないんです」
表情を歪めて答えると、お父様が反応する。
「セナ殿下! その子は昔、頭を強く打って、数十日間、眠っていたんです! その後遺症です! 無理に思い出させないほうが良いかと思います!」
「……数十日間、意識不明?」
セナ殿下ではなく、私が反応した。
すると、パララー様も首を傾げる
「アーティアが反抗的なことをしたから、意識不明の時期があったと言っていましたわよね。今、考えると意味がわかりませんわ」
「やめろ! お前は黙っているんだ!」
お父様はパララー様を叱ると、私を睨みつける。
「お前は寝ていただけだ! 意識不明になどなっていない!」
「……似たようなもののような気もしますが、寝てるほうが聞こえは良いですね」
そういえば、あの時、聞いた日よりも日数がかなり経っていたように感じていた。
でも、お父様や使用人に丸一日寝てしまっていただけだと言われて、信じ込んでいただけなのかもしれない。
幼い時は人を疑う心なんてなかったもの。
「お父様は、あの時、丸一日だけと言ってましたよね。私に嘘をついたんですか?」
「違うと言っているだろう! アーティア! お前は今まで育ててやった恩を忘れると言うのか!?」
「あなたは私の父親なのでしょう。それは義務です」
「約束を破ったのはお前だろう」
私に続けてセナ殿下がお父様に言った。
そうだわ。
色々と思い出してきた。
約束のことが気になる。
お母様が私を連れて出ていく時、お父様が約束を破ったと言っていた。
「お父様」
「何だ!?」
「お父様とお母様がしていた約束とは、どんなものだったんですか?」
私の質問に、お父様は表情を歪めた。
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