32 / 34
30 胸が高鳴る
しおりを挟む
次の日、ルーと一緒にミュラーを見送りに向かった。
「申し訳ないけど、落ち着いたらまた、こっちに来てくれないか。ティナに紹介したいんだ。連絡をくれれば、迎えのものをそちらに送ろう」
「ありがとうございます、ルーザー殿下」
ミュラーはルーに頭を下げたあと、私を見て微笑む。
「今回の件はお前のせいじゃないから気にすんなよ?」
「気にはするわよ。だけど、ウジウジはしない事にする」
「その方がお前らしい」
「ところで、ビアンカとは昨日、何の話をしたんだ? 差し支えなければ教えてほしいんだが」
私とミュラーが話をしていると、ルーがミュラーに尋ねたので、彼はその時の事を思い出すように眉を寄せてから答える。
「大した話はしてませんが、俺の婚約者はどうするのかとか、自分の事はどう思うかとか、そんな話でした」
「ビアンカ様についてはなんて答えたの?」
野次馬根性が出てしまい聞いてみると、ミュラーは眉を寄せたままで言う。
「あまりお話をした事がないので判断できませんって答えた」
「どんな反応してた?」
「ショックを受けたような顔をしてたな。一体、なんだったんだ?」
「私からは言えないわ」
苦笑して首を横に振ると、ミュラーは不思議そうな顔をした。
それから少し話をして、私達は日にちは決めていないけれど、また会う約束をして別れた。
ミュラーを見送ったあと、宿に向かって帰りながら、ルーに尋ねる。
「ビアンカ様は勝手に自滅してくれそうですし、あとの問題はタントスの事なんですけど、彼は今はどうしてるんでしょう?」
「その件なんだが、やはり、ビアンカは婚約を破棄した」
「何を考えてるんでしょう。まだ、ミュラーの件は知らないんですよね?」
「みたいだな。キーライズン家に手紙を送ったようだから、ミュラーに対しての婚約の申込みの手紙かもしれない」
「ちょっと気の毒になってきますね」
ミュラーにビアンカとは結婚してほしくないけど、ここまでして報われないビアンカの事も少し気の毒に思えてきた。
まあ、自業自得ではあるけど。
「それはしょうがないだろう。それに、俺がミュラーだったら、好き勝手に婚約や婚約破棄を繰り返すビアンカなんてお断りだし」
「そうですね。それに、ミュラーと話がしたいからって、変な男を雇って、彼を怖がらせるくらいですからね」
「まあな…。で、ミゲル伯爵令息の話に戻るけど、リアラの泊まっている宿まで、さっきは来ていたみたいなんだ。だけど、宿の人間が不審者として通報した」
「不審者扱いされるって、どんな感じで訪ねてきてたんですか…」
「宿の受付の前でウロウロしているから、宿の人間が声をかけたらしい。そうすると、リアラが泊まっているだろうから、リアラを呼び出せと、宿の受付に詰め寄ったらしいんだ」
「宿の方にご迷惑をおかけしてしまったんですね…」
大きくため息を吐いてから、意を決して、ルーに相談してみる。
「本当はあんな奴に会いたくはないんですが、このままでは色々な人に迷惑をかけてしまいそうなので、こちらから会いに行こうと思うんですが駄目ですかね? もしくは会う機会を設けようかと」
「あの男がどんな事をしてくるかわからないから、あまり良くないんじゃないか?」
「でも、どうせ、不審者で捕まったとしても、貴族ですからお金を積んですぐに出てきて、また、私に会おうとしますよね? そうなると、私に関係のない他の人にまで迷惑がかかってしまうので、それは嫌なんですよ。もちろん、家に帰ればいいだけなのかもしれませんが、それはそれで追いかけてきそうですし」
「どうするつもりだ? 話し合いの場を設けて付きまとうなって警告するのか?」
「ええ。もうタントスに興味がない事を伝えようと思います。だから、周りをウロウロされるよりかは、日にちを決めて会った方が良い気がするんです。絶対に二人きりでは会いたくないですけど」
私の考えを聞いて、ルーは顎に手を当てて考えるような仕草を見せたあと頷いてくれる。
「わかった。でも、俺も同席する。何かあったらいけないからな」
「それは心強いです!」
「当たり前の事だけど、リアラが危なくなるかもしれないのに、何もせずに黙って待っていられないだろ?」
照れくさそうに微笑んだルーを見て、胸が高鳴る。
ルーも少しは私を意識してくれているのかしら?
そうだと嬉しいな。
「申し訳ないけど、落ち着いたらまた、こっちに来てくれないか。ティナに紹介したいんだ。連絡をくれれば、迎えのものをそちらに送ろう」
「ありがとうございます、ルーザー殿下」
ミュラーはルーに頭を下げたあと、私を見て微笑む。
「今回の件はお前のせいじゃないから気にすんなよ?」
「気にはするわよ。だけど、ウジウジはしない事にする」
「その方がお前らしい」
「ところで、ビアンカとは昨日、何の話をしたんだ? 差し支えなければ教えてほしいんだが」
私とミュラーが話をしていると、ルーがミュラーに尋ねたので、彼はその時の事を思い出すように眉を寄せてから答える。
「大した話はしてませんが、俺の婚約者はどうするのかとか、自分の事はどう思うかとか、そんな話でした」
「ビアンカ様についてはなんて答えたの?」
野次馬根性が出てしまい聞いてみると、ミュラーは眉を寄せたままで言う。
「あまりお話をした事がないので判断できませんって答えた」
「どんな反応してた?」
「ショックを受けたような顔をしてたな。一体、なんだったんだ?」
「私からは言えないわ」
苦笑して首を横に振ると、ミュラーは不思議そうな顔をした。
それから少し話をして、私達は日にちは決めていないけれど、また会う約束をして別れた。
ミュラーを見送ったあと、宿に向かって帰りながら、ルーに尋ねる。
「ビアンカ様は勝手に自滅してくれそうですし、あとの問題はタントスの事なんですけど、彼は今はどうしてるんでしょう?」
「その件なんだが、やはり、ビアンカは婚約を破棄した」
「何を考えてるんでしょう。まだ、ミュラーの件は知らないんですよね?」
「みたいだな。キーライズン家に手紙を送ったようだから、ミュラーに対しての婚約の申込みの手紙かもしれない」
「ちょっと気の毒になってきますね」
ミュラーにビアンカとは結婚してほしくないけど、ここまでして報われないビアンカの事も少し気の毒に思えてきた。
まあ、自業自得ではあるけど。
「それはしょうがないだろう。それに、俺がミュラーだったら、好き勝手に婚約や婚約破棄を繰り返すビアンカなんてお断りだし」
「そうですね。それに、ミュラーと話がしたいからって、変な男を雇って、彼を怖がらせるくらいですからね」
「まあな…。で、ミゲル伯爵令息の話に戻るけど、リアラの泊まっている宿まで、さっきは来ていたみたいなんだ。だけど、宿の人間が不審者として通報した」
「不審者扱いされるって、どんな感じで訪ねてきてたんですか…」
「宿の受付の前でウロウロしているから、宿の人間が声をかけたらしい。そうすると、リアラが泊まっているだろうから、リアラを呼び出せと、宿の受付に詰め寄ったらしいんだ」
「宿の方にご迷惑をおかけしてしまったんですね…」
大きくため息を吐いてから、意を決して、ルーに相談してみる。
「本当はあんな奴に会いたくはないんですが、このままでは色々な人に迷惑をかけてしまいそうなので、こちらから会いに行こうと思うんですが駄目ですかね? もしくは会う機会を設けようかと」
「あの男がどんな事をしてくるかわからないから、あまり良くないんじゃないか?」
「でも、どうせ、不審者で捕まったとしても、貴族ですからお金を積んですぐに出てきて、また、私に会おうとしますよね? そうなると、私に関係のない他の人にまで迷惑がかかってしまうので、それは嫌なんですよ。もちろん、家に帰ればいいだけなのかもしれませんが、それはそれで追いかけてきそうですし」
「どうするつもりだ? 話し合いの場を設けて付きまとうなって警告するのか?」
「ええ。もうタントスに興味がない事を伝えようと思います。だから、周りをウロウロされるよりかは、日にちを決めて会った方が良い気がするんです。絶対に二人きりでは会いたくないですけど」
私の考えを聞いて、ルーは顎に手を当てて考えるような仕草を見せたあと頷いてくれる。
「わかった。でも、俺も同席する。何かあったらいけないからな」
「それは心強いです!」
「当たり前の事だけど、リアラが危なくなるかもしれないのに、何もせずに黙って待っていられないだろ?」
照れくさそうに微笑んだルーを見て、胸が高鳴る。
ルーも少しは私を意識してくれているのかしら?
そうだと嬉しいな。
54
お気に入りに追加
2,207
あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者取り替えっこしてあげる。子爵令息より王太子の方がいいでしょ?
との
恋愛
「取り替えっこしようね」
またいつもの妹の我儘がはじまりました。
自分勝手な妹にも家族の横暴にも、もう我慢の限界!
逃げ出した先で素敵な出会いを経験しました。
幸せ掴みます。
筋肉ムキムキのオネエ様から一言・・。
「可愛いは正義なの!」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済み
R15は念の為・・

【完結】出逢ったのはいつですか? えっ? それは幼馴染とは言いません。
との
恋愛
「リリアーナさーん、読み終わりましたぁ?」
今日も元気良く教室に駆け込んでくるお花畑ヒロインに溜息を吐く仲良し四人組。
ただの婚約破棄騒動かと思いきや・・。
「リリアーナ、だからごめんってば」
「マカロンとアップルパイで手を打ちますわ」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・

【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました
あなたの姿をもう追う事はありません
彩華(あやはな)
恋愛
幼馴染で二つ年上のカイルと婚約していたわたしは、彼のために頑張っていた。
王立学園に先に入ってカイルは最初は手紙をくれていたのに、次第に少なくなっていった。二年になってからはまったくこなくなる。でも、信じていた。だから、わたしはわたしなりに頑張っていた。
なのに、彼は恋人を作っていた。わたしは婚約を解消したがらない悪役令嬢?どう言うこと?
わたしはカイルの姿を見て追っていく。
ずっと、ずっと・・・。
でも、もういいのかもしれない。
【完結】私の婚約者は、いつも誰かの想い人
キムラましゅろう
恋愛
私の婚約者はとても素敵な人。
だから彼に想いを寄せる女性は沢山いるけど、私はべつに気にしない。
だって婚約者は私なのだから。
いつも通りのご都合主義、ノーリアリティなお話です。
不知の誤字脱字病に罹患しております。ごめんあそばせ。(泣)
小説家になろうさんにも時差投稿します。

王宮で虐げられた令嬢は追放され、真実の愛を知る~あなた方はもう家族ではありません~
葵 すみれ
恋愛
「お姉さま、ずるい! どうしてお姉さまばっかり!」
男爵家の庶子であるセシールは、王女付きの侍女として選ばれる。
ところが、実際には王女や他の侍女たちに虐げられ、庭園の片隅で泣く毎日。
それでも家族のためだと耐えていたのに、何故か太り出して醜くなり、豚と罵られるように。
とうとう侍女の座を妹に奪われ、嘲笑われながら城を追い出されてしまう。
あんなに尽くした家族からも捨てられ、セシールは街をさまよう。
力尽きそうになったセシールの前に現れたのは、かつて一度だけ会った生意気な少年の成長した姿だった。
そして健康と美しさを取り戻したセシールのもとに、かつての家族の変わり果てた姿が……
※小説家になろうにも掲載しています
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました
紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。
ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。
ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。
貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる