21 / 34
19 肩を抱かれる
しおりを挟む
「殿下、こいつらはどうしますか?」
ミュラーが答える前に、騎士さん達がルーに近付いてきて、これからどうするかの指示を求めてきたので、話が途切れる。
「全てつかまえて警察に引き渡してくれ。それにしても、昨日の奴らといい、見たことのない顔が多いな」
「昨日の奴らも、この地域の人間ではありませんでした。さすがに、この地域に住んでいる者は殿下や、殿下が率いている部隊の存在を知っていますからね」
「そんな馬鹿な事はしないというわけか」
ルーが騎士さん達と話をしている間に、私はミュラーに話しかける。
「ケガはない?」
「ああ。だけど、お前こそ、相変わらず無茶ばっかするなよ」
「助けてあげたんだからいいじゃない。それより、なんで城下にいるの?」
答えてもらっていなかったので、再度尋ねると、ミュラーは眉間にシワを寄せて言う。
「エッジホール公爵令嬢に呼び出されたんだ」
「ビアンカ様に?」
「ああ。…というか、それよりも、ちょっと待て」
ミュラーは私にそう言ったあと、ルーに向かって頭を下げる。
「第5王子殿下にお会いできて光栄です。危ないところを助けていただき、ありがとうございました」
「助けたのは彼女だけどな」
そう言って、ルーが私を指差す。
「ルーが助けてくれなかったら、私も怪我してましたから、2人で助けたでいいんじゃないでしょうか」
「君、あまり反省してないだろ」
「反省してますってば!」
ルーにしかめっ面で言われて、反論すると、彼は苦笑して言う。
「今はそう信じておく事にする」
「次からは相談しますってば!」
「なあ、リアラ」
私とルーの話の途中にミュラーが割って入ってきて、私の腕をつかんで引き寄せると、私の耳元に口を寄せてくる。
「どうして、第5王子殿下と一緒にいるんだよ!? しかも仲良さげだし」
「そう見える!?」
仲良さげと言われて嬉しくなって頬を緩めると、ミュラーは呆れた顔をする。
「もしかして、今度は第5王子殿下に惚れたとか言うんじゃないだろうな!?」
「しーっ! 声が大きい!」
ミュラーの口を慌てておさえて、ルーの方を見ると、きょとんとした顔でこちらを見ていた。
「き、聞こえました?」
「聞こえてないけど…、仲良いんだな」
「ただの幼馴染です! 仲良くはありません!」
「そんな言い方ないだろ」
ルーの言葉を大きく首を横に振って否定すると、ミュラーが私の頬をつねってくる。
「仲良くないって言い方は悪かったけど、つねるのはやめてよ!」
「こんなの昔はいつもの事だろ」
「やめて!」
ルーの前でこんな事をされたくなくて、いくら幼馴染でも手首をつかんでひねってやろうかと真剣に考えた時だった。
「やめろ。嫌がってるだろ」
ルーが近付いてきて、止めに入ってくれた。
あああ、やっぱり好き。
「……申し訳ございません」
ミュラーは素直にルーに謝ると、私の方を見て、ちゃんと謝ってくる。
「悪かったよ」
「別にいいわよ。だけど、もう学生じゃないんだから、さっきみたいな事はやめて。それに、ミュラーはビアンカ様と婚約するんじゃないの?」
「は? そんな訳ないだろ」
「え? じゃあ、何しに来たの」
彼の実家から城下はかなり遠いから、何の用事もなく来るとは思えなくて聞いてみると、ミュラーは照れくさそうな顔をして言う。
「だから、エッジホール公爵令嬢に呼び出されたって言ったろ! 俺の婚約破棄の件でと言われてる」
「あ、やっぱりそうだったの? ビアンカ様と結婚するの?」
「そんな訳ないだろ! 誰のために婚約破棄したと思ってるんだ」
「…誰のため?」
聞き返してから、ビアンカの言葉を思い出す。
たしか、ミュラーは私の事がずっと好きだったとか言ってなかった?
ちょっと待って。
ミュラーが婚約破棄したのって、やっぱり私のせいなの!?
「お前みたいな女をもらう奴なんて、あのバカくらいしかいないだろ? そのバカと婚約破棄なんてなったら、お前をもらってくれる奴なんて」
ミュラーがそこまで言ったところで、色んなところから殺気を感じた。
私にではなく、ミュラーに対して。
ミュラーもそれを感じたのか、口を閉ざしてしまった。
屋根の上を見上げると、ルーの部下らしき人がいて、ミュラーをものすごい目で睨んでいて、後ろを振り返ると、なぜか騎士さん達がミュラーを睨んでいた。
あれ?
何で、皆が怒ってるの?
「悪いな。彼女は俺の婚約者になるって決まったんだ」
ルーが私の肩を抱いて、ミュラーに向かって言った。
それはもう嬉しい言葉と行動だったんだけど、私の肩を抱いたルーの手が、ぷるぷる震えているから、笑いそうになるのをこらえるのに必死だった。
そんなに緊張しなくても…。
女性慣れしてないのにも程がある様な気がするけれど、こういうところを可愛いと思ってしまうのは惚れた弱みなのかしら?
ミュラーが答える前に、騎士さん達がルーに近付いてきて、これからどうするかの指示を求めてきたので、話が途切れる。
「全てつかまえて警察に引き渡してくれ。それにしても、昨日の奴らといい、見たことのない顔が多いな」
「昨日の奴らも、この地域の人間ではありませんでした。さすがに、この地域に住んでいる者は殿下や、殿下が率いている部隊の存在を知っていますからね」
「そんな馬鹿な事はしないというわけか」
ルーが騎士さん達と話をしている間に、私はミュラーに話しかける。
「ケガはない?」
「ああ。だけど、お前こそ、相変わらず無茶ばっかするなよ」
「助けてあげたんだからいいじゃない。それより、なんで城下にいるの?」
答えてもらっていなかったので、再度尋ねると、ミュラーは眉間にシワを寄せて言う。
「エッジホール公爵令嬢に呼び出されたんだ」
「ビアンカ様に?」
「ああ。…というか、それよりも、ちょっと待て」
ミュラーは私にそう言ったあと、ルーに向かって頭を下げる。
「第5王子殿下にお会いできて光栄です。危ないところを助けていただき、ありがとうございました」
「助けたのは彼女だけどな」
そう言って、ルーが私を指差す。
「ルーが助けてくれなかったら、私も怪我してましたから、2人で助けたでいいんじゃないでしょうか」
「君、あまり反省してないだろ」
「反省してますってば!」
ルーにしかめっ面で言われて、反論すると、彼は苦笑して言う。
「今はそう信じておく事にする」
「次からは相談しますってば!」
「なあ、リアラ」
私とルーの話の途中にミュラーが割って入ってきて、私の腕をつかんで引き寄せると、私の耳元に口を寄せてくる。
「どうして、第5王子殿下と一緒にいるんだよ!? しかも仲良さげだし」
「そう見える!?」
仲良さげと言われて嬉しくなって頬を緩めると、ミュラーは呆れた顔をする。
「もしかして、今度は第5王子殿下に惚れたとか言うんじゃないだろうな!?」
「しーっ! 声が大きい!」
ミュラーの口を慌てておさえて、ルーの方を見ると、きょとんとした顔でこちらを見ていた。
「き、聞こえました?」
「聞こえてないけど…、仲良いんだな」
「ただの幼馴染です! 仲良くはありません!」
「そんな言い方ないだろ」
ルーの言葉を大きく首を横に振って否定すると、ミュラーが私の頬をつねってくる。
「仲良くないって言い方は悪かったけど、つねるのはやめてよ!」
「こんなの昔はいつもの事だろ」
「やめて!」
ルーの前でこんな事をされたくなくて、いくら幼馴染でも手首をつかんでひねってやろうかと真剣に考えた時だった。
「やめろ。嫌がってるだろ」
ルーが近付いてきて、止めに入ってくれた。
あああ、やっぱり好き。
「……申し訳ございません」
ミュラーは素直にルーに謝ると、私の方を見て、ちゃんと謝ってくる。
「悪かったよ」
「別にいいわよ。だけど、もう学生じゃないんだから、さっきみたいな事はやめて。それに、ミュラーはビアンカ様と婚約するんじゃないの?」
「は? そんな訳ないだろ」
「え? じゃあ、何しに来たの」
彼の実家から城下はかなり遠いから、何の用事もなく来るとは思えなくて聞いてみると、ミュラーは照れくさそうな顔をして言う。
「だから、エッジホール公爵令嬢に呼び出されたって言ったろ! 俺の婚約破棄の件でと言われてる」
「あ、やっぱりそうだったの? ビアンカ様と結婚するの?」
「そんな訳ないだろ! 誰のために婚約破棄したと思ってるんだ」
「…誰のため?」
聞き返してから、ビアンカの言葉を思い出す。
たしか、ミュラーは私の事がずっと好きだったとか言ってなかった?
ちょっと待って。
ミュラーが婚約破棄したのって、やっぱり私のせいなの!?
「お前みたいな女をもらう奴なんて、あのバカくらいしかいないだろ? そのバカと婚約破棄なんてなったら、お前をもらってくれる奴なんて」
ミュラーがそこまで言ったところで、色んなところから殺気を感じた。
私にではなく、ミュラーに対して。
ミュラーもそれを感じたのか、口を閉ざしてしまった。
屋根の上を見上げると、ルーの部下らしき人がいて、ミュラーをものすごい目で睨んでいて、後ろを振り返ると、なぜか騎士さん達がミュラーを睨んでいた。
あれ?
何で、皆が怒ってるの?
「悪いな。彼女は俺の婚約者になるって決まったんだ」
ルーが私の肩を抱いて、ミュラーに向かって言った。
それはもう嬉しい言葉と行動だったんだけど、私の肩を抱いたルーの手が、ぷるぷる震えているから、笑いそうになるのをこらえるのに必死だった。
そんなに緊張しなくても…。
女性慣れしてないのにも程がある様な気がするけれど、こういうところを可愛いと思ってしまうのは惚れた弱みなのかしら?
62
お気に入りに追加
2,198
あなたにおすすめの小説
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
まさか、こんな事になるとは思ってもいなかった
あとさん♪
恋愛
学園の卒業記念パーティでその断罪は行われた。
王孫殿下自ら婚約者を断罪し、婚約者である公爵令嬢は地下牢へ移されて——
だがその断罪は国王陛下にとって寝耳に水の出来事だった。彼は怒り、孫である王孫を改めて断罪する。関係者を集めた中で。
誰もが思った。『まさか、こんな事になるなんて』と。
この事件をきっかけに歴史は動いた。
無血革命が起こり、国名が変わった。
平和な時代になり、ひとりの女性が70年前の真実に近づく。
※R15は保険。
※設定はゆるんゆるん。
※異世界のなんちゃってだとお心にお留め置き下さいませm(_ _)m
※本編はオマケ込みで全24話
※番外編『フォーサイス公爵の走馬灯』(全5話)
※『ジョン、という人』(全1話)
※『乙女ゲーム“この恋をアナタと”の真実』(全2話)
※↑蛇足回2021,6,23加筆修正
※外伝『真か偽か』(全1話)
※小説家になろうにも投稿しております。
【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました
【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為
多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?
あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」
結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。
それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。
不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました)
※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。
※小説家になろうにも掲載しております
五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。
あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。
夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中)
笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。
え。この人、こんな人だったの(愕然)
やだやだ、気持ち悪い。離婚一択!
※全15話。完結保証。
※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。
今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。
第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』
第二弾『そういうとこだぞ』
第三弾『妻の死で思い知らされました。』
それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。
※この話は小説家になろうにも投稿しています。
※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。
どうぞご勝手になさってくださいまし
志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。
辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。
やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。
アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。
風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。
しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。
ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。
ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。
ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。
果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか……
他サイトでも公開しています。
R15は保険です。
表紙は写真ACより転載しています。
真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう
さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」
殿下にそう告げられる
「応援いたします」
だって真実の愛ですのよ?
見つける方が奇跡です!
婚約破棄の書類ご用意いたします。
わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。
さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます!
なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか…
私の真実の愛とは誠の愛であったのか…
気の迷いであったのでは…
葛藤するが、すでに時遅し…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる