12 / 34
11 ちょっとキレる
しおりを挟む
その後、残っていたルーの部下の人から「もっと色気のある話をしろ」と私まで言われてしまった。
色気のある話をしろと言われても、私だって大した経験はないし、ルーなんてもっとなさそう。
だから、どうすれば良いか困っていると、ルーが苦笑して言う。
「とりあえず店を出て歩かないか? あまりにもここは会話を聞かれすぎてる」
「そうですね。でも、護衛の人は大変じゃないですか?」
ルー自身も強いみたいだけど、王子という立場上、外を出歩く時は王家が管理している護衛も連れているらしい。
だから、ウロウロするよりかは、1つの場所に落ち着いていた方が良いのかと思ったんだけど。
「これくらいいつもの事だし、気にしなくていい。暇な時は鬼ごっこしてるからな」
「え?」
「護衛の目から逃れられたら、俺の勝ちだ」
「ちょっと、護衛の人が気の毒になってきました」
護衛対象者に逃げられるなんてどうなの。
無駄な体力を使うだけの様な…。
「追手から逃げる時には役立つと思うんだけどな」
「…そう言われてみればそうですね」
納得するところじゃないのかもしれないけれど納得してしまった。
食事を終えて、少しゆっくりしてから店を出て、ウインドウショッピングをしながら、大通りを歩く。
もしかして、これってデートなんじゃないかしら?
タントスと一緒の時は手を繋いだりしたけれど、ルーの場合は…ないわよね。
人前でそういうの好きそうな感じでもないし、何より、私達はまだ婚約者ではない。
お試し期間終了までまだ日にちはあるけれど、もう承諾してしまおうかしら?
ああ、でも、お父様達に相談はしないといけないわよね。
「…なんか、ごめんな。こういうのも初めてで、どうしたらいいかわかんなくて、その、あれだ。欲しい物があるなら買うぞ?」
「だ、大丈夫です! それに、昨日も今日も飲食代を私の分まで支払って下さいましたし!」
結局、昨日、カウンターに置いたお金も返されてしまったし、さっきのお店の代金も払ってもらってしまったから、首を横に振ると、ルーは苦笑する。
「なんかプレゼントをするくらいしか思い浮かばなくてごめんな。そういえば、君は今までどうしてたんだ? って、ああ。昔の男の話を聞くのは良くないよな。えーと」
そこまで言ったところで、ルーが言葉を止めた。
その理由はわかる。
私達の背後に良からぬ集団が近付いてきていたから。
「昨日のリベンジでしょうか」
立ち止まって、ルーと一緒に後ろを振り返る。
「わからん。とにかく俺が相手をするから君は下がってろ」
「でも、私に用事がある様ですし」
「いいから」
困った顔をして言われたので、大人しくする事に決めた。
だって、今日は昨日とは違って、ヒザ下丈とはいえ、ドレスを着ているので、少し動きづらいし。
「そっちの女に用事があるんだ。お前は引っ込んでろ」
ガラの悪そうな男達が十人程近付いてきて、私達より数メートル離れたところで足を止めた。
それと同時に、ルーの護衛の騎士らしき人達が彼らの横と背後に回った。
「そう言われると引っ込みたくなくなるんだよな」
「女の前だからってカッコつけようとすんなよ!」
体格の良い男がルーに向かって手を伸ばすと、ルーはその手をひらりとかわして前に出ると、伸ばしてきた男の腕を掴み、ひじを逆に折り曲げた。
ゴキッという鈍い音と悲鳴。
けれど、すぐにその悲鳴はルーによって止められる。
「うるせぇな。キャンキャンわめくな」
腕をおさえて前かがみになった男の頬に肘をいれて、男の身体がふらついたところで、中段蹴りを横腹に一発。
力があるせいか、大柄な男の身体は少し横に飛ばされて、地面に崩れ落ちた。
それを見た他の男達がルーに向かっていくけれど、ナイフを持っている男に対しては手刀で手の甲を叩いて、力を無くさせ、ナイフを手から落とさせてから顔面に拳を一発いれたあと、前蹴りして他の男の身体にぶつけさせた。
す、素敵!
カッコ良すぎる!
「おい!」
「リアラ様!」
ルーと騎士さんの声が聞こえたと同時に、私の目の前に立つ男がいた。
しまった。
離れすぎてしまったみたい。
せっかく、ルーのカッコ良いところを見て、良い気分だったのに!!
「一緒に来」
「邪魔なんだけどっ!」
ルーが見えないじゃない!
話している途中で、男の顎に掌打を入れる。
私の力じゃあまりダメージがなく、仰け反っただけだったので、男の足と足の間に自分の片足を入れ、男の右足首をはらい、バランスを崩させてから、ガードされるのを見越して、顔めがけて横蹴りを一発入れる。
案の定、腕でガードされたけれど、ガードが下がったのを見計らって、もう一回、顔をめがけて今度は後ろ回し蹴りをお見舞いした。
と同時に、男の後ろから私と逆の方向から蹴りが入り、私の蹴りとはさまれる形になり、顔面を強打した男は地面に崩れ落ちた。
「大丈夫か!?」
男の向こうにはルーがいて、どうやら、蹴りを入れてくれたのはルーだったらしい。
ちょっと待って!?
今のってもしかして、2人の初めての共同作業!?
色気のある話をしろと言われても、私だって大した経験はないし、ルーなんてもっとなさそう。
だから、どうすれば良いか困っていると、ルーが苦笑して言う。
「とりあえず店を出て歩かないか? あまりにもここは会話を聞かれすぎてる」
「そうですね。でも、護衛の人は大変じゃないですか?」
ルー自身も強いみたいだけど、王子という立場上、外を出歩く時は王家が管理している護衛も連れているらしい。
だから、ウロウロするよりかは、1つの場所に落ち着いていた方が良いのかと思ったんだけど。
「これくらいいつもの事だし、気にしなくていい。暇な時は鬼ごっこしてるからな」
「え?」
「護衛の目から逃れられたら、俺の勝ちだ」
「ちょっと、護衛の人が気の毒になってきました」
護衛対象者に逃げられるなんてどうなの。
無駄な体力を使うだけの様な…。
「追手から逃げる時には役立つと思うんだけどな」
「…そう言われてみればそうですね」
納得するところじゃないのかもしれないけれど納得してしまった。
食事を終えて、少しゆっくりしてから店を出て、ウインドウショッピングをしながら、大通りを歩く。
もしかして、これってデートなんじゃないかしら?
タントスと一緒の時は手を繋いだりしたけれど、ルーの場合は…ないわよね。
人前でそういうの好きそうな感じでもないし、何より、私達はまだ婚約者ではない。
お試し期間終了までまだ日にちはあるけれど、もう承諾してしまおうかしら?
ああ、でも、お父様達に相談はしないといけないわよね。
「…なんか、ごめんな。こういうのも初めてで、どうしたらいいかわかんなくて、その、あれだ。欲しい物があるなら買うぞ?」
「だ、大丈夫です! それに、昨日も今日も飲食代を私の分まで支払って下さいましたし!」
結局、昨日、カウンターに置いたお金も返されてしまったし、さっきのお店の代金も払ってもらってしまったから、首を横に振ると、ルーは苦笑する。
「なんかプレゼントをするくらいしか思い浮かばなくてごめんな。そういえば、君は今までどうしてたんだ? って、ああ。昔の男の話を聞くのは良くないよな。えーと」
そこまで言ったところで、ルーが言葉を止めた。
その理由はわかる。
私達の背後に良からぬ集団が近付いてきていたから。
「昨日のリベンジでしょうか」
立ち止まって、ルーと一緒に後ろを振り返る。
「わからん。とにかく俺が相手をするから君は下がってろ」
「でも、私に用事がある様ですし」
「いいから」
困った顔をして言われたので、大人しくする事に決めた。
だって、今日は昨日とは違って、ヒザ下丈とはいえ、ドレスを着ているので、少し動きづらいし。
「そっちの女に用事があるんだ。お前は引っ込んでろ」
ガラの悪そうな男達が十人程近付いてきて、私達より数メートル離れたところで足を止めた。
それと同時に、ルーの護衛の騎士らしき人達が彼らの横と背後に回った。
「そう言われると引っ込みたくなくなるんだよな」
「女の前だからってカッコつけようとすんなよ!」
体格の良い男がルーに向かって手を伸ばすと、ルーはその手をひらりとかわして前に出ると、伸ばしてきた男の腕を掴み、ひじを逆に折り曲げた。
ゴキッという鈍い音と悲鳴。
けれど、すぐにその悲鳴はルーによって止められる。
「うるせぇな。キャンキャンわめくな」
腕をおさえて前かがみになった男の頬に肘をいれて、男の身体がふらついたところで、中段蹴りを横腹に一発。
力があるせいか、大柄な男の身体は少し横に飛ばされて、地面に崩れ落ちた。
それを見た他の男達がルーに向かっていくけれど、ナイフを持っている男に対しては手刀で手の甲を叩いて、力を無くさせ、ナイフを手から落とさせてから顔面に拳を一発いれたあと、前蹴りして他の男の身体にぶつけさせた。
す、素敵!
カッコ良すぎる!
「おい!」
「リアラ様!」
ルーと騎士さんの声が聞こえたと同時に、私の目の前に立つ男がいた。
しまった。
離れすぎてしまったみたい。
せっかく、ルーのカッコ良いところを見て、良い気分だったのに!!
「一緒に来」
「邪魔なんだけどっ!」
ルーが見えないじゃない!
話している途中で、男の顎に掌打を入れる。
私の力じゃあまりダメージがなく、仰け反っただけだったので、男の足と足の間に自分の片足を入れ、男の右足首をはらい、バランスを崩させてから、ガードされるのを見越して、顔めがけて横蹴りを一発入れる。
案の定、腕でガードされたけれど、ガードが下がったのを見計らって、もう一回、顔をめがけて今度は後ろ回し蹴りをお見舞いした。
と同時に、男の後ろから私と逆の方向から蹴りが入り、私の蹴りとはさまれる形になり、顔面を強打した男は地面に崩れ落ちた。
「大丈夫か!?」
男の向こうにはルーがいて、どうやら、蹴りを入れてくれたのはルーだったらしい。
ちょっと待って!?
今のってもしかして、2人の初めての共同作業!?
59
お気に入りに追加
2,207
あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者取り替えっこしてあげる。子爵令息より王太子の方がいいでしょ?
との
恋愛
「取り替えっこしようね」
またいつもの妹の我儘がはじまりました。
自分勝手な妹にも家族の横暴にも、もう我慢の限界!
逃げ出した先で素敵な出会いを経験しました。
幸せ掴みます。
筋肉ムキムキのオネエ様から一言・・。
「可愛いは正義なの!」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済み
R15は念の為・・

【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました

【完結】出逢ったのはいつですか? えっ? それは幼馴染とは言いません。
との
恋愛
「リリアーナさーん、読み終わりましたぁ?」
今日も元気良く教室に駆け込んでくるお花畑ヒロインに溜息を吐く仲良し四人組。
ただの婚約破棄騒動かと思いきや・・。
「リリアーナ、だからごめんってば」
「マカロンとアップルパイで手を打ちますわ」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
あなたの愛が正しいわ
来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~
夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。
一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。
「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。
【完結】返してください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。
私が愛されていない事は感じていた。
だけど、信じたくなかった。
いつかは私を見てくれると思っていた。
妹は私から全てを奪って行った。
なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、
母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。
もういい。
もう諦めた。
貴方達は私の家族じゃない。
私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。
だから、、、、
私に全てを、、、
返してください。

【完結】仕事を放棄した結果、私は幸せになれました。
キーノ
恋愛
わたくしは乙女ゲームの悪役令嬢みたいですわ。悪役令嬢に転生したと言った方がラノベあるある的に良いでしょうか。
ですが、ゲーム内でヒロイン達が語られる用な悪事を働いたことなどありません。王子に嫉妬? そのような無駄な事に時間をかまけている時間はわたくしにはありませんでしたのに。
だってわたくし、週4回は王太子妃教育に王妃教育、週3回で王妃様とのお茶会。お茶会や教育が終わったら王太子妃の公務、王子殿下がサボっているお陰で回ってくる公務に、王子の管轄する領の嘆願書の整頓やら収益やら税の計算やらで、わたくし、ちっとも自由時間がありませんでしたのよ。
こんなに忙しい私が、最後は冤罪にて処刑ですって? 学園にすら通えて無いのに、すべてのルートで私は処刑されてしまうと解った今、わたくしは全ての仕事を放棄して、冤罪で処刑されるその時まで、押しと穏やかに過ごしますわ。
※さくっと読める悪役令嬢モノです。
2月14~15日に全話、投稿完了。
感想、誤字、脱字など受け付けます。
沢山のエールにお気に入り登録、ありがとうございます。現在執筆中の新作の励みになります。初期作品のほうも見てもらえて感無量です!
恋愛23位にまで上げて頂き、感謝いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる