待つわけないでしょ。新しい婚約者と幸せになります!

風見ゆうみ

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11  ちょっとキレる

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 その後、残っていたルーの部下の人から「もっと色気のある話をしろ」と私まで言われてしまった。
 色気のある話をしろと言われても、私だって大した経験はないし、ルーなんてもっとなさそう。
 だから、どうすれば良いか困っていると、ルーが苦笑して言う。

「とりあえず店を出て歩かないか? あまりにもここは会話を聞かれすぎてる」
「そうですね。でも、護衛の人は大変じゃないですか?」

 ルー自身も強いみたいだけど、王子という立場上、外を出歩く時は王家が管理している護衛も連れているらしい。
 だから、ウロウロするよりかは、1つの場所に落ち着いていた方が良いのかと思ったんだけど。

「これくらいいつもの事だし、気にしなくていい。暇な時は鬼ごっこしてるからな」
「え?」
「護衛の目から逃れられたら、俺の勝ちだ」
「ちょっと、護衛の人が気の毒になってきました」

 護衛対象者に逃げられるなんてどうなの。
 無駄な体力を使うだけの様な…。

「追手から逃げる時には役立つと思うんだけどな」
「…そう言われてみればそうですね」

 納得するところじゃないのかもしれないけれど納得してしまった。
 食事を終えて、少しゆっくりしてから店を出て、ウインドウショッピングをしながら、大通りを歩く。

 もしかして、これってデートなんじゃないかしら?
 タントスと一緒の時は手を繋いだりしたけれど、ルーの場合は…ないわよね。
 人前でそういうの好きそうな感じでもないし、何より、私達はまだ婚約者ではない。
 お試し期間終了までまだ日にちはあるけれど、もう承諾してしまおうかしら?
 ああ、でも、お父様達に相談はしないといけないわよね。

「…なんか、ごめんな。こういうのも初めてで、どうしたらいいかわかんなくて、その、あれだ。欲しい物があるなら買うぞ?」
「だ、大丈夫です! それに、昨日も今日も飲食代を私の分まで支払って下さいましたし!」

 結局、昨日、カウンターに置いたお金も返されてしまったし、さっきのお店の代金も払ってもらってしまったから、首を横に振ると、ルーは苦笑する。

「なんかプレゼントをするくらいしか思い浮かばなくてごめんな。そういえば、君は今までどうしてたんだ? って、ああ。昔の男の話を聞くのは良くないよな。えーと」

 そこまで言ったところで、ルーが言葉を止めた。
 その理由はわかる。
 私達の背後に良からぬ集団が近付いてきていたから。

「昨日のリベンジでしょうか」

 立ち止まって、ルーと一緒に後ろを振り返る。

「わからん。とにかく俺が相手をするから君は下がってろ」
「でも、私に用事がある様ですし」
「いいから」

 困った顔をして言われたので、大人しくする事に決めた。
 だって、今日は昨日とは違って、ヒザ下丈とはいえ、ドレスを着ているので、少し動きづらいし。

「そっちの女に用事があるんだ。お前は引っ込んでろ」

 ガラの悪そうな男達が十人程近付いてきて、私達より数メートル離れたところで足を止めた。
 それと同時に、ルーの護衛の騎士らしき人達が彼らの横と背後に回った。

「そう言われると引っ込みたくなくなるんだよな」
「女の前だからってカッコつけようとすんなよ!」

 体格の良い男がルーに向かって手を伸ばすと、ルーはその手をひらりとかわして前に出ると、伸ばしてきた男の腕を掴み、ひじを逆に折り曲げた。
 ゴキッという鈍い音と悲鳴。
 けれど、すぐにその悲鳴はルーによって止められる。

「うるせぇな。キャンキャンわめくな」

 腕をおさえて前かがみになった男の頬に肘をいれて、男の身体がふらついたところで、中段蹴りを横腹に一発。
 力があるせいか、大柄な男の身体は少し横に飛ばされて、地面に崩れ落ちた。
 それを見た他の男達がルーに向かっていくけれど、ナイフを持っている男に対しては手刀で手の甲を叩いて、力を無くさせ、ナイフを手から落とさせてから顔面に拳を一発いれたあと、前蹴りして他の男の身体にぶつけさせた。
 
 す、素敵!
 カッコ良すぎる!

「おい!」
「リアラ様!」

 ルーと騎士さんの声が聞こえたと同時に、私の目の前に立つ男がいた。
 しまった。
 離れすぎてしまったみたい。
 せっかく、ルーのカッコ良いところを見て、良い気分だったのに!!

「一緒に来」
「邪魔なんだけどっ!」

 ルーが見えないじゃない!

 話している途中で、男の顎に掌打を入れる。
 私の力じゃあまりダメージがなく、仰け反っただけだったので、男の足と足の間に自分の片足を入れ、男の右足首をはらい、バランスを崩させてから、ガードされるのを見越して、顔めがけて横蹴りを一発入れる。
 案の定、腕でガードされたけれど、ガードが下がったのを見計らって、もう一回、顔をめがけて今度は後ろ回し蹴りをお見舞いした。
 と同時に、男の後ろから私と逆の方向から蹴りが入り、私の蹴りとはさまれる形になり、顔面を強打した男は地面に崩れ落ちた。

「大丈夫か!?」

 男の向こうにはルーがいて、どうやら、蹴りを入れてくれたのはルーだったらしい。

 ちょっと待って!?
 今のってもしかして、2人の初めての共同作業!?
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