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4 第5王子と話をする 1
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あとは当人同士で話をしたら良いと、お父様に言われてしまい、私は殿下から向かって、ななめ左前にある3人がけのソファーに座って、ルーザー殿下を見た。
すると、彼が苦笑して口を開いた。
「突然の申し出で悪いとは思ってる。だけど、君が婚約者を探してるって聞いて、嫌じゃなければ、俺とはどうかな、って思ったんだ」
「悪いだなんて、そんな事はありません。こちらとしてはありがたい申し出ですから。ただ、なぜ、私なのかとは思いますけど。殿下にならいくらでも妻になりたい女性はいらっしゃるんじゃないかと思いまして」
素直に気持ちを伝えると、目にかかった前髪をかきあげてから、殿下が言う。
「まあ、そうだな。理由として、まずは、婚約破棄された者同士だという事」
「そうですね…」
遠い目をすると、殿下が笑う。
「もちろん、それだけじゃなくて、君は、乗馬も出来るし、馬に乗りながら弓が使えると聞いた」
「それほど上手ではありませんけど」
「あと、接近戦に自信があるんだろ?」
「プロにはかないません。その辺のゴロツキくらいになら、勝てると思いますが」
この事に関しては、貴族の令嬢らしくないと散々言われてきた。
お父様とお兄様は、私が小さい頃から戦地に赴いていた。
過去に一度だけ、2人が留守中に、敵国の手先に屋敷に忍び込まれ、お母様と私が命を狙われた事があった。
護衛のおかげで事なきを得たけれど、その時に思った。
お父様達が出かけている間、私達の事で心配しなくて良いように、私が強くなり、自分自身とお母様を守ろうと。
それから、色んなものに挑戦し、自分に合う戦い方を模索した。
最終的に護身術をメインに考えて、接近戦に強くなろうと決めた。
剣は苦手だけれど、ナイフはまだマシといったところだったから。
「そういう令嬢は聞いた事がないんだ。君以外は」
「いたとしても、あまり表に出そうとはしないかと」
「君はパーティー会場で派手にやったんだろ?」
なぜか、殿下は嬉しそうな笑みを浮かべた。
面白い令嬢を見つけた、といったところかしら。
「それに関しましては、貴族の令嬢としてはあるまじき行為だと反省しております」
「しなくて良いだろ」
ケロッとした顔をして、殿下が言う。
雰囲気がいきなり変わった気がしてきょとんとすると、彼は苦笑した。
「悪い。丁寧な話し方は苦手なんだ」
「お気になさらないで下さい。普段の話し方でお話いただければと思います」
「君もそうかたくならなくていい。たしか、ふざけんな、って言ったらしいな」
「……そんなに詳しく情報が出回ってるんですか」
「会場に俺の悪友がいてな、それはもう楽しそうに話してくれた」
人が婚約破棄された話を嬉しそうに話したんだろうか。
それとも、暴言の部分を?
気になったけれど、今はそれどころではない。
「あの、私との婚約を希望していただいた理由はそれなんですか?」
「いや、それだけじゃない。君なら、俺の外見を気にしなさそうだし、それに君は面白そうだから」
と、そこまで言って、殿下は慌てて口をおさえた。
「悪い。面白いという言い方は駄目だよな」
「かまいませんよ。あの場にいた人達のほとんどは、同情と好奇の目で見てましたから」
「俺が婚約破棄を受け入れたから、あんな事になったのだし、その点については謝る」
「ビアンカ様は表向きには、私の婚約者に襲われたという様に言っているかもしれませんが、どうせ、私の元婚約者を誘惑したんですよ。だから悪いのはビアンカ様です。殿下は悪くありません。あ、あと、私の元婚約者も悪いです」
付け加えると、殿下は笑う。
よく笑う人だし、笑顔が可愛い。
噂とはイメージが違う。
それに、女性嫌いだって聞いてたけど、そんな感じではない?
「あの殿下、失礼な質問をしても?」
「答えたくなかったら答えなくても良いなら」
「もちろんです。これは噂なんですけど、殿下は女性がお嫌いなんですよね?」
「……」
答えたくない質問だったのか、殿下が眉をひそめた。
やばいかしら。
そう思って、質問を撤回しようとすると、答えを教えてくれた。
「…普段は女性と関わる事がないから、どう反応したら良いかわからなくて避けてるのは、ある」
恥ずかしそうに口をおさえて、顔を背ける殿下。
もしかして、避けてたから、それが冷たい対応だと思われて女性嫌いだと言われる様になったって事?
「ビアンカともほとんど話した事がなかった。元々、彼女は俺を嫌がっていたしな」
「嫌がっていた?」
「王族なのに、肌が焼けている事が気に入らなかったらしい」
はあ?
何を考えてるのよ、あの女は!
すると、彼が苦笑して口を開いた。
「突然の申し出で悪いとは思ってる。だけど、君が婚約者を探してるって聞いて、嫌じゃなければ、俺とはどうかな、って思ったんだ」
「悪いだなんて、そんな事はありません。こちらとしてはありがたい申し出ですから。ただ、なぜ、私なのかとは思いますけど。殿下にならいくらでも妻になりたい女性はいらっしゃるんじゃないかと思いまして」
素直に気持ちを伝えると、目にかかった前髪をかきあげてから、殿下が言う。
「まあ、そうだな。理由として、まずは、婚約破棄された者同士だという事」
「そうですね…」
遠い目をすると、殿下が笑う。
「もちろん、それだけじゃなくて、君は、乗馬も出来るし、馬に乗りながら弓が使えると聞いた」
「それほど上手ではありませんけど」
「あと、接近戦に自信があるんだろ?」
「プロにはかないません。その辺のゴロツキくらいになら、勝てると思いますが」
この事に関しては、貴族の令嬢らしくないと散々言われてきた。
お父様とお兄様は、私が小さい頃から戦地に赴いていた。
過去に一度だけ、2人が留守中に、敵国の手先に屋敷に忍び込まれ、お母様と私が命を狙われた事があった。
護衛のおかげで事なきを得たけれど、その時に思った。
お父様達が出かけている間、私達の事で心配しなくて良いように、私が強くなり、自分自身とお母様を守ろうと。
それから、色んなものに挑戦し、自分に合う戦い方を模索した。
最終的に護身術をメインに考えて、接近戦に強くなろうと決めた。
剣は苦手だけれど、ナイフはまだマシといったところだったから。
「そういう令嬢は聞いた事がないんだ。君以外は」
「いたとしても、あまり表に出そうとはしないかと」
「君はパーティー会場で派手にやったんだろ?」
なぜか、殿下は嬉しそうな笑みを浮かべた。
面白い令嬢を見つけた、といったところかしら。
「それに関しましては、貴族の令嬢としてはあるまじき行為だと反省しております」
「しなくて良いだろ」
ケロッとした顔をして、殿下が言う。
雰囲気がいきなり変わった気がしてきょとんとすると、彼は苦笑した。
「悪い。丁寧な話し方は苦手なんだ」
「お気になさらないで下さい。普段の話し方でお話いただければと思います」
「君もそうかたくならなくていい。たしか、ふざけんな、って言ったらしいな」
「……そんなに詳しく情報が出回ってるんですか」
「会場に俺の悪友がいてな、それはもう楽しそうに話してくれた」
人が婚約破棄された話を嬉しそうに話したんだろうか。
それとも、暴言の部分を?
気になったけれど、今はそれどころではない。
「あの、私との婚約を希望していただいた理由はそれなんですか?」
「いや、それだけじゃない。君なら、俺の外見を気にしなさそうだし、それに君は面白そうだから」
と、そこまで言って、殿下は慌てて口をおさえた。
「悪い。面白いという言い方は駄目だよな」
「かまいませんよ。あの場にいた人達のほとんどは、同情と好奇の目で見てましたから」
「俺が婚約破棄を受け入れたから、あんな事になったのだし、その点については謝る」
「ビアンカ様は表向きには、私の婚約者に襲われたという様に言っているかもしれませんが、どうせ、私の元婚約者を誘惑したんですよ。だから悪いのはビアンカ様です。殿下は悪くありません。あ、あと、私の元婚約者も悪いです」
付け加えると、殿下は笑う。
よく笑う人だし、笑顔が可愛い。
噂とはイメージが違う。
それに、女性嫌いだって聞いてたけど、そんな感じではない?
「あの殿下、失礼な質問をしても?」
「答えたくなかったら答えなくても良いなら」
「もちろんです。これは噂なんですけど、殿下は女性がお嫌いなんですよね?」
「……」
答えたくない質問だったのか、殿下が眉をひそめた。
やばいかしら。
そう思って、質問を撤回しようとすると、答えを教えてくれた。
「…普段は女性と関わる事がないから、どう反応したら良いかわからなくて避けてるのは、ある」
恥ずかしそうに口をおさえて、顔を背ける殿下。
もしかして、避けてたから、それが冷たい対応だと思われて女性嫌いだと言われる様になったって事?
「ビアンカともほとんど話した事がなかった。元々、彼女は俺を嫌がっていたしな」
「嫌がっていた?」
「王族なのに、肌が焼けている事が気に入らなかったらしい」
はあ?
何を考えてるのよ、あの女は!
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