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「大好きだよ、リアラ」
「私もよ、タントス」
庭園のベンチに身を寄せ合って座り、愛をささやきあっていた、この時は幸せの絶頂だった。
まさか、この数分後、あんな事が起きるだなんて、思ってもいなかったから。
エッジホール公爵家主催のパーティーに、辺境伯を父に持つ私、リアラ・フセラブルは、婚約者である、タントス・ミゲル伯爵令息と共に出席していた。
タントスは茶色の短髪で、いつもは前髪をおろしているけれど、今日はパーティーだからか、前髪はおろしておらず、いつもと雰囲気が違ってドキドキしてしまう。
「リアラ、お願いがあるんだけど聞いてくれる?」
「どうしたの、いきなり」
「これから、君を悲しませないといけない事があるんだ」
「どういう事?」
なぜわざわざ悲しませる事をしようとしてくるのか、意味がわからず聞き返すと、タントスは茶色の瞳を揺らせて、私の黒の瞳を見つめる。
「1番愛しているのは君だ。だから、今から何が起こっても僕を信じて、僕が迎えに行くのを待っていてくれ」
「迎えに行くって、どういう事? それに起こる内容にもよるけれど、信じられる範囲なら信じるわ」
彼は流れてきた私の長い黒髪を手で後ろにはらってくれてから微笑む。
「どんな結果になっても、君なら僕を待っていてくれると信じてるよ」
嫌な予感がする。
彼がこんな意味ありげな発言をした事は今までにない。
だからこそ、無条件で待っているや信じるだなんて言えなかった。
「わからないわよ、私はあまり気の長い方ではないから」
「そんな悲しいことを言わないでくれよ。僕だって本当はそんな事をしたくないんだ」
「……」
答えを返さないままでいると、彼は私を抱き寄せて言う。
「君は僕を愛してくれているよね?」
「え、ええ」
たぶん。
と言いかけてやめた。
まだ、彼が何をしようとしているのかわからない。
もしかしたら、そんな事を言って、嬉しいサプライズを仕掛けてくれているかもしれないし?
ただ、この時の私は、婚約者といる事で浮かれていたし、基本、ポジティブ思考なので、まあ、どうにかなるか、などと考えていた。
けれど、それが甘い考えだった事が、すぐにわかる事になる。
2人でパーティー会場に戻ると、タントスは大きく息を吐いた。
それと同時に本日の主催であるエッジホール公爵家の令嬢がこちらに近付いてきた。
嫌な予感がする。
今すぐに逃げた方が良いと、頭の中で警鐘が鳴る。
エッジホール公爵令嬢は私を小馬鹿にする様な目で見たあと、タントスの右隣に立っている私の反対側である左隣に立ち、彼の腕に自分の腕をからめ、頬を寄せた。
は?
ちょっと待って。
どういう事?
「ごめんね、リアラ」
タントスは悲しげに微笑むと、からめていた私の腕を優しくほどくと、前を向いて叫んだ。
「皆さん、聞いて下さい」
何度か叫んだけれど、ザワザワしている会場内では、彼の声は通らなかった。
すると、しびれを切らしたエッジホール公爵令嬢が声を上げた。
「皆さん、お静かにお願いします!」
彼女の言葉を聞いて、会場内は静まり返る。
ウェーブのかかった腰まである長い金色の髪に、同じ色の瞳、透き通るような白い肌に、鼻筋のとおった綺麗な顔立ちのエッジホール公爵令嬢は、クセのある長い黒髪をシニヨンにして、小麦色の肌を持ち、決して美人とは言えない私を見て、なぜか鼻で笑った。
その時、私は嫌な予感が現実になる事を悟った。
静かになった会場内を見渡しながら、タントスは口を開く。
「僕、タントス・ミゲルはここにいる、リアラ・フセラブルとの婚約を破棄し、公爵令嬢であるビアンカ・エッジホールとの婚約を宣言します」
はあ?
何言ってんの?
それになんで、こんな人の多いところで宣言する必要があるのよ!?
「あなたの婚約者、私がもらうわ」
エッジホール公爵令嬢、いや、ビアンカが私を見て、それはもう楽しそうに笑った。
「私もよ、タントス」
庭園のベンチに身を寄せ合って座り、愛をささやきあっていた、この時は幸せの絶頂だった。
まさか、この数分後、あんな事が起きるだなんて、思ってもいなかったから。
エッジホール公爵家主催のパーティーに、辺境伯を父に持つ私、リアラ・フセラブルは、婚約者である、タントス・ミゲル伯爵令息と共に出席していた。
タントスは茶色の短髪で、いつもは前髪をおろしているけれど、今日はパーティーだからか、前髪はおろしておらず、いつもと雰囲気が違ってドキドキしてしまう。
「リアラ、お願いがあるんだけど聞いてくれる?」
「どうしたの、いきなり」
「これから、君を悲しませないといけない事があるんだ」
「どういう事?」
なぜわざわざ悲しませる事をしようとしてくるのか、意味がわからず聞き返すと、タントスは茶色の瞳を揺らせて、私の黒の瞳を見つめる。
「1番愛しているのは君だ。だから、今から何が起こっても僕を信じて、僕が迎えに行くのを待っていてくれ」
「迎えに行くって、どういう事? それに起こる内容にもよるけれど、信じられる範囲なら信じるわ」
彼は流れてきた私の長い黒髪を手で後ろにはらってくれてから微笑む。
「どんな結果になっても、君なら僕を待っていてくれると信じてるよ」
嫌な予感がする。
彼がこんな意味ありげな発言をした事は今までにない。
だからこそ、無条件で待っているや信じるだなんて言えなかった。
「わからないわよ、私はあまり気の長い方ではないから」
「そんな悲しいことを言わないでくれよ。僕だって本当はそんな事をしたくないんだ」
「……」
答えを返さないままでいると、彼は私を抱き寄せて言う。
「君は僕を愛してくれているよね?」
「え、ええ」
たぶん。
と言いかけてやめた。
まだ、彼が何をしようとしているのかわからない。
もしかしたら、そんな事を言って、嬉しいサプライズを仕掛けてくれているかもしれないし?
ただ、この時の私は、婚約者といる事で浮かれていたし、基本、ポジティブ思考なので、まあ、どうにかなるか、などと考えていた。
けれど、それが甘い考えだった事が、すぐにわかる事になる。
2人でパーティー会場に戻ると、タントスは大きく息を吐いた。
それと同時に本日の主催であるエッジホール公爵家の令嬢がこちらに近付いてきた。
嫌な予感がする。
今すぐに逃げた方が良いと、頭の中で警鐘が鳴る。
エッジホール公爵令嬢は私を小馬鹿にする様な目で見たあと、タントスの右隣に立っている私の反対側である左隣に立ち、彼の腕に自分の腕をからめ、頬を寄せた。
は?
ちょっと待って。
どういう事?
「ごめんね、リアラ」
タントスは悲しげに微笑むと、からめていた私の腕を優しくほどくと、前を向いて叫んだ。
「皆さん、聞いて下さい」
何度か叫んだけれど、ザワザワしている会場内では、彼の声は通らなかった。
すると、しびれを切らしたエッジホール公爵令嬢が声を上げた。
「皆さん、お静かにお願いします!」
彼女の言葉を聞いて、会場内は静まり返る。
ウェーブのかかった腰まである長い金色の髪に、同じ色の瞳、透き通るような白い肌に、鼻筋のとおった綺麗な顔立ちのエッジホール公爵令嬢は、クセのある長い黒髪をシニヨンにして、小麦色の肌を持ち、決して美人とは言えない私を見て、なぜか鼻で笑った。
その時、私は嫌な予感が現実になる事を悟った。
静かになった会場内を見渡しながら、タントスは口を開く。
「僕、タントス・ミゲルはここにいる、リアラ・フセラブルとの婚約を破棄し、公爵令嬢であるビアンカ・エッジホールとの婚約を宣言します」
はあ?
何言ってんの?
それになんで、こんな人の多いところで宣言する必要があるのよ!?
「あなたの婚約者、私がもらうわ」
エッジホール公爵令嬢、いや、ビアンカが私を見て、それはもう楽しそうに笑った。
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