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第一部

25 さすがレイティア様

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 必殺技が上手くできたか私が確認する前に、エル様は最低国王をどこかに転移させてしまった。
 私が口を開こうとすると、エル様が大きく息を吐く。

「ヒットはしてたが、浅かったな。それにあの男は痛みにも強いらしい」

 どうやら、エル様は私を助けてくれたみたいだった。

「失敗して申し訳ございません。 それから、助けていただきありがとうございます。ところで、カラヤ国王をどこに飛ばしたんですか?」
「レティシア嬢と話をつけていた場所だよ」

 エル様はそう答えてくれたけれど、私はその場所を聞いていないから、どこかわかるはずもない。
 すると、ジェド様が持っていた水晶玉をエル様に手渡した。

 エル様はジェド様に礼を言って受け取ると、両手で水晶玉を抱えて、私の目の前に持ってきた。
 水晶玉の中には、檻の中に入れられている最低国王と、その檻の前で先代の王妃陛下とお茶を飲んでいるレイティア様の姿が見えた。

 わざわざ、どこかの牢屋のところまで先代の王妃陛下を連れて行き、ティーテーブルに椅子、それから姿見を運んでもらったようだった。

「レイティアは相変わらず好き勝手していますね」

 ジェド様が水晶玉の向こうのレイティア様を見て言う。
 私としては、さすがレイティア様だと思ってしまった。

 先代の王妃陛下は檻の向こうで暴れている息子を見て、どこか悲しげな顔をされている。
 レイティア様はそんな先代の王妃陛下とは打って変わって、最低国王を楽しそうに眺めているといった感じだった。

「絶対に許さないぞ! ここから出せ! 蹴ったのは誰だ! 殺してやる!」
「そんな事を言われるようでしたら、一生、そこから出せませんわ」

 レイティア様は鼻で笑うと、檻を掴んで叫んでいる最低国王を見て、言葉を続ける。

「あなたはこちらの準備が整うまで、そこで大人しくしてもらいますわね。あ、それから、レフェクト王国が破綻しそうだという事で、多くの国民が逃げていっておりますわよ。私とあなたのお母様も、同じようにこの国を出ますのでよろしくお願い致しますわ」
「な、何だと!? それに母上まで連れて行かなくても良いだろう!」
「レイティアさんはとても優しくしてくださるの。イエラ王国に行ったら、美味しいものを食べさせてれると言うのよ。あなたも早く反省して許してもらうようにしなさいね」

 先代の王妃陛下はマイペースな人らしく檻の中で呆然としている息子に向かって「ほほほ」と笑った。
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