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第一部
23 必殺技をかけるんですか?
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その後、留置所まで連れて行かれた私は、反省する気もない上に、私に嫌な態度を取ってくる男性たち一人ずつに必殺技をお見舞いしてあげた。
何人かが病院送りになってしまったけれど、私としてはどの部分を狙った方が良いのか、どうすれば自分の足に負担がこないのかなど確認することができて良かった。
エル様は何か遭ってはいけないからと付き添ってくれていた。
でも、私が必殺技を習得しようとして蹴りを繰り出すたびに、辛そうな顔をするので何とも言えない気分になった。
もちろん、男性だけではなく女性にもお仕置きをした。
女性にはネチネチと説教を続けたところ、最初はかなり嫌がられただけだった。
でも、最終的にはノイローゼになりそうだからやめてほしいと泣いてお願いされた。
女性に時間がかかってしまった為、色々と終わった頃には、もう昼近くなっていた。
「朝早くから来ておいて良かったな」
「本当ですね。あの、運動したのでお腹が減りました。何か食べて帰りませんか?」
ジェド様は水晶玉越しでレイティア様との会話を終えた後は、昼過ぎまで宿屋に戻らないと言って別行動をしていたので、エル様だけを誘ってみた。
「そうだな。明日こそはこの街を出る予定だから、心残りがないように名物でも食べて行くか」
「名物があるんですか? それは楽しみです!」
結局、昨日当たったお金はガメツイさんに渡さなくて済んだので、今も手元にある。
これでエル様に美味しいものでも食べてもらいましょう。
そう思って、この街で一番高いというレストランに行ってみた。
この街の名物の食材を料理してくれるというので、ちょうど良かった。
お昼時だったけれど、お値段がするせいか、30人くらい入れそうな店内に人は数人しかおらず、並ばずにすんなりと入れた。
エル様は王子様だけれど、王子様の生活はしていない。
だから、毎日、平民と同じ硬いパンを食べている。
この国に来てからの私の食事は焼き立てのパンが多かったから、硬いパンを食べることはなかった。
興味本位で先日、エル様からパンを分けてもらったら一かじりしたパンを食べるだけで顎が痛くなってしまい、エル様には笑われてしまった。
それだけ、私は恵まれた環境にいたということがわかる。
出来れば、焼き立てじゃなくてもカチカチじゃないパンを、普通の家庭で食べられるようにしたい。
そうするにはどうすれば良いか考えたけど、私一人の力ではどうにもできないのよね。
多くの家庭はパンをまとめて作っているみたいだし、まずは硬くなる原因を調べないといけないわ。
温かくて柔らかいパンを食べながら考えていると、向かいに座るエル様が聞いてくる。
「どうした? 練習しすぎて疲れたのか?」
「いえ。今日のような練習を定期的に続けていけたら良いなと思うのですが」
「……困った奴だな」
エル様は食事をする手を止めて呆れた顔をした。
でも、すぐに何か思いついたのか、私に提案してくる。
「そうだ。色んな人間にやるんじゃなくて、レイティア嬢に協力してもらって、本番に備えての練習をしてみるか?」
「どういうことでしょう? ジェド様に必殺技をかけるんですか?」
「レイティア嬢に協力してもらうからってジェドを練習台にして良いわけないだろ」
エル様は小さく息を吐いたあと、口元に笑みを浮かべて教えてくれる。
「前に君が言っていたようにカラヤ国王をこっちに呼ぼう。まずは俺に注意を向けさせるから、君は後ろから回り込んで蹴るんだ」
「どうして、レイティア様に協力してもらうんです?」
「瞬間移動が使えるのはレイティア嬢だと思わせないといけないからだよ」
「わかりました。では、新たな街に着いてからでもよろしいでしょうか?」
「そうだな」
エル様は頷いて、食事を再開するので、私も食べ始める。
まずは手加減から始めて、少しずつ威力を上げていったら良いのかしら?
何人かが病院送りになってしまったけれど、私としてはどの部分を狙った方が良いのか、どうすれば自分の足に負担がこないのかなど確認することができて良かった。
エル様は何か遭ってはいけないからと付き添ってくれていた。
でも、私が必殺技を習得しようとして蹴りを繰り出すたびに、辛そうな顔をするので何とも言えない気分になった。
もちろん、男性だけではなく女性にもお仕置きをした。
女性にはネチネチと説教を続けたところ、最初はかなり嫌がられただけだった。
でも、最終的にはノイローゼになりそうだからやめてほしいと泣いてお願いされた。
女性に時間がかかってしまった為、色々と終わった頃には、もう昼近くなっていた。
「朝早くから来ておいて良かったな」
「本当ですね。あの、運動したのでお腹が減りました。何か食べて帰りませんか?」
ジェド様は水晶玉越しでレイティア様との会話を終えた後は、昼過ぎまで宿屋に戻らないと言って別行動をしていたので、エル様だけを誘ってみた。
「そうだな。明日こそはこの街を出る予定だから、心残りがないように名物でも食べて行くか」
「名物があるんですか? それは楽しみです!」
結局、昨日当たったお金はガメツイさんに渡さなくて済んだので、今も手元にある。
これでエル様に美味しいものでも食べてもらいましょう。
そう思って、この街で一番高いというレストランに行ってみた。
この街の名物の食材を料理してくれるというので、ちょうど良かった。
お昼時だったけれど、お値段がするせいか、30人くらい入れそうな店内に人は数人しかおらず、並ばずにすんなりと入れた。
エル様は王子様だけれど、王子様の生活はしていない。
だから、毎日、平民と同じ硬いパンを食べている。
この国に来てからの私の食事は焼き立てのパンが多かったから、硬いパンを食べることはなかった。
興味本位で先日、エル様からパンを分けてもらったら一かじりしたパンを食べるだけで顎が痛くなってしまい、エル様には笑われてしまった。
それだけ、私は恵まれた環境にいたということがわかる。
出来れば、焼き立てじゃなくてもカチカチじゃないパンを、普通の家庭で食べられるようにしたい。
そうするにはどうすれば良いか考えたけど、私一人の力ではどうにもできないのよね。
多くの家庭はパンをまとめて作っているみたいだし、まずは硬くなる原因を調べないといけないわ。
温かくて柔らかいパンを食べながら考えていると、向かいに座るエル様が聞いてくる。
「どうした? 練習しすぎて疲れたのか?」
「いえ。今日のような練習を定期的に続けていけたら良いなと思うのですが」
「……困った奴だな」
エル様は食事をする手を止めて呆れた顔をした。
でも、すぐに何か思いついたのか、私に提案してくる。
「そうだ。色んな人間にやるんじゃなくて、レイティア嬢に協力してもらって、本番に備えての練習をしてみるか?」
「どういうことでしょう? ジェド様に必殺技をかけるんですか?」
「レイティア嬢に協力してもらうからってジェドを練習台にして良いわけないだろ」
エル様は小さく息を吐いたあと、口元に笑みを浮かべて教えてくれる。
「前に君が言っていたようにカラヤ国王をこっちに呼ぼう。まずは俺に注意を向けさせるから、君は後ろから回り込んで蹴るんだ」
「どうして、レイティア様に協力してもらうんです?」
「瞬間移動が使えるのはレイティア嬢だと思わせないといけないからだよ」
「わかりました。では、新たな街に着いてからでもよろしいでしょうか?」
「そうだな」
エル様は頷いて、食事を再開するので、私も食べ始める。
まずは手加減から始めて、少しずつ威力を上げていったら良いのかしら?
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