16 / 18
15 第二王子との別れ
しおりを挟む
その後、私はグルーラ公爵にお願いして、家族と話をさせてもらった。
その時には、リナはグルーラ公爵が手配した警察の人に保護されていた。
家族は全員元気そうで、私が帰ってくるのを心待ちにしていると言ってくれた。
そして、それから5日後、私は久しぶりの我が家に帰る前に、ルディにお別れを言いに城門前にやって来ていた。
徒歩で城の敷地内に入るのは大変なので、ルディに門のところまで来てもらったのだ。
ルディは私の顔を見るなり、眉根を寄せて言う。
「なんでこんな所に呼び出すんだよ?」
「話をしておきたいことがあって……」
「どんなこと?」
「私のせいで、嫌な思いをさせたかと思うと帰りづらいわ」
「君のせいじゃないだろ。それに帰りづらいなら、このままグルーラ公爵家に住めばいい」
グルーラ公爵夫妻からは、お詫びも兼ねて、私たち家族全員で、グルーラ公爵領に住まないかというお誘いを受けた。
衣食住を保証されるだけでなく、毎月、小遣いもくれると言う。
でも、さすがにそれはお断りした。
だって、何もしないでお金が入ってくるだなんて駄目な人間になりそうなんだもの。
「そんなことできるわけないでしょ」
ルディを軽く睨んでから、こほんと咳払いをして気持ちを切り替える。
「今まで本当にありがとうございました」
深々と頭を下げてから、顔を上げてルディを見ると、なぜかルディは口をへの字に曲げていた。
「リナ」
「何?」
「お願いはどうするつもりなの」
「え? お願い?」
「陛下に言われてただろ」
「……特に何もないわ。それに、陛下は私じゃなくてリナへのお詫びだったわけでしょう? リナに任せるわ。ただ、馬鹿なお願いをしないように見張っておいてね」
あまり長くいると、別れるのが辛くなりそうだったから、話を切り上げようとした。
でも、ルディが終わらせてくれない。
「リナ、まだ君の名前、ちゃんと教えてもらってないんだけど」
「もう二度と会うことはないから、教えなくてもいいんじゃない?」
「勝手に決めるな」
ルディが明らかに怒っているのがわかった。
だけど、子爵令嬢と第二王子の接点なんて、これからの人生であるわけがない。
正体を話したところで、何かが変わるわけでもない。
城の敷地内は魔法や魔道具の使用が禁止されているので、私は門の外に出て、スカートのポケットからルディに返さないといけないものを取り出す。
「ルディに買ってもらったアクセサリー、これは返すわね」
「これは君にあげたものだ」
「違うでしょう。リナにあげたものよ」
「俺は君をリナだと思って見てない。だから、これは」
押し問答になりそうだったので、ルディの胸ポケットの中に、アクセサリーを滑り込ませる。
こうなりそうだったので、箱には入れずに持ってきていた。
「リナ、ちゃんと話をしよう。とにかく、城の中に」
「もう帰る時間なの。今までありがとう、ルディ! 元気でね! さよなら!」
「リナリー!」
ルディが私に手を伸ばそうとしたけれど、私が転移の魔道具の力を発動させるほうが早かった。
気が付いた時には、私は懐かしの我が家の前に立っていた。
※
昨日から「あなたには彼女がお似合いです」という新作も始めております。
ご興味ありましたらぜひ読んでやってくださいませ!
その時には、リナはグルーラ公爵が手配した警察の人に保護されていた。
家族は全員元気そうで、私が帰ってくるのを心待ちにしていると言ってくれた。
そして、それから5日後、私は久しぶりの我が家に帰る前に、ルディにお別れを言いに城門前にやって来ていた。
徒歩で城の敷地内に入るのは大変なので、ルディに門のところまで来てもらったのだ。
ルディは私の顔を見るなり、眉根を寄せて言う。
「なんでこんな所に呼び出すんだよ?」
「話をしておきたいことがあって……」
「どんなこと?」
「私のせいで、嫌な思いをさせたかと思うと帰りづらいわ」
「君のせいじゃないだろ。それに帰りづらいなら、このままグルーラ公爵家に住めばいい」
グルーラ公爵夫妻からは、お詫びも兼ねて、私たち家族全員で、グルーラ公爵領に住まないかというお誘いを受けた。
衣食住を保証されるだけでなく、毎月、小遣いもくれると言う。
でも、さすがにそれはお断りした。
だって、何もしないでお金が入ってくるだなんて駄目な人間になりそうなんだもの。
「そんなことできるわけないでしょ」
ルディを軽く睨んでから、こほんと咳払いをして気持ちを切り替える。
「今まで本当にありがとうございました」
深々と頭を下げてから、顔を上げてルディを見ると、なぜかルディは口をへの字に曲げていた。
「リナ」
「何?」
「お願いはどうするつもりなの」
「え? お願い?」
「陛下に言われてただろ」
「……特に何もないわ。それに、陛下は私じゃなくてリナへのお詫びだったわけでしょう? リナに任せるわ。ただ、馬鹿なお願いをしないように見張っておいてね」
あまり長くいると、別れるのが辛くなりそうだったから、話を切り上げようとした。
でも、ルディが終わらせてくれない。
「リナ、まだ君の名前、ちゃんと教えてもらってないんだけど」
「もう二度と会うことはないから、教えなくてもいいんじゃない?」
「勝手に決めるな」
ルディが明らかに怒っているのがわかった。
だけど、子爵令嬢と第二王子の接点なんて、これからの人生であるわけがない。
正体を話したところで、何かが変わるわけでもない。
城の敷地内は魔法や魔道具の使用が禁止されているので、私は門の外に出て、スカートのポケットからルディに返さないといけないものを取り出す。
「ルディに買ってもらったアクセサリー、これは返すわね」
「これは君にあげたものだ」
「違うでしょう。リナにあげたものよ」
「俺は君をリナだと思って見てない。だから、これは」
押し問答になりそうだったので、ルディの胸ポケットの中に、アクセサリーを滑り込ませる。
こうなりそうだったので、箱には入れずに持ってきていた。
「リナ、ちゃんと話をしよう。とにかく、城の中に」
「もう帰る時間なの。今までありがとう、ルディ! 元気でね! さよなら!」
「リナリー!」
ルディが私に手を伸ばそうとしたけれど、私が転移の魔道具の力を発動させるほうが早かった。
気が付いた時には、私は懐かしの我が家の前に立っていた。
※
昨日から「あなたには彼女がお似合いです」という新作も始めております。
ご興味ありましたらぜひ読んでやってくださいませ!
応援ありがとうございます!
20
お気に入りに追加
1,133
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる