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29 公爵令息のアプローチ
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「はあ!? ディラン様の告白を断った!? あなた馬鹿なの!?」
「ノノレイ! 声が大きい!」
次の日の昼休み、食事をしながらノノレイに昨日の話をしたところ、持っていたフォークを投げつけてきそうな勢いでノノレイが叫んだ。
そのため、私は周りを見回して自分たちに視線が集まっていないか確認したあと、テーブルに身を乗り出して続ける。
「エアリスにも同じ反応をされたわ。あと、告白を断ったというか嫁になるのを断ったのよ」
「似たようなものじゃない! 何で!? もったいない!」
「わかってる、わかってるわよ! だけど、しょうがないじゃない。ノノレイだって私の将来の目標を知ってるでしょう」
「それはわかるけれど、怒らないで聞いてくれる? あなたのことを思って言うことだから」
「……何?」
促すと、ノノレイは持っていたフォークをお弁当箱の蓋の上に置いて、小声で話し始める。
「あなたが家族のことを思って生きてきたのはわかるわ。とても辛いことがあったのに前向きに生きてきたあなたは本当にすごいと思う。だけど、目の前の幸せを逃してまで過去にとらわれなければいけないものなの?」
「……そ、それはそうかもしれないけど」
「あなたのご家族には会ったとがないのに、知ったような口をきいて申し訳ないと思うけど、今回のことを喜んでいるとは思えないわ」
「ううー、はっきり言わないでよ」
私はテーブルに突っ伏して続ける。
「わかってるわよ、自分でも! たぶん、ミーグスのことだから家族を殺した人間を調べたいから協力してってお願いしたら協力してくれると思う。だけど、それも何か違う気がするのよ」
「わかるわ。ビアラの言いたいことはわかるわよ。あなたの立場だったら私も悩むと思う。だけど、ディラン様の手を取っても、あなたの道は開けると思うわ」
「頭ではわかってるんだけど、でも」
「でも、何?」
頭上からノノレイではない声が聞こえた。
突っ伏したままの私がゆっくりと顔を上に向けると、ミーグスが私の横に立っていた。
「ひっ! ミーグス!」
「人の顔を見て悲鳴あげないでくれない?」
ミーグスはそう言うと、空いていた椅子を引いて、そこに座る。
「ノノレイ、たまに僕も昼食を一緒にとってもいいかな? エアリスが来たとしても4人がけのテーブルだから迷惑にならないよね?」
「も、もちろんです!」
私が何か言う前に、ノノレイが何度も頷いてから尋ねる。
「むしろ、私が邪魔なんじゃないですか?」
「どうして? ノノレイとも話せるし僕は嬉しいけど」
にっこり微笑んだディランを見て「うう、眩しい」とノノレイは目を閉じたあと、私のほうに顔を向けて言う。
「断る理由がやっぱりわからないわ。ディラン様と付き合ったほうがいいと思う」
「ノノレイの裏切り者ぉ」
「友人の幸せのために心を鬼にするわ。エアリスだって同じようなことをするはずよ」
そう言って、ノノレイは止めていた食事を再開しはじめた。
「うう」
今日の私の昼ご飯はパン一個だった。
そのため、ちみちみとかじりついていると、ディランが自分の弁当箱に入っていた小さなハンバーグをフォークで突き刺すと、私の口元に持ってくる。
「美味しいから食べなよ」
「う、う、うっ」
恥ずかしさでブルブル震える私を見て、ミーグスは楽しそうにしている。
すると、いつの間にか現れたのか、私たちのテーブルの周りを囲んでいた女子生徒が絶叫した。
「いやーーっ、ディラン様がぁ!」
「食べないなら私が食べるわ!」
悲鳴と共にそんな言葉が聞こえてきて、私は涙目になりながらも、ミーグスに差し出されたハンバーグをやけくそな気持ちで口に入れた。
「よく出来ました」
にっこり笑うミーグスをハンバーグを咀嚼しながら睨む。
これは外堀を埋めにきているってことよね。
いきなり、人が変わったみたいにグイグイこないでほしい。
恋愛経験がない私には抵抗する術がすぐには思い浮かばない。
そんな私の思うことなどおかまいなしに、ミーグスは私の頬にかかった髪の毛を指で払って微笑む。
「涙目なんて珍しい。可愛いね」
「なっ!? 何を言ってるのよ!」
死ぬ。
このままでは恥ずかしくて死んでしまう!
「あれ? 顔が赤いよ。もしかして僕のこと意識してる?」
「こんの性悪公爵令息!」
「間違ってないから否定しない」
ミーグスは微笑むと、今度はソースのかかった温野菜をフォークに刺して差し出してくる。
「な、なんでそんなことをするのよ!」
「なんでって、そんなパン1つじゃ足りないだろ」
「ミーグスの昼ご飯はどうするのよ!?」
「ミーグスじゃないだろ?」
「ディランのお昼ご飯はどうするのよ!?」
「夜に食べるから大丈夫だよ」
もう、本当になんなの!?
ノノレイに助けを求めようとしても、こちらに目を向けてくれない。
女の友情はどこいったのよ!?
その時、私たちを囲んでいる女子生徒を押しのけて、フェルナンディ卿が現れたかと思うと私に言った。
「おい、ビアラ、お前を呼んでるぞ」
「え?」
「とにかく校門前に行け! いいな!?」
フェルナンディ卿はミーグスがいることに気付くと、慌てて逃げていく。
あの男に行けと言われると、行きたくなくなるわ。
そう思った私は聞こえなかったということにして、ノノレイたちとの昼食を優先することにした。
「ノノレイ! 声が大きい!」
次の日の昼休み、食事をしながらノノレイに昨日の話をしたところ、持っていたフォークを投げつけてきそうな勢いでノノレイが叫んだ。
そのため、私は周りを見回して自分たちに視線が集まっていないか確認したあと、テーブルに身を乗り出して続ける。
「エアリスにも同じ反応をされたわ。あと、告白を断ったというか嫁になるのを断ったのよ」
「似たようなものじゃない! 何で!? もったいない!」
「わかってる、わかってるわよ! だけど、しょうがないじゃない。ノノレイだって私の将来の目標を知ってるでしょう」
「それはわかるけれど、怒らないで聞いてくれる? あなたのことを思って言うことだから」
「……何?」
促すと、ノノレイは持っていたフォークをお弁当箱の蓋の上に置いて、小声で話し始める。
「あなたが家族のことを思って生きてきたのはわかるわ。とても辛いことがあったのに前向きに生きてきたあなたは本当にすごいと思う。だけど、目の前の幸せを逃してまで過去にとらわれなければいけないものなの?」
「……そ、それはそうかもしれないけど」
「あなたのご家族には会ったとがないのに、知ったような口をきいて申し訳ないと思うけど、今回のことを喜んでいるとは思えないわ」
「ううー、はっきり言わないでよ」
私はテーブルに突っ伏して続ける。
「わかってるわよ、自分でも! たぶん、ミーグスのことだから家族を殺した人間を調べたいから協力してってお願いしたら協力してくれると思う。だけど、それも何か違う気がするのよ」
「わかるわ。ビアラの言いたいことはわかるわよ。あなたの立場だったら私も悩むと思う。だけど、ディラン様の手を取っても、あなたの道は開けると思うわ」
「頭ではわかってるんだけど、でも」
「でも、何?」
頭上からノノレイではない声が聞こえた。
突っ伏したままの私がゆっくりと顔を上に向けると、ミーグスが私の横に立っていた。
「ひっ! ミーグス!」
「人の顔を見て悲鳴あげないでくれない?」
ミーグスはそう言うと、空いていた椅子を引いて、そこに座る。
「ノノレイ、たまに僕も昼食を一緒にとってもいいかな? エアリスが来たとしても4人がけのテーブルだから迷惑にならないよね?」
「も、もちろんです!」
私が何か言う前に、ノノレイが何度も頷いてから尋ねる。
「むしろ、私が邪魔なんじゃないですか?」
「どうして? ノノレイとも話せるし僕は嬉しいけど」
にっこり微笑んだディランを見て「うう、眩しい」とノノレイは目を閉じたあと、私のほうに顔を向けて言う。
「断る理由がやっぱりわからないわ。ディラン様と付き合ったほうがいいと思う」
「ノノレイの裏切り者ぉ」
「友人の幸せのために心を鬼にするわ。エアリスだって同じようなことをするはずよ」
そう言って、ノノレイは止めていた食事を再開しはじめた。
「うう」
今日の私の昼ご飯はパン一個だった。
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「美味しいから食べなよ」
「う、う、うっ」
恥ずかしさでブルブル震える私を見て、ミーグスは楽しそうにしている。
すると、いつの間にか現れたのか、私たちのテーブルの周りを囲んでいた女子生徒が絶叫した。
「いやーーっ、ディラン様がぁ!」
「食べないなら私が食べるわ!」
悲鳴と共にそんな言葉が聞こえてきて、私は涙目になりながらも、ミーグスに差し出されたハンバーグをやけくそな気持ちで口に入れた。
「よく出来ました」
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これは外堀を埋めにきているってことよね。
いきなり、人が変わったみたいにグイグイこないでほしい。
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死ぬ。
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「あれ? 顔が赤いよ。もしかして僕のこと意識してる?」
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「な、なんでそんなことをするのよ!」
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もう、本当になんなの!?
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その時、私たちを囲んでいる女子生徒を押しのけて、フェルナンディ卿が現れたかと思うと私に言った。
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「え?」
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フェルナンディ卿はミーグスがいることに気付くと、慌てて逃げていく。
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