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23 正しい感情
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結局、店で働いている人たち全員に事情を説明し、元婚約者といっても子供の頃に決まったことであり、婚約解消しようと思っていたことを伝えた。
そして、その前にフレシア様とフェルナンディ卿が恋人同士になり、向こうから婚約破棄をされたことを話したところで開店時間になった
開店してすぐに、フレシア様がごきげんな様子で店の中に入ってきた。
この調子だと、フェルナンディ卿がフラれる日は近そうね。
そんなことを思った私だったけれど、フレシア様はやはりそこまで賢くなかった。
フレシア様がオーダーしたフルーツジュースをテーブルまで運んでいくと、フレシア様は私の腕を掴んでお願いしてくる。
「ねえ、ミゼライトさん。あなたのバイトが終わったらお話をしたいんだけど、いつ終わるのかしら」
この感じ、言葉遣いと人は違うけど、デジャヴュだわ。
「申し訳ないんですが、今日はちょっと用事がありまして。遅くなりましたが、昨日はごちそう様でした」
「私は何もしてないわ。お会計したのはディランだから」
「え? じゃあフレシア様の分もディランが払ったんですか?」
「そうね」
フレシア様は当たり前のように頷いた。
ミーグスに余計なお金を使わせてしまったわ。
明日はちゃんとお礼を言わなきゃ。
あと、謝罪もしないとだめよね。
このままだと、ミーグスに頭が上がらなくなりそう。
「ところで店長さんは?」
「フレシア様、ここは指名制のカフェではありません」
「店長さんがそんなお仕事に就かれていたら、毎日通いたいです!」
「たぶん、予約でいっぱいだと思います」
そこまで言ってから、私はフェルナンディ卿が店に来たことをフレシア様に伝える。
「あの、フェルナンディ卿が開店前に来られてましたよ。店長に文句を言ってました」
「なんですって!?」
「店長に喧嘩を売っておられましたよ」
「そ、そんな。私、店長さんに嫌われてしまったんじゃ」
声を震わせるフレシア様を見て呆れてしまう。
迷惑をかけてしまったかもしれない、という気持ちよりも嫌われてしまったかもしれない、になるのね。
「まあ、それはいいとして、フェルナンディ卿のほうは大丈夫なんですか?」
「ホーリルとはちゃんと話すわ。彼にも辛い思いをさせてしまって、私は本当に罪な女よね」
「余計なお世話かもしれませんが、フレシア様はどうされるおつもりなんです?」
「ホーリルには私の気持ちがどちらかをはっきりと選ぶまで待ってって言おうと思っているわ。恋ってすごいわね、ミゼライトさん。私、今まで泣き虫だったの。だけど、恋をしていく内に、どんどん強くなっていく気がするわ」
そうですね。
それに最初に比べて、厚かましくなってもいますよ。
口に出したかったけれど何とかこらえて、婚約破棄の話をした時のことを思い出しながら言う。
「そういえば、前は泣いておられましたよね。フェルナンディ卿の胸にしがみついて」
「ええ。恥ずかしいわ。でも、店長さんは気の強い女性が好きと聞いたの。だから、気の強い女性を目指してみようと思って」
もう、明らかに本命が店長になってるわ。
「頑張って下さいね」
面倒な女性にロックオンされた店長を不憫に思いつつ、フレシア様の席から離れたところで、違う人から声をかけられた。
「ビアラ、注文いいかな?」
「あ、先輩、お久しぶりです」
声を掛けてきたのはベン先輩だった。
ミーグスとの一件があってから、この店に通うのをやめたようだったので、店長が教練客が減ったと嘆いていた。
だから、私としては来てくれて嬉しい。
「ビアラ、あの、良かったら、今度の休みにデートしないか?」
「はい? あの、ここはカフェであって、そういうお店ではないんですが」
「知ってるよ! ただ、君とデートしたいんだ」
「申し訳ございませんが、ご存知かと思いますけれど、私、彼氏がいますので」
「彼氏って公爵令息だろ!? 平民と公爵令息なんて、いつかは別れないといけなくなる。それに彼は卒園したら自分の家に帰るんだから離れ離れになるのはわかっているじゃないか」
ベン先輩の言葉を聞いて、胸がちくりと痛んだ。
でも、すぐにそんなことを人にどうこう言われるものでもないと思って頭を下げる。
「ごめんなさい。その通りかもしれませんけど、彼氏がいるのに他の人とデートは出来ません。もし、出来るとしたら先輩が言うように彼と別れてからじゃないと無理です」
「ビアラ、傷が深くならないうちに別れたほうがいいと思うよ」
余計なお世話といえば、余計なお世話なんだけど心配してくれてるのよね。
苦笑してから、この話は終わりだと言わんばかりに、もう一度頭を下げて、仕事に戻ろうとすると、近くの席に座っていたフレシア様が会話を聞いていたのか話しかけてきた。
「ミゼライトさん! そんなの気にしてはいけないわ。純愛なら乗り越えられるはずよ!」
「あ、ありがとうございます?」
先輩にデートを申し込まれた驚きよりも、ミーグスとの別れを実感して気が重くなった私の感情は正常と考えて良いのだろうか。
そして、その前にフレシア様とフェルナンディ卿が恋人同士になり、向こうから婚約破棄をされたことを話したところで開店時間になった
開店してすぐに、フレシア様がごきげんな様子で店の中に入ってきた。
この調子だと、フェルナンディ卿がフラれる日は近そうね。
そんなことを思った私だったけれど、フレシア様はやはりそこまで賢くなかった。
フレシア様がオーダーしたフルーツジュースをテーブルまで運んでいくと、フレシア様は私の腕を掴んでお願いしてくる。
「ねえ、ミゼライトさん。あなたのバイトが終わったらお話をしたいんだけど、いつ終わるのかしら」
この感じ、言葉遣いと人は違うけど、デジャヴュだわ。
「申し訳ないんですが、今日はちょっと用事がありまして。遅くなりましたが、昨日はごちそう様でした」
「私は何もしてないわ。お会計したのはディランだから」
「え? じゃあフレシア様の分もディランが払ったんですか?」
「そうね」
フレシア様は当たり前のように頷いた。
ミーグスに余計なお金を使わせてしまったわ。
明日はちゃんとお礼を言わなきゃ。
あと、謝罪もしないとだめよね。
このままだと、ミーグスに頭が上がらなくなりそう。
「ところで店長さんは?」
「フレシア様、ここは指名制のカフェではありません」
「店長さんがそんなお仕事に就かれていたら、毎日通いたいです!」
「たぶん、予約でいっぱいだと思います」
そこまで言ってから、私はフェルナンディ卿が店に来たことをフレシア様に伝える。
「あの、フェルナンディ卿が開店前に来られてましたよ。店長に文句を言ってました」
「なんですって!?」
「店長に喧嘩を売っておられましたよ」
「そ、そんな。私、店長さんに嫌われてしまったんじゃ」
声を震わせるフレシア様を見て呆れてしまう。
迷惑をかけてしまったかもしれない、という気持ちよりも嫌われてしまったかもしれない、になるのね。
「まあ、それはいいとして、フェルナンディ卿のほうは大丈夫なんですか?」
「ホーリルとはちゃんと話すわ。彼にも辛い思いをさせてしまって、私は本当に罪な女よね」
「余計なお世話かもしれませんが、フレシア様はどうされるおつもりなんです?」
「ホーリルには私の気持ちがどちらかをはっきりと選ぶまで待ってって言おうと思っているわ。恋ってすごいわね、ミゼライトさん。私、今まで泣き虫だったの。だけど、恋をしていく内に、どんどん強くなっていく気がするわ」
そうですね。
それに最初に比べて、厚かましくなってもいますよ。
口に出したかったけれど何とかこらえて、婚約破棄の話をした時のことを思い出しながら言う。
「そういえば、前は泣いておられましたよね。フェルナンディ卿の胸にしがみついて」
「ええ。恥ずかしいわ。でも、店長さんは気の強い女性が好きと聞いたの。だから、気の強い女性を目指してみようと思って」
もう、明らかに本命が店長になってるわ。
「頑張って下さいね」
面倒な女性にロックオンされた店長を不憫に思いつつ、フレシア様の席から離れたところで、違う人から声をかけられた。
「ビアラ、注文いいかな?」
「あ、先輩、お久しぶりです」
声を掛けてきたのはベン先輩だった。
ミーグスとの一件があってから、この店に通うのをやめたようだったので、店長が教練客が減ったと嘆いていた。
だから、私としては来てくれて嬉しい。
「ビアラ、あの、良かったら、今度の休みにデートしないか?」
「はい? あの、ここはカフェであって、そういうお店ではないんですが」
「知ってるよ! ただ、君とデートしたいんだ」
「申し訳ございませんが、ご存知かと思いますけれど、私、彼氏がいますので」
「彼氏って公爵令息だろ!? 平民と公爵令息なんて、いつかは別れないといけなくなる。それに彼は卒園したら自分の家に帰るんだから離れ離れになるのはわかっているじゃないか」
ベン先輩の言葉を聞いて、胸がちくりと痛んだ。
でも、すぐにそんなことを人にどうこう言われるものでもないと思って頭を下げる。
「ごめんなさい。その通りかもしれませんけど、彼氏がいるのに他の人とデートは出来ません。もし、出来るとしたら先輩が言うように彼と別れてからじゃないと無理です」
「ビアラ、傷が深くならないうちに別れたほうがいいと思うよ」
余計なお世話といえば、余計なお世話なんだけど心配してくれてるのよね。
苦笑してから、この話は終わりだと言わんばかりに、もう一度頭を下げて、仕事に戻ろうとすると、近くの席に座っていたフレシア様が会話を聞いていたのか話しかけてきた。
「ミゼライトさん! そんなの気にしてはいけないわ。純愛なら乗り越えられるはずよ!」
「あ、ありがとうございます?」
先輩にデートを申し込まれた驚きよりも、ミーグスとの別れを実感して気が重くなった私の感情は正常と考えて良いのだろうか。
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