4 / 36
3 婚約破棄を宣言される
しおりを挟む
「ビアラ、足を運ばせてすまないな」
まったく悪びれていない気怠げな表情でホーリルは言った。
そんな彼の胸元にしがみつくようにして寄り添っているフレシア様は不安そうな顔で私を見ている。
金色のウェーブのかかった長い髪をおろし、赤い大きなリボンのついたカチューシャをつけていて、見た目は子供っぽい。
背は低くて痩せ気味で、丸くて大きな潤んだ瞳は、男性の庇護欲をそそるのだと思う。
ホーリルもフレシア様も、私たちと同じ学年ではあるけれどクラスが違う。
AからEまである内のEクラスで、私の学園では、Eクラスが一番成績の良くないクラスだった。
貴族の中でも勉強が苦手な人もいるので、その人たちがメインのクラスだと聞いたことがある。
そのため、私もミーグスもホーリルたちと同じクラスになったことはなく、お互いの婚約者については、ほとんど初対面に近かった。
「ちょっと、ミーグス」
「なんだよ、ミゼライト」
「あそこにいるのはあなたの婚約者よね。いいの?」
「君こそいいの?」
自分の婚約者が異性と寄り添っているというのに、ミーグスはショックを受けた様子はなく、どちらかというと呆れ返っているといった感じだ。
「私は心底、どうでもいいわ」
「僕は家的に問題だけどね」
ミーグスの言葉を聞いたフレシア様はびくりと身体を震わせ、口元に手を当ててミーグスを見た。
すると、ホーリルが口を開く。
「ビアラに先に話をしてしまおう。父上が言っていたんだが、うちの家はやばいらしい」
あなたの頭もね。
そう言ってしまいそうになったけれど、何とかこらえた。
「だから、お前との婚約を破棄して、お前の学費や寮費を払うことをやめることにした」
「……あなたのお父様がそう言ってたの?」
「違う! 決めたのは俺だ!」
自信満々な表情をして、右手の親指で自分の顔を指すホーリルを見て呆れ返る。
何なの、この人。
視線を感じて左斜め上を見ると、左横に立っているミーグスが気の毒そうな目で、私を見ていることに気付いた。
ホーリルがアホすぎて、ミーグスにまで同情されてしまったわ。
「驚いて何も言えなくなったか。いつまでも養ってもらえると思っているからそうなるんだ」
「そんなことを思っていないわよ」
「父上のことだから、フレシアと俺が婚約するとなったら、喜んで賛成してくれるだろう」
そうなったら、親子共々、馬鹿認定するけどね。
私の中では、アホはまだ可愛らしいもので馬鹿は侮蔑も含んだ意味合いになる。
ミーグスは大きく息を吐いて、ホーリルが話す内容を黙って聞いていた。
「大体、借金のことだって俺が助けてくれって頼んだわけじゃないんだよ。父上が名前を借りただけなんだ。払えなかったのはビアラの両親が悪い。ビアラの両親が殺されて、父上は優しいから可哀想に思って婚約を決めただけで、その約束を俺が守る必要はないだろ? それにフレシアは俺が好きなんだ。そして、俺もフレシアが好きだ。俺と彼女は両思いなんだ。お前が身を引くのが普通じゃないか」
おかしいわね。
ホーリルの言ってる意味が全くわからないわ。
私の両親が悪者にされていることに腹が立つし、それにいつ私が身を引かないと言ったの?
何をふざけたことばかり言ってるのよ。
当たり前のように当たり前ではないことを言うホーリルにではなく、私はフレシア様に尋ねる。
「失礼ですが、フィアディス様にはミーグス様という婚約者がいらっしゃるのではないのですか?」
「そ、それは……」
「そうだよ、フレシア。僕との婚約はどうするつもりだ」
ミーグスがフレシア様に尋ねると、彼女はホーリルの胸にしがみつき、つぶらなエメラルドグリーンの瞳をミーグスに向けた。
ミーグスが軽く彼女を睨むと、フレシア様の瞳から涙がこぼれ落ちた。
「ごめんなさい、ディラン。お父様のほうから正式に婚約破棄についてのお話をしてもらうわ。まだ、話していないけれど、きっと承諾してくれると思うの」
「……信じられないな。まだ話をしていないのか? それなのに婚約破棄の話をしてるのか。正気の沙汰じゃないね」
ミーグスは大きく息を吐いてから、話を続ける。
「これは政略的な婚約なんだ。好きだのなんだのとかいう問題じゃないんだよ。それはわかって言ってる?」
「わかっているわ、ディラン。でも、将来を歩んでいきたいと思える人と結婚したいと願うことだって悪いことじゃないでしょう? 生きていくのに必要なのは、お金と愛だわ!」
「そうだね。君は公爵夫人になるにはふさわしくないことがよくわかった。婚約破棄については君の家から正式に連絡があれば承諾するようにしよう」
ミーグスは諦めたように目を伏せたあと、また目を開いて、フレシア様たちに告げる。
「だけど、慰謝料は払ってもらうことになると思う。それは、フェルナンディもだね」
慰謝料という言葉にフレシア様とホーリルはびくりと身体を震わせた。
「まさか、婚約を解消して下さい、はい、わかりました、で済むとは思っていたんじゃないよね」
「そ、それは、あなたなら許してくれるかと思って」
「脳天気な頭で羨ましいよ。行こう、ミゼライト。彼女たちと話をしていると頭が悪くなりそうだ」
ミーグスは私に声を掛けてから、くるりと踵を返した。
「え、ええ。あ、先に行ってていいわよ」
頷いたあと、ホーリルに話しかける。
「ホーリル・フェルナンディ子爵令息、婚約破棄を認めるわ。だけどお願いがあるの」
「何だよ。復縁なんてしないからな」
「あなたは本当に馬鹿ね。元々、あなたみたいな常識のない人が婚約者だなんて迷惑だったのはこっちなの。卒業したら、こっちから破棄してやるつもりだったけど、手間が省けて良かったわ。あとお願いなんだけど、あなたのお父様に伝えてくれる?」
「何を言うつもりだ」
訝しげな顔をしたホーリルに私はにっこりと微笑む。
「親子共々、地獄に落ちろ」
言われたホーリルは一瞬、言葉の意味がわからなかったのか、キョトンとした顔をしたが、すぐに怒りの表情になって叫ぶ。
「地獄に落ちるのはお前だ、ビアラ! お前なんてくたばっちまえ! あとで泣いて後悔すればいい! 謝っても金の援助はしてやらないからな!」
「可哀想なホーリル。地獄に落ちろだなんて酷いわ!」
「ありがとう。あいつは平民だから言葉遣いが悪いんだよ」
二人のやり取りを見て思う。
いや、あなたも今くたばっちまえって、私に言ったわよね?
それに、可哀想なのはあなたたちの頭だわ。
そんなことを思いながら、私は先に歩いていったミーグスを追いかけた。
すると、ミーグスは私を待っていたのか、校舎の出入り口の扉の所に立っていた。
まったく悪びれていない気怠げな表情でホーリルは言った。
そんな彼の胸元にしがみつくようにして寄り添っているフレシア様は不安そうな顔で私を見ている。
金色のウェーブのかかった長い髪をおろし、赤い大きなリボンのついたカチューシャをつけていて、見た目は子供っぽい。
背は低くて痩せ気味で、丸くて大きな潤んだ瞳は、男性の庇護欲をそそるのだと思う。
ホーリルもフレシア様も、私たちと同じ学年ではあるけれどクラスが違う。
AからEまである内のEクラスで、私の学園では、Eクラスが一番成績の良くないクラスだった。
貴族の中でも勉強が苦手な人もいるので、その人たちがメインのクラスだと聞いたことがある。
そのため、私もミーグスもホーリルたちと同じクラスになったことはなく、お互いの婚約者については、ほとんど初対面に近かった。
「ちょっと、ミーグス」
「なんだよ、ミゼライト」
「あそこにいるのはあなたの婚約者よね。いいの?」
「君こそいいの?」
自分の婚約者が異性と寄り添っているというのに、ミーグスはショックを受けた様子はなく、どちらかというと呆れ返っているといった感じだ。
「私は心底、どうでもいいわ」
「僕は家的に問題だけどね」
ミーグスの言葉を聞いたフレシア様はびくりと身体を震わせ、口元に手を当ててミーグスを見た。
すると、ホーリルが口を開く。
「ビアラに先に話をしてしまおう。父上が言っていたんだが、うちの家はやばいらしい」
あなたの頭もね。
そう言ってしまいそうになったけれど、何とかこらえた。
「だから、お前との婚約を破棄して、お前の学費や寮費を払うことをやめることにした」
「……あなたのお父様がそう言ってたの?」
「違う! 決めたのは俺だ!」
自信満々な表情をして、右手の親指で自分の顔を指すホーリルを見て呆れ返る。
何なの、この人。
視線を感じて左斜め上を見ると、左横に立っているミーグスが気の毒そうな目で、私を見ていることに気付いた。
ホーリルがアホすぎて、ミーグスにまで同情されてしまったわ。
「驚いて何も言えなくなったか。いつまでも養ってもらえると思っているからそうなるんだ」
「そんなことを思っていないわよ」
「父上のことだから、フレシアと俺が婚約するとなったら、喜んで賛成してくれるだろう」
そうなったら、親子共々、馬鹿認定するけどね。
私の中では、アホはまだ可愛らしいもので馬鹿は侮蔑も含んだ意味合いになる。
ミーグスは大きく息を吐いて、ホーリルが話す内容を黙って聞いていた。
「大体、借金のことだって俺が助けてくれって頼んだわけじゃないんだよ。父上が名前を借りただけなんだ。払えなかったのはビアラの両親が悪い。ビアラの両親が殺されて、父上は優しいから可哀想に思って婚約を決めただけで、その約束を俺が守る必要はないだろ? それにフレシアは俺が好きなんだ。そして、俺もフレシアが好きだ。俺と彼女は両思いなんだ。お前が身を引くのが普通じゃないか」
おかしいわね。
ホーリルの言ってる意味が全くわからないわ。
私の両親が悪者にされていることに腹が立つし、それにいつ私が身を引かないと言ったの?
何をふざけたことばかり言ってるのよ。
当たり前のように当たり前ではないことを言うホーリルにではなく、私はフレシア様に尋ねる。
「失礼ですが、フィアディス様にはミーグス様という婚約者がいらっしゃるのではないのですか?」
「そ、それは……」
「そうだよ、フレシア。僕との婚約はどうするつもりだ」
ミーグスがフレシア様に尋ねると、彼女はホーリルの胸にしがみつき、つぶらなエメラルドグリーンの瞳をミーグスに向けた。
ミーグスが軽く彼女を睨むと、フレシア様の瞳から涙がこぼれ落ちた。
「ごめんなさい、ディラン。お父様のほうから正式に婚約破棄についてのお話をしてもらうわ。まだ、話していないけれど、きっと承諾してくれると思うの」
「……信じられないな。まだ話をしていないのか? それなのに婚約破棄の話をしてるのか。正気の沙汰じゃないね」
ミーグスは大きく息を吐いてから、話を続ける。
「これは政略的な婚約なんだ。好きだのなんだのとかいう問題じゃないんだよ。それはわかって言ってる?」
「わかっているわ、ディラン。でも、将来を歩んでいきたいと思える人と結婚したいと願うことだって悪いことじゃないでしょう? 生きていくのに必要なのは、お金と愛だわ!」
「そうだね。君は公爵夫人になるにはふさわしくないことがよくわかった。婚約破棄については君の家から正式に連絡があれば承諾するようにしよう」
ミーグスは諦めたように目を伏せたあと、また目を開いて、フレシア様たちに告げる。
「だけど、慰謝料は払ってもらうことになると思う。それは、フェルナンディもだね」
慰謝料という言葉にフレシア様とホーリルはびくりと身体を震わせた。
「まさか、婚約を解消して下さい、はい、わかりました、で済むとは思っていたんじゃないよね」
「そ、それは、あなたなら許してくれるかと思って」
「脳天気な頭で羨ましいよ。行こう、ミゼライト。彼女たちと話をしていると頭が悪くなりそうだ」
ミーグスは私に声を掛けてから、くるりと踵を返した。
「え、ええ。あ、先に行ってていいわよ」
頷いたあと、ホーリルに話しかける。
「ホーリル・フェルナンディ子爵令息、婚約破棄を認めるわ。だけどお願いがあるの」
「何だよ。復縁なんてしないからな」
「あなたは本当に馬鹿ね。元々、あなたみたいな常識のない人が婚約者だなんて迷惑だったのはこっちなの。卒業したら、こっちから破棄してやるつもりだったけど、手間が省けて良かったわ。あとお願いなんだけど、あなたのお父様に伝えてくれる?」
「何を言うつもりだ」
訝しげな顔をしたホーリルに私はにっこりと微笑む。
「親子共々、地獄に落ちろ」
言われたホーリルは一瞬、言葉の意味がわからなかったのか、キョトンとした顔をしたが、すぐに怒りの表情になって叫ぶ。
「地獄に落ちるのはお前だ、ビアラ! お前なんてくたばっちまえ! あとで泣いて後悔すればいい! 謝っても金の援助はしてやらないからな!」
「可哀想なホーリル。地獄に落ちろだなんて酷いわ!」
「ありがとう。あいつは平民だから言葉遣いが悪いんだよ」
二人のやり取りを見て思う。
いや、あなたも今くたばっちまえって、私に言ったわよね?
それに、可哀想なのはあなたたちの頭だわ。
そんなことを思いながら、私は先に歩いていったミーグスを追いかけた。
すると、ミーグスは私を待っていたのか、校舎の出入り口の扉の所に立っていた。
103
お気に入りに追加
1,261
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
半日だけ侍女になった美貌の公爵令嬢は世界を手に入れる?
青空一夏
恋愛
美貌の公爵令嬢カトリーヌは、夜会で一間惚れした男爵家の三男カート様に会うために侍女に変装します。さぁ、侍女になったカトリーヌは‥‥お転婆の美しい公爵令嬢の半日だけの大冒険?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる