犬猿の仲だと思っていたのに、なぜか幼なじみの公爵令息が世話を焼いてくる

風見ゆうみ

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 私、ビアラ・ミゼライトには学園を優秀な成績で卒業したい理由があった。
 卒業試験で女子で一番の成績をおさめられれば、貴族の中では低い爵位ではあるが、男爵という爵位が与えられるからだ。
 どうして爵位が欲しいのかというと、我が家が、とある事情で没落したからだ。
 本来ならミゼライトという姓もなくなってしまうところを、誰かの力添えがあり、そのまま名乗ることを許された。
 ミゼライト家が没落してしまった理由は、くだらないといえばくだらないもので、父が友人の子爵の借金の保証人になっていたからだ。

 父の友人のフェルナンディ子爵は最低な男だった。
 ギャンブルにはまり、自分だけの小遣いでは飽きたらなくなり、家のお金に手を付けた。
 それに気がついた夫人が止めに入ったけれど、暴力をふるうようになったため、夫人は離婚の道を選んだ。
 そのせいもあり、借金を返すには自分の家を売っても足りない金額まで膨れ上がった。
 彼が借りていた金貸しは、違法の金貸しで利息だけでも、かなりの金額になっていたらしい。
 
 保証人がいれば、借りている他の違法の金貸しからお金を借りられると知ったフェルナンディ子爵は、父には病気で入院しなければならなくなったので、保証人になってほしいとお願いし、病院からの書類を渡した。
 父はそれを信じて保証人になった。
 まさか、それが違法の金貸しに渡す書類に使われるだなんて夢にも思っていなかったと思う。

 17歳になった私にしてみれば、お父様の判断も甘かったと思う。
 でも、騙されたほうが悪いのではない。
 騙した人間が一番悪い。
 私はそう思っている。

 子爵が自転車操業をして作った借金は、最終的には恐ろしい金額になり、伯爵家をもってしても払えないほどになった。
 フェルナンディ子爵は病院に入院し、金貸しから逃れようとした。
 すると、金貸しは我が家に目をつけ、期限内に払えなければ殺すとまで脅されるようになっていたそうだ。

 普通の金貸しから借りていれば、破産を申し立てれば何とかなったかもしれない。
 でも、相手は闇金で、その手は通じなかった。
 
 事件が起こったのは、私が7歳の時だった。
 私が学園に行っている間に家に賊が入り、両親と2つ年下の弟が暴行された上に殺された。 
 その当時は使用人たちは全員いなくなっていたため、犠牲になったのは家族だけだった。
 どういう理由で殺されたのかは、仮説ではあるけれど、数年後に警察の人から教えてもらった。
 
 その仮説を思い出すと、相手に殺意しか覚えない。
 
 私の家族が死んでも、借金取りは諦めなかった。
 両親には多額の保険金がかけられており、受取人が私と弟になっていた。
 フェルナンディ子爵は、家族を失った私に言葉巧みに近付いてくると、私の保護者になると言った。
 その時の私は子供だったから、父が借金を背負わされたいたなんて知らなかった。
 ただ、家族は悪い人に殺されたのだとしか聞かされていなかった。

 だから私は、優しく差し伸べられた手を取った。
 保険金は全て後見人であるフェルナンディ子爵が預かることになり、密かに謝金の返済にあてられた。
 それでも足りなかった分は、ミゼライト家の家屋を売り払うことで借金は返済された。

 幼い頃の私は、フェルナンディ子爵に捨てられれば生きてはいけないのだと思い込んでいた。
 だから、自分の息子を私の婚約者にすると言ってくれた時、とても喜んでしまった。

 だけど、成長するにつれ、警察や周りが真相を教えてくれてわかった。
 フェルナンディ子爵は最悪な人間であり、母に置いていかれた息子も普通ではないということを。
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