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閑話  指南書

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 今まで無視していましたが、私の実家のほうからパーティーへの招待状は来てたようでした。

 ですので、パーティーに出席するという返事をしたところ、それはもう大喜びだったようで、すぐに連絡がきました。

 両親からの手紙には『来てくれると思っていた』と書かれていて、行かざるを得ないようにさせられたことについては腹が立ちました。

 その日は、思い出すと自分に対してイライラしてしまい、メイドやホリーたちを困らせてしまいました。

 いつもニコニコしているのに、しかめっ面をしているから、何か気に障るようなことをしてしまったのか心配させてしまったみたいです。

 とりあえず、愚痴を話して楽になろうと思った私は、その日の晩、寝室のベッドの上でルーラス様に話しかけます。

「無理やりにでも用事を作って出席しないようにしたほうが良かったのでしょうか」
「その手でも良かったかもしれないが、どうせ新たなパーティーに呼ばれるだけだろ」
「……そう言われればそうですね」

 ルーラス様はいつもなら、私の目を見て話をしてくださるのですが、今日はなぜか本に夢中になってしまっておられて、私のほうを向いてくれません。
 いつもなら邪魔しないようにと思うだけなのですが、今日はイライラしているからか話しかけてしまいます。

「あの、話しかけたら邪魔でしょうか」
「いや、邪魔じゃない」
「何の本を読んでいらっしゃるのですか?」
「ああ、これ? ……父上がくれたんだ」
「陛下が本をくださったのですか?」
「ああ。リルと一緒に読めばいいって」

 ルーラス様はどこか恥ずかしそうにしておられます。
 どうしてなのでしょうか。

「私と一緒にですか……」

 どんな本なのかと思い、タイトルを見てみようとしましたが、ブックカバーがされていて、どんな内容の本なのか全くわかりません。

「どんな本なのですか? ルーラス様が読み終えたら、私も読んでも良いのでしょうか?」
「いや。リルは読まなくてもいいかもしれない。俺が、その頑張って覚える」
「ルーラス様のように本を早く読める方が時間をかけて読んでおられますし、よっぽど難しい本なのでしょうね」
「いや、その内容とかイラストが過激で、実行するのが大変なだけというか……」
「どんなものなのですか!? ま、まさか、さ、殺人とか?」
「そんなのじゃない!」
「では、どんなものなのですか!?」

 私とルーラス様はしばらく本に関する話をしておりましたが、ルーラス様は見せてくれそうにありません。
 我慢しきれなくなった私はルーラス様に顔を近づけて、開いている本のページの文章を読んでみました。

「こ、これは……っ!」

 ルーラス様が読んでいた本は、夫婦の営みの指南書でした!

「なんなんですか、これ! どうして陛下がこのような本を!?」
「初夜が嘘だって父上たちは知ってるだろ! で、大人に戻ったんだから、どうなんだってうるさいんだよ!」
「そういう問題は夫婦で考えるものだと思います! というか、待ってください! こ、これは何をしているのでしょう!?」
「そ、それはだな……! よし、実践するか!」
「初めての女性に無茶をさせるおつもりですか……」
「ご、ごめんなさい」

 私の顔がよっぽど怖かったのか、ルーラス様は素直に謝ってこられ、その日は本を読むのをやめて、ちゃんと私の話を聞いてくださったのでした。

 
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