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13 改めて挨拶する朝
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次の日、ちょうど私が朝食を食べ終えた頃に、リュカが部屋にやって来た。
「おはよう。朝早くから悪い」
「おはよう。気にしないで。そっちのソファに座ってちょうだい」
リュカは私に促されたソファに座る。
メイドがお茶淹れてくれて部屋から出ていくのを待った後に、リュカは話を始めた。
「昨日、ザライスが執務室で怪しい動きをしてたんだ」
「怪しい動き?」
「何か、書類を探してるって言ってた」
リュカの横に座って、詳しく話を聞いてみると、どうやらレイクウッドは私とリュカの関係を疑っているということがわかった。
そして、レイクウッドがトロット公爵令嬢に好意を寄せているのではないかのいうことも理解できた。
「リュカの話だけ聞くと、レイクウッドがトロット公爵令嬢を好きなのは間違いなさそうな気がするわね。そうだとすると、レイクウッドがリュカを嵌めたのはトロット公爵令嬢を手に入れたかったからかしら?」
「そういうわけでもなさそうなんだよな。俺がリリーを選んだことには不服そうにしてたし」
「そう言われてみればそうね。じゃあ、レイクウッドはどうしたかったのかしら」
「それがわからなくてさ。時間を巻き戻す前のあいつは、俺とトロット公爵令嬢との結婚を阻止したかったのかもしれない。だけど、今は彼女が悲しんでる姿を見て、彼女の幸せを考えて後悔してるとかか?」
「そんな単純な性格なら、第一王女殿下を暗殺しようだなんてことを考えつく前に、トロット公爵令嬢のことを諦めていたんじゃない?」
「ということは、やっぱり俺たちが知らない何かがあるってことか?」
「そうだと思うの。それに、レイクウッド単独とは思えないんだもの」
頷くと、リュカは難しい顔で問いかけてくる。
「……婚約破棄はして良かったんだよな?」
「どういうこと?」
「あの時、リリーを守るには結婚するしかないと思ったんだ。だけど、今思えば他にも手があったと思う。それに昨日、ザライスにリリーに近づくなと警告したけど、逆に君の身を危険に晒すことになるかもしれないって思い始めた。なんか、あの時はイライラしてしまって……。本当にごめん」
「リュカは謝らなくていいわ。リュカがレイクウッドに警告しようがしまいが、リュカの現在の婚約者は私なのよ。狙われるのならどっちにしたって狙われるわ。それにリュカだって私のことを思って発言してくれたんでしょう?」
「それは、そうだけど」
「ありがとう、リュカ。でも、私だって自分の身を守れるわ。それに一緒に戦うって決めたんだから、私のことばかり考えてないで、あなた自身のことも考えてね?」
リュカの手の上に自分の手を重ねて微笑む。
すると、リュカは重ねていた私の手を優しく掴むと、私の手の甲に口付けた。
「えっ!?」
驚いて声を上げると、リュカは手の甲から唇を離して真剣な顔で私を見つめる。
「絶対に守るから」
「……よろしくお願いします」
頷いた私の顔が赤くなっていたのか、リュカも顔を赤くした。
そして、慌てて私の手を離して立ち上がった。
「そっ、そうだ、リリー。ザライスに改めて君を紹介するよ。それから、君もザライスにトロット公爵令嬢の話をしてくれないか。それで、ザライスの反応を見てほしい。そういう話を引き出すのは女性のほうが上手いだろう?」
「上手かどうかはわからないけれど、恋のお話をするのは好きね」
首を傾げて頷くと、リュカは何か言いたげに口を開いた。
でも、言葉を発することなく口を閉じた。
「何よ、リュカ。言いたいことがあるなら言ってちょうだい」
「なんでもない」
「なんでもなくはないでしょう。あなた、何か言おうとしていたでしょう」
「いや、その、リリーは今まで、……の話をしてたのかと思って……」
途中からはリュカが何を言っているのかわからなかった。
「ねえ、リュカ、はっきり話してくれない?」
「あー、そうだな。学園が新学期に入ったらどうするつもりなんだ?」
「一応、通うつもりなんだけど駄目かしら?」
「危ないから駄目と言いたいところだが、やっぱり学園は卒業しておかないと駄目だよな。それに、元々そういう話だったもんな」
私が通っている学園は10歳から18歳までの人が通うことになっていて、もうすぐ16歳になる私は、現在は16歳の学年に通っている。
「卒業まで、あと2年以上あるけれど、それって大丈夫なのかしら?」
「大丈夫じゃないか? 俺だって3年後はまだ結婚してなかったし。結婚は急がなくてもいいから」
「ありがとう。で、レイクウッドにはいつ会えば良いの?」
「リリーに特に用事がないなら今からでも良いけど」
「じゃあ、お言葉に甘えて、今からにするわ。さっさと挨拶してしまいたいの」
そう言って立ち上がると、リュカと共に彼の執務室に向かった。
****。
「レイクウッド様のお話はリュカから聞いています。リュカがとても、お世話になっているようですわね」
私たちよりも後に執務室に入ってきたレイクウッドは、私を見て驚いた顔をした。
私がソファに座ったまま笑顔で話しかけると、レイクウッドは頭を下げる。
「いえ、とんでもございません。それから、リリー様には無礼な態度を取ってしまい申し訳ございませんでした」
「何の話をしていらっしゃるの?」
首を傾げて尋ねると、レイクウッドは少し間をおいてから答える。
「初めて、お会いした時の話です。とても失礼な態度をとってしまいました」
「そう思われるのなら、これからあんな状況があった時は見た目で判断はされないほうが良いと覚えておいてくださいね?」
私は笑顔を作り、お願いするふりをして嫌味を言った。
「おはよう。朝早くから悪い」
「おはよう。気にしないで。そっちのソファに座ってちょうだい」
リュカは私に促されたソファに座る。
メイドがお茶淹れてくれて部屋から出ていくのを待った後に、リュカは話を始めた。
「昨日、ザライスが執務室で怪しい動きをしてたんだ」
「怪しい動き?」
「何か、書類を探してるって言ってた」
リュカの横に座って、詳しく話を聞いてみると、どうやらレイクウッドは私とリュカの関係を疑っているということがわかった。
そして、レイクウッドがトロット公爵令嬢に好意を寄せているのではないかのいうことも理解できた。
「リュカの話だけ聞くと、レイクウッドがトロット公爵令嬢を好きなのは間違いなさそうな気がするわね。そうだとすると、レイクウッドがリュカを嵌めたのはトロット公爵令嬢を手に入れたかったからかしら?」
「そういうわけでもなさそうなんだよな。俺がリリーを選んだことには不服そうにしてたし」
「そう言われてみればそうね。じゃあ、レイクウッドはどうしたかったのかしら」
「それがわからなくてさ。時間を巻き戻す前のあいつは、俺とトロット公爵令嬢との結婚を阻止したかったのかもしれない。だけど、今は彼女が悲しんでる姿を見て、彼女の幸せを考えて後悔してるとかか?」
「そんな単純な性格なら、第一王女殿下を暗殺しようだなんてことを考えつく前に、トロット公爵令嬢のことを諦めていたんじゃない?」
「ということは、やっぱり俺たちが知らない何かがあるってことか?」
「そうだと思うの。それに、レイクウッド単独とは思えないんだもの」
頷くと、リュカは難しい顔で問いかけてくる。
「……婚約破棄はして良かったんだよな?」
「どういうこと?」
「あの時、リリーを守るには結婚するしかないと思ったんだ。だけど、今思えば他にも手があったと思う。それに昨日、ザライスにリリーに近づくなと警告したけど、逆に君の身を危険に晒すことになるかもしれないって思い始めた。なんか、あの時はイライラしてしまって……。本当にごめん」
「リュカは謝らなくていいわ。リュカがレイクウッドに警告しようがしまいが、リュカの現在の婚約者は私なのよ。狙われるのならどっちにしたって狙われるわ。それにリュカだって私のことを思って発言してくれたんでしょう?」
「それは、そうだけど」
「ありがとう、リュカ。でも、私だって自分の身を守れるわ。それに一緒に戦うって決めたんだから、私のことばかり考えてないで、あなた自身のことも考えてね?」
リュカの手の上に自分の手を重ねて微笑む。
すると、リュカは重ねていた私の手を優しく掴むと、私の手の甲に口付けた。
「えっ!?」
驚いて声を上げると、リュカは手の甲から唇を離して真剣な顔で私を見つめる。
「絶対に守るから」
「……よろしくお願いします」
頷いた私の顔が赤くなっていたのか、リュカも顔を赤くした。
そして、慌てて私の手を離して立ち上がった。
「そっ、そうだ、リリー。ザライスに改めて君を紹介するよ。それから、君もザライスにトロット公爵令嬢の話をしてくれないか。それで、ザライスの反応を見てほしい。そういう話を引き出すのは女性のほうが上手いだろう?」
「上手かどうかはわからないけれど、恋のお話をするのは好きね」
首を傾げて頷くと、リュカは何か言いたげに口を開いた。
でも、言葉を発することなく口を閉じた。
「何よ、リュカ。言いたいことがあるなら言ってちょうだい」
「なんでもない」
「なんでもなくはないでしょう。あなた、何か言おうとしていたでしょう」
「いや、その、リリーは今まで、……の話をしてたのかと思って……」
途中からはリュカが何を言っているのかわからなかった。
「ねえ、リュカ、はっきり話してくれない?」
「あー、そうだな。学園が新学期に入ったらどうするつもりなんだ?」
「一応、通うつもりなんだけど駄目かしら?」
「危ないから駄目と言いたいところだが、やっぱり学園は卒業しておかないと駄目だよな。それに、元々そういう話だったもんな」
私が通っている学園は10歳から18歳までの人が通うことになっていて、もうすぐ16歳になる私は、現在は16歳の学年に通っている。
「卒業まで、あと2年以上あるけれど、それって大丈夫なのかしら?」
「大丈夫じゃないか? 俺だって3年後はまだ結婚してなかったし。結婚は急がなくてもいいから」
「ありがとう。で、レイクウッドにはいつ会えば良いの?」
「リリーに特に用事がないなら今からでも良いけど」
「じゃあ、お言葉に甘えて、今からにするわ。さっさと挨拶してしまいたいの」
そう言って立ち上がると、リュカと共に彼の執務室に向かった。
****。
「レイクウッド様のお話はリュカから聞いています。リュカがとても、お世話になっているようですわね」
私たちよりも後に執務室に入ってきたレイクウッドは、私を見て驚いた顔をした。
私がソファに座ったまま笑顔で話しかけると、レイクウッドは頭を下げる。
「いえ、とんでもございません。それから、リリー様には無礼な態度を取ってしまい申し訳ございませんでした」
「何の話をしていらっしゃるの?」
首を傾げて尋ねると、レイクウッドは少し間をおいてから答える。
「初めて、お会いした時の話です。とても失礼な態度をとってしまいました」
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