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36 一緒にされたくありません
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心配そうにしているニーニャたちに、先に帰るように伝えると、シェラルが小声で「アデルバート様がまだいるか確認してくるわ! もし、帰ってしまっていたら、先生を呼んでくるから!」と言って駆け出していきました。
残ると言ってくれたニーニャたちにも一緒に行ってもらい、反撃する準備を整えました。
これから、私がやろうとしていることは、彼女たちに見てほしくなかったのです。
深呼吸してから、ミルーナさんに話しかけます。
「仲直りも何もないでしょう。仲が良かった時なんてないのですから」
「そ、そんな冷たいことを言わないでちょうだい。本当に反省しているのよ」
「そうだ! いちいち、文句を言うんじゃない! お前はミルーナ嬢の謝罪を黙って受け入れればいいんだ!」
「黙るのはあなたですよ」
割って入ってきたヴィーチに言うと、彼は私に言い返されたことが屈辱なのか、悔しそうな顔をして言います。
「偉そうに言うようになったな」
「ありがとうございます。褒め言葉として受け取っておきます」
ミルーナさんは私の態度に驚いた様子でしたが、笑みを浮かべて手を合わせます。
「アンナ、お願い。私を許してよ。悪いことをしたと思ってはいるわ。だけど、あれは子どもの頃の話よ。善悪の区別がつかなかったの。ほら、あれよ。両親のせいだわ」
「子どもだからといって、何をしても良いわけではありません。両親が悪いということは確かですが、あなただってある程度の判断ができる年になっていたはずです。」
「……じゃあ、どうしたら許してくれるの?」
目に涙を浮かべて、ミルーナさんは尋ねてきました。許すつもりはないですが、一応、聞いておきます。
「どうして私に許してほしいんですか?」
「あなたに悪いことをしたと思っているからよ」
「それなら、黙って目の前から消えてください」
「そ、そんな言い方しなくても良いじゃないの!」
「どうせ、アデル様に近づきたいから、仲良くしようとしているだけでしょう?」
「ひ、ひ、酷いわ!」
うわああ、と声を上げて、ミルーナさんは顔を覆いました。私にはすぐに嘘泣きだとわかりましたが、ヴィーチはそうとは思わなかったようです。
「ミルーナ嬢を泣かせるなんて許せない!」
叫ぶと、私に向かって拳を振り上げました。
ヴィーチは男性にしてもかなりの大柄ですし、私は平均よりも小柄ですから、リーチの差がかなりあります。
騎士団長から、こういう場合は卑怯と言われても良いから、狙えと言われている場所がありました。ですので、私は躊躇うことなく、狙えと言われている部分である男性の股間に前蹴りを入れました。
「うぐっ!」
まさか、私がこんなことをすると予想していなかったのか、ヴィーチは防御もできずに、股間を押さえて座り込みます。そんな彼に尋ねてみます。
「痛いですか?」
「……っ! い、痛いに……、決まってるだろう!」
「それは失礼しました。でも、私に乱暴しようとしましたよね。そのための防衛ですから、お許しくださいね」
「ま、まだ……、してない」
「攻撃される前に自分を守らせていただきました」
「ううう、くそっ……!」
私にはどんな痛みか想像がつきませんが、よっぽど痛いみたいです。ヴィーチは顔を上げることもできません。
こんなことを言ってはいけないことはわかっていますが、ちょっといい気味ですね。
「あ、あなた、なんてことをしてるのよ!」
嘘泣きをやめたミルーナさんが近づいてきたので、拳を作って前に突き出します。
「それ以上近づいたら殴ります」
「な、なんて野蛮な女なの!?」
「ミルーナさんに言われたくありません」
「わ、わたしは野蛮なんかじゃないわ!」
「昼休み、ミドルレイ子爵令嬢と暴れていたじゃないですか。そんな人と一緒にされたくありません」
「ぐぐっ」
ミルーナさんは悔しそうな顔をしたあと、どうせ私が殴れるはずがないとでも思ったのか、一歩前に近づいてきました。
攻撃されても良いのだと判断した私は、ミルーナさんの鼻に拳を一発、手加減してお見舞いしてあげたのでした。
残ると言ってくれたニーニャたちにも一緒に行ってもらい、反撃する準備を整えました。
これから、私がやろうとしていることは、彼女たちに見てほしくなかったのです。
深呼吸してから、ミルーナさんに話しかけます。
「仲直りも何もないでしょう。仲が良かった時なんてないのですから」
「そ、そんな冷たいことを言わないでちょうだい。本当に反省しているのよ」
「そうだ! いちいち、文句を言うんじゃない! お前はミルーナ嬢の謝罪を黙って受け入れればいいんだ!」
「黙るのはあなたですよ」
割って入ってきたヴィーチに言うと、彼は私に言い返されたことが屈辱なのか、悔しそうな顔をして言います。
「偉そうに言うようになったな」
「ありがとうございます。褒め言葉として受け取っておきます」
ミルーナさんは私の態度に驚いた様子でしたが、笑みを浮かべて手を合わせます。
「アンナ、お願い。私を許してよ。悪いことをしたと思ってはいるわ。だけど、あれは子どもの頃の話よ。善悪の区別がつかなかったの。ほら、あれよ。両親のせいだわ」
「子どもだからといって、何をしても良いわけではありません。両親が悪いということは確かですが、あなただってある程度の判断ができる年になっていたはずです。」
「……じゃあ、どうしたら許してくれるの?」
目に涙を浮かべて、ミルーナさんは尋ねてきました。許すつもりはないですが、一応、聞いておきます。
「どうして私に許してほしいんですか?」
「あなたに悪いことをしたと思っているからよ」
「それなら、黙って目の前から消えてください」
「そ、そんな言い方しなくても良いじゃないの!」
「どうせ、アデル様に近づきたいから、仲良くしようとしているだけでしょう?」
「ひ、ひ、酷いわ!」
うわああ、と声を上げて、ミルーナさんは顔を覆いました。私にはすぐに嘘泣きだとわかりましたが、ヴィーチはそうとは思わなかったようです。
「ミルーナ嬢を泣かせるなんて許せない!」
叫ぶと、私に向かって拳を振り上げました。
ヴィーチは男性にしてもかなりの大柄ですし、私は平均よりも小柄ですから、リーチの差がかなりあります。
騎士団長から、こういう場合は卑怯と言われても良いから、狙えと言われている場所がありました。ですので、私は躊躇うことなく、狙えと言われている部分である男性の股間に前蹴りを入れました。
「うぐっ!」
まさか、私がこんなことをすると予想していなかったのか、ヴィーチは防御もできずに、股間を押さえて座り込みます。そんな彼に尋ねてみます。
「痛いですか?」
「……っ! い、痛いに……、決まってるだろう!」
「それは失礼しました。でも、私に乱暴しようとしましたよね。そのための防衛ですから、お許しくださいね」
「ま、まだ……、してない」
「攻撃される前に自分を守らせていただきました」
「ううう、くそっ……!」
私にはどんな痛みか想像がつきませんが、よっぽど痛いみたいです。ヴィーチは顔を上げることもできません。
こんなことを言ってはいけないことはわかっていますが、ちょっといい気味ですね。
「あ、あなた、なんてことをしてるのよ!」
嘘泣きをやめたミルーナさんが近づいてきたので、拳を作って前に突き出します。
「それ以上近づいたら殴ります」
「な、なんて野蛮な女なの!?」
「ミルーナさんに言われたくありません」
「わ、わたしは野蛮なんかじゃないわ!」
「昼休み、ミドルレイ子爵令嬢と暴れていたじゃないですか。そんな人と一緒にされたくありません」
「ぐぐっ」
ミルーナさんは悔しそうな顔をしたあと、どうせ私が殴れるはずがないとでも思ったのか、一歩前に近づいてきました。
攻撃されても良いのだと判断した私は、ミルーナさんの鼻に拳を一発、手加減してお見舞いしてあげたのでした。
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