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34 昼休みは大事です
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次の日、いつもよりも少し早い時間に登校し、私たちしかいない教室でアデルバート様と昨日の話をしました。
アデルバート様の話によると、ヴィーチは誰かに頼まれたわけではなく、ただ、ミルーナさんを幸せにしたくて動いているだけだと言ったそうです。
「何で俺とミルーナ嬢がデートしないといけないんだと聞いたら、デートすれば必ず、ミルーナ嬢を好きになるからってさ。そんなわけないのにな」
「ミルーナさんは一部の男子には人気がありますし、マイクス侯爵令息も本当にミルーナさんが好きなのでしょう」
「人の好みに文句を言うつもりはないが、たとえ、ミルーナ嬢に良いところがあったとしても、それだけで好きになるわけじゃないだろ」
「そうなんですが、考え方が凝り固まっているんじゃないかと思います」
「どういうことだ?」
前の席に座るアデルバート様が不思議そうにするので、例え話をしてみます。
「ヴィーチにとっては、ミルーナさんが最高の女性なんです。だから、その良さが他の人にはわからないはずがない」
「……わからないんだが」
「わからないことがおかしいというのが、ヴィーチの考えなんだと思います」
「このままだと、一生、平行線で終わるな」
アデルバート様はうんざりした様子で言いました。
「どうせなら、ヴィーチが私に手を出してくれたら殴り飛ばして黙らせるのですが……、あっ!」
つい、いつものようにヴィーチと呼び捨てにしてしまったので口を押さえると、アデルバート様は不満そうにします。
「マイクス侯爵令息は呼び捨てかよ」
「……どういう意味でしょうか?」
「俺はアンナの婚約者だよな?」
「はい!」
「なら、アデルでいいんじゃないか?」
じぃっと拗ねたような顔で見つめられたので、ドキドキする胸を押さえて口を開きます。
「ア、アデル……さま」
「結局、様は付けるのかよ」
アデルバート様……ではなく、アデル様はいっぱいいっぱいになっている私を見て微笑みます。
「まあ、いいや。昨日からイライラしていたんだが、アンナのおかげで直った」
「……もしかして、アデルと呼んでほしかったのですか?」
「呼んでほしかったっていうか、同性の友人はみんな、アデルって呼ぶからな。一番、親しいはずのアンナが呼んでくれないことは気になってた」
「も、申し訳ございません!」
「謝るなよ。アンナは何も悪くないって。嫌だったとかじゃなくて、呼んでもらえたら嬉しいだけだ」
呼び方によって、受け取る印象が違ったりしますものね。私だって、ニーニャたちからレイガス伯爵令嬢と呼ばれるよりも、アンナさんや、アンナと呼ばれたら、親しい友人のような気がして嬉しいですし。
でも、アデル様がそんな子供っぽいことを考えていたなんて、可愛らしいところもあるのですね。
ニコニコしていると、「何がそんなに楽しいんだよ」と不満そうに言いつつも笑ってくれました。
******
そうこうしている内に、みんなの登校時間になったので、ニーニャたちと合流する前に、一限目の授業の準備をしようと、机の中に手を入れた時でした。
教科書ではない何かが手に当たりました。
何かのプリントかと思い、手に取って出してみると、日時と場所が書いてありました。誰からとは書いてありませんが、このタイミング的にロウト伯爵令息からでしょう。一応、本人には昼休みに確認しようかと思いましたが、指定の時間は今日の昼休みでした。
しかも学園の屋上です。改めて読み直してみると、『必ず来い』と命令形になっていたので、相手はヴィーチだと判断しました。
本当にしつこい人です! アデル様が駄目なら、また私ということでしょうか! アデル様に相談して、ローンノウル侯爵家から苦情を入れてもらいましょう。
「ど、どうかしましたか?」
教室に入ってきたニーニャが心配そうな顔で尋ねてくるので、笑顔で頷きます。
「大丈夫ですよ。他のクラスの人がわざわざゴミを入れたみたいです」
私の机の中に入っていただけで、宛名は書かれていません。大事な昼休みの時間を潰されたくありませんので、私はその紙をアデル様に見せて、あとはお任せしたのでした。
アデルバート様の話によると、ヴィーチは誰かに頼まれたわけではなく、ただ、ミルーナさんを幸せにしたくて動いているだけだと言ったそうです。
「何で俺とミルーナ嬢がデートしないといけないんだと聞いたら、デートすれば必ず、ミルーナ嬢を好きになるからってさ。そんなわけないのにな」
「ミルーナさんは一部の男子には人気がありますし、マイクス侯爵令息も本当にミルーナさんが好きなのでしょう」
「人の好みに文句を言うつもりはないが、たとえ、ミルーナ嬢に良いところがあったとしても、それだけで好きになるわけじゃないだろ」
「そうなんですが、考え方が凝り固まっているんじゃないかと思います」
「どういうことだ?」
前の席に座るアデルバート様が不思議そうにするので、例え話をしてみます。
「ヴィーチにとっては、ミルーナさんが最高の女性なんです。だから、その良さが他の人にはわからないはずがない」
「……わからないんだが」
「わからないことがおかしいというのが、ヴィーチの考えなんだと思います」
「このままだと、一生、平行線で終わるな」
アデルバート様はうんざりした様子で言いました。
「どうせなら、ヴィーチが私に手を出してくれたら殴り飛ばして黙らせるのですが……、あっ!」
つい、いつものようにヴィーチと呼び捨てにしてしまったので口を押さえると、アデルバート様は不満そうにします。
「マイクス侯爵令息は呼び捨てかよ」
「……どういう意味でしょうか?」
「俺はアンナの婚約者だよな?」
「はい!」
「なら、アデルでいいんじゃないか?」
じぃっと拗ねたような顔で見つめられたので、ドキドキする胸を押さえて口を開きます。
「ア、アデル……さま」
「結局、様は付けるのかよ」
アデルバート様……ではなく、アデル様はいっぱいいっぱいになっている私を見て微笑みます。
「まあ、いいや。昨日からイライラしていたんだが、アンナのおかげで直った」
「……もしかして、アデルと呼んでほしかったのですか?」
「呼んでほしかったっていうか、同性の友人はみんな、アデルって呼ぶからな。一番、親しいはずのアンナが呼んでくれないことは気になってた」
「も、申し訳ございません!」
「謝るなよ。アンナは何も悪くないって。嫌だったとかじゃなくて、呼んでもらえたら嬉しいだけだ」
呼び方によって、受け取る印象が違ったりしますものね。私だって、ニーニャたちからレイガス伯爵令嬢と呼ばれるよりも、アンナさんや、アンナと呼ばれたら、親しい友人のような気がして嬉しいですし。
でも、アデル様がそんな子供っぽいことを考えていたなんて、可愛らしいところもあるのですね。
ニコニコしていると、「何がそんなに楽しいんだよ」と不満そうに言いつつも笑ってくれました。
******
そうこうしている内に、みんなの登校時間になったので、ニーニャたちと合流する前に、一限目の授業の準備をしようと、机の中に手を入れた時でした。
教科書ではない何かが手に当たりました。
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「大丈夫ですよ。他のクラスの人がわざわざゴミを入れたみたいです」
私の机の中に入っていただけで、宛名は書かれていません。大事な昼休みの時間を潰されたくありませんので、私はその紙をアデル様に見せて、あとはお任せしたのでした。
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