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アデルバート様は私よりも多く巻き戻っていますから、私の知らない過去があってもおかしくありません。今までは違う時間軸にいましたが、今、こうして同じ時間を過ごせていることが、私たちが巻き戻りを繰り返していた理由なのかもしれません。
「私がミドルレイ子爵家の話を聞いた覚えがあるのは、そのことに関係があるのでしょうか」
「でも、アンナには俺がミドルレイ子爵令嬢に殺されたという記憶はないんだろ?」
「アデルバート様は女性絡みで殺されていることが多いので、幼い頃から遊び人だったのかと思い込んでおりまして、絶対にそうではないとは言えません」
「他人事だったから、詳しいことまでは覚えていないってことかよ」
「そういうことでございます」
正直に頷いてから謝ります。
「申し訳ございません!」
「謝らなくていいって。軽い男と思われていたのは心外だが、普通はそうだよな。今はアンナのおかげで生きていられるんだと思う。だから、本当に感謝してる」
「私の運命が変わっているのも、アデルバート様と知り合ったからだと思いますから、お互い様ということでしょうか」
微笑んで言うと、アデルバート様も笑みを浮かべて頷きました。
「ところで、ミドルレイ子爵令嬢に殺された理由はわかっているのですか?」
「……ああ。婚約者になりたいと言われたんだが、他にも俺の婚約者になりたいという令嬢がいたんだ」
「違う方を選んだんですね?」
「両親がな。俺は興味なかったから、両親に選んでもらったんだ」
アデルバート様は小さい頃から人気があって、匿名の女性からのアプローチがすごかったそうです。匿名でアプローチしても意味がないような気がしますが、低位貴族の令嬢では侯爵令息に真正面から想いを伝えにくいというところでしょうか。
「事故以外ではアデルバート様に冷たくされたという理由や、婚約者にしてもらえなかったなどの理由で殺されていたと思うのですが、大体は学園内でしたね」
子供が殺人をするのではなく、その親が密かに殺意を抱いていたということが多かった気がします。
「そうなんだ。でも、ミドルレイ子爵令嬢は別だった」
「本人自らがアデルバート様を手に掛けたのですか」
「ああ。だから、アンナと俺が婚約したら」
「アデルバート様が危険なのですね!」
「いや、それもそうだが、俺はもう16歳になるし、自分の身は自分で守れる。心配なのはアンナだ」
「……どういうことでしょうか?」
「俺の婚約者になったら、アンナも狙われる可能性がある。ミドルレイ子爵令嬢が相手なら特にな」
「……逆恨みされる可能性があるのですね」
納得したあとに思いついたことを話します。
「アデルバート様は自分の身を守れるくらい強くなったのですよね?」
「まあな。元々、剣は扱えないといけなかったし、護身術も習ったしな」
「では、私も護身術を習おうと思います!」
「は?」
アデルバート様が眉根を寄せて聞き返してきました。
「自分で自分の身を守るというの大切なことだと思うんです」
「アンナは中身は別として、体はまだ13歳だし、同じ年齢の女子よりかなり痩せてるぞ? 護身術を習う前に骨が折れるんじゃないのか?」
「そこまでか弱くありません!」
アデルバート様は納得していないのか、眉根を寄せたままです。こうなったら、アデルバート様に内緒で武術を学びましょう!
……そうです! 私もシルバートレイを使えるか確認してみましょう! 六年前にお姉様が私をシルバートレイで叩いた件で、シルバートレイを売っているお店に苦情の手紙がたくさん届いたそうです。
そのせいで、一時期は販売停止まで追い込まれていました。再販の要望が多く、1年後には復活しましたが、迷惑をかけてしまったと気にしていました。
私がシルバートレイを上手く扱えるようになって、自分の身を守れるようになったら、販売元の方にも良いはずです!
……って、あれは15歳以上対象でした!
「ミルドレイ子爵令嬢の件ですが、私のことは気にしないでくださいませ!」
「父さんやボス公爵には話をしておくけど、無理はするなよ」
「わかっています。ですから、アデルバート様は自分のことだけ考えてくださいませ」
「じゃあ、アンナも俺のことは考えるなよ?」
「それは無理です」
「それなら俺も無理だな」
アデルバート様が答えた時に、店員が飲み物を運んできたので、一度、話を中断したのでした。
******
アデルバート様と別れたあとにレイガス伯爵夫人に連絡を入れたところ、手紙をもらえました。
そこにはミドルレイ子爵令嬢が養女であると書かれていました。ただ、彼女がどこの家から養女に出されたのかはわからないとのことでした。
私を養女にするという話で思い出したそうで、アデルバート様のことや、どこの家からかわからないということが普通ではないため、気になって話をしておこうと思ったと書かれていました。
そして、その時に思い出したのです。私がミドルレイ子爵家のことを覚えていたのは、お姉様の婚約者であるロウト伯爵令息と愛し合っているのではないかという噂を聞いたからでした。
私が18歳の時ですので、アデルバート様は亡くなっていました。ですから、ミドルレイ子爵令嬢がアデルバート様を忘れて、新しい恋を始めていてもおかしくありません。
結局、本当のことがわからない間に私は殺されています。
もしかして、お姉様がロウト伯爵令息に捨てられて、八つ当たりでエイン様を誘惑したのでしょうか。
「私がミドルレイ子爵家の話を聞いた覚えがあるのは、そのことに関係があるのでしょうか」
「でも、アンナには俺がミドルレイ子爵令嬢に殺されたという記憶はないんだろ?」
「アデルバート様は女性絡みで殺されていることが多いので、幼い頃から遊び人だったのかと思い込んでおりまして、絶対にそうではないとは言えません」
「他人事だったから、詳しいことまでは覚えていないってことかよ」
「そういうことでございます」
正直に頷いてから謝ります。
「申し訳ございません!」
「謝らなくていいって。軽い男と思われていたのは心外だが、普通はそうだよな。今はアンナのおかげで生きていられるんだと思う。だから、本当に感謝してる」
「私の運命が変わっているのも、アデルバート様と知り合ったからだと思いますから、お互い様ということでしょうか」
微笑んで言うと、アデルバート様も笑みを浮かべて頷きました。
「ところで、ミドルレイ子爵令嬢に殺された理由はわかっているのですか?」
「……ああ。婚約者になりたいと言われたんだが、他にも俺の婚約者になりたいという令嬢がいたんだ」
「違う方を選んだんですね?」
「両親がな。俺は興味なかったから、両親に選んでもらったんだ」
アデルバート様は小さい頃から人気があって、匿名の女性からのアプローチがすごかったそうです。匿名でアプローチしても意味がないような気がしますが、低位貴族の令嬢では侯爵令息に真正面から想いを伝えにくいというところでしょうか。
「事故以外ではアデルバート様に冷たくされたという理由や、婚約者にしてもらえなかったなどの理由で殺されていたと思うのですが、大体は学園内でしたね」
子供が殺人をするのではなく、その親が密かに殺意を抱いていたということが多かった気がします。
「そうなんだ。でも、ミドルレイ子爵令嬢は別だった」
「本人自らがアデルバート様を手に掛けたのですか」
「ああ。だから、アンナと俺が婚約したら」
「アデルバート様が危険なのですね!」
「いや、それもそうだが、俺はもう16歳になるし、自分の身は自分で守れる。心配なのはアンナだ」
「……どういうことでしょうか?」
「俺の婚約者になったら、アンナも狙われる可能性がある。ミドルレイ子爵令嬢が相手なら特にな」
「……逆恨みされる可能性があるのですね」
納得したあとに思いついたことを話します。
「アデルバート様は自分の身を守れるくらい強くなったのですよね?」
「まあな。元々、剣は扱えないといけなかったし、護身術も習ったしな」
「では、私も護身術を習おうと思います!」
「は?」
アデルバート様が眉根を寄せて聞き返してきました。
「自分で自分の身を守るというの大切なことだと思うんです」
「アンナは中身は別として、体はまだ13歳だし、同じ年齢の女子よりかなり痩せてるぞ? 護身術を習う前に骨が折れるんじゃないのか?」
「そこまでか弱くありません!」
アデルバート様は納得していないのか、眉根を寄せたままです。こうなったら、アデルバート様に内緒で武術を学びましょう!
……そうです! 私もシルバートレイを使えるか確認してみましょう! 六年前にお姉様が私をシルバートレイで叩いた件で、シルバートレイを売っているお店に苦情の手紙がたくさん届いたそうです。
そのせいで、一時期は販売停止まで追い込まれていました。再販の要望が多く、1年後には復活しましたが、迷惑をかけてしまったと気にしていました。
私がシルバートレイを上手く扱えるようになって、自分の身を守れるようになったら、販売元の方にも良いはずです!
……って、あれは15歳以上対象でした!
「ミルドレイ子爵令嬢の件ですが、私のことは気にしないでくださいませ!」
「父さんやボス公爵には話をしておくけど、無理はするなよ」
「わかっています。ですから、アデルバート様は自分のことだけ考えてくださいませ」
「じゃあ、アンナも俺のことは考えるなよ?」
「それは無理です」
「それなら俺も無理だな」
アデルバート様が答えた時に、店員が飲み物を運んできたので、一度、話を中断したのでした。
******
アデルバート様と別れたあとにレイガス伯爵夫人に連絡を入れたところ、手紙をもらえました。
そこにはミドルレイ子爵令嬢が養女であると書かれていました。ただ、彼女がどこの家から養女に出されたのかはわからないとのことでした。
私を養女にするという話で思い出したそうで、アデルバート様のことや、どこの家からかわからないということが普通ではないため、気になって話をしておこうと思ったと書かれていました。
そして、その時に思い出したのです。私がミドルレイ子爵家のことを覚えていたのは、お姉様の婚約者であるロウト伯爵令息と愛し合っているのではないかという噂を聞いたからでした。
私が18歳の時ですので、アデルバート様は亡くなっていました。ですから、ミドルレイ子爵令嬢がアデルバート様を忘れて、新しい恋を始めていてもおかしくありません。
結局、本当のことがわからない間に私は殺されています。
もしかして、お姉様がロウト伯爵令息に捨てられて、八つ当たりでエイン様を誘惑したのでしょうか。
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