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番外編
嫉妬するのは悪いこと? ③
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「人の婚約者に声をかけるなんて信じられない」
「アルフレッド殿下自体が普通じゃないんだから、信じられなくてもしょうがないわ。相手にするだけ無駄よ」
ああいうタイプは最初から相手にしないのが一番だから、私としては何か言われてもすぐに忘れるようにしているのだけど、ロキはそう思えないみたいで、ムッとした表情で聞いてくる。
「アイラはアルフレッド殿下の肩を持つの?」
「そういうわけじゃないわよ。大体、アルフレッド殿下は深いことなんて考えていないでしょう。あの方の言葉を全て素直に受け止めていたら疲れるだけよ。ずっと冗談を言っている人だと思うようにしているわ」
「それはそれで酷い考え方のような気もするな」
「これ以上ストレスを溜めたくないの。ただでさえイライラしているのに」
「どうしてイライラしてるんだよ」
ロキが不機嫌そうな表情から心配そうな表情に変えて聞いてくる。
マリッジブルーになっているからイライラしているなんて言いにくいわ。
それって、ロキとの結婚が嫌だと言っているようなものだし、一般的にそれが起こり得ることだとしても、ロキのことだからショックを受けるに違いない。
でも、良い答えが見つからなかったので、遠回しに伝える。
「結婚前で不安になっているだけよ。それをイライラだと感じているんだと思うわ」
「それって」
ロキが何か言おうとした時、とある人物がこちらを見つめていることに気が付いた。
「ロキ、あの方って」
指を差すのは失礼になるので、ロキに私の視線の先を追ってもらうと、ロキも相手がこちらを見ていることに気が付いたみたいだった。
レモン色のドレスに身を包み、ピンク色の艷やかなストレートの髪を背中に垂らした小柄な美少女が私たち、いや、ロキを見つめていた。
美少女はロキが自分の視線に気が付いたことがわかると、慌てて視線を逸らし、両手で顔を覆った。
ロキに気づかれて、恥ずかしがっているみたいだった。
一生懸命、覚えた顔と名前を頭の中で思い浮かべて答えを出す。
「フルレ王国のロイナ王女殿下だったかしら」
「そうだな。第一王女殿下だよ」
ロキが招待されているのだから、他の国の王族が招待されていてもおかしくはない。
「ロキって本当に人気があるわよね」
「有り難いことだとは思うけど、正直、困るところでもある」
「どうして?」
「気持ちに応えられないだろ」
「それは、どうだかわからないわよ」
別に気持ちに応えられないわけではないと思う。
ロキが私にこだわっているだけで、別に他の人を選んでも良いんだもの。
――どうして、こんなにモヤモヤしているのか、今まではわからなかった。
ロキと結婚したくないなんて思っていない。
それなのに、こんなに憂鬱な気分になるのは不安からなのだとやっとわかった。
ロキのことを外見だけで好きになる人もたくさんいる。
それなのに、私は大して可愛くない。
だから、ロイナ王女殿下のような可愛い人が、ロキに言い寄ったらどうなるの?
ロキは私と結婚したことを後悔するんじゃないかしら。
私は嫉妬にかられて、ロキが次に選んだ相手に嫌なことをしてしまうんじゃないかと思って怖くなった。
泣き叫んですがるようなことだってしたくない。
私は王太子妃になるのが不安なわけではなくて、ロキにいつか捨てられてしまうんじゃないかと怯えて暮らす日々を過ごすことが嫌なんだわ。
「アルフレッド殿下自体が普通じゃないんだから、信じられなくてもしょうがないわ。相手にするだけ無駄よ」
ああいうタイプは最初から相手にしないのが一番だから、私としては何か言われてもすぐに忘れるようにしているのだけど、ロキはそう思えないみたいで、ムッとした表情で聞いてくる。
「アイラはアルフレッド殿下の肩を持つの?」
「そういうわけじゃないわよ。大体、アルフレッド殿下は深いことなんて考えていないでしょう。あの方の言葉を全て素直に受け止めていたら疲れるだけよ。ずっと冗談を言っている人だと思うようにしているわ」
「それはそれで酷い考え方のような気もするな」
「これ以上ストレスを溜めたくないの。ただでさえイライラしているのに」
「どうしてイライラしてるんだよ」
ロキが不機嫌そうな表情から心配そうな表情に変えて聞いてくる。
マリッジブルーになっているからイライラしているなんて言いにくいわ。
それって、ロキとの結婚が嫌だと言っているようなものだし、一般的にそれが起こり得ることだとしても、ロキのことだからショックを受けるに違いない。
でも、良い答えが見つからなかったので、遠回しに伝える。
「結婚前で不安になっているだけよ。それをイライラだと感じているんだと思うわ」
「それって」
ロキが何か言おうとした時、とある人物がこちらを見つめていることに気が付いた。
「ロキ、あの方って」
指を差すのは失礼になるので、ロキに私の視線の先を追ってもらうと、ロキも相手がこちらを見ていることに気が付いたみたいだった。
レモン色のドレスに身を包み、ピンク色の艷やかなストレートの髪を背中に垂らした小柄な美少女が私たち、いや、ロキを見つめていた。
美少女はロキが自分の視線に気が付いたことがわかると、慌てて視線を逸らし、両手で顔を覆った。
ロキに気づかれて、恥ずかしがっているみたいだった。
一生懸命、覚えた顔と名前を頭の中で思い浮かべて答えを出す。
「フルレ王国のロイナ王女殿下だったかしら」
「そうだな。第一王女殿下だよ」
ロキが招待されているのだから、他の国の王族が招待されていてもおかしくはない。
「ロキって本当に人気があるわよね」
「有り難いことだとは思うけど、正直、困るところでもある」
「どうして?」
「気持ちに応えられないだろ」
「それは、どうだかわからないわよ」
別に気持ちに応えられないわけではないと思う。
ロキが私にこだわっているだけで、別に他の人を選んでも良いんだもの。
――どうして、こんなにモヤモヤしているのか、今まではわからなかった。
ロキと結婚したくないなんて思っていない。
それなのに、こんなに憂鬱な気分になるのは不安からなのだとやっとわかった。
ロキのことを外見だけで好きになる人もたくさんいる。
それなのに、私は大して可愛くない。
だから、ロイナ王女殿下のような可愛い人が、ロキに言い寄ったらどうなるの?
ロキは私と結婚したことを後悔するんじゃないかしら。
私は嫉妬にかられて、ロキが次に選んだ相手に嫌なことをしてしまうんじゃないかと思って怖くなった。
泣き叫んですがるようなことだってしたくない。
私は王太子妃になるのが不安なわけではなくて、ロキにいつか捨てられてしまうんじゃないかと怯えて暮らす日々を過ごすことが嫌なんだわ。
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