【完結】婚約破棄された貧乏子爵令嬢ですが、王太子殿下に溺愛されています

風見ゆうみ

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番外編

それぞれのその後 〜サラとエイドの場合〜

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 王太子妃候補がアイラだけになったとわかってからすぐのこと、仕事が休みということでゆっくりしていたサラの元にエイドが訪ねてきた。
 サラの両親は公爵令息であるエイドは自分の愛娘の夫にするのは申し分ないため、彼をとても歓迎した。
 そんな両親の様子を見ながらサラは思う。

(これって、周りから固められてるんじゃないのかしら)

 そんなサラの気持ちに気が付いたのか、エイドは苦笑する。

「そんなに冷たい目で見ないでくださいよ。私だって迷惑だってことはわかってます」
「迷惑とまでは言わないけど、でも、そう思うならどうして来るの」
「そうでもしないと距離が縮まらないじゃないですか」
「私は束縛されることが嫌いだから、そんなことをされたら気持ちが余計に遠ざかる可能性もあるわよ」

 応接室に案内しながら、サラが冷たく応えるとエイドは黙り込んでしまう。

(この関係性が続くのであれば、エイドと付き合うことは嫌じゃない。嫌じゃないんだけど、付き合ったらその先のことを考えないといけないのよね)

 サラは束縛されるのを嫌う。
 だから、エイドとのお付き合いの先に見えてくる公爵夫人という立場が嫌でしょうがなかった。

 だけど、最近になって彼女の気持ちにも変化があった。
 エイドのことを男性として見ているという気持ちと、親友が王太子妃になるということだった。

(アイラは王太子妃、ロキは王太子、エイドは公爵令息となると、私だけ子爵令嬢って格が違いすぎるのよね)

 サラは昔のように4人で仲良くしたかった。
 子爵令嬢のままでも、アイラとロキが仲良くしてくれることはわかっている。
 でも、自分の中ではそれを良しとしなかった。

「そんなに迷惑でしたか」

 気がつくと、エイドが廊下で立ち止まってうつむき加減になっていたので、サラは足を止めて彼に近寄る。

「迷惑なんかじゃないって言ってるでしょう」
「君の不機嫌そうな顔を見ていたら、そう思うしかないじゃないですか」
「じゃあ聞くけど、あなたはそれで私を諦めてくれるの」
「それはっ」

 エイドは俯いていた顔を上げた。
 彼が何かいう前に、サラが話し始める。

「前向きには考えているのよ」
「何をですか」
「何をってあなたとのことじゃないの!」
「そうなんですか?」
「そうなんですかって……、もういいわ」

 どうでも良くなってしまったサラは、ため息を吐いてからエイドに尋ねる。

「やっぱり、もう帰る?」
「帰りません! 嫌な思いをさせてしまったのならも申し訳ない」

 謝ってくるエイドを見て、自分も大人げなかったと思ったサラは機嫌を直して、エイドと話をすることにした。

 こんな感じのやり取りを続けていた二人だったが、ある日、エイドはサラにお試しで良いから付き合ってくれとお願いしてきた。
 そして、サラも自分の気持ちを確かめる意味もあり、それを了承した。

 でも、それはエイドの罠だった。
 彼は公爵家にサラを連れて行き、自分の両親に紹介した。
 そして、サラが自分の両親から好印象を得ると、婚約の話を少しずつ進めていくことになるのだが、お試し期間と信じて付き合い始めたサラが、そんなことを知る由もなかった。 
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