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45 悪あがきする公爵令嬢②
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ポスティム公爵令嬢は足を止めた私に話しかけてくる。
「キャスティー子爵令嬢、わたくしから話がありましてよ」
「申し訳ございませんが、今からダンスのレッスンがあるんです。お話を聞くのは、その後からでもよろしいでしょうか」
「駄目に決まっているでしょう! わたくしの話をを後回しにすると言うつもりなの!?」
「では、私に約束を破れとおっしゃるのですか?」
「どういうことよ!」
ヒステリックになって聞いてくるので、無礼だとわかっていながらも、私は大きく息を吐いてから答える。
「ダンスの先生とは時間をお約束しているのです。ポスティム公爵令嬢とお話しておりましたら、その時間に遅れてしまう可能性があります。そうなった場合、私は約束を破った人間になりますわよね」
「わたくしが相手なのだから、そんなことは気にしなくて良いのです!」
「どうして気にしなくて良いのか理由がわかりません」
「わたくしよりも優先しなければならない用事などないからです」
ポスティム公爵令嬢は強気の笑みを浮かべて言った。
私は冷静になるように心がけながらも言い返す。
「それは、ポスティム公爵家内での話であり、外の世界ではそれがまかり通るとは思えません」
「本当に生意気な女ね! 少なくとも子爵令嬢のお前よりもわたくしのほうが格上なのよ! 不敬罪だと言われたくなければ、わたくしの言うことを聞きなさい!」
ポスティム公爵令嬢は顔を歪めて、声を荒らげた。
主張が無茶苦茶だわ。
さすがに彼女の周りに立っているメイドたちも不安そうな顔をしている。
ただでさえ、ミゲスダット家が流したと思われる噂で、彼女の立場は悪い状況なのに、それ以上、悪化させるようなことをしているのだから、メイドたちにしてみれば気が気ではないでしょうね。
最悪の場合、自分たちは仕事を失うことになるんだもの。
甘い密を吸ってきたのなら余計に辛いはずだわ。
「このお話はロキアス殿下にお伝えさせていただきますが、その覚悟はお有りですか?」
話を終わらせるために尋ねると、ポスティム公爵令嬢はびくりと体を震わせた。
言い返されると思っていなかったのかしら。
まさか、私のことをロキに報告しないお人好しだと思っていたわけじゃないわよね?
「ポスティム公爵令嬢、私は自分がどうこう言われるのはかまいません。気にしなければ良いことですので。でも、私を悲しませるために、他の人間を巻き込むことは許せません。あなたが他の人を巻き込むというのであれば、私も他の人を巻き込むだけです。そして、巻き込む相手がロキアス殿下だということをお忘れなきよう、お願いいたします」
そこまで言って立ち去ろうとしたけれど、言い忘れていたことがあったので付け加える。
「それから、ロキアス殿下にお話するのは、相手がエレイン様であっても同じです。あなたも私も王太子妃候補なんですから、王太子殿下に事実をお伝えするのも義務だと思います」
「ま、待って! 馬鹿なことをするのはやめなさい!」
「馬鹿なことではありません。あなたが始めたことでしょう。私は決められたルール内で競うつもりでした」
「待ちなさい! わたくしは何も関係ないわ!」
「関係ないのであれば、そんなに焦らなくてもよろしいかと思います」
にこりと微笑んでから、私は歩き始めた。
背後から叫ぶ声が聞こえてきたけれど、私は足を止めることも振り返ることもしなかった。
「キャスティー子爵令嬢、わたくしから話がありましてよ」
「申し訳ございませんが、今からダンスのレッスンがあるんです。お話を聞くのは、その後からでもよろしいでしょうか」
「駄目に決まっているでしょう! わたくしの話をを後回しにすると言うつもりなの!?」
「では、私に約束を破れとおっしゃるのですか?」
「どういうことよ!」
ヒステリックになって聞いてくるので、無礼だとわかっていながらも、私は大きく息を吐いてから答える。
「ダンスの先生とは時間をお約束しているのです。ポスティム公爵令嬢とお話しておりましたら、その時間に遅れてしまう可能性があります。そうなった場合、私は約束を破った人間になりますわよね」
「わたくしが相手なのだから、そんなことは気にしなくて良いのです!」
「どうして気にしなくて良いのか理由がわかりません」
「わたくしよりも優先しなければならない用事などないからです」
ポスティム公爵令嬢は強気の笑みを浮かべて言った。
私は冷静になるように心がけながらも言い返す。
「それは、ポスティム公爵家内での話であり、外の世界ではそれがまかり通るとは思えません」
「本当に生意気な女ね! 少なくとも子爵令嬢のお前よりもわたくしのほうが格上なのよ! 不敬罪だと言われたくなければ、わたくしの言うことを聞きなさい!」
ポスティム公爵令嬢は顔を歪めて、声を荒らげた。
主張が無茶苦茶だわ。
さすがに彼女の周りに立っているメイドたちも不安そうな顔をしている。
ただでさえ、ミゲスダット家が流したと思われる噂で、彼女の立場は悪い状況なのに、それ以上、悪化させるようなことをしているのだから、メイドたちにしてみれば気が気ではないでしょうね。
最悪の場合、自分たちは仕事を失うことになるんだもの。
甘い密を吸ってきたのなら余計に辛いはずだわ。
「このお話はロキアス殿下にお伝えさせていただきますが、その覚悟はお有りですか?」
話を終わらせるために尋ねると、ポスティム公爵令嬢はびくりと体を震わせた。
言い返されると思っていなかったのかしら。
まさか、私のことをロキに報告しないお人好しだと思っていたわけじゃないわよね?
「ポスティム公爵令嬢、私は自分がどうこう言われるのはかまいません。気にしなければ良いことですので。でも、私を悲しませるために、他の人間を巻き込むことは許せません。あなたが他の人を巻き込むというのであれば、私も他の人を巻き込むだけです。そして、巻き込む相手がロキアス殿下だということをお忘れなきよう、お願いいたします」
そこまで言って立ち去ろうとしたけれど、言い忘れていたことがあったので付け加える。
「それから、ロキアス殿下にお話するのは、相手がエレイン様であっても同じです。あなたも私も王太子妃候補なんですから、王太子殿下に事実をお伝えするのも義務だと思います」
「ま、待って! 馬鹿なことをするのはやめなさい!」
「馬鹿なことではありません。あなたが始めたことでしょう。私は決められたルール内で競うつもりでした」
「待ちなさい! わたくしは何も関係ないわ!」
「関係ないのであれば、そんなに焦らなくてもよろしいかと思います」
にこりと微笑んでから、私は歩き始めた。
背後から叫ぶ声が聞こえてきたけれど、私は足を止めることも振り返ることもしなかった。
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