【完結】婚約破棄された貧乏子爵令嬢ですが、王太子殿下に溺愛されています

風見ゆうみ

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43 王太子妃になる決意

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 休暇期間だからといって、私の身が安全かどうかはわからないということで、護衛騎士が交代要員を含めて十人も付いてきてくれていた。
 ケーキ屋で大人しくして待っているので、ロキに先程の出来事を伝えてほしいとお願いするとと、代表者が一人、すぐに王城に向かってくれた。

「一体、どんなことをしてくるつもりなのかしら。家族やエディーさんやサラには手を出したりしないわよね?」

 ポスティム公爵令嬢が私に何かしてくるならまだしも、私以外の誰かを傷つけようとするのでは無いかと思うと心配でしょうがなかった。

「一応、公爵令嬢なんだから、そこまで馬鹿なことはしないんじゃないかしら」

 サラは笑顔でそう言ってくれたけれど、私の不安は拭えなかった。
 自分に何かあったとしても、それはしょうがないと思う。
 いや、しょうがなくはないけれど、自分以外の誰かに危害を加えられることのほうが嫌だった。

 ロキは私からの知らせを受けて、エイドに連絡をしてくれた。
 そして、ミゲスダット公爵家のほうから、サラやサラの家族、そして私の家族に護衛を付けてくれた。
 エディーさんの場合は自分の家の護衛騎士がいるからと辞退された。
 
 エイドに頼んだのはロキが手配すると、またポスティム公爵令嬢から私を贔屓していると言われてしまうからだと思われる。
 ミゲスダット家まで巻き込んでしまい、人騒がせだと言われても、何も起こらなかったのであれば、それで良いと思った。



*****


 次の日の朝、実家でのんびりしていた私の元に、昨日の夜中に複数人の男がサラの家に忍びこもうとしていたという連絡が入った。
 そして、その男たちを家の周りを警戒してくれていた騎士たちが発見して捕まえたのだという。

 警察で取り調べをしている最中らしいけれど、お金目当てで忍びこもうとしたと言うだけで、なぜ、サラの家に目星をつけたのかは答えないのだという。

 サラの家は子爵家だけれど、裕福なほうではない。
 どうせ忍び込むなら、お金をより多く持っている子爵家に忍び込むのが普通だと思う。
 伯爵家ほどになると、警備が厚くなり入り込みにくいから敬遠するのかもしれないけれど、子爵家であれば警備はどこでも同じようなものだからだ。
 
 落ち着いていられなくて、サラと約束している時間よりも早く待ち合わせの場所に向かうと、サラではなくエイドがいた。
 彼が陣取っている店の奥にあるテーブルに近づいていくと、眉間にシワを寄せたエイドが話しかけてくる。

「おはようございます。サラが来る前に少しお話をしたいんですがかまいませんか?」
「おはよう。それはかまわないけど、サラの家のこと、本当にありがとう」
「あなたが気にしているだろうから、先にここに行ってくれとサラに言われたんですよ」
「サラには会ったのね。サラのご家族もどんな感じだった?」
「心配して朝一番に会いに行ったら、私は元気だから、それよりもアイラに気をつけてと伝えてくれと言われたんですよ」

 エイドは言い終えたあと、大きなため息を吐いた。

「サラは自分たちのことよりも、私のことを心配してくれたのね」
「そうなんですよ。彼女が無事だったから良かったですが、話を聞いた時にはこっちは血の気が引いたというのに」
「私のせいでサラや、サラの家族を巻き込んでごめんね」

 エイドの向かい側に座ってから頭を下げると、エイドが慌てた声を出す。

「謝らないでください。別に私はあなたを責めているわけじゃない。悪いのはポスティム公爵家です」
「でも、忍びこもうとした人たちは、ポスティム公爵家が絡んでいるとは口にしないのでしょう?」
「ええ。ですが、調べなくてもわかることでしょう」
「決めつけは良くないけれど、タイミング的にもばっちりだものね」
「でも、しばらくは向こうも動けないと思います。ミゲスダット公爵家と敵対関係になりたくはないでしょうから」

 エイドは一度言葉を区切ってから、私を見つめて言う。

「先ほども似たようなことを言いましたが、あなたが悪いだなんて一つも思いません。それでも、気が済まないというのであれば、絶対にポスティム公爵令嬢を王太子妃に選ばれないようにしてください」

 簡単に頷けることじゃない。
 だけど、ポスティム公爵令嬢を王太子妃には絶対にさせたくない。
 その気持ちは私の中で大きく膨らんでいた。

「わかったわ。絶対に王太子妃になってみせる」

 力強く言うと、エイドは満面の笑みを浮かべて、なぜか拍手をした。

 サラの家の件にエイドは無関係なのはわかっている。
 でも、王太子妃については、エイドにそう言うように誘導されてしまったような気がして、少しだけ納得いかない気分になった。
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