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38 休暇中の出来事①
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「アイラ様とエレイン様なら最終候補に残ると思っておりましたわ!」
「必ず勝ち残ってくださいね。遠くからではありますが応援しています」
結果発表があった次の日、フューニ様とフィーニ様が別邸を去ることになった。
王家側としては、10日程の猶予を設けていたけれど、二人は少しでも早くに家に帰りたいとのことだった。
「ありがとうございます。また会いましょうね」
エレイン様と二人で頭を下げて、フューニ様たちを見送った。
「最初はあの二人のことが嫌いだったのに、こんな風に仲良くお話をすることになるだなんて思わなかったわ」
別邸の中に戻りながら、エレイン様が小さく息を吐いた。
「昔やってしまったことも反省しておられたようですし、ちゃんと向き合って話をしてみるということも大事なのかもしれませんね」
「やった過去を帳消しにはできないけれど、人は変われるということかもしれませんわね」
エントランスホールで立ち止まり、部屋に戻る前にエレイン様に尋ねる。
「約10日間はお休みになるみたいですが、エレイン様はどうされるのですか?」
「実家に帰ろうか迷っていますけど、帰ってもすぐに戻らなければなりませんし、こちらでゆっくりさせていただこうと思っています。アイラ様はどうされるのですか?」
「実家が近いので、戻ろうかと思っています。それから友人に会ったり、ケーキ屋さんの様子も見に行こうかと。それから、ご迷惑でなければエレイン様ともお話がしたいです」
「ありがとうございます! ぜひ、お話ししてくださいませ」
エレイン様が嬉しそうに手を取ってきたので、笑顔で頷いた。
*****
部屋に戻ってから、改めてこれからどうしようか考える。
わたしがここにいればキャシーたちは休むことができない。
かといって、エレイン様と会う約束をしたから、何日間かは別邸にいなければならない。
どうすれば、皆を上手く休ませてあげられるか考えていると、扉がノックされた。
「どちら様でしょう」
「僕だよ」
返事をしたのはロキだった。
今日の昼の当番はキャシーなので、彼女が部屋の扉を開けると、ロキがエイドと一緒に中に入ってきた。
「おめでとう、アイラ。試験結果も聞いたけど、すごく頑張ってくれたんだな」
「ありがとう」
ロキに笑顔でお礼を言うと、エイドもお祝いの言葉をくれる。
「おめでとうございます。体力の実技試験はぶっちぎりの一位でしたよ。あなたは運動神経が良いので余計にでしょう」
「ありがとう。ロキと初めて出会ったのも、木に登って下りられなくなった猫を助けるために木に登っていた時だったものね。運動神経には自信があるの」
微笑んで言うと、ロキとエイドはなぜか顔を見合わせた。
「どうかしたの?」
「そのことで話したいことがあるんだけど、今はここに来た、もう一つの本題を伝えても良いかな」
「もちろんよ」
頷くと、ロキはゆっくりとした口調で話し始める。
「これからは今までとは違い、僕と一緒に社交場に出てもらう。最終試験は他国の王族に協力してもらって、外国でのパーティーにも参加してもらうことになるんだ」
「……ねえ、ロキ」
「どうかしたのか?」
「私、ダンスをほとんど踊ったことがないのよ。今からでも覚えられるかしら」
眉根を寄せて尋ねたら、エイドが焦った顔をしてロキに言う。
「ダンスの講師を手配してきます」
「頼む」
ロキが頷いたのを確認すると、エイドは一礼して部屋を出ていく。
「えっと、やっぱりまずかったわよね」
「いや、僕もすっかり忘れてたよ。悪いけどアイラ、この休暇中はダンスのレッスンを受けてもらわないといけなくなった」
「……承知しました」
せっかくの休みだと思ったけれどしょうがない。
なんとか休みを調整して、わたしは一泊二日で実家には帰れることになった。
1日目の朝にダンスのレッスン、帰ってきた2日目の夜もダンスのレッスンと、この休暇中はダンスのレッスンのスケジュールでほとんど埋め尽くされた。
※
いつもお読みいただきありがとうございます!
昨日に一作完結し、新たに「役立たずの聖女はいらないと他国に追いやられましたが、おかげで幸せになれました」を開始しましたので、読んでいただけましたら嬉しいです!
「必ず勝ち残ってくださいね。遠くからではありますが応援しています」
結果発表があった次の日、フューニ様とフィーニ様が別邸を去ることになった。
王家側としては、10日程の猶予を設けていたけれど、二人は少しでも早くに家に帰りたいとのことだった。
「ありがとうございます。また会いましょうね」
エレイン様と二人で頭を下げて、フューニ様たちを見送った。
「最初はあの二人のことが嫌いだったのに、こんな風に仲良くお話をすることになるだなんて思わなかったわ」
別邸の中に戻りながら、エレイン様が小さく息を吐いた。
「昔やってしまったことも反省しておられたようですし、ちゃんと向き合って話をしてみるということも大事なのかもしれませんね」
「やった過去を帳消しにはできないけれど、人は変われるということかもしれませんわね」
エントランスホールで立ち止まり、部屋に戻る前にエレイン様に尋ねる。
「約10日間はお休みになるみたいですが、エレイン様はどうされるのですか?」
「実家に帰ろうか迷っていますけど、帰ってもすぐに戻らなければなりませんし、こちらでゆっくりさせていただこうと思っています。アイラ様はどうされるのですか?」
「実家が近いので、戻ろうかと思っています。それから友人に会ったり、ケーキ屋さんの様子も見に行こうかと。それから、ご迷惑でなければエレイン様ともお話がしたいです」
「ありがとうございます! ぜひ、お話ししてくださいませ」
エレイン様が嬉しそうに手を取ってきたので、笑顔で頷いた。
*****
部屋に戻ってから、改めてこれからどうしようか考える。
わたしがここにいればキャシーたちは休むことができない。
かといって、エレイン様と会う約束をしたから、何日間かは別邸にいなければならない。
どうすれば、皆を上手く休ませてあげられるか考えていると、扉がノックされた。
「どちら様でしょう」
「僕だよ」
返事をしたのはロキだった。
今日の昼の当番はキャシーなので、彼女が部屋の扉を開けると、ロキがエイドと一緒に中に入ってきた。
「おめでとう、アイラ。試験結果も聞いたけど、すごく頑張ってくれたんだな」
「ありがとう」
ロキに笑顔でお礼を言うと、エイドもお祝いの言葉をくれる。
「おめでとうございます。体力の実技試験はぶっちぎりの一位でしたよ。あなたは運動神経が良いので余計にでしょう」
「ありがとう。ロキと初めて出会ったのも、木に登って下りられなくなった猫を助けるために木に登っていた時だったものね。運動神経には自信があるの」
微笑んで言うと、ロキとエイドはなぜか顔を見合わせた。
「どうかしたの?」
「そのことで話したいことがあるんだけど、今はここに来た、もう一つの本題を伝えても良いかな」
「もちろんよ」
頷くと、ロキはゆっくりとした口調で話し始める。
「これからは今までとは違い、僕と一緒に社交場に出てもらう。最終試験は他国の王族に協力してもらって、外国でのパーティーにも参加してもらうことになるんだ」
「……ねえ、ロキ」
「どうかしたのか?」
「私、ダンスをほとんど踊ったことがないのよ。今からでも覚えられるかしら」
眉根を寄せて尋ねたら、エイドが焦った顔をしてロキに言う。
「ダンスの講師を手配してきます」
「頼む」
ロキが頷いたのを確認すると、エイドは一礼して部屋を出ていく。
「えっと、やっぱりまずかったわよね」
「いや、僕もすっかり忘れてたよ。悪いけどアイラ、この休暇中はダンスのレッスンを受けてもらわないといけなくなった」
「……承知しました」
せっかくの休みだと思ったけれどしょうがない。
なんとか休みを調整して、わたしは一泊二日で実家には帰れることになった。
1日目の朝にダンスのレッスン、帰ってきた2日目の夜もダンスのレッスンと、この休暇中はダンスのレッスンのスケジュールでほとんど埋め尽くされた。
※
いつもお読みいただきありがとうございます!
昨日に一作完結し、新たに「役立たずの聖女はいらないと他国に追いやられましたが、おかげで幸せになれました」を開始しましたので、読んでいただけましたら嬉しいです!
応援ありがとうございます!
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