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35 動いていく気持ち
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ロキは私とは視線を合わさずに話題を変えてくる。
「いつか君とお祭りに行ってみたいな」
「お祭り?」
「ああ。君はお祭りに行ったことはある?」
「何度もあるわ。だけど、お金がないから出店で食べたいものがあっても買えないから、ここ最近は早めに帰ることにしていたの」
答えたあと、馬車の外を眺める。
友人たちは貴族だから好きなものを好きなだけ買っていた。
だけど、私は安いものを一つ買うくらいしかできなかった。
お祭りで使うように、お母様がお金を渡してくれていたけれど、使わずに返していた。
そのせいで貧乏な令嬢と揶揄されていた。
でも、あまり気にしなかったのよね。
だって、そんなことを一々言ってくるほうの性格が悪いだけだと思ったんだもの。
そんな時、ふと思い出したことがあり、懐かしい気持ちになった。
「どうかしたのか?」
微笑んでいたからか、問いかけられたのでロキに話をすることにした。
「小さい頃、お祭りで可愛い女の子に会ったの。たぶん、貴族だと思うわ。着ている服が良い材質に見えたもの。お母様は覚えていないんだけど、お母様と一緒にお祭りに行った時に会ったの。とても優しい子で、私に肉串を分けてくれたのよ」
「……そうなんだ」
なぜか、ロキの表情が暗くなった。
「どうかしたの?」
「いや。その女の子が女の子じゃなかったとしたら、アイラはどうする?」
「……質問の意味がわからないんだけど」
「そのままの意味だよ」
ロキが苦笑するので、少し考えてから答える。
「女性だろうが男性だろうがお礼を言うだけよ。本当に美味しかったから幸せな気分にさせてもらったの」
「アイラらしいな」
「それってどういうこと?」
微笑するロキに尋ねたけれど、質問の答えは返してくれなかった。
*****
私の周りには変わった人が多くいるのは、どうしてかしら?
ロキとのデートのあと、眠る前に、そんなことを考えてしまうようになった。
そして、出てくる答えは毎回、私が変だから、になってしまう。
変人の周りには変人が集まるというところかと思うと、自分で納得できてしまう。
自分ではまっすぐに生きているつもりなんだけれど、そうではないのかもしれない。
そう思うと、ちょっと切なくなってきた。
人と違っているからといって、それがいけないというわけでもないと思う。
けれど、王太子妃や王妃になるというのなら、個性が強ければ良いというものでもない。
柔軟な考えも必要だけれど、王妃としてやってはいけない行動はとらないようにしなければならない。
そこまで思ったところで、私に王妃など務まるのだろうかという不安が湧いてきて、お金をもらって帰りたいという気持ちになった。
ちゃんとロキとのことを考えないといけないとは思うけれど、恋の自覚というものはどうしたら芽生えるのかわからない。
すでに恋をしているのかどうかということさえもわからない。
自分だけでは判断できないため、相談に乗ってもらうことにした私は、まずはメイドたちに聞いてみた。
「恋愛感情があるかどうかですが、他の女性と話をしているロキ様を見てどう思うかとかでしょうか」
「本当に興味がないなら、なんとも思わないはずですわ」
キャシーたちに言われたことを紙に書いていく。
まずは自分がロキのことをどう思っているか確認すれば良いのよね。
他の女の人と仲良くしているロキを見ると、嫌な気分になったりしたら、恋をしている可能性がある。
そんな様子を見ようとするとなると、人様のデートを覗いてみないといけないのかもしれない。
たまたま会えたりしたら良いのだけど、そんな偶然はほとんどありえない。
そう上手くはいかないかと思っていたある日、庭園に体を動かしに出た私は、ロキがポスティム公爵令嬢に抱きつかれているシーンを見てしまうのだった。
「いつか君とお祭りに行ってみたいな」
「お祭り?」
「ああ。君はお祭りに行ったことはある?」
「何度もあるわ。だけど、お金がないから出店で食べたいものがあっても買えないから、ここ最近は早めに帰ることにしていたの」
答えたあと、馬車の外を眺める。
友人たちは貴族だから好きなものを好きなだけ買っていた。
だけど、私は安いものを一つ買うくらいしかできなかった。
お祭りで使うように、お母様がお金を渡してくれていたけれど、使わずに返していた。
そのせいで貧乏な令嬢と揶揄されていた。
でも、あまり気にしなかったのよね。
だって、そんなことを一々言ってくるほうの性格が悪いだけだと思ったんだもの。
そんな時、ふと思い出したことがあり、懐かしい気持ちになった。
「どうかしたのか?」
微笑んでいたからか、問いかけられたのでロキに話をすることにした。
「小さい頃、お祭りで可愛い女の子に会ったの。たぶん、貴族だと思うわ。着ている服が良い材質に見えたもの。お母様は覚えていないんだけど、お母様と一緒にお祭りに行った時に会ったの。とても優しい子で、私に肉串を分けてくれたのよ」
「……そうなんだ」
なぜか、ロキの表情が暗くなった。
「どうかしたの?」
「いや。その女の子が女の子じゃなかったとしたら、アイラはどうする?」
「……質問の意味がわからないんだけど」
「そのままの意味だよ」
ロキが苦笑するので、少し考えてから答える。
「女性だろうが男性だろうがお礼を言うだけよ。本当に美味しかったから幸せな気分にさせてもらったの」
「アイラらしいな」
「それってどういうこと?」
微笑するロキに尋ねたけれど、質問の答えは返してくれなかった。
*****
私の周りには変わった人が多くいるのは、どうしてかしら?
ロキとのデートのあと、眠る前に、そんなことを考えてしまうようになった。
そして、出てくる答えは毎回、私が変だから、になってしまう。
変人の周りには変人が集まるというところかと思うと、自分で納得できてしまう。
自分ではまっすぐに生きているつもりなんだけれど、そうではないのかもしれない。
そう思うと、ちょっと切なくなってきた。
人と違っているからといって、それがいけないというわけでもないと思う。
けれど、王太子妃や王妃になるというのなら、個性が強ければ良いというものでもない。
柔軟な考えも必要だけれど、王妃としてやってはいけない行動はとらないようにしなければならない。
そこまで思ったところで、私に王妃など務まるのだろうかという不安が湧いてきて、お金をもらって帰りたいという気持ちになった。
ちゃんとロキとのことを考えないといけないとは思うけれど、恋の自覚というものはどうしたら芽生えるのかわからない。
すでに恋をしているのかどうかということさえもわからない。
自分だけでは判断できないため、相談に乗ってもらうことにした私は、まずはメイドたちに聞いてみた。
「恋愛感情があるかどうかですが、他の女性と話をしているロキ様を見てどう思うかとかでしょうか」
「本当に興味がないなら、なんとも思わないはずですわ」
キャシーたちに言われたことを紙に書いていく。
まずは自分がロキのことをどう思っているか確認すれば良いのよね。
他の女の人と仲良くしているロキを見ると、嫌な気分になったりしたら、恋をしている可能性がある。
そんな様子を見ようとするとなると、人様のデートを覗いてみないといけないのかもしれない。
たまたま会えたりしたら良いのだけど、そんな偶然はほとんどありえない。
そう上手くはいかないかと思っていたある日、庭園に体を動かしに出た私は、ロキがポスティム公爵令嬢に抱きつかれているシーンを見てしまうのだった。
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