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33 お外デート2回目②
しおりを挟む先に降りて私に手を差しのべてくれているロキの手を借りて馬車から降りる。
ひんやりとした空気が少しだけ肌寒く感じたけれど、周りは緑が一杯で心が癒やされる。
ロキが連れてきてくれた場所は、私たちの住んでいる国では有名な観光地である大きな滝だった。
「行ってみたいって前に言ってただろ」
「学生時代の時の話を覚えてたの? しかも、最近の話じゃないわよね」
「いつか、君とここに来れたら良いなって、その時に思ったから覚えてる」
優しく微笑んだロキを見て、胸がドキドキした。
私にとっては何気ない一言でも、ロキにはそうでもなかったのだと思うと、嬉しい気持ちでいっぱいになった。
でも、それと同時にロキの行きたい所を知らない自分に気がついて申し訳ない気持ちになった。
お詫びになるかはわからないけれど、今日は少しでも楽しんでもらわなくちゃ。
観光客用の馬車の停車場から舗装された道を進んだ先に絶景スポットがあり、観光客でにぎわっていた。
周りのカップルは手を繋いでいたりするけれど、私とロキはカップルではないから手は繋がないでいない。
でも、人が多いのではぐれないようにロキの服を掴んで歩いていた。
「ここを選んだのは、私が行きたいと言っていたからっていう理由?」
「それもあるけど、君が精神的に疲れてるんじゃないかと思ったんだ。こういうところって精神が癒やされるって聞くから」
「そういう話はよく聞くけど、私は別に精神的に疲れているわけじゃないわよ」
「そうかな。食べることで今はストレス発散してるんじゃないのか?」
「うう、それは否定できない」
運動しているつもりだけれど、食べる量のほうが多いのか、最近、ドレスがキツくなった気がする。
別邸で出される料理は肉料理も多いし、おかわりも許される。
甘いものも多く食べるようになったし、今までよりも動かなくなったから太ってきているのかもしれないわ。
美味しいから食べるは幸せだけど、イライラして食べてしまうのは良くないことでしょうから、気をつけないといけないわ。
「君がもっと太ったとしても可愛いと思うけど、辛い思いをしているのかと思うと嫌なんだ」
「あんまり甘やかさないでよ。食べすぎて太ってしまって、今まで着れていたドレスが着れなくなったらもったいないでしょう」
「でも、ドレスは着回すものじゃないだろ」
「今日の服みたいに着回すものもあるの!」
こんな会話をしていると、学生時代に戻ったような気がして、何だかくすぐったい気持ちになる。
歩くほどに水の音が大きくなっていき、目の前に大きな滝が見えてきた。
滝の周りは柵がされているけれど、近くまでは近付けるようになっている。
人混みに紛れない程度に近寄っていく。
ロキの姿を護衛の人が見失ったら大変なことになるかもしれない。
そうならないように、人の輪から少し離れた所で立ち止まった。
「もう少し近づいて見てみる?」
「ここで十分よ。人混みは苦手だし、あなたに何かあったら嫌だもの」
近くにベンチがあったので、そちらに向かうことにした時だった。
「え? もしかして、アイラじゃない!?」
「わあ、ほんとだ! 小綺麗な格好しちゃって!」
人混みの中から出てきた女性2人に話しかけられて、慌てて私はロキの服を掴んでいた手を離した。
私に話しかけてきたのは、最終学年で同じクラスだった人たちだった。
大して仲が良くなくても、人を愛称などで呼ぶ、良く言えばフレンドリー、悪く言えば馴れ馴れしい子たちで、私は正直、苦手だった。
「困ったな」
ロキが彼女たちには聞こえないような小さな声で呟く声が聞こえた。
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