【完結】婚約破棄された貧乏子爵令嬢ですが、王太子殿下に溺愛されています

風見ゆうみ

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32 お外デート2回目①

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 ロキと私の仲は大して進展することもなく、日にちは過ぎた。
 その内にセイデア伯爵令嬢は当たり前のことだけれど、王太子妃候補としては失格となった。
 本来ならば王家に虚偽の報告をしたのだから罰せられてもおかしくない。
 でも、無関係な誰かが傷付いた訳でもなかったので別邸から追い出されたことと罰金だけで済んだみたいだった。

 彼女は最後の最後までお金が貰えないことに文句を言っていたらしいので、常識的なものが少し心配になる。
 
 お金に困っている彼女とは逆に、私の家のほうは順調だった。
 お父様の経営するケーキ屋さんは繁盛している。
 かといって、まだトータルの黒字にはならないみたいだけど、だいぶ楽になりそうだということだった。

 まだ、繁盛しはじめてすぐだから、今までの赤字の分を取り返そうとしているところだけど自転車操業から逃れられそうな気配は見えてきた。
 未払いだったエディさんのお給料が渡せることになったのが嬉しかった。
 
 お店が繁盛しているおかげで、お父様は本来やらなければいけない家の仕事に集中出来ているし、お母様の仕事も順調で、我が家の金運も上がっている気がした。

 そして、日にちが過ぎたということは、王妃候補の二次選抜も近づいていることと、ロキと王太子妃候補のデートも今までとは変わることになった。
 今までは王太子妃候補側が行きたいところを決めてデートをしていた。
 今度からはロキが相手のことを考えて決めたデートプランで動くことになった。

 先にデートをした他の令嬢たちから聞いてみると、ロキとのデートは概ね好評だった。
 ロキが彼女たちの好みをリサーチして決めているからだろうけれど、デートプランを考えることも大変なはずだ。

 だから、私とのデートはどんなプランになるのか、とても楽しみにしていた。

 デートの日の前日、コニーから笑顔で話しかけられる。

「ロキ様はどんなデートプランを考えておられるんでしょうね」
「わからないけれど、長い付き合いだから、私の好きな所に連れて行ってくれるんじゃないかしら。お部屋デートということはないと思うの」
「アイラ様は体を動かすことがお好きですものね」
「そうね。せっかくだし、今から体を動かそうかな」

 王太子妃候補の選抜試験には体力試験もあると聞いた。
 私に有利なのはこれくらいだから、体力作りをしようと立ち上がった。


*****


 そして、ロキとのデートの日がやって来た。
 当日はとても良い天気で、雲一つない青空だけれど日差しはとても柔らかくて、お出かけするには良い日だった。

 目的地に向かう馬車の中で、最初は他愛のない話をしていたけれど、ふと聞いておきたいことを思い出して聞いてみる。

「ねえ、ロキ」
「ん?」
「王太子妃に選ばれなかった女性は、その後の結婚とかはどうなっているのかしら?」
「何を聞きたいんだ?」
「ほら、私も試験に落ちた場合は、改めて結婚相手を探さないといけないでしょう。そうなった時には、婿に来てくれる相手がいるのか不安になったのよ」

 私は特に元婚約者に婚約を破棄されたし、王太子妃候補の選抜にも落ちたとなると、嫁にもらってくれる人がいないんじゃないかという不安な気持ちになっていた。

 私の話を聞いて、ロキはすごく嫌そうな顔をしたけれど、すぐに真顔に戻って答えてくれる。

「そのことについては心配いらない。必要なら王家が探すことになると思うよ」
「必要ならというのはどういうこと?」
「アイラが心配している通り、王太子妃候補になったせいで婚約者が見つかりにくくなるということもあるんだ」
「……それってやっぱり、選抜試験に落ちたからという理由なの?」

 眉根を寄せて尋ねると、ロキは眉尻を下げて頷く。

「王太子妃に選ばれなかったということで、その女性に足りないものがあると勝手に判断する人間がいることも確かみたいだ」
「何よそれ」
「おかしい話だよな。王太子妃候補に選ばれただけで本当はすごいのにさ」
「そうよ! 信じられないわ!」

 そんな馬鹿な考えをする人間がいるのかと腹を立てていると、馬車が緩やかに停まった。

「着いたみたいだ」

 今日のロキは髪型は王子様の時の仕様だけど、正装というよりかは黒色のセミフォーマルといった感じの服で、私もひざ下丈のモスグリーンのワンピースドレスだ。

「どこに行くの?」
「降りたらわかるよ」

 ロキはいたずらっ子みたいな笑みを浮かべて答えた。
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