34 / 61
32 お外デート2回目①
しおりを挟む
ロキと私の仲は大して進展することもなく、日にちは過ぎた。
その内にセイデア伯爵令嬢は当たり前のことだけれど、王太子妃候補としては失格となった。
本来ならば王家に虚偽の報告をしたのだから罰せられてもおかしくない。
でも、無関係な誰かが傷付いた訳でもなかったので別邸から追い出されたことと罰金だけで済んだみたいだった。
彼女は最後の最後までお金が貰えないことに文句を言っていたらしいので、常識的なものが少し心配になる。
お金に困っている彼女とは逆に、私の家のほうは順調だった。
お父様の経営するケーキ屋さんは繁盛している。
かといって、まだトータルの黒字にはならないみたいだけど、だいぶ楽になりそうだということだった。
まだ、繁盛しはじめてすぐだから、今までの赤字の分を取り返そうとしているところだけど自転車操業から逃れられそうな気配は見えてきた。
未払いだったエディさんのお給料が渡せることになったのが嬉しかった。
お店が繁盛しているおかげで、お父様は本来やらなければいけない家の仕事に集中出来ているし、お母様の仕事も順調で、我が家の金運も上がっている気がした。
そして、日にちが過ぎたということは、王妃候補の二次選抜も近づいていることと、ロキと王太子妃候補のデートも今までとは変わることになった。
今までは王太子妃候補側が行きたいところを決めてデートをしていた。
今度からはロキが相手のことを考えて決めたデートプランで動くことになった。
先にデートをした他の令嬢たちから聞いてみると、ロキとのデートは概ね好評だった。
ロキが彼女たちの好みをリサーチして決めているからだろうけれど、デートプランを考えることも大変なはずだ。
だから、私とのデートはどんなプランになるのか、とても楽しみにしていた。
デートの日の前日、コニーから笑顔で話しかけられる。
「ロキ様はどんなデートプランを考えておられるんでしょうね」
「わからないけれど、長い付き合いだから、私の好きな所に連れて行ってくれるんじゃないかしら。お部屋デートということはないと思うの」
「アイラ様は体を動かすことがお好きですものね」
「そうね。せっかくだし、今から体を動かそうかな」
王太子妃候補の選抜試験には体力試験もあると聞いた。
私に有利なのはこれくらいだから、体力作りをしようと立ち上がった。
*****
そして、ロキとのデートの日がやって来た。
当日はとても良い天気で、雲一つない青空だけれど日差しはとても柔らかくて、お出かけするには良い日だった。
目的地に向かう馬車の中で、最初は他愛のない話をしていたけれど、ふと聞いておきたいことを思い出して聞いてみる。
「ねえ、ロキ」
「ん?」
「王太子妃に選ばれなかった女性は、その後の結婚とかはどうなっているのかしら?」
「何を聞きたいんだ?」
「ほら、私も試験に落ちた場合は、改めて結婚相手を探さないといけないでしょう。そうなった時には、婿に来てくれる相手がいるのか不安になったのよ」
私は特に元婚約者に婚約を破棄されたし、王太子妃候補の選抜にも落ちたとなると、嫁にもらってくれる人がいないんじゃないかという不安な気持ちになっていた。
私の話を聞いて、ロキはすごく嫌そうな顔をしたけれど、すぐに真顔に戻って答えてくれる。
「そのことについては心配いらない。必要なら王家が探すことになると思うよ」
「必要ならというのはどういうこと?」
「アイラが心配している通り、王太子妃候補になったせいで婚約者が見つかりにくくなるということもあるんだ」
「……それってやっぱり、選抜試験に落ちたからという理由なの?」
眉根を寄せて尋ねると、ロキは眉尻を下げて頷く。
「王太子妃に選ばれなかったということで、その女性に足りないものがあると勝手に判断する人間がいることも確かみたいだ」
「何よそれ」
「おかしい話だよな。王太子妃候補に選ばれただけで本当はすごいのにさ」
「そうよ! 信じられないわ!」
そんな馬鹿な考えをする人間がいるのかと腹を立てていると、馬車が緩やかに停まった。
「着いたみたいだ」
今日のロキは髪型は王子様の時の仕様だけど、正装というよりかは黒色のセミフォーマルといった感じの服で、私もひざ下丈のモスグリーンのワンピースドレスだ。
「どこに行くの?」
「降りたらわかるよ」
ロキはいたずらっ子みたいな笑みを浮かべて答えた。
その内にセイデア伯爵令嬢は当たり前のことだけれど、王太子妃候補としては失格となった。
本来ならば王家に虚偽の報告をしたのだから罰せられてもおかしくない。
でも、無関係な誰かが傷付いた訳でもなかったので別邸から追い出されたことと罰金だけで済んだみたいだった。
彼女は最後の最後までお金が貰えないことに文句を言っていたらしいので、常識的なものが少し心配になる。
お金に困っている彼女とは逆に、私の家のほうは順調だった。
お父様の経営するケーキ屋さんは繁盛している。
かといって、まだトータルの黒字にはならないみたいだけど、だいぶ楽になりそうだということだった。
まだ、繁盛しはじめてすぐだから、今までの赤字の分を取り返そうとしているところだけど自転車操業から逃れられそうな気配は見えてきた。
未払いだったエディさんのお給料が渡せることになったのが嬉しかった。
お店が繁盛しているおかげで、お父様は本来やらなければいけない家の仕事に集中出来ているし、お母様の仕事も順調で、我が家の金運も上がっている気がした。
そして、日にちが過ぎたということは、王妃候補の二次選抜も近づいていることと、ロキと王太子妃候補のデートも今までとは変わることになった。
今までは王太子妃候補側が行きたいところを決めてデートをしていた。
今度からはロキが相手のことを考えて決めたデートプランで動くことになった。
先にデートをした他の令嬢たちから聞いてみると、ロキとのデートは概ね好評だった。
ロキが彼女たちの好みをリサーチして決めているからだろうけれど、デートプランを考えることも大変なはずだ。
だから、私とのデートはどんなプランになるのか、とても楽しみにしていた。
デートの日の前日、コニーから笑顔で話しかけられる。
「ロキ様はどんなデートプランを考えておられるんでしょうね」
「わからないけれど、長い付き合いだから、私の好きな所に連れて行ってくれるんじゃないかしら。お部屋デートということはないと思うの」
「アイラ様は体を動かすことがお好きですものね」
「そうね。せっかくだし、今から体を動かそうかな」
王太子妃候補の選抜試験には体力試験もあると聞いた。
私に有利なのはこれくらいだから、体力作りをしようと立ち上がった。
*****
そして、ロキとのデートの日がやって来た。
当日はとても良い天気で、雲一つない青空だけれど日差しはとても柔らかくて、お出かけするには良い日だった。
目的地に向かう馬車の中で、最初は他愛のない話をしていたけれど、ふと聞いておきたいことを思い出して聞いてみる。
「ねえ、ロキ」
「ん?」
「王太子妃に選ばれなかった女性は、その後の結婚とかはどうなっているのかしら?」
「何を聞きたいんだ?」
「ほら、私も試験に落ちた場合は、改めて結婚相手を探さないといけないでしょう。そうなった時には、婿に来てくれる相手がいるのか不安になったのよ」
私は特に元婚約者に婚約を破棄されたし、王太子妃候補の選抜にも落ちたとなると、嫁にもらってくれる人がいないんじゃないかという不安な気持ちになっていた。
私の話を聞いて、ロキはすごく嫌そうな顔をしたけれど、すぐに真顔に戻って答えてくれる。
「そのことについては心配いらない。必要なら王家が探すことになると思うよ」
「必要ならというのはどういうこと?」
「アイラが心配している通り、王太子妃候補になったせいで婚約者が見つかりにくくなるということもあるんだ」
「……それってやっぱり、選抜試験に落ちたからという理由なの?」
眉根を寄せて尋ねると、ロキは眉尻を下げて頷く。
「王太子妃に選ばれなかったということで、その女性に足りないものがあると勝手に判断する人間がいることも確かみたいだ」
「何よそれ」
「おかしい話だよな。王太子妃候補に選ばれただけで本当はすごいのにさ」
「そうよ! 信じられないわ!」
そんな馬鹿な考えをする人間がいるのかと腹を立てていると、馬車が緩やかに停まった。
「着いたみたいだ」
今日のロキは髪型は王子様の時の仕様だけど、正装というよりかは黒色のセミフォーマルといった感じの服で、私もひざ下丈のモスグリーンのワンピースドレスだ。
「どこに行くの?」
「降りたらわかるよ」
ロキはいたずらっ子みたいな笑みを浮かべて答えた。
87
お気に入りに追加
1,743
あなたにおすすめの小説
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

役立たずのお飾り令嬢だと婚約破棄されましたが、田舎で幼馴染領主様を支えて幸せに暮らします
水都 ミナト
恋愛
伯爵令嬢であるクリスティーナは、婚約者であるフィリップに「役立たずなお飾り令嬢」と蔑まれ、婚約破棄されてしまう。
事業が波に乗り調子付いていたフィリップにうんざりしていたクリスティーヌは快く婚約解消を受け入れ、幼い頃に頻繁に遊びに行っていた田舎のリアス領を訪れることにする。
かつては緑溢れ、自然豊かなリアスの地は、土地が乾いてすっかり寂れた様子だった。
そこで再会したのは幼馴染のアルベルト。彼はリアスの領主となり、リアスのために奔走していた。
クリスティーナは、彼の力になるべくリアスの地に残ることにするのだが…
★全7話★
※なろう様、カクヨム様でも公開中です。

婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。
ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。
こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。
(本編、番外編、完結しました)
【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。
美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?

【完結】断罪後の悪役令嬢は、精霊たちと生きていきます!
らんか
恋愛
あれ?
何で私が悪役令嬢に転生してるの?
えっ!
しかも、断罪後に思い出したって、私の人生、すでに終わってるじゃん!
国外追放かぁ。
娼館送りや、公開処刑とかじゃなくて良かったけど、これからどうしよう……。
そう思ってた私の前に精霊達が現れて……。
愛し子って、私が!?
普通はヒロインの役目じゃないの!?

旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です
流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。
父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。
無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。
純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる