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31 お外デート1回目④
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「こ、これは美味そうだな! しかも種類が色々とあるじゃないか。僕の国にもケーキはあるが、こんなに種類は多くない!」
「うちのパティシエのオリジナルケーキですよ」
シフォン様が営業スマイルで言うと、リュシリュー殿下は満面の笑みを浮かべる。
「こんなに美味しそうなケーキを素敵な女性が売っているんだな。よし、常連になろう」
「あの、普段は私が店員をしておりますので、こちらにおられるシフォン様のように美しくはありません」
サラが申し訳無さげにリュシリュー殿下に言った。
すると、彼はサラのほうを見て首を横に振る。
「君はとても可愛らしい。やはり常連になろう」
「はい? あ、ありがとうございます」
サラにしてみればリュシリュー殿下は見たことのあるような人だと思う。
ロキと対等に話をしているのを見ていたからか、リュシリュー殿下が高貴な人だと察して緊張した面持ちで頭を下げた。
「悪い人ではなさそうだが、マイペースにもほどがあるな」
ロキが苦笑して私に話しかけてきたので頷く。
「本当にそうよね。だけど、リュー様のことをお付きの人たちは探しているはずよ。早くリュー様が無事だと教えてさしあげないと」
「そうだな」
本当なら、このあとは私の実家に行って、家族に会ってもらってからゆっくりするつもりだった。
でも、迷子のリュシリュー殿下を彼の付き人たちの所へ送り届けないといけなくなってしまった。
このまま野放しにはできないものね。
*****
「本当に申し訳ございませんでした!」
リュシリュー殿下の付き人は深々と頭を下げた。
ケーキを買い終えたあと、ロキと付き合ってくれるというサラと一緒に、リュシリュー殿下の関係者を探した。
リュシリュー殿下はケーキ屋で大人しくしてもらっている。
すると、ロキに気が付いた関係者のほうから接触があった。
その人とはロキは何度も顔を合わせていたらしく、関係者のなりすましではないと判断し、その人と一緒に店に戻った。
リュシリュー殿下は関係者の人の顔を見て、嬉しそうな笑顔を見せた。
「見つけてくれたのか! 遅かったじゃないか!」
「見つけてくれたのかではありません! どうして、あなたはジッとしていられないんですか!」
関係者の人は困った顔をして叫んだあと、私たちに何度も頭を下げる。
「ご迷惑おかけしてしまい、本当に申し訳ございませんでした! ロキ様やお嬢様方に助けていただいていなければ、殿下はどうなっていたかわかりません!」
「気にしないでくれ。それよりも、また逃げられないようにしてくれたらいい」
「もちろんでございます」
ロキの言葉に頷くと、関係者の人は上着のポケットから手錠を取り出し、リュシリュー殿下の片方の手首に手錠を掛けた。
そして、もう片方を自分の手首に掛けて逃げられないようにしたあと、深々と頭を下げる。
「このように逃げられないようにいたしましたので、お許しください」
「今日はありがとう! 本当に助かったよ。僕には妹がいるんだ。今度、お礼にロキ殿の所に連れて行くから、気に入ったのなら君の妻にでも」
「お気持ちはありがたいですが、妻という話はご遠慮させて下さい」
ロキが答えたと同時に、関係者の人がリュシリュー殿下に向かって叫ぶ。
「いいかげんにして下さい! ロキアス様は現在、奥様を選んでいるところなのですよ!? そんな方の元に女性を連れて行くだなんて、候補の方がどう思われるかわからないのですか! ああ、本当に申し訳ございません」
気の毒なことに関係者の人は私を見て、何度もペコペコと頭を下げた。
「ああ、そうか。これは失礼なことをした。男性は皆、女性を連れていけば喜ぶものかと思っていたんだ」
「それは違います。不快に思われる方もいると思うので、そのような発言は控えた方が良いかと思います」
リュシリュー殿下に即座に言葉を返したロキは、関係者の人に向かって言う。
「迎えの馬車を呼びましょうか?」
「いえ。もう、こちらに着いたようです。お気遣いいただきありがとうございます」
関係者の人はリュシリュー殿下を引きずる様にして店の外に出した。
そして、店の前に停まっていた馬車にリュシリュー殿下を半ば押し込んで先に乗せると、もう一度、私たちに頭を下げた。
結局、こんなこともあり、私の実家に行く時間は予定よりも大幅に遅れてしまい、デートらしいデートはできなくなってしまったのだった。
「うちのパティシエのオリジナルケーキですよ」
シフォン様が営業スマイルで言うと、リュシリュー殿下は満面の笑みを浮かべる。
「こんなに美味しそうなケーキを素敵な女性が売っているんだな。よし、常連になろう」
「あの、普段は私が店員をしておりますので、こちらにおられるシフォン様のように美しくはありません」
サラが申し訳無さげにリュシリュー殿下に言った。
すると、彼はサラのほうを見て首を横に振る。
「君はとても可愛らしい。やはり常連になろう」
「はい? あ、ありがとうございます」
サラにしてみればリュシリュー殿下は見たことのあるような人だと思う。
ロキと対等に話をしているのを見ていたからか、リュシリュー殿下が高貴な人だと察して緊張した面持ちで頭を下げた。
「悪い人ではなさそうだが、マイペースにもほどがあるな」
ロキが苦笑して私に話しかけてきたので頷く。
「本当にそうよね。だけど、リュー様のことをお付きの人たちは探しているはずよ。早くリュー様が無事だと教えてさしあげないと」
「そうだな」
本当なら、このあとは私の実家に行って、家族に会ってもらってからゆっくりするつもりだった。
でも、迷子のリュシリュー殿下を彼の付き人たちの所へ送り届けないといけなくなってしまった。
このまま野放しにはできないものね。
*****
「本当に申し訳ございませんでした!」
リュシリュー殿下の付き人は深々と頭を下げた。
ケーキを買い終えたあと、ロキと付き合ってくれるというサラと一緒に、リュシリュー殿下の関係者を探した。
リュシリュー殿下はケーキ屋で大人しくしてもらっている。
すると、ロキに気が付いた関係者のほうから接触があった。
その人とはロキは何度も顔を合わせていたらしく、関係者のなりすましではないと判断し、その人と一緒に店に戻った。
リュシリュー殿下は関係者の人の顔を見て、嬉しそうな笑顔を見せた。
「見つけてくれたのか! 遅かったじゃないか!」
「見つけてくれたのかではありません! どうして、あなたはジッとしていられないんですか!」
関係者の人は困った顔をして叫んだあと、私たちに何度も頭を下げる。
「ご迷惑おかけしてしまい、本当に申し訳ございませんでした! ロキ様やお嬢様方に助けていただいていなければ、殿下はどうなっていたかわかりません!」
「気にしないでくれ。それよりも、また逃げられないようにしてくれたらいい」
「もちろんでございます」
ロキの言葉に頷くと、関係者の人は上着のポケットから手錠を取り出し、リュシリュー殿下の片方の手首に手錠を掛けた。
そして、もう片方を自分の手首に掛けて逃げられないようにしたあと、深々と頭を下げる。
「このように逃げられないようにいたしましたので、お許しください」
「今日はありがとう! 本当に助かったよ。僕には妹がいるんだ。今度、お礼にロキ殿の所に連れて行くから、気に入ったのなら君の妻にでも」
「お気持ちはありがたいですが、妻という話はご遠慮させて下さい」
ロキが答えたと同時に、関係者の人がリュシリュー殿下に向かって叫ぶ。
「いいかげんにして下さい! ロキアス様は現在、奥様を選んでいるところなのですよ!? そんな方の元に女性を連れて行くだなんて、候補の方がどう思われるかわからないのですか! ああ、本当に申し訳ございません」
気の毒なことに関係者の人は私を見て、何度もペコペコと頭を下げた。
「ああ、そうか。これは失礼なことをした。男性は皆、女性を連れていけば喜ぶものかと思っていたんだ」
「それは違います。不快に思われる方もいると思うので、そのような発言は控えた方が良いかと思います」
リュシリュー殿下に即座に言葉を返したロキは、関係者の人に向かって言う。
「迎えの馬車を呼びましょうか?」
「いえ。もう、こちらに着いたようです。お気遣いいただきありがとうございます」
関係者の人はリュシリュー殿下を引きずる様にして店の外に出した。
そして、店の前に停まっていた馬車にリュシリュー殿下を半ば押し込んで先に乗せると、もう一度、私たちに頭を下げた。
結局、こんなこともあり、私の実家に行く時間は予定よりも大幅に遅れてしまい、デートらしいデートはできなくなってしまったのだった。
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