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30 お外デート1回目③
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「リュシリュー殿下!? どうしてこちらにいらっしゃるんですか!?」
驚いて尋ねると、リュシリュー殿下は笑う。
「この国の城下にある仕立て屋が良いと聞いたんだ。それで、お願いしようと思ってきたんだが、ここはどこだろうか?」
「ケーキ屋です」
「ん? 何だって?」
「ですからケーキ屋です!」
声を大きくして答えると、リュシリュー殿下がその場で頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「また、やってしまったのか!? 侍従たちが追いかけてくるから逃げないといけないと思ったら、また違う所に迷い込んでしまったのか!?」
「あの、リュシリュー殿下、それは殿下が道を間違えているから追いかけてきたのではないでしょうか。といいますか、護衛の騎士はここまで追いかけてこなかったんですか?」
「足には自信があるんだ」
リュシリュー殿下がなぜか得意げな顔をして答えた。
他国に来ているのに護衛騎士の人が護衛対象に逃げられるってどういうことなのよ。
それに本人も、どうして味方から逃げるのかわからないわ。
鬼ごっこじゃないんだから。
ポテン王国は中立国で戦争が起こっても、どこかの国に付いて戦うということはなく、国民も温和で平和的な国ということで有名だ。
だから、王家もその国民性が出ていてもおかしくはないと思う。
だけどやっぱり、他国といえどポテン王国の行く末が心配になった。
長男がしっかりしていることを祈るわ。
「アイラ、どうした?」
私とリュシリュー殿下とのやり取りに、ロキが気付かないわけがなかった。
私に話しかけてきてすぐに、頭を抱えて座り込んでいるリュシリュー殿下を見つめて驚いた顔をする。
「ど、どうして、リュシリュー殿下がこちらにいらっしゃるんです!?」
話しかけられたリュシリュー殿下は笑顔でロキを見上げる。
「おお! ロキアス殿下じゃないか!」
「申し訳ございません。リュシリュー殿下、今はお忍びで出ていますので男爵家のロキとお呼び下さい」
「あ、ああ、そうなんだな。これは失礼した」
リュシリュー殿下は頷いてから立ち上がり、ロキに話しかける。
「では、僕のことはただのリューと呼んでくれ」
「承知しました。あの、それはいいんですが、今はお一人でいらっしゃるんですか」
「ああ、そうだよ。国にいる時は大体一人かな」
「リュー様、ここは他国なんです。自国と一緒の考えをしてはいけませんよ」
「君の国は、そんなに治安が悪い国なのか?」
不思議そうな顔でリュシリュー殿下に聞き返されたロキは口を閉ざした。
自分の国を治安が悪い国とは、たとえそうだったとしてもさすがに言えないと思う。
私たちの国も治安が悪いわけではないけれど、ポテン国に比べると、治安の良い国とは言えないのよね。
けれど、ロキもずっと黙っているわけにはいかないからか、苦笑して口を開く。
「申し訳ございませんが、リュー様は高貴なお方です。あなたに近付きたいと思う人間はたくさんいるでしょう。その中には悪い人間もいます。この国の国民は良心的な者がほとんどです。ですが、全てではないことをわかっていただきたい」
「ロキ殿の言いたいことはわかった。僕に何かあれば国際問題になるかもしれないということだな?」
「それもありますし、リュー様の身に何かあってもいけません」
「ロキ殿は優しいんだな。だけど、そのことについては気にしないでくれ。アルフレッドと俺は遺書を残すように言われていてね。もし、他国で暗殺者に襲われることがあっても、他国に迷惑をかけただけだから、国際問題にはしないようにと一筆書かされているんだ。だかは誘拐されて身代金を要求されても払ってもらえない」
……それって、国に見捨てられているのでは?
ロキのほうを見ると同じことを思ったのか、なんとも言えない顔をしている。
でも、すぐに我に返ったみたいでロキは口を開く。
「遺書のことは後ほど確認させていただきます。ですが、公にされないほうが良いかと思います。それから確認に時間がかかりますので申し訳ございませんが、今日のところは一人で歩かれるのはお控えください」
「控えればいいんだな?」
「この場合の控えて下さいは、やめてくださいの意味になります」
ロキは笑顔で言ったけれど、本気で笑っている感じではなかった。
というか、ここまで言わないといけない王子様もどうなのよ。
悪い人ではなさそうだけど、お菓子をあげるから付いておいでだなんて言われたら、付いていきそうな気がして心配だわ。
ロキに言われたリュシリュー殿下は目をキョトンとさせて、ロキを見たあとに苦笑する。
「えらく、今日のロキ殿は苛立っているようだな。でも、他国の王子が何の連絡もなしに自国をウロウロしているのは面白くないこともわかる。ところで、ここは何の店なんだろうか」
本当に反省してるのかしら。
それにロキはリュシリュー殿下のことを心配しているのだとも思う。
「ケーキ屋です。よろしければ殿下もお土産にいかがですか? あまり日持ちはしませんが、本日中なら大丈夫ですよ。私がご馳走いたします」
ロキが説明してから、リュシリュー殿下を店の奥へ案内した。
すると、ショーケースの中を見たリュシリュー殿下は目を輝かせた。
驚いて尋ねると、リュシリュー殿下は笑う。
「この国の城下にある仕立て屋が良いと聞いたんだ。それで、お願いしようと思ってきたんだが、ここはどこだろうか?」
「ケーキ屋です」
「ん? 何だって?」
「ですからケーキ屋です!」
声を大きくして答えると、リュシリュー殿下がその場で頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「また、やってしまったのか!? 侍従たちが追いかけてくるから逃げないといけないと思ったら、また違う所に迷い込んでしまったのか!?」
「あの、リュシリュー殿下、それは殿下が道を間違えているから追いかけてきたのではないでしょうか。といいますか、護衛の騎士はここまで追いかけてこなかったんですか?」
「足には自信があるんだ」
リュシリュー殿下がなぜか得意げな顔をして答えた。
他国に来ているのに護衛騎士の人が護衛対象に逃げられるってどういうことなのよ。
それに本人も、どうして味方から逃げるのかわからないわ。
鬼ごっこじゃないんだから。
ポテン王国は中立国で戦争が起こっても、どこかの国に付いて戦うということはなく、国民も温和で平和的な国ということで有名だ。
だから、王家もその国民性が出ていてもおかしくはないと思う。
だけどやっぱり、他国といえどポテン王国の行く末が心配になった。
長男がしっかりしていることを祈るわ。
「アイラ、どうした?」
私とリュシリュー殿下とのやり取りに、ロキが気付かないわけがなかった。
私に話しかけてきてすぐに、頭を抱えて座り込んでいるリュシリュー殿下を見つめて驚いた顔をする。
「ど、どうして、リュシリュー殿下がこちらにいらっしゃるんです!?」
話しかけられたリュシリュー殿下は笑顔でロキを見上げる。
「おお! ロキアス殿下じゃないか!」
「申し訳ございません。リュシリュー殿下、今はお忍びで出ていますので男爵家のロキとお呼び下さい」
「あ、ああ、そうなんだな。これは失礼した」
リュシリュー殿下は頷いてから立ち上がり、ロキに話しかける。
「では、僕のことはただのリューと呼んでくれ」
「承知しました。あの、それはいいんですが、今はお一人でいらっしゃるんですか」
「ああ、そうだよ。国にいる時は大体一人かな」
「リュー様、ここは他国なんです。自国と一緒の考えをしてはいけませんよ」
「君の国は、そんなに治安が悪い国なのか?」
不思議そうな顔でリュシリュー殿下に聞き返されたロキは口を閉ざした。
自分の国を治安が悪い国とは、たとえそうだったとしてもさすがに言えないと思う。
私たちの国も治安が悪いわけではないけれど、ポテン国に比べると、治安の良い国とは言えないのよね。
けれど、ロキもずっと黙っているわけにはいかないからか、苦笑して口を開く。
「申し訳ございませんが、リュー様は高貴なお方です。あなたに近付きたいと思う人間はたくさんいるでしょう。その中には悪い人間もいます。この国の国民は良心的な者がほとんどです。ですが、全てではないことをわかっていただきたい」
「ロキ殿の言いたいことはわかった。僕に何かあれば国際問題になるかもしれないということだな?」
「それもありますし、リュー様の身に何かあってもいけません」
「ロキ殿は優しいんだな。だけど、そのことについては気にしないでくれ。アルフレッドと俺は遺書を残すように言われていてね。もし、他国で暗殺者に襲われることがあっても、他国に迷惑をかけただけだから、国際問題にはしないようにと一筆書かされているんだ。だかは誘拐されて身代金を要求されても払ってもらえない」
……それって、国に見捨てられているのでは?
ロキのほうを見ると同じことを思ったのか、なんとも言えない顔をしている。
でも、すぐに我に返ったみたいでロキは口を開く。
「遺書のことは後ほど確認させていただきます。ですが、公にされないほうが良いかと思います。それから確認に時間がかかりますので申し訳ございませんが、今日のところは一人で歩かれるのはお控えください」
「控えればいいんだな?」
「この場合の控えて下さいは、やめてくださいの意味になります」
ロキは笑顔で言ったけれど、本気で笑っている感じではなかった。
というか、ここまで言わないといけない王子様もどうなのよ。
悪い人ではなさそうだけど、お菓子をあげるから付いておいでだなんて言われたら、付いていきそうな気がして心配だわ。
ロキに言われたリュシリュー殿下は目をキョトンとさせて、ロキを見たあとに苦笑する。
「えらく、今日のロキ殿は苛立っているようだな。でも、他国の王子が何の連絡もなしに自国をウロウロしているのは面白くないこともわかる。ところで、ここは何の店なんだろうか」
本当に反省してるのかしら。
それにロキはリュシリュー殿下のことを心配しているのだとも思う。
「ケーキ屋です。よろしければ殿下もお土産にいかがですか? あまり日持ちはしませんが、本日中なら大丈夫ですよ。私がご馳走いたします」
ロキが説明してから、リュシリュー殿下を店の奥へ案内した。
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