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28 お外デート1回目①
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結局、フィーニ様たちが部屋に戻るついでに、リュシリュー殿下をセイデア伯爵令嬢の部屋まで連れて行ってくれることになった。
だから、リュシリュー殿下とはここで別れることになったのだけれど、数日後、思わぬところで出くわすことになる。
それは私とロキのデートの日で、サラと合流するために朝からお父様の経営しているケーキ屋さんに向かった時だった。
サラはこの日はお休みをとってくれているけれど、待ち合わせしやすいようにケーキ屋さんに来てくれるらしい。
合流したあとは、お店でケーキを買って、私の実家に行って食べることになった。
ロキを連れて行くと実家に連絡をいれたら、実家からの返事の一通目は「駄目だ」から始まった。
自分の家は小さすぎて、ロキが家の中に入れないというのだ。
そんな訳ないでしょう。
ロキの住んでいる城が大きいだけで、ロキ自体は大きくない。
ロキのことを一体何だと思っているのかしらと、手紙を読んだ時には実の親ながらも呆れてしまった。
もちろん、そんなことは私の両親にだってわかっているので、かなり動揺していたらしい。
というか、弟も含む家族三人の誰一人も、そんなことを書くことがおかしいということに気付けなかったのが不思議だ。
あの手紙は検閲が入っているから、他の人に見られてる可能性が高い。
手紙を読んだ人は私の両親の頭が大丈夫かと心配になっただろうと思う。
あの時のことを思い出しながら一人で苦笑していると、馬車の中で向かい合って座っていたロキが尋ねてくる。
「どうかしたのか?」
「あ、ううん。両親からの手紙のことを思い出して面白くなってしまったの」
「ああ。かなり動揺していたみたいだな」
ロキにも手紙を見せたので内容を知ってくれている。
だから、彼は苦笑して頷いてくれた。
一応、家族の名誉のためにいっておくけれど、同時に手紙がもう一通届いていて、先程の手紙は破棄してくれと書かれていたのと、ロキを歓迎したいので、ロキの好きな物や嫌いな物などを教えてほしいという連絡がきた。
お迎えするなら、粗相がないようにしたいみたいという気持ちはわかるけれど、私もロキのこと、そんなに詳しい訳でもないのよね。
だから、メイド三人衆に色々と教えてもらってから返事をした。
もちろん、彼が世間的に公表してる範囲内でしか知らせていない。
余計な情報が外に漏れるのは良くないものね。
ロキは王太子だから、味方も多ければ敵も多い。
いつだって命の危険にさらされている。
そんな人と外に遊びに行くなんていいのかと、今更、不安になってきてしまった。
城の敷地内でゆっくりするほうが、ロキにとっては安全なのよね。
事前に連絡しているとはいえ、外に連れ出すなんてやってはいけないことだったわ。
「アイラ」
ロキの優しい声が聞こえて我に返る。
「せっかくのデートなんだから、僕に集中してくれないか?」
「ご、ごめんなさい! でも、ロキのことを考えていたのよ」
言わなくてもいいのに、焦って口に出してしまった。
ロキは私の言葉を聞いて驚いた顔をしたあと、笑顔で私の隣に移動して腰を下ろした。
「僕について、どんなことを考えてたのかな」
「ロキのことを心配していたのよ」
ロキとの距離が近すぎる気がして、少しだけスペースを空けると、ロキは少しだけ悲しそうな顔になった。
でも、距離は詰めることなく聞いてくる。
「どうして心配するの?」
「だって、ロキは王太子じゃない。命を狙うような人がいてもおかしくないもの」
「それはそうだな。だから、護衛がたくさん付いてくれているだろ?」
「だからよ。それだけ危険だということじゃないの。それなのに外へ連れ出すだなんて、私ってばなんてことをしているのかしら、と思っただけ」
「今日のスケジュールは関係者以外の人間には知らされてない。君のご両親やサラたちが人に話をしてしまっていれば別だけど、そういう人たちじゃないだろ?」
「当たり前よ! わざわざ、ロキを危険にさらすような人たちじゃないわ!」
ムキになって言うと、ロキは微笑んで頷く。
「だよな? 僕もそう思う。だから、大丈夫だよ」
「……なら良いけど」
本当は大丈夫だなんて思ってないんだろうけど、私を心配させないようにと考えて言ってくれてるんだとわかった。
こういう気遣いは、ロキの性格なのか、それとも王太子として自然と身に付いたものなのか、どちらなのかしら。
ケーキ屋さんから少し離れた所で馬車から降りて、今日のロキを改めて見つめる。
市井に来るからといって、目立たないようにか、白のシャツとベージュのパンツ姿だ。
でも、顔が良いのと、王族としてのオーラがあるせいか庶民には見えない。
昔の彼を思い出して懐かしくなる。
正直なことを言うと見た目はこっちのほうの彼が好きだった私としては、少しだけ、いや、ほんの少しだけときめいてしまう。
外見で恋をするのはロキには失礼だわ。
ロキに恋をするなら、外見ももちろんだけど、中身を好きになりたい。
護衛も庶民の格好をして付いてきてくれているけれど、少しだけ離れた位置を歩いてくれている。
だから、ケーキ屋さんに向かって二人で並んで歩きながら会話をしていると、すれ違ったカップルのことが気になった。
仲良さそうに手を繋いで歩いていて、カップルというものは手を繋ぐのが普通なのかしらと考えてしまう。
「僕たちも手を繋ごうか」
あからさまにすれ違う二人を見つめてしまっていたからか、ロキが笑顔で右手を差し出してきた。
「えっ!? ど、どうして!?」
動揺して聞き返すと、ロキはいたずらっ子のような顔をして私を見つめてきたのだった。
だから、リュシリュー殿下とはここで別れることになったのだけれど、数日後、思わぬところで出くわすことになる。
それは私とロキのデートの日で、サラと合流するために朝からお父様の経営しているケーキ屋さんに向かった時だった。
サラはこの日はお休みをとってくれているけれど、待ち合わせしやすいようにケーキ屋さんに来てくれるらしい。
合流したあとは、お店でケーキを買って、私の実家に行って食べることになった。
ロキを連れて行くと実家に連絡をいれたら、実家からの返事の一通目は「駄目だ」から始まった。
自分の家は小さすぎて、ロキが家の中に入れないというのだ。
そんな訳ないでしょう。
ロキの住んでいる城が大きいだけで、ロキ自体は大きくない。
ロキのことを一体何だと思っているのかしらと、手紙を読んだ時には実の親ながらも呆れてしまった。
もちろん、そんなことは私の両親にだってわかっているので、かなり動揺していたらしい。
というか、弟も含む家族三人の誰一人も、そんなことを書くことがおかしいということに気付けなかったのが不思議だ。
あの手紙は検閲が入っているから、他の人に見られてる可能性が高い。
手紙を読んだ人は私の両親の頭が大丈夫かと心配になっただろうと思う。
あの時のことを思い出しながら一人で苦笑していると、馬車の中で向かい合って座っていたロキが尋ねてくる。
「どうかしたのか?」
「あ、ううん。両親からの手紙のことを思い出して面白くなってしまったの」
「ああ。かなり動揺していたみたいだな」
ロキにも手紙を見せたので内容を知ってくれている。
だから、彼は苦笑して頷いてくれた。
一応、家族の名誉のためにいっておくけれど、同時に手紙がもう一通届いていて、先程の手紙は破棄してくれと書かれていたのと、ロキを歓迎したいので、ロキの好きな物や嫌いな物などを教えてほしいという連絡がきた。
お迎えするなら、粗相がないようにしたいみたいという気持ちはわかるけれど、私もロキのこと、そんなに詳しい訳でもないのよね。
だから、メイド三人衆に色々と教えてもらってから返事をした。
もちろん、彼が世間的に公表してる範囲内でしか知らせていない。
余計な情報が外に漏れるのは良くないものね。
ロキは王太子だから、味方も多ければ敵も多い。
いつだって命の危険にさらされている。
そんな人と外に遊びに行くなんていいのかと、今更、不安になってきてしまった。
城の敷地内でゆっくりするほうが、ロキにとっては安全なのよね。
事前に連絡しているとはいえ、外に連れ出すなんてやってはいけないことだったわ。
「アイラ」
ロキの優しい声が聞こえて我に返る。
「せっかくのデートなんだから、僕に集中してくれないか?」
「ご、ごめんなさい! でも、ロキのことを考えていたのよ」
言わなくてもいいのに、焦って口に出してしまった。
ロキは私の言葉を聞いて驚いた顔をしたあと、笑顔で私の隣に移動して腰を下ろした。
「僕について、どんなことを考えてたのかな」
「ロキのことを心配していたのよ」
ロキとの距離が近すぎる気がして、少しだけスペースを空けると、ロキは少しだけ悲しそうな顔になった。
でも、距離は詰めることなく聞いてくる。
「どうして心配するの?」
「だって、ロキは王太子じゃない。命を狙うような人がいてもおかしくないもの」
「それはそうだな。だから、護衛がたくさん付いてくれているだろ?」
「だからよ。それだけ危険だということじゃないの。それなのに外へ連れ出すだなんて、私ってばなんてことをしているのかしら、と思っただけ」
「今日のスケジュールは関係者以外の人間には知らされてない。君のご両親やサラたちが人に話をしてしまっていれば別だけど、そういう人たちじゃないだろ?」
「当たり前よ! わざわざ、ロキを危険にさらすような人たちじゃないわ!」
ムキになって言うと、ロキは微笑んで頷く。
「だよな? 僕もそう思う。だから、大丈夫だよ」
「……なら良いけど」
本当は大丈夫だなんて思ってないんだろうけど、私を心配させないようにと考えて言ってくれてるんだとわかった。
こういう気遣いは、ロキの性格なのか、それとも王太子として自然と身に付いたものなのか、どちらなのかしら。
ケーキ屋さんから少し離れた所で馬車から降りて、今日のロキを改めて見つめる。
市井に来るからといって、目立たないようにか、白のシャツとベージュのパンツ姿だ。
でも、顔が良いのと、王族としてのオーラがあるせいか庶民には見えない。
昔の彼を思い出して懐かしくなる。
正直なことを言うと見た目はこっちのほうの彼が好きだった私としては、少しだけ、いや、ほんの少しだけときめいてしまう。
外見で恋をするのはロキには失礼だわ。
ロキに恋をするなら、外見ももちろんだけど、中身を好きになりたい。
護衛も庶民の格好をして付いてきてくれているけれど、少しだけ離れた位置を歩いてくれている。
だから、ケーキ屋さんに向かって二人で並んで歩きながら会話をしていると、すれ違ったカップルのことが気になった。
仲良さそうに手を繋いで歩いていて、カップルというものは手を繋ぐのが普通なのかしらと考えてしまう。
「僕たちも手を繋ごうか」
あからさまにすれ違う二人を見つめてしまっていたからか、ロキが笑顔で右手を差し出してきた。
「えっ!? ど、どうして!?」
動揺して聞き返すと、ロキはいたずらっ子のような顔をして私を見つめてきたのだった。
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