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25 無駄遣いはやめましょう
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「ダーリン、会いたかったわ! 私のことを忘れて他の女性のところにいってしまうんじゃないかと、不安でしょうがなかったわ!」
「僕もだよ、ハニー! ロキアス殿下に君の心が奪われてしまうんじゃないかと思うと夜も眠れなかったよ!」
その割にはお肌ツルツルですけど、寝不足で畑が荒れるというのは嘘なのかしら。
幸せそうな表情のアルフレッド殿下を見てツッコミたくなったけれどやめておく。
二人は抱擁しながら、呆気にとられている私たちのことなど気にも止めずに話を続ける。
「ハニー、今日はちゃんと、ロキアス殿下に話をしておくからね! 君が僕のものだということをしっかりと!」
「ありがとう、ダーリン! 本当は断りたかったのだけど、お父様がどうしてもと言うから、今回はお受けしたけれど、私にはあなたしかいないわ!」
私たちのことは、その辺の石ころとでも思っているのか、二人は目を閉じて、お互いの顔を近付けていく。
そんな二人を慌ててロキが止めた。
「二人共に思い合っているのはいいが、人前だし、そういうことはしないほうがいい。それにセイデア嬢、君は王太子妃候補なんだ。城の敷地内で、他の男性と、そういうことをするのは良くない。アルフレッド殿下と幸せになりたいなら王太子妃候補を辞退してくれたらいいだけだ」
ロキは呆れ顔で、セイデア伯爵令嬢に言った。
本当はアルフレッド殿下にも言いたいんだろうけど、一応、他国の王子だから遠慮しているんでしょうね。
それに、恋人が悪く言われたら普通は庇うはずだわ。
だけど、二人の反応は予想と違った。
「駄目じゃないか、ハニー。あれだけ君の魅力は隠しておくようにって言ったのに! ロキアス殿下は君のことを好きになってしまったみたいだよ!?」
「そんなあ! 申し訳ございませんが、ロキアス殿下、私には好きな人がいるんです!」
「……何で僕がふられたことになってるんだよ」
ロキはこめかみを押さえて言ったあとに話を続ける。
「悪いけれど誤解だよ。僕はセイデア嬢に恋愛感情はない。君たちが愛を貫きたいなら勝手にすればいいが、その前にもう一度言わせてもらう。セイデア嬢、君は王太子妃候補の座からおりてくれ」
ロキの言葉を聞いたセイデア伯爵令嬢とアルフレッド殿下は顔を見合わせた。
「やはり、辞退したほうがいいんじゃないかな? そうすれば君の魅力にロキアス殿下が気付かないままで終われるよ」
「そうですが、お金が必要なんです。辞退した場合もいただけるのでしょうか」
セイデア伯爵に聞かれ、ロキが首を横に振る。
「やむを得ない事情ならまだしも、君の場合は他の男性と一緒になりたいからだろう。しかも、王太子妃候補としてここに来て、まだ三十日も経っていないのだから、そんな勝手な理由では認められないだろう」
「そんな困ります! お金を持って帰れなかったら両親から叱られてしまいます!」
セイデア伯爵令嬢が泣きそうな顔になって言った。
そう思うならロキの前では、ロキを好きだという演技をしておけば良かったのに。
ロキが言っていたけれど、王太子妃候補が集められて、まだ三十日も経っていないのに、自分の都合で辞退して、お金がもらえるなら私だってそうしたい。
だけど、私の考えはそれを良しとしないし、今回みたいな事情で辞退して、参加賞のお金をもらおうとするのは、また違う気もする。
お金がほしいのは私も同じだけど、手は抜かずに頑張るつもりだし。
それにしても、この二人は国が違うのに、どうやって知り合ったのかしら。
何だか気になってしまい、ついつい聞いてみる。
「あの、質問しても良いでしょうか」
「どうぞ」
セイデア伯爵令嬢とアルフレッド殿下の声が重なり、二人は質問した私のほうは見ずに、お互いを嬉しそうに見つめ合った。
「お二人はどうやって出会ったんですか? 王子様と伯爵家、しかも他国なんですから、中々出会うことがないのではないのですか?」
私の質問に二人は見つめ合ったままの状態で頷きあい、セイデア伯爵令嬢が渋々といった感じで、こちらに顔を向けて笑顔で答える。
「招待していただいた夜会で出会ったんです」
「そうなんだ。僕達は一目あった時に恋に落ちたんだよ」
「そんなに愛し合っていらっしゃるのに、どうして、王太子妃候補になろうとしたんですか? お金についは、最初から決まっていたわけではないでしょう?」
考えてみれば参加賞のお金の話は急遽、私のために作られたはず。
ギリギリになって、参加賞の賞金が出ることが決まったから、とりあえず参加だけしようということになったのかしら。
失礼なことを聞いているのは承知しているけれど、私的には、そんなに好きなら王太子妃候補を断れば良かったのに、と思ったので聞いてしまった。
「そうです。両親から家の財政が厳しいので、お金が必要だと言われたんです」
「アルフレッド殿下、あなたのほうから援助は出来ないのですか? あなたが彼女を妻にすれば、多少は彼女の家に援助が出来るのでは?」
私の質問に答えてくれたアルフレッド殿下にロキが聞くと、アルフレッド殿下は首を横に振る。
「なぜか、僕は未だにお小遣い制でね。自由にお金を使えないんだよ」
お小遣い制ってどういうこと?
そんな風にされているということは、やっぱり、おかしいのはこの人だけだったのね。
好きな様にさせたら、お金を使い込むだろうから、20歳になってもお小遣い制なんだわ。
でも、不思議ね。
「お小遣い制といっても、王子殿下なのですから、金額は多いのではないですか?」
「それが遊んでばかりのお前に、やる金は本当にないんだって言われてしまって、お金がなくてさ。いつも、デートのお金もハニーに出してもらっていたんだよ」
なぜか胸を張って答える、アルフレッド殿下。
別に、デートのお金をどちらが出すについては、好きなようにしたら良いと思う。
でも、彼女に出してもらっていることを自慢げに言う、王子もどうかと思うわ。
この国の貴族はデートするなら男性が出すのは当たり前になっているけど、平民は割り勘が多い。
余計なお世話かもしれないけど、アルフレッド殿下も王族のプライドを見せて、せめて割り勘にしたら良いのにと思う。
小さく息を吐いてから、ロキがアルフレッド殿下に質問する。
「アルフレッド殿下、二人が納得されておられるので、他人がどうこう言うのもなんですが、普段のデートはどういう所に行かれているのですか?」
「それはもちろん、高級レストランに行ったり、ショッピングをしたりだよ。ハニーが色々と買ってくれるんだ。本当にハニーは優しいよね!」
悪びれた様子のないアルフレッド殿下を見て、ロキと私は呆れ返って顔を見合わせた。
セイデア伯爵家がお金に困っているのって、この人のせいじゃないの。
「……セイデア伯爵令嬢、申し訳ないが君は王太子妃には向いていない」
ロキが眉根を寄せて厳しい口調で言った。
「僕もだよ、ハニー! ロキアス殿下に君の心が奪われてしまうんじゃないかと思うと夜も眠れなかったよ!」
その割にはお肌ツルツルですけど、寝不足で畑が荒れるというのは嘘なのかしら。
幸せそうな表情のアルフレッド殿下を見てツッコミたくなったけれどやめておく。
二人は抱擁しながら、呆気にとられている私たちのことなど気にも止めずに話を続ける。
「ハニー、今日はちゃんと、ロキアス殿下に話をしておくからね! 君が僕のものだということをしっかりと!」
「ありがとう、ダーリン! 本当は断りたかったのだけど、お父様がどうしてもと言うから、今回はお受けしたけれど、私にはあなたしかいないわ!」
私たちのことは、その辺の石ころとでも思っているのか、二人は目を閉じて、お互いの顔を近付けていく。
そんな二人を慌ててロキが止めた。
「二人共に思い合っているのはいいが、人前だし、そういうことはしないほうがいい。それにセイデア嬢、君は王太子妃候補なんだ。城の敷地内で、他の男性と、そういうことをするのは良くない。アルフレッド殿下と幸せになりたいなら王太子妃候補を辞退してくれたらいいだけだ」
ロキは呆れ顔で、セイデア伯爵令嬢に言った。
本当はアルフレッド殿下にも言いたいんだろうけど、一応、他国の王子だから遠慮しているんでしょうね。
それに、恋人が悪く言われたら普通は庇うはずだわ。
だけど、二人の反応は予想と違った。
「駄目じゃないか、ハニー。あれだけ君の魅力は隠しておくようにって言ったのに! ロキアス殿下は君のことを好きになってしまったみたいだよ!?」
「そんなあ! 申し訳ございませんが、ロキアス殿下、私には好きな人がいるんです!」
「……何で僕がふられたことになってるんだよ」
ロキはこめかみを押さえて言ったあとに話を続ける。
「悪いけれど誤解だよ。僕はセイデア嬢に恋愛感情はない。君たちが愛を貫きたいなら勝手にすればいいが、その前にもう一度言わせてもらう。セイデア嬢、君は王太子妃候補の座からおりてくれ」
ロキの言葉を聞いたセイデア伯爵令嬢とアルフレッド殿下は顔を見合わせた。
「やはり、辞退したほうがいいんじゃないかな? そうすれば君の魅力にロキアス殿下が気付かないままで終われるよ」
「そうですが、お金が必要なんです。辞退した場合もいただけるのでしょうか」
セイデア伯爵に聞かれ、ロキが首を横に振る。
「やむを得ない事情ならまだしも、君の場合は他の男性と一緒になりたいからだろう。しかも、王太子妃候補としてここに来て、まだ三十日も経っていないのだから、そんな勝手な理由では認められないだろう」
「そんな困ります! お金を持って帰れなかったら両親から叱られてしまいます!」
セイデア伯爵令嬢が泣きそうな顔になって言った。
そう思うならロキの前では、ロキを好きだという演技をしておけば良かったのに。
ロキが言っていたけれど、王太子妃候補が集められて、まだ三十日も経っていないのに、自分の都合で辞退して、お金がもらえるなら私だってそうしたい。
だけど、私の考えはそれを良しとしないし、今回みたいな事情で辞退して、参加賞のお金をもらおうとするのは、また違う気もする。
お金がほしいのは私も同じだけど、手は抜かずに頑張るつもりだし。
それにしても、この二人は国が違うのに、どうやって知り合ったのかしら。
何だか気になってしまい、ついつい聞いてみる。
「あの、質問しても良いでしょうか」
「どうぞ」
セイデア伯爵令嬢とアルフレッド殿下の声が重なり、二人は質問した私のほうは見ずに、お互いを嬉しそうに見つめ合った。
「お二人はどうやって出会ったんですか? 王子様と伯爵家、しかも他国なんですから、中々出会うことがないのではないのですか?」
私の質問に二人は見つめ合ったままの状態で頷きあい、セイデア伯爵令嬢が渋々といった感じで、こちらに顔を向けて笑顔で答える。
「招待していただいた夜会で出会ったんです」
「そうなんだ。僕達は一目あった時に恋に落ちたんだよ」
「そんなに愛し合っていらっしゃるのに、どうして、王太子妃候補になろうとしたんですか? お金についは、最初から決まっていたわけではないでしょう?」
考えてみれば参加賞のお金の話は急遽、私のために作られたはず。
ギリギリになって、参加賞の賞金が出ることが決まったから、とりあえず参加だけしようということになったのかしら。
失礼なことを聞いているのは承知しているけれど、私的には、そんなに好きなら王太子妃候補を断れば良かったのに、と思ったので聞いてしまった。
「そうです。両親から家の財政が厳しいので、お金が必要だと言われたんです」
「アルフレッド殿下、あなたのほうから援助は出来ないのですか? あなたが彼女を妻にすれば、多少は彼女の家に援助が出来るのでは?」
私の質問に答えてくれたアルフレッド殿下にロキが聞くと、アルフレッド殿下は首を横に振る。
「なぜか、僕は未だにお小遣い制でね。自由にお金を使えないんだよ」
お小遣い制ってどういうこと?
そんな風にされているということは、やっぱり、おかしいのはこの人だけだったのね。
好きな様にさせたら、お金を使い込むだろうから、20歳になってもお小遣い制なんだわ。
でも、不思議ね。
「お小遣い制といっても、王子殿下なのですから、金額は多いのではないですか?」
「それが遊んでばかりのお前に、やる金は本当にないんだって言われてしまって、お金がなくてさ。いつも、デートのお金もハニーに出してもらっていたんだよ」
なぜか胸を張って答える、アルフレッド殿下。
別に、デートのお金をどちらが出すについては、好きなようにしたら良いと思う。
でも、彼女に出してもらっていることを自慢げに言う、王子もどうかと思うわ。
この国の貴族はデートするなら男性が出すのは当たり前になっているけど、平民は割り勘が多い。
余計なお世話かもしれないけど、アルフレッド殿下も王族のプライドを見せて、せめて割り勘にしたら良いのにと思う。
小さく息を吐いてから、ロキがアルフレッド殿下に質問する。
「アルフレッド殿下、二人が納得されておられるので、他人がどうこう言うのもなんですが、普段のデートはどういう所に行かれているのですか?」
「それはもちろん、高級レストランに行ったり、ショッピングをしたりだよ。ハニーが色々と買ってくれるんだ。本当にハニーは優しいよね!」
悪びれた様子のないアルフレッド殿下を見て、ロキと私は呆れ返って顔を見合わせた。
セイデア伯爵家がお金に困っているのって、この人のせいじゃないの。
「……セイデア伯爵令嬢、申し訳ないが君は王太子妃には向いていない」
ロキが眉根を寄せて厳しい口調で言った。
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