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24 第三王子殿下の愛しい人
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「ロキ! じゃない、ロキアス殿下!」
突然現れたロキを見上げて叫ぶと、彼は私の腕を離してから、私とアルフレッド殿下の間に入った。
「ロキアス殿下じゃないですか!」
アルフレッド殿下はロキを見て嬉しそうな顔をした。
「大丈夫か? 何もされていない?」
「私は大丈夫よ」
顔を後ろに向けて聞いてきたロキは、私が頷いたのを確認すると、今度はアルフレッド殿下に向かって言う。
「彼女に何か御用でしょうか。彼女は僕の妃候補です。アルフレッド殿下に何か失礼なことでもしたようでしたら、僕が謝ります」
「子猫ちゃんは何もしていないよ。ロキアス殿下、別に君から彼女を奪うつもりはないから安心してくれ。だから、そんなに怖い顔をしないでおくれよ」
「……なら、なぜ、彼女の手を取ろうとしたんです?」
「それくらい、いいだろう。君のところへ戻るために案内してもらおうと思ったんだ。ああ、でも、愛しい人が他の男に触れられていると考えたら辛いものだね。許してくれ、ロキアス殿下、子猫ちゃん」
アルフレッド殿下は額を片手でおさえ、なぜかよろめきながら言った。
「アイラ様、大丈夫でしたでしょうか? お声も掛けずに一人にさせてしまい申し訳ございませんでした」
後ろから、小声でキャシーが謝ってくるので、首を横に振る。
「ロキを呼んできてくれたんでしょう? それにここは城の敷地内だから、多少は離れても大丈夫よ。周りに騎士がいるしね。だから、気にしないで。というか、ロキを連れてきてくれてありがとう」
「とんでもございません。こちらこそありがとうございます」
実際、キャシーがロキを呼んできてくれなかったら、アルフレッド殿下に手を掴まれていただろうし本当に助かったわ。
さっきのロキの登場の仕方は、お話に出てくるような王子様っぽかったかもしれない。
なんというか私がヒロインみたいだったわ。
もし、私がヒロインだったら、お話の内容はラブストーリーではなくコメディになりそうなので恋愛に発展するかは不明ね。
「そこの子猫ちゃんのお名前をさっき聞いたんだけど、何だったかな」
アルフレッド殿下が私にではなく、ロキに尋ねた。
「彼女はキャスティー子爵令嬢といいますが、それが何か?」
ロキが警戒した様子で答えると、アルフレッド殿下は何度も首を縦に振る。
「キャスティーちゃんか! 覚えたよ! 彼女は他の王太子妃候補のことを何も教えてくれなくてね」
アルフレッド殿下は、私に向けてまた下手くそなウインクをしてきた。
彼女というのは誰のことを言っているのかしら。
アルフレッド殿下に聞いてもちゃんとした答えが返ってきそうにないので、ロキに尋ねてみる。
「ロキ、聞きたいことでいっぱいなんだけど」
「ごめん。詳しい話はあとでするよ。彼を連れて戻らないと駄目なんだ」
「そうよね、ごめんなさい」
考えてみたら、ちょっと変わってるからといって第三王子殿下がわざわざ遊びに他国の城に来るわけないものね。
そう思って謝ると、ロキが慌てた顔をする。
「どうして謝るんだよ」
「邪魔してしまったみたいだから」
「そんなことはないよ。君は何も悪くない」
「そうだよ、キャスティーちゃん。僕が愛しい人に会いたくて彷徨ってしまったことがいけなかったんだ。僕の騎士やここの騎士の人たちにも申し訳ないことをした。僕は男性に追いかけられると逃げたくなっちゃうんだ」
どういうこと?
騎士と鬼ごっこみたいなことをして、ここまで来てしまったということ?
困惑していると、ロキが説明してくれる。
「アルフレッド殿下はいつもこんな感じだから、彼の騎士もうちの騎士も遠くから見守るだけにしてるんだ」
「そうだったのね。野放しになっているわけじゃないなら良かったわ」
「今日は、彼がどうしても会いたいという人に会わせてあげようと思っていたんだ。でも、その前の打ち合わせが長引いて、アルフレッド殿下の集中力が切れちゃったんだよ」
「何よ、それ」
小声で教えてくれたロキの話を聞いて呆れていると、アルフレッド殿下は額に手を当てながら、目を閉じて言う。
「ああ。愛しい人、彼女は今どこにいるんだろう」
この人、大丈夫かしら。
きっと、お兄様たちがよっぽどしっかりしていらっしゃるんでしょうね。
だから、こんな個性的な人になって自分をアピールしようとしているかもしれないわ。
と、勝手なことを考えたその時だった。
「ここにいたんですね!」
私たちからすれば正面である、アルフレッド殿下の背後から女性が現れた。
現れたのは、ミサ・セイデア伯爵令嬢。
王太子妃候補の中で今まで、ほとんど接点のなかった謎の令嬢だ。
いや、謎とまではいかないのかしら。
白いプリンセスラインのドレスに身を包み、ピンク色の髪をシニヨンにしたセイデア伯爵令嬢は、アルフレッド殿下を見て叫んだ。
「ダーリン!」
ダーリン?
思わず、ロキと私は顔を見合わせた。
すると、アルフレッド殿下がセイデア伯爵令嬢に応える。
「ああ! 会いたかったよ、僕のハニー!」
ダーリンとハニーって呼び合ってる人が本当にいたわ!
この二人はラブラブな感じだし、ラブレターの返事の書き方を教えてもらえるかしら。
っていうか、そんなことを言っている場合じゃないわよね。
「一体、どういうことなんだよ」
ロキが呆れた顔をして、抱き合って再会を喜んでいる二人を見て呟いた。
突然現れたロキを見上げて叫ぶと、彼は私の腕を離してから、私とアルフレッド殿下の間に入った。
「ロキアス殿下じゃないですか!」
アルフレッド殿下はロキを見て嬉しそうな顔をした。
「大丈夫か? 何もされていない?」
「私は大丈夫よ」
顔を後ろに向けて聞いてきたロキは、私が頷いたのを確認すると、今度はアルフレッド殿下に向かって言う。
「彼女に何か御用でしょうか。彼女は僕の妃候補です。アルフレッド殿下に何か失礼なことでもしたようでしたら、僕が謝ります」
「子猫ちゃんは何もしていないよ。ロキアス殿下、別に君から彼女を奪うつもりはないから安心してくれ。だから、そんなに怖い顔をしないでおくれよ」
「……なら、なぜ、彼女の手を取ろうとしたんです?」
「それくらい、いいだろう。君のところへ戻るために案内してもらおうと思ったんだ。ああ、でも、愛しい人が他の男に触れられていると考えたら辛いものだね。許してくれ、ロキアス殿下、子猫ちゃん」
アルフレッド殿下は額を片手でおさえ、なぜかよろめきながら言った。
「アイラ様、大丈夫でしたでしょうか? お声も掛けずに一人にさせてしまい申し訳ございませんでした」
後ろから、小声でキャシーが謝ってくるので、首を横に振る。
「ロキを呼んできてくれたんでしょう? それにここは城の敷地内だから、多少は離れても大丈夫よ。周りに騎士がいるしね。だから、気にしないで。というか、ロキを連れてきてくれてありがとう」
「とんでもございません。こちらこそありがとうございます」
実際、キャシーがロキを呼んできてくれなかったら、アルフレッド殿下に手を掴まれていただろうし本当に助かったわ。
さっきのロキの登場の仕方は、お話に出てくるような王子様っぽかったかもしれない。
なんというか私がヒロインみたいだったわ。
もし、私がヒロインだったら、お話の内容はラブストーリーではなくコメディになりそうなので恋愛に発展するかは不明ね。
「そこの子猫ちゃんのお名前をさっき聞いたんだけど、何だったかな」
アルフレッド殿下が私にではなく、ロキに尋ねた。
「彼女はキャスティー子爵令嬢といいますが、それが何か?」
ロキが警戒した様子で答えると、アルフレッド殿下は何度も首を縦に振る。
「キャスティーちゃんか! 覚えたよ! 彼女は他の王太子妃候補のことを何も教えてくれなくてね」
アルフレッド殿下は、私に向けてまた下手くそなウインクをしてきた。
彼女というのは誰のことを言っているのかしら。
アルフレッド殿下に聞いてもちゃんとした答えが返ってきそうにないので、ロキに尋ねてみる。
「ロキ、聞きたいことでいっぱいなんだけど」
「ごめん。詳しい話はあとでするよ。彼を連れて戻らないと駄目なんだ」
「そうよね、ごめんなさい」
考えてみたら、ちょっと変わってるからといって第三王子殿下がわざわざ遊びに他国の城に来るわけないものね。
そう思って謝ると、ロキが慌てた顔をする。
「どうして謝るんだよ」
「邪魔してしまったみたいだから」
「そんなことはないよ。君は何も悪くない」
「そうだよ、キャスティーちゃん。僕が愛しい人に会いたくて彷徨ってしまったことがいけなかったんだ。僕の騎士やここの騎士の人たちにも申し訳ないことをした。僕は男性に追いかけられると逃げたくなっちゃうんだ」
どういうこと?
騎士と鬼ごっこみたいなことをして、ここまで来てしまったということ?
困惑していると、ロキが説明してくれる。
「アルフレッド殿下はいつもこんな感じだから、彼の騎士もうちの騎士も遠くから見守るだけにしてるんだ」
「そうだったのね。野放しになっているわけじゃないなら良かったわ」
「今日は、彼がどうしても会いたいという人に会わせてあげようと思っていたんだ。でも、その前の打ち合わせが長引いて、アルフレッド殿下の集中力が切れちゃったんだよ」
「何よ、それ」
小声で教えてくれたロキの話を聞いて呆れていると、アルフレッド殿下は額に手を当てながら、目を閉じて言う。
「ああ。愛しい人、彼女は今どこにいるんだろう」
この人、大丈夫かしら。
きっと、お兄様たちがよっぽどしっかりしていらっしゃるんでしょうね。
だから、こんな個性的な人になって自分をアピールしようとしているかもしれないわ。
と、勝手なことを考えたその時だった。
「ここにいたんですね!」
私たちからすれば正面である、アルフレッド殿下の背後から女性が現れた。
現れたのは、ミサ・セイデア伯爵令嬢。
王太子妃候補の中で今まで、ほとんど接点のなかった謎の令嬢だ。
いや、謎とまではいかないのかしら。
白いプリンセスラインのドレスに身を包み、ピンク色の髪をシニヨンにしたセイデア伯爵令嬢は、アルフレッド殿下を見て叫んだ。
「ダーリン!」
ダーリン?
思わず、ロキと私は顔を見合わせた。
すると、アルフレッド殿下がセイデア伯爵令嬢に応える。
「ああ! 会いたかったよ、僕のハニー!」
ダーリンとハニーって呼び合ってる人が本当にいたわ!
この二人はラブラブな感じだし、ラブレターの返事の書き方を教えてもらえるかしら。
っていうか、そんなことを言っている場合じゃないわよね。
「一体、どういうことなんだよ」
ロキが呆れた顔をして、抱き合って再会を喜んでいる二人を見て呟いた。
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