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14 親友との再会も突然に
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向かい合って座っていたけれど、ロキのお願いで彼の隣に座ってから話しかける。
「王太子としての仕事はどうなの?」
「本格的にやっているわけじゃないから、大変ではあるけど何とかやれてるよ」
「学生時代よりも疲れているように見えるけど、体調は大丈夫なの?」
「それはしょうがない。色々と気を遣うし、まだ慣れないことばかりだから。でも、寝てることは寝てるから大丈夫だよ」
お茶を飲みながら話し始めたばかりだけど、ロキは学生時代のような溌剌とした感じが見えない。
だから、早速、考えていたことを口にする。
「ちゃんと寝ているように思えないから、良かったら、今はお昼寝タイムにしない?」
「……君が添い寝してくれるのかな?」
ロキに聞き返されて気が付いた。
そ、そうよね!
そんな風にとられてもおかしくないわよね!
そういうつもりじゃなかったから焦る。
「え、えっと! 添い寝は無理だけど、ロキの傍にはいるわ!」
「気持ちは有り難いけど、寝顔をみられるのはちょっと」
「どうして?」
苦笑したロキに聞いてみると、彼は視線を逸らして答える。
「恥ずかしいだろ。それに、せっかく君と話せる機会なのに寝ていたらもったいないし」
「体を休めることも大事よ」
「それはわかってる。だけど、君と過ごすのを楽しみにしてたんだよ。学生時代だって二人で出かけたりなんてしたことはなかっただろ? 君には婚約者がいたから僕と二人で出かけるなんて無理だったじゃないか」
不貞腐れたような顔をするロキに言う。
「でも、ロキは私を諦めようとしていたんでしょう? それなら、出かけたりしないほうが良いじゃない」
「だから言っているだろう。君には婚約者がいたから諦めようとしていたんだ。婚約破棄になるってわかっていたら、また違っていたと思う。さすがに、エイドのようなことはできないけどさ」
「エイドはやり過ぎよ」
「まあな。それはサラにも言われたみたいだから、これ以上は強引なことはしないだろう」
ロキが呆れた顔で言うから、まだサラに会えていないことを伝える。
「まだ、サラに詳しい話を聞けていないのよ。お互いに忙しくて会えなくて」
「サラが来れる日時がわかったら教えてくれないか。都合が合うなら僕も会って話がしたい」
「わかったわ。ロキの都合の良い日に合わせてもらうわね。そうだ、都合の良い日時を教えてくれる?」
「かまわないが、それで大丈夫なのか?」
「そりゃあ、王太子殿下の都合が優先に決まっているでしょう」
「まあ、そうだな」
ロキが笑って頷いた時だった。
扉がノックされたので返事を返すと、エイドが勢い良く中に入ってきた。
「エイドじゃない。ちょうどエイドの話をしていたのよ。メインはサラの話だけど」
「それが……」
エイドはなぜか浮かない顔で、私とロキを見る。
「まさか」
ロキはエイドの様子で何か気付いたみたいだった。
エイドは浮かない表情のままで口を開く。
「気を遣ったつもりでしたが、気に食わなかったみたいで言葉の暴力を受けました」
「相手がサラなんだから、そんなことになるくらい考えなくてもわかってただろうに」
「どういうこと?」
ロキとエイドの会話の意味がわからなくて聞いてみると、閉まっていた扉が静かに開いた。
そして、その向こうには難しい顔をしているサラの姿が見えた。
「サラじゃない! どうしたの? 何かあったの?」
「どうしたもこうしたもないわ。エイドに呼び出されたのよ」
今日のサラはモスグリーンの膝下丈のドレスに身を包み、髪には花のコサージュを付けて正装をしていた。
いつもの元気なイメージのサラも可愛いけど、今日のサラは女の子らしい気がして、また違う可愛さだ。
「王太子殿下にお会いできて光栄です」
サラは部屋の中に入ってくると、ロキに向かってカーテシーをした。
「久しぶりだな。楽にしてくれていい。僕たちだけなら敬語もいらないよ」
ロキは苦笑してから、サラに向かって言葉を続ける。
「サラ、ちょうど君と話をしたいと思っていたんだ」
「ロキ様が王太子殿下だったということでしょうか」
「そうだね。隠していたことを謝るよ。悪かった」
「それはしょうがないでしょう。教えてはいけないことを教えるほうがおかしいですから」
サラは小さく息を吐いたあと、敬語だと怒っているようにとられると思ったのか、笑顔で言う。
「そんなことでロキに怒るつもりはないわ。どこぞの誰かさんについては別だけど」
「散々謝ったじゃないですか」
サラの横に立っているエイドが困った顔をすると、サラは怒る。
「今回のことに特に怒ってるのよ! さっき、メイドの人から聞いたけど、今日はロキとアイラが二人で過ごさないといけない日なんでしょう? それなのに私を呼ぶだなんてどうかしてるわ!」
「そのほうが効率的でしょう」
「ああ、そう。私は今、あなたの顔を見ると腹が立つから、あなたがいないほうが話をするのには効率的かもしれないわ!」
「意味がわかりませんよ」
エイドの言葉を聞いたサラは、彼を軽く睨んでから言う。
「あなたは外に出ていてくれる? 私はアイラとロキと話をしたいの」
「ど、どうしてですか」
「言ったでしょう。あなたがいないほうが効率的だから」
そう答えるたサラはエイドの腕を掴むと、彼を引っ張って部屋から廊下に押し出すと、すぐに扉を閉めて鍵をかけた。
そして、呆気に取られている私たちに謝ってくる。
「勝手なことをしてごめんね。せっかくここまで来ただし、伝えたい話をしたらすぐに帰るから」
「サラの時間が許されるなら、ゆっくりでいいわよ」
「そうだよ、サラ。久しぶりに話さないか。サラがどうしているか気になってたんだ」
「色々とあったけれど元気にしていたのは確かね。ロキには感謝してるわ。あなたが学生時代からエイドの暴走を止めてくれていたのね」
サラの言葉にロキは肯定も否定もせずに苦笑してから、立ったままで話をしているサラを促す。
「とにかく座って話そうか」
ティーポットのお茶は冷めきってしまっていたけれど、今、扉を開けると、エイドが中に入ってこようとするかもしれない。
だから、冷えた紅茶とクッキーをつまみながら話を聞いた結果、サラは私とロキから話したいことがあると言われてエイドから呼び出されたらしい。
「それって自分が会いたかっただけじゃないの」
「だろうな」
私が呟くとロキも大きく頷いた。
向かいに座るサラはロキに尋ねる。
「ロキ、聞きたいんだけれど、エイドはあなたの側近なの?」
「いや、まだ執事みたいなものかな。側近は別にいるよ。将来は側近にと考えていたけど、しばらくは無理そうだな」
ロキがサラの質問に遠い目をしながら答えた。
サラはロキの顔を見て笑ったあと、すぐに重々しい表情になって口を開く。
「二人に話したいことがあって」
「どうした?」
「実はマグナが毎日、ケーキ屋に通ってくるの。しかも店のお客さんに、この家のオーナーの娘は自分の元婚約者だったって話しかけてるの。それは嘘じゃないからけれど、フッたのは自分だって言ったりして、お客様に迷惑をかけているのよ」
「婚約破棄されたからフラレたって言われたらそうなのかもしれないけど、お客様にわざわざ話しかけて言うものじゃないわ」
私がテーブルを軽く叩いて言うと、ロキが言う。
「サラ、教えてくれてありがとう。そんな奴がいたら業務の邪魔にもなるよな。それに、アイラやキャスティー家の人々にも良くない。だから、対応させてもらうよ」
「そうしてもらえると助かるわ。それから、あの男、アイラが王太子妃候補から脱落したら、自分が婚約者に戻るつもりみたいよ。そんなことを皆に話しまくっているのと、アイラの賞金も狙っているみたいだから気を付けたほうがいいわ」
マグナは、どれだけお金が好きなのよ!
というか、よくもあんなことを言った相手とよりを戻せるだなんて思えるものね!
口には出さずにイライラしていると、ロキが笑顔でサラに言う。
「教えてくれてありがとう。彼は調子にのっているようだから、少し痛い目に遭ってもらおうかな」
そう言ったロキの目は全く笑っていなかった。
「王太子としての仕事はどうなの?」
「本格的にやっているわけじゃないから、大変ではあるけど何とかやれてるよ」
「学生時代よりも疲れているように見えるけど、体調は大丈夫なの?」
「それはしょうがない。色々と気を遣うし、まだ慣れないことばかりだから。でも、寝てることは寝てるから大丈夫だよ」
お茶を飲みながら話し始めたばかりだけど、ロキは学生時代のような溌剌とした感じが見えない。
だから、早速、考えていたことを口にする。
「ちゃんと寝ているように思えないから、良かったら、今はお昼寝タイムにしない?」
「……君が添い寝してくれるのかな?」
ロキに聞き返されて気が付いた。
そ、そうよね!
そんな風にとられてもおかしくないわよね!
そういうつもりじゃなかったから焦る。
「え、えっと! 添い寝は無理だけど、ロキの傍にはいるわ!」
「気持ちは有り難いけど、寝顔をみられるのはちょっと」
「どうして?」
苦笑したロキに聞いてみると、彼は視線を逸らして答える。
「恥ずかしいだろ。それに、せっかく君と話せる機会なのに寝ていたらもったいないし」
「体を休めることも大事よ」
「それはわかってる。だけど、君と過ごすのを楽しみにしてたんだよ。学生時代だって二人で出かけたりなんてしたことはなかっただろ? 君には婚約者がいたから僕と二人で出かけるなんて無理だったじゃないか」
不貞腐れたような顔をするロキに言う。
「でも、ロキは私を諦めようとしていたんでしょう? それなら、出かけたりしないほうが良いじゃない」
「だから言っているだろう。君には婚約者がいたから諦めようとしていたんだ。婚約破棄になるってわかっていたら、また違っていたと思う。さすがに、エイドのようなことはできないけどさ」
「エイドはやり過ぎよ」
「まあな。それはサラにも言われたみたいだから、これ以上は強引なことはしないだろう」
ロキが呆れた顔で言うから、まだサラに会えていないことを伝える。
「まだ、サラに詳しい話を聞けていないのよ。お互いに忙しくて会えなくて」
「サラが来れる日時がわかったら教えてくれないか。都合が合うなら僕も会って話がしたい」
「わかったわ。ロキの都合の良い日に合わせてもらうわね。そうだ、都合の良い日時を教えてくれる?」
「かまわないが、それで大丈夫なのか?」
「そりゃあ、王太子殿下の都合が優先に決まっているでしょう」
「まあ、そうだな」
ロキが笑って頷いた時だった。
扉がノックされたので返事を返すと、エイドが勢い良く中に入ってきた。
「エイドじゃない。ちょうどエイドの話をしていたのよ。メインはサラの話だけど」
「それが……」
エイドはなぜか浮かない顔で、私とロキを見る。
「まさか」
ロキはエイドの様子で何か気付いたみたいだった。
エイドは浮かない表情のままで口を開く。
「気を遣ったつもりでしたが、気に食わなかったみたいで言葉の暴力を受けました」
「相手がサラなんだから、そんなことになるくらい考えなくてもわかってただろうに」
「どういうこと?」
ロキとエイドの会話の意味がわからなくて聞いてみると、閉まっていた扉が静かに開いた。
そして、その向こうには難しい顔をしているサラの姿が見えた。
「サラじゃない! どうしたの? 何かあったの?」
「どうしたもこうしたもないわ。エイドに呼び出されたのよ」
今日のサラはモスグリーンの膝下丈のドレスに身を包み、髪には花のコサージュを付けて正装をしていた。
いつもの元気なイメージのサラも可愛いけど、今日のサラは女の子らしい気がして、また違う可愛さだ。
「王太子殿下にお会いできて光栄です」
サラは部屋の中に入ってくると、ロキに向かってカーテシーをした。
「久しぶりだな。楽にしてくれていい。僕たちだけなら敬語もいらないよ」
ロキは苦笑してから、サラに向かって言葉を続ける。
「サラ、ちょうど君と話をしたいと思っていたんだ」
「ロキ様が王太子殿下だったということでしょうか」
「そうだね。隠していたことを謝るよ。悪かった」
「それはしょうがないでしょう。教えてはいけないことを教えるほうがおかしいですから」
サラは小さく息を吐いたあと、敬語だと怒っているようにとられると思ったのか、笑顔で言う。
「そんなことでロキに怒るつもりはないわ。どこぞの誰かさんについては別だけど」
「散々謝ったじゃないですか」
サラの横に立っているエイドが困った顔をすると、サラは怒る。
「今回のことに特に怒ってるのよ! さっき、メイドの人から聞いたけど、今日はロキとアイラが二人で過ごさないといけない日なんでしょう? それなのに私を呼ぶだなんてどうかしてるわ!」
「そのほうが効率的でしょう」
「ああ、そう。私は今、あなたの顔を見ると腹が立つから、あなたがいないほうが話をするのには効率的かもしれないわ!」
「意味がわかりませんよ」
エイドの言葉を聞いたサラは、彼を軽く睨んでから言う。
「あなたは外に出ていてくれる? 私はアイラとロキと話をしたいの」
「ど、どうしてですか」
「言ったでしょう。あなたがいないほうが効率的だから」
そう答えるたサラはエイドの腕を掴むと、彼を引っ張って部屋から廊下に押し出すと、すぐに扉を閉めて鍵をかけた。
そして、呆気に取られている私たちに謝ってくる。
「勝手なことをしてごめんね。せっかくここまで来ただし、伝えたい話をしたらすぐに帰るから」
「サラの時間が許されるなら、ゆっくりでいいわよ」
「そうだよ、サラ。久しぶりに話さないか。サラがどうしているか気になってたんだ」
「色々とあったけれど元気にしていたのは確かね。ロキには感謝してるわ。あなたが学生時代からエイドの暴走を止めてくれていたのね」
サラの言葉にロキは肯定も否定もせずに苦笑してから、立ったままで話をしているサラを促す。
「とにかく座って話そうか」
ティーポットのお茶は冷めきってしまっていたけれど、今、扉を開けると、エイドが中に入ってこようとするかもしれない。
だから、冷えた紅茶とクッキーをつまみながら話を聞いた結果、サラは私とロキから話したいことがあると言われてエイドから呼び出されたらしい。
「それって自分が会いたかっただけじゃないの」
「だろうな」
私が呟くとロキも大きく頷いた。
向かいに座るサラはロキに尋ねる。
「ロキ、聞きたいんだけれど、エイドはあなたの側近なの?」
「いや、まだ執事みたいなものかな。側近は別にいるよ。将来は側近にと考えていたけど、しばらくは無理そうだな」
ロキがサラの質問に遠い目をしながら答えた。
サラはロキの顔を見て笑ったあと、すぐに重々しい表情になって口を開く。
「二人に話したいことがあって」
「どうした?」
「実はマグナが毎日、ケーキ屋に通ってくるの。しかも店のお客さんに、この家のオーナーの娘は自分の元婚約者だったって話しかけてるの。それは嘘じゃないからけれど、フッたのは自分だって言ったりして、お客様に迷惑をかけているのよ」
「婚約破棄されたからフラレたって言われたらそうなのかもしれないけど、お客様にわざわざ話しかけて言うものじゃないわ」
私がテーブルを軽く叩いて言うと、ロキが言う。
「サラ、教えてくれてありがとう。そんな奴がいたら業務の邪魔にもなるよな。それに、アイラやキャスティー家の人々にも良くない。だから、対応させてもらうよ」
「そうしてもらえると助かるわ。それから、あの男、アイラが王太子妃候補から脱落したら、自分が婚約者に戻るつもりみたいよ。そんなことを皆に話しまくっているのと、アイラの賞金も狙っているみたいだから気を付けたほうがいいわ」
マグナは、どれだけお金が好きなのよ!
というか、よくもあんなことを言った相手とよりを戻せるだなんて思えるものね!
口には出さずにイライラしていると、ロキが笑顔でサラに言う。
「教えてくれてありがとう。彼は調子にのっているようだから、少し痛い目に遭ってもらおうかな」
そう言ったロキの目は全く笑っていなかった。
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