7 / 61
6 止められない恋心
しおりを挟む「兎にも角にも……ルノ殿が戻らない事は話は勧められないのう」
「そうですね。またルノさん頼りになるのは心苦しいですが、現状で帝国が即座に力を貸せる戦力があるとすればルノさんだけですからね」
「しかし……エルフ王国ですら対応できない数の昆虫種をルノさん一人でどうにか出来るのでしょうか?」
「それを言ったら帝国の軍隊だって敵わねえだろ。あいつにどうしようも出来ない敵に帝国軍が敵うはずがねえ……」
「情けない限りじゃのう……一人の少年に頼り切る事しか出来んとは」
会議は難航し、現状で帝国が動かせる戦力は限られ、やはり軍隊を派遣するぐらいならばルノに支援して彼がエルフ王国に向かう方が良いという判断に至る。結局、今回もルノに頼ってしまう事に会議室の面々は溜息を吐き出し、帝国の中でルノと言う存在はあまりにも大きくなり過ぎた。
「それにしてもルノ殿は無事なのか?リーリスの報告によれば魔王軍の幹部の元へ向かったと聞いているが……」
「あの手紙の内容を確認する限りではもう帝都には居ないでしょうね。迎えに行くとしても行き違いになる可能性もありますし、時間が掛かり過ぎます。ここは大人しく待つ方が良いでしょう」
「それにしても魔王軍の奴等は何人幹部が居るんだよ。しかも全員化物揃いじゃねえか」
「本当に化物も含まれていましたよね。ダマラン大臣はともかく、蛇竜を魔人族に変異させるなんて有り得ませんよ」
「うむ……まあ、会議の続きはルノ殿が戻ってからにしよう」
結局はルノが戻るまで会議を中断し、別室に待機させている直央を呼び出して彼からもう少し詳しい事情を問い質す事にした。彼等の誰もがルノがいつも通りに問題を解決して戻ってくる事を疑っておらず、今回も彼が何とかしてくれると思い込んでいた――
――しかし、リーリス達の思惑とは裏腹にルノは翌日になっても戻って来ず、急遽彼等は会議室に集まり、戻らぬルノの事について話し合う。
「……既にルノ殿が消息を絶ってから1日が経過した。白原に向けて迎えの部隊を送り込んだが、状況的に考えてルノ殿の身に何かあったのだろう」
「今朝、念のために屋敷の様子を見てきましたがルノさんや魔獣達が戻っている様子はありませんでした。そしてルノさんの性格から考えても私達に連絡を寄越さずに消えるはずがありません」
「という事は……魔王軍に捕まったか、あるいは殺されたか、生きてはいるが我等と連絡が取れない状況に陥っているという事か」
「くそっ!!あのガキ……無事なのか?」
全員の顔色が暗く、ルノが戻って来ない事に彼等は不安を隠せない。誰よりも強く、幾度も魔王軍を撃退してくれたルノが戻って来ない事にリーリス達は動揺を隠せず、先帝でさえも顔色を悪くする。
「考えたくはないが、ルノ殿が捕まった場合、我々はどうすればいい?」
「勿論ルノ様を助け出すべきです!!すぐに白原に軍隊を派遣しましょう!!」
「正直、私もその意見には賛成したい所ですが、その場合はエルフ王国の対応はどうするんですか?」
「それは……」
「落ち着いて……調査は私達の部隊に任せればいい」
先帝の言葉にドリアが真っ先にルノの捜索を願い出るが、リーリスが頭を抑えながら首を振る。すぐに情報収集に優れた人員で構成されている部隊を持つヒカゲが進言すると、皇帝は頷く。
「うむ。ルノ殿の捜索はヒカゲに一任しよう。すぐに冒険者ギルドにも連絡を行い、彼等にも調査を申し込む」
「分かりました……御免」
ヒカゲも焦っているのか皇帝の言葉を聞くと即座に行動を開始し、急ぎ足で会議室を退室する。しかし、ルノが白原に向かった事を考えると帝都近辺に存在する可能性は薄く、幾らヒカゲの部隊を以てしてもすぐにルノの消息が掴めるとは思えない。
「弟よ、ルノ殿の事はヒカゲに任せるとしてもエルフ王国の件はどうする。ナオ殿の話によれば一刻も争うぞ」
「分かっています。同盟を結んでいる以上、帝国も援軍を派遣しないわけにはいかない……このまま王国が滅びれば帝国も無事では済まない以上、何としても助けなければ……」
帝国と王国が同盟を長らく結んでいるのは両国が隣国同士であり、周辺諸国から領地を守るためである。二つの国を中心に他の国が取り囲んでいる状態のため、これまで両国のどちらかに他国が侵攻した場合は必ず両国は力を合わせて対応していた。もしもエルフ王国が滅びてしまえば帝国も無事では済まず、巨人国や獣人国のような大国が動き出してしまう。
「しかし、援軍を送ると言っても我等も余裕はないぞ。今動かせる兵力はせいぜい5000が限界……それに魔王軍がルノ殿を捕えたと考えた場合、帝都の警備も高めなければならん」
「うむ……各領地から兵士を呼び集めるにしても時間が掛かり過ぎてしまう。一体どうすればいいのか……」
皇帝と先帝の会話に他の人間は黙り込み、良案が思いつかない。ここにルノが居ればと誰もが考えてしまうが、今更そのような泣き言は言っていられない。
「そうですね。またルノさん頼りになるのは心苦しいですが、現状で帝国が即座に力を貸せる戦力があるとすればルノさんだけですからね」
「しかし……エルフ王国ですら対応できない数の昆虫種をルノさん一人でどうにか出来るのでしょうか?」
「それを言ったら帝国の軍隊だって敵わねえだろ。あいつにどうしようも出来ない敵に帝国軍が敵うはずがねえ……」
「情けない限りじゃのう……一人の少年に頼り切る事しか出来んとは」
会議は難航し、現状で帝国が動かせる戦力は限られ、やはり軍隊を派遣するぐらいならばルノに支援して彼がエルフ王国に向かう方が良いという判断に至る。結局、今回もルノに頼ってしまう事に会議室の面々は溜息を吐き出し、帝国の中でルノと言う存在はあまりにも大きくなり過ぎた。
「それにしてもルノ殿は無事なのか?リーリスの報告によれば魔王軍の幹部の元へ向かったと聞いているが……」
「あの手紙の内容を確認する限りではもう帝都には居ないでしょうね。迎えに行くとしても行き違いになる可能性もありますし、時間が掛かり過ぎます。ここは大人しく待つ方が良いでしょう」
「それにしても魔王軍の奴等は何人幹部が居るんだよ。しかも全員化物揃いじゃねえか」
「本当に化物も含まれていましたよね。ダマラン大臣はともかく、蛇竜を魔人族に変異させるなんて有り得ませんよ」
「うむ……まあ、会議の続きはルノ殿が戻ってからにしよう」
結局はルノが戻るまで会議を中断し、別室に待機させている直央を呼び出して彼からもう少し詳しい事情を問い質す事にした。彼等の誰もがルノがいつも通りに問題を解決して戻ってくる事を疑っておらず、今回も彼が何とかしてくれると思い込んでいた――
――しかし、リーリス達の思惑とは裏腹にルノは翌日になっても戻って来ず、急遽彼等は会議室に集まり、戻らぬルノの事について話し合う。
「……既にルノ殿が消息を絶ってから1日が経過した。白原に向けて迎えの部隊を送り込んだが、状況的に考えてルノ殿の身に何かあったのだろう」
「今朝、念のために屋敷の様子を見てきましたがルノさんや魔獣達が戻っている様子はありませんでした。そしてルノさんの性格から考えても私達に連絡を寄越さずに消えるはずがありません」
「という事は……魔王軍に捕まったか、あるいは殺されたか、生きてはいるが我等と連絡が取れない状況に陥っているという事か」
「くそっ!!あのガキ……無事なのか?」
全員の顔色が暗く、ルノが戻って来ない事に彼等は不安を隠せない。誰よりも強く、幾度も魔王軍を撃退してくれたルノが戻って来ない事にリーリス達は動揺を隠せず、先帝でさえも顔色を悪くする。
「考えたくはないが、ルノ殿が捕まった場合、我々はどうすればいい?」
「勿論ルノ様を助け出すべきです!!すぐに白原に軍隊を派遣しましょう!!」
「正直、私もその意見には賛成したい所ですが、その場合はエルフ王国の対応はどうするんですか?」
「それは……」
「落ち着いて……調査は私達の部隊に任せればいい」
先帝の言葉にドリアが真っ先にルノの捜索を願い出るが、リーリスが頭を抑えながら首を振る。すぐに情報収集に優れた人員で構成されている部隊を持つヒカゲが進言すると、皇帝は頷く。
「うむ。ルノ殿の捜索はヒカゲに一任しよう。すぐに冒険者ギルドにも連絡を行い、彼等にも調査を申し込む」
「分かりました……御免」
ヒカゲも焦っているのか皇帝の言葉を聞くと即座に行動を開始し、急ぎ足で会議室を退室する。しかし、ルノが白原に向かった事を考えると帝都近辺に存在する可能性は薄く、幾らヒカゲの部隊を以てしてもすぐにルノの消息が掴めるとは思えない。
「弟よ、ルノ殿の事はヒカゲに任せるとしてもエルフ王国の件はどうする。ナオ殿の話によれば一刻も争うぞ」
「分かっています。同盟を結んでいる以上、帝国も援軍を派遣しないわけにはいかない……このまま王国が滅びれば帝国も無事では済まない以上、何としても助けなければ……」
帝国と王国が同盟を長らく結んでいるのは両国が隣国同士であり、周辺諸国から領地を守るためである。二つの国を中心に他の国が取り囲んでいる状態のため、これまで両国のどちらかに他国が侵攻した場合は必ず両国は力を合わせて対応していた。もしもエルフ王国が滅びてしまえば帝国も無事では済まず、巨人国や獣人国のような大国が動き出してしまう。
「しかし、援軍を送ると言っても我等も余裕はないぞ。今動かせる兵力はせいぜい5000が限界……それに魔王軍がルノ殿を捕えたと考えた場合、帝都の警備も高めなければならん」
「うむ……各領地から兵士を呼び集めるにしても時間が掛かり過ぎてしまう。一体どうすればいいのか……」
皇帝と先帝の会話に他の人間は黙り込み、良案が思いつかない。ここにルノが居ればと誰もが考えてしまうが、今更そのような泣き言は言っていられない。
170
お気に入りに追加
1,743
あなたにおすすめの小説
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

役立たずのお飾り令嬢だと婚約破棄されましたが、田舎で幼馴染領主様を支えて幸せに暮らします
水都 ミナト
恋愛
伯爵令嬢であるクリスティーナは、婚約者であるフィリップに「役立たずなお飾り令嬢」と蔑まれ、婚約破棄されてしまう。
事業が波に乗り調子付いていたフィリップにうんざりしていたクリスティーヌは快く婚約解消を受け入れ、幼い頃に頻繁に遊びに行っていた田舎のリアス領を訪れることにする。
かつては緑溢れ、自然豊かなリアスの地は、土地が乾いてすっかり寂れた様子だった。
そこで再会したのは幼馴染のアルベルト。彼はリアスの領主となり、リアスのために奔走していた。
クリスティーナは、彼の力になるべくリアスの地に残ることにするのだが…
★全7話★
※なろう様、カクヨム様でも公開中です。

婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。
ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。
こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。
(本編、番外編、完結しました)
【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。
美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?

【完結】断罪後の悪役令嬢は、精霊たちと生きていきます!
らんか
恋愛
あれ?
何で私が悪役令嬢に転生してるの?
えっ!
しかも、断罪後に思い出したって、私の人生、すでに終わってるじゃん!
国外追放かぁ。
娼館送りや、公開処刑とかじゃなくて良かったけど、これからどうしよう……。
そう思ってた私の前に精霊達が現れて……。
愛し子って、私が!?
普通はヒロインの役目じゃないの!?

旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です
流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。
父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。
無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。
純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる