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第14 話 それで良いと思うわ
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「リリアーナ、聞いていても時間の無駄だと思うから行くぞ」
ジェインに促されて、歩き出した彼を追ってわたしも足を進める。
「ねぇ、ジェイン。エルダン男爵令嬢が言っていたローリーの話は本当の話なのかしら?」
「さあな。彼女の事は信用できないが、以前、ローリーとリリアーナが喧嘩をした時に、ローリーが拗ねてリリアーナが謝りに来てくれるまで、部屋から出ないとか言っていた時がなかったか?」
「そういえばあったわね…。わたし達がもっと子供の頃だったけど…」
「もしかしたら、そう言って駄々をこねたのかもしれないな」
「断食みたいになってたって事?」
「ローリーの事だからありえるだろ。ローリーの両親がリリアーナに連絡しなければ、いつまでたってもリリアーナは来ないから、ローリーは食事を何度も抜いてるんじゃないか? ただ、死んでしまうというのは確実に嘘だろうな」
「どうしてそう思うの?」
首を傾げて尋ねると、ジェインはきっぱりと答えを口にする。
「死んでしまいそうな人間がわざわざ転校なんてしないだろ」
「そう言われればそうね。死にかけているのなら学園には通わずに、家でゆっくりしているわよね。何にしても、わたしのせいにされても困るし、お父様に相談する事にするわ」
ふぅと息を吐いてから言うと、ジェインが聞いてくる。
「……リリアーナはもう、ローリーの事は吹っ切れたのか?」
「どうしてそんな事を聞くの?」
「いや、小さい頃からローリーの事を好きだっただろ?」
「それはまあそうだけど、あんな事をするローリーは好きじゃないわ。冷めてしまうとすごいわね…。ローリーは運命の相手じゃなかったんだわ、なんて、すんなり思えてるの。だから、ローリーと婚約破棄になって良かったと心から思ってるわ。出来れば、ローリーには心を入れ替えて頑張ってほしいとは思うけれど」
そこまで言ってから、わたしからジェインに質問を返す。
「ジェインこそ、ローリーとの事はショックじゃないの? あなただって長い付き合いじゃない」
「……ショックじゃないと言ったら嘘になるけど、ローリーがそんな風に思ってた事に気付けたのは良かったと思ってる」
「あなたの事を嫌っているわけではないと思うけどね…」
「気を遣ってくれてありがとな。はっきり言って、俺は自分の事を嫌っている人間と仲良くできるほど良い人間じゃないんだ。もちろん、嫌悪感を表に出したりはしないけどな」
話をしている内に職員室に着き、先生から、これからの行事などの事を簡単に説明され、エルダン男爵令嬢は今のところ大人しいかと聞かれたので、先程の話をすると、先生は頭を抱えていた。
この件については、わたしの方からお父様に相談すると言うと、先生もホッとした顔をしていたので、想像以上に心に傷をおっておられるのだと思うと、とても申し訳ない気持ちになった。
カバンを取りに行く為に教室へ戻る際、渡り廊下から中庭を見てみると、もうそこにはエルダン男爵令嬢達はいなかった。
話が終わって帰ったのかなと思って渡り廊下を渡り終えたところで、エルダン男爵令嬢が現れた。
ジェインがわたしを庇う様にわたしの前に立つと、エルダン男爵令嬢が言う。
「リリアーナ様には用はありません。ジェイン様に用事があるんです」
「……俺に?」
ジェインが不思議そうに聞き返すと、エルダン男爵令嬢が叫ぶ。
「ローリー様があなたに会いたがっています! ですから、今すぐに、ローリー様の家まで行って下さい!」
「は? 今すぐ?」
「そうです! リリアーナ様に会いたがっていますが、絶対にリリアーナ様には会わせたくないんです! リリアーナ様がローリー様に会って、やっぱり、ローリー様を返してとか言われても困りますんで! リリアーナ様が来ないならジェイン様に頼みたい事があるからって仰ってるんです! 友達なら行ってくださいますよね!?」
以前の甘ったるい声や喋り方ではなく、エルダン男爵令嬢ははっきりとした口調でジェインにまくし立てた。
「何で俺が…」
「ジェイン様にリリアーナ様の事でお願いがあるんだそうですよ」
「わたしの事?」
ジェインの後ろからついつい聞き返すと、エルダン男爵令嬢が眉を寄せる。
「リリアーナ様には誤解しないでほしいんですがぁ、ローリー様はベッキーのものですからね?」
「ええ、それで良いと思うわ」
「わぁ! リリアーナ様は頭が賢くなった」
エルダン男爵令嬢は何か言おうとしていたけれど、ジェインの方を見て口を噤んだ。
わたしからジェインの顔が見えないので、はっきりとはわからないけれど、ジェインが彼女を睨んだんだと思う。
「ローリーの事は気になっていたから、話を聞きに行けばいいんだろ。そっちももう帰ったらどうだ?」
「ベッキーも今からローリー様の家に行きますんで一緒に行きません?」
「行くわけないだろ。リリアーナ、とりあえず教室に戻るぞ」
ジェインは呆れた顔でエルダン男爵令嬢に言った後、わたしを促して歩き出す。
エルダン男爵令嬢は何か言いたげにしていたけれど、それ以上は何も言ってこなかった。
「ジェイン、本当にローリーの所に行くの?」
「まあな。とにかく、どうしてあいつがいきなりあんな事になったのかだけ話を聞いてくる。あと、お願いってのも気になるし、子爵夫妻の様子も気になるから。リリアーナは家に帰って、モルセク伯爵に今日の事を報告してくれ」
「……わかったわ」
ローリーに会うだけなら、命の危険とかはないだろうし大丈夫よね。
そう思って、ジェインの言葉に頷いた。
※次話はローリーメインになります。
ジェインに促されて、歩き出した彼を追ってわたしも足を進める。
「ねぇ、ジェイン。エルダン男爵令嬢が言っていたローリーの話は本当の話なのかしら?」
「さあな。彼女の事は信用できないが、以前、ローリーとリリアーナが喧嘩をした時に、ローリーが拗ねてリリアーナが謝りに来てくれるまで、部屋から出ないとか言っていた時がなかったか?」
「そういえばあったわね…。わたし達がもっと子供の頃だったけど…」
「もしかしたら、そう言って駄々をこねたのかもしれないな」
「断食みたいになってたって事?」
「ローリーの事だからありえるだろ。ローリーの両親がリリアーナに連絡しなければ、いつまでたってもリリアーナは来ないから、ローリーは食事を何度も抜いてるんじゃないか? ただ、死んでしまうというのは確実に嘘だろうな」
「どうしてそう思うの?」
首を傾げて尋ねると、ジェインはきっぱりと答えを口にする。
「死んでしまいそうな人間がわざわざ転校なんてしないだろ」
「そう言われればそうね。死にかけているのなら学園には通わずに、家でゆっくりしているわよね。何にしても、わたしのせいにされても困るし、お父様に相談する事にするわ」
ふぅと息を吐いてから言うと、ジェインが聞いてくる。
「……リリアーナはもう、ローリーの事は吹っ切れたのか?」
「どうしてそんな事を聞くの?」
「いや、小さい頃からローリーの事を好きだっただろ?」
「それはまあそうだけど、あんな事をするローリーは好きじゃないわ。冷めてしまうとすごいわね…。ローリーは運命の相手じゃなかったんだわ、なんて、すんなり思えてるの。だから、ローリーと婚約破棄になって良かったと心から思ってるわ。出来れば、ローリーには心を入れ替えて頑張ってほしいとは思うけれど」
そこまで言ってから、わたしからジェインに質問を返す。
「ジェインこそ、ローリーとの事はショックじゃないの? あなただって長い付き合いじゃない」
「……ショックじゃないと言ったら嘘になるけど、ローリーがそんな風に思ってた事に気付けたのは良かったと思ってる」
「あなたの事を嫌っているわけではないと思うけどね…」
「気を遣ってくれてありがとな。はっきり言って、俺は自分の事を嫌っている人間と仲良くできるほど良い人間じゃないんだ。もちろん、嫌悪感を表に出したりはしないけどな」
話をしている内に職員室に着き、先生から、これからの行事などの事を簡単に説明され、エルダン男爵令嬢は今のところ大人しいかと聞かれたので、先程の話をすると、先生は頭を抱えていた。
この件については、わたしの方からお父様に相談すると言うと、先生もホッとした顔をしていたので、想像以上に心に傷をおっておられるのだと思うと、とても申し訳ない気持ちになった。
カバンを取りに行く為に教室へ戻る際、渡り廊下から中庭を見てみると、もうそこにはエルダン男爵令嬢達はいなかった。
話が終わって帰ったのかなと思って渡り廊下を渡り終えたところで、エルダン男爵令嬢が現れた。
ジェインがわたしを庇う様にわたしの前に立つと、エルダン男爵令嬢が言う。
「リリアーナ様には用はありません。ジェイン様に用事があるんです」
「……俺に?」
ジェインが不思議そうに聞き返すと、エルダン男爵令嬢が叫ぶ。
「ローリー様があなたに会いたがっています! ですから、今すぐに、ローリー様の家まで行って下さい!」
「は? 今すぐ?」
「そうです! リリアーナ様に会いたがっていますが、絶対にリリアーナ様には会わせたくないんです! リリアーナ様がローリー様に会って、やっぱり、ローリー様を返してとか言われても困りますんで! リリアーナ様が来ないならジェイン様に頼みたい事があるからって仰ってるんです! 友達なら行ってくださいますよね!?」
以前の甘ったるい声や喋り方ではなく、エルダン男爵令嬢ははっきりとした口調でジェインにまくし立てた。
「何で俺が…」
「ジェイン様にリリアーナ様の事でお願いがあるんだそうですよ」
「わたしの事?」
ジェインの後ろからついつい聞き返すと、エルダン男爵令嬢が眉を寄せる。
「リリアーナ様には誤解しないでほしいんですがぁ、ローリー様はベッキーのものですからね?」
「ええ、それで良いと思うわ」
「わぁ! リリアーナ様は頭が賢くなった」
エルダン男爵令嬢は何か言おうとしていたけれど、ジェインの方を見て口を噤んだ。
わたしからジェインの顔が見えないので、はっきりとはわからないけれど、ジェインが彼女を睨んだんだと思う。
「ローリーの事は気になっていたから、話を聞きに行けばいいんだろ。そっちももう帰ったらどうだ?」
「ベッキーも今からローリー様の家に行きますんで一緒に行きません?」
「行くわけないだろ。リリアーナ、とりあえず教室に戻るぞ」
ジェインは呆れた顔でエルダン男爵令嬢に言った後、わたしを促して歩き出す。
エルダン男爵令嬢は何か言いたげにしていたけれど、それ以上は何も言ってこなかった。
「ジェイン、本当にローリーの所に行くの?」
「まあな。とにかく、どうしてあいつがいきなりあんな事になったのかだけ話を聞いてくる。あと、お願いってのも気になるし、子爵夫妻の様子も気になるから。リリアーナは家に帰って、モルセク伯爵に今日の事を報告してくれ」
「……わかったわ」
ローリーに会うだけなら、命の危険とかはないだろうし大丈夫よね。
そう思って、ジェインの言葉に頷いた。
※次話はローリーメインになります。
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