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第12話 ご安心ください!
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聞き返されたジェインは小さく息を吐いてから、エルダン男爵令嬢に答える。
「俺の中では駄目な事だが、君はそうは思わないというわけか?」
「だって、ローリー様の事を不安にさせなかったら、こんな事は起こらなかったわけですよねぇ? リリアーナ様がしっかりしていれば起こらなかった出来事だとは思いませんか?」
挑戦的な眼差しをジェインに向けて、エルダン男爵令嬢は尋ねた。
「リリアーナがしっかりしているしていないという問題よりも、婚約者がいるのに他の女性と関係を持つのは良くないだろうし、女性側も相手に婚約者がいるとわかっていて誘うのはおかしいと思うのが俺の考えだ。君とは意見があわなさそうだけどな」
「ええ。全く意見が合わないです。ローリー様はあなたの事をライバル視してらっしゃいますけど、どうしてあなたの様な人を気にするのか全くわかりません。だって、あなたってローリー様にリリアーナ様を取られた負け犬ですよねぇ?」
エルダン男爵令嬢はジェインを見てくすくすと笑った。
くだらなすぎて言い返す気にもならなかったみたいで、ジェインは眉を寄せただけだったけど、わたしは黙っていられなかった。
「ジェインは関係ないわ! ローリーが勝手にジェインをライバル視していただけでしょう! こんな事を言ったらなんだけど、ジェインはローリーの事なんて歯牙にもかけてなかったんじゃないかしら」
「というか、幼馴染で友人だと思ってたから、そんな風に見た事ないんだよ」
わたしの言葉をジェインが修正すると、エルダン男爵令嬢は面白くなさそうな顔をする。
「ローリー様の事を気にしてないだなんて意味がわからないです」
「こっちはこっちで偉そうにしているあなたの神経がよくわからないわ」
こういうタイプには黙っていると好き勝手言われそうなので言い返す事に決めると、エルダン男爵はくすくす笑う。
「こわぁーい。そんなにムキになる必要ありますぅ? ローリー様はリリアーナ様の事がまだ好きみたいですけど、ベッキーは、リリアーナ様とジェイン様の方が負け犬同士でお似合いだと思うんで、今日、ローリー様のお家にお伺いして言っておきますね! 負け犬同士、お幸せに!」
「わたしとローリーはもう関係がないんだから、わたしの話はしなくてもいいわよ。そちらこそ、常識のない者同士でお幸せにどうぞ! どうしてもわたしの話をするって言うんなら、ローリーに伝えておいて。わたしのあなたへの愛は冷めましたので、ご安心ください! って」
「うわぁ。負け犬が必死に吠えてますね! ベッキーだってリリーアナ様の話なんてしたくないんですけど、ローリー様がリリアーナ様に会いたい、謝りたいってうるさいんですよ。だから、リリアーナ様がどこかへ行ってくれたらいいと思って言いに来たんですけど、頭が悪そうなので聞いてもらえなさそうですね! ベッキーだって気を遣って言いに来てあげたんですよ? 今だと、ほら、リリアーナ様って婚約者に捨てられた可哀想な令嬢じゃないですかぁ」
「好きなように言いなさいよ。わたしは自分の事をそんな風に思ってなんていないから」
エルダン男爵令嬢は、ふふ、と笑ったと思ったら、こらえきれなくなったのか、お腹をおさえて笑い始めてしまった。
「何がおかしいのよ…」
呟いてから周りを見ると、皆が眉をひそめていたので、わたしとエルダン男爵令嬢の笑いのツボが違うだけかと思ったら、そうでもなかったみたいで安心する。
エルダン男爵令嬢はひとしきり笑った後、わたしを見て言う。
「とにかく、転園の話は家に帰って家族と相談して下さいね! あ、それから先生にはこの事を報告しないで下さいね! それって自分では解決出来ない負け犬がする事ですから! これ以上、無様になりたくないでしょう?」
うふふ、とエルダン男爵令嬢は笑ってから、わたしに背を向けて歩き出したので、その背に向かって叫ぶ。
「もう二度と、この教室に来ないで。他の人にも迷惑だから」
「リリアーナ様が来なくなったら…、ってそうなったら、ローリー様がこの教室にいらっしゃるわけだから、嫌でぇす!」
エルダン男爵令嬢は振り向いてべーっと舌を出してから、教室を出ていく。
「何じゃありゃ…。顔は可愛いけど、あんな面倒くさい子、御免だな」
ジェインと仲の良いクラスメイトの1人がジェインに向かって言った。
「俺は負け犬でいいから先生に言う」
そう言って、ジェインが動こうとするのをロミが止める。
「ジェインが言わなくていいわよ。リリアーナもね。私達が言うわ」
「そういやそうだな。俺からも先生に言うわ。あんなのが何度も来たら迷惑だよ。それに、ジェインとリリアーナが何も言わなきゃ負け犬じゃないんだろ?」
「というか、負け犬の意味がわからないわ。先生に話をされたくないから言ってるんだとしたら、あっちが負け犬じゃないの」
結局、ロミやジェインの友人達が今回の件は先生に話してくれて、先生の方からエルダン男爵令嬢のご両親に連絡がいったのだけれど、そこからが大変だった。
エルダン男爵令嬢のご両親は、この親あってこの子あり、と言わんばかりのご夫婦で、学園からの苦情に対して「私の娘は悪くない」「大勢の人間の中で娘は自分の意見をちゃんと言った。それなのに、どうして注意されなければならない?」などど逆に文句を言いに乗り込んできたのだった。
「俺の中では駄目な事だが、君はそうは思わないというわけか?」
「だって、ローリー様の事を不安にさせなかったら、こんな事は起こらなかったわけですよねぇ? リリアーナ様がしっかりしていれば起こらなかった出来事だとは思いませんか?」
挑戦的な眼差しをジェインに向けて、エルダン男爵令嬢は尋ねた。
「リリアーナがしっかりしているしていないという問題よりも、婚約者がいるのに他の女性と関係を持つのは良くないだろうし、女性側も相手に婚約者がいるとわかっていて誘うのはおかしいと思うのが俺の考えだ。君とは意見があわなさそうだけどな」
「ええ。全く意見が合わないです。ローリー様はあなたの事をライバル視してらっしゃいますけど、どうしてあなたの様な人を気にするのか全くわかりません。だって、あなたってローリー様にリリアーナ様を取られた負け犬ですよねぇ?」
エルダン男爵令嬢はジェインを見てくすくすと笑った。
くだらなすぎて言い返す気にもならなかったみたいで、ジェインは眉を寄せただけだったけど、わたしは黙っていられなかった。
「ジェインは関係ないわ! ローリーが勝手にジェインをライバル視していただけでしょう! こんな事を言ったらなんだけど、ジェインはローリーの事なんて歯牙にもかけてなかったんじゃないかしら」
「というか、幼馴染で友人だと思ってたから、そんな風に見た事ないんだよ」
わたしの言葉をジェインが修正すると、エルダン男爵令嬢は面白くなさそうな顔をする。
「ローリー様の事を気にしてないだなんて意味がわからないです」
「こっちはこっちで偉そうにしているあなたの神経がよくわからないわ」
こういうタイプには黙っていると好き勝手言われそうなので言い返す事に決めると、エルダン男爵はくすくす笑う。
「こわぁーい。そんなにムキになる必要ありますぅ? ローリー様はリリアーナ様の事がまだ好きみたいですけど、ベッキーは、リリアーナ様とジェイン様の方が負け犬同士でお似合いだと思うんで、今日、ローリー様のお家にお伺いして言っておきますね! 負け犬同士、お幸せに!」
「わたしとローリーはもう関係がないんだから、わたしの話はしなくてもいいわよ。そちらこそ、常識のない者同士でお幸せにどうぞ! どうしてもわたしの話をするって言うんなら、ローリーに伝えておいて。わたしのあなたへの愛は冷めましたので、ご安心ください! って」
「うわぁ。負け犬が必死に吠えてますね! ベッキーだってリリーアナ様の話なんてしたくないんですけど、ローリー様がリリアーナ様に会いたい、謝りたいってうるさいんですよ。だから、リリアーナ様がどこかへ行ってくれたらいいと思って言いに来たんですけど、頭が悪そうなので聞いてもらえなさそうですね! ベッキーだって気を遣って言いに来てあげたんですよ? 今だと、ほら、リリアーナ様って婚約者に捨てられた可哀想な令嬢じゃないですかぁ」
「好きなように言いなさいよ。わたしは自分の事をそんな風に思ってなんていないから」
エルダン男爵令嬢は、ふふ、と笑ったと思ったら、こらえきれなくなったのか、お腹をおさえて笑い始めてしまった。
「何がおかしいのよ…」
呟いてから周りを見ると、皆が眉をひそめていたので、わたしとエルダン男爵令嬢の笑いのツボが違うだけかと思ったら、そうでもなかったみたいで安心する。
エルダン男爵令嬢はひとしきり笑った後、わたしを見て言う。
「とにかく、転園の話は家に帰って家族と相談して下さいね! あ、それから先生にはこの事を報告しないで下さいね! それって自分では解決出来ない負け犬がする事ですから! これ以上、無様になりたくないでしょう?」
うふふ、とエルダン男爵令嬢は笑ってから、わたしに背を向けて歩き出したので、その背に向かって叫ぶ。
「もう二度と、この教室に来ないで。他の人にも迷惑だから」
「リリアーナ様が来なくなったら…、ってそうなったら、ローリー様がこの教室にいらっしゃるわけだから、嫌でぇす!」
エルダン男爵令嬢は振り向いてべーっと舌を出してから、教室を出ていく。
「何じゃありゃ…。顔は可愛いけど、あんな面倒くさい子、御免だな」
ジェインと仲の良いクラスメイトの1人がジェインに向かって言った。
「俺は負け犬でいいから先生に言う」
そう言って、ジェインが動こうとするのをロミが止める。
「ジェインが言わなくていいわよ。リリアーナもね。私達が言うわ」
「そういやそうだな。俺からも先生に言うわ。あんなのが何度も来たら迷惑だよ。それに、ジェインとリリアーナが何も言わなきゃ負け犬じゃないんだろ?」
「というか、負け犬の意味がわからないわ。先生に話をされたくないから言ってるんだとしたら、あっちが負け犬じゃないの」
結局、ロミやジェインの友人達が今回の件は先生に話してくれて、先生の方からエルダン男爵令嬢のご両親に連絡がいったのだけれど、そこからが大変だった。
エルダン男爵令嬢のご両親は、この親あってこの子あり、と言わんばかりのご夫婦で、学園からの苦情に対して「私の娘は悪くない」「大勢の人間の中で娘は自分の意見をちゃんと言った。それなのに、どうして注意されなければならない?」などど逆に文句を言いに乗り込んできたのだった。
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