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第8話 覚悟を決めないといけないわよね
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「ジェイン…! どうして、君がここに来るんだ! やっぱり、君はリリアーナの事が好きなんだな!」
ローリーはジェインの姿が見えていないのに、声だけで彼だと気が付いたらしく、わたしを離すと立ち上がってジェインに向かって叫ぶ。
「絶対に、リリアーナを渡さないからな!」
「いいかげんにしろ、ローリー! 男子生徒が嫌がる女子生徒を口説こうとしているって騒ぎになってるんだぞ!」
「リリアーナは嫌がってなんかいない!」
「嫌がってるわよ!」
ローリーの言葉にわたしが叫んで言うと、ローリーは悲しそうな顔でわたしを見た。
「酷いよ、リリアーナ。君はジェインの味方をするのかい…?」
「味方をするんじゃないわ! 自分の正直な気持ちをあなたに伝えただけよ! 離れてって叫んでいたでしょう!?」
「婚約者で恋人同士なんだから抱き合ったっていいだろう!?」
「そういう場合じゃない時だってあるじゃないの!」
わたしは立ち上がって叫ぶ。
「ローリー! あなたは本当におかしくなってしまったわ! どうしてジェインにこだわるの!? わたしがいつジェインの事を異性として見ているだなんて言ったの!?」
「リリアーナ…、君はジェインの事を異性として見ていたのか…」
ローリーの目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「何なの? わたしの聞き方が悪かったの!? そんな事を言ったんじゃないわ!」
「リリアーナ、もう、今のローリーに何を言っても無駄だぞ」
ジェインが片手で自分の頭をおさえて、ため息を吐いた。
ジェインの言う通り、今のローリーには何を言っても無駄な気がした。
興奮してしまっていて、冷静な判断ができていない。
「ローリー、今日はもう帰りましょう。あなたは興奮しすぎてるわ。家に帰って冷静になってちょうだい。そうすれば自分がおかしな事を言っている事に気付くはずよ」
「リリアーナ…、君までもがジェインの肩を持つんだね…」
ポロポロと涙を流すローリー。
どうしてなんでもかんでもジェインに繋げたがるの?
「そんなにジェインが好きなら、ジェインと婚約すればいいんだよ!」
「ローリー、あなた…」
ローリーにしてみれば、カッとなって言った言葉なんだと思うけれど、わたしにしてみれば、さすがに腹が立った。
ジェインの事は好きだし、友人としてとても大切な人。
だけど、その好きは異性としての好きではなかった。
今までのわたしは、ローリーの事が異性として好きだったから。
わたしの好きだったローリーは目の前にいるような人じゃない。
わたしは自分の理想をローリーに押し付けていたの…?
そうじゃないわよね?
ジェインへの蓄積されてたコンプレックスが今になって爆発してしまった感じ…?
「本当にそんな事思ってるのか? そうじゃないだろ?」
ジェインに言われて、ローリーが泣き叫ぶ。
「ジェインは僕の気持ちなんてわからないだろう! 女の子みたいに可愛いなんて、男の僕には褒め言葉じゃないんだ! 僕だってカッコ良いとか言われてみたい!」
「べつに可愛い男がいたっていいだろう! 親の決めた婚約者に顔の条件なんて付けられないだろうが! 大事なのはリリアーナの気持ちなんじゃないのか!?」
ジェインに言われ、ローリーの体がブルブルと震え始めた。
怒りなのか何なのかはわからない。
驚いて見つめたままでいると、ローリーはこぼれ落ちる涙を拭おうとせずに、両拳を握りしめてジェインを睨んだ。
そして、意味のわからない事をジェインに向かって叫んだ。
「僕は悪い男になるんだ!」
「いいかげんにしろ! お前はリリアーナの事だけ考えてればいいんだよ!」
「うるさい! 見てろよ!」
そう叫ぶと、ローリーはわざとジェインに体をぶつけて走り去っていく。
その時、ジェインにわざとぶつかったのは良いけれど、ジェインは体幹が強いのか、それともローリーの力が弱いのか、はねのけられたのはローリーだった。
走り去っていくローリーの背中を見ながら、わたしは呆然としてしまって、彼を追いかける気にもならなかった。
「……大丈夫か?」
ジェインが眉根を寄せたまま、わたしに聞いてきた。
「大丈夫じゃないわ…。というか、ジェインを巻き込んでしまって本当にごめんなさい」
「リリアーナが謝る事じゃないだろ。ローリーが勝手に暴走してるだけだ。どうして、いきなりあんな事を言い出し始めたのか全くわからないんだが、喧嘩でもしたのか?」
「喧嘩をしたという感覚はないけれど、今の状況は喧嘩している状況かもしれないわ。ローリーは女性と会う事をやめるつもりはないみたいだし」
「俺が言うと、またローリーに誤解されるかもしれないからなんだけど、一応、一意見として聞いてくれ」
「……何?」
「ローリーが勘違いして暴走して、俺に絡んでくるだけならまだいい。相手にしなければいいからな。だけど、リリアーナがいるのに女性と会う事をやめないのなら、ローリーとの事は考えた方がいい。本当に婚約解消とまではいかなくても、それくらいの話はしておいた方がいいと思う。婚約解消が嫌だから、前みたいに無害なローリーに戻るかもしれない。もちろん、簡単に婚約解消なんて出来ない事はわかってる。女性に対して貴族社会は厳しいからな」
「……そうなのよね。だけど、覚悟を決めないといけないわよね」
ジェインの言葉に、気がおもいながらも頷いた。
一度、婚約解消や破棄になった令嬢は、問題ありとみなされて次の婚約者が見つかりにくいと言われている。
貴族社会では嫁にいけない娘なんて迷惑なことこの上ないでしょうし、両親に迷惑をかけたくなかたんだけど、このままではわたしが不幸になるわよね。
きっと、お父様達だってわたしが不幸になる事は望まないはず。
覚悟を決めて、お父様とちゃんと話をする事に決めた。
そして、この日、ローリーは帰ったものだと思っていたのだけれど、実際は違っていた事が次の日になってわかる事になる。
ローリーはジェインの姿が見えていないのに、声だけで彼だと気が付いたらしく、わたしを離すと立ち上がってジェインに向かって叫ぶ。
「絶対に、リリアーナを渡さないからな!」
「いいかげんにしろ、ローリー! 男子生徒が嫌がる女子生徒を口説こうとしているって騒ぎになってるんだぞ!」
「リリアーナは嫌がってなんかいない!」
「嫌がってるわよ!」
ローリーの言葉にわたしが叫んで言うと、ローリーは悲しそうな顔でわたしを見た。
「酷いよ、リリアーナ。君はジェインの味方をするのかい…?」
「味方をするんじゃないわ! 自分の正直な気持ちをあなたに伝えただけよ! 離れてって叫んでいたでしょう!?」
「婚約者で恋人同士なんだから抱き合ったっていいだろう!?」
「そういう場合じゃない時だってあるじゃないの!」
わたしは立ち上がって叫ぶ。
「ローリー! あなたは本当におかしくなってしまったわ! どうしてジェインにこだわるの!? わたしがいつジェインの事を異性として見ているだなんて言ったの!?」
「リリアーナ…、君はジェインの事を異性として見ていたのか…」
ローリーの目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「何なの? わたしの聞き方が悪かったの!? そんな事を言ったんじゃないわ!」
「リリアーナ、もう、今のローリーに何を言っても無駄だぞ」
ジェインが片手で自分の頭をおさえて、ため息を吐いた。
ジェインの言う通り、今のローリーには何を言っても無駄な気がした。
興奮してしまっていて、冷静な判断ができていない。
「ローリー、今日はもう帰りましょう。あなたは興奮しすぎてるわ。家に帰って冷静になってちょうだい。そうすれば自分がおかしな事を言っている事に気付くはずよ」
「リリアーナ…、君までもがジェインの肩を持つんだね…」
ポロポロと涙を流すローリー。
どうしてなんでもかんでもジェインに繋げたがるの?
「そんなにジェインが好きなら、ジェインと婚約すればいいんだよ!」
「ローリー、あなた…」
ローリーにしてみれば、カッとなって言った言葉なんだと思うけれど、わたしにしてみれば、さすがに腹が立った。
ジェインの事は好きだし、友人としてとても大切な人。
だけど、その好きは異性としての好きではなかった。
今までのわたしは、ローリーの事が異性として好きだったから。
わたしの好きだったローリーは目の前にいるような人じゃない。
わたしは自分の理想をローリーに押し付けていたの…?
そうじゃないわよね?
ジェインへの蓄積されてたコンプレックスが今になって爆発してしまった感じ…?
「本当にそんな事思ってるのか? そうじゃないだろ?」
ジェインに言われて、ローリーが泣き叫ぶ。
「ジェインは僕の気持ちなんてわからないだろう! 女の子みたいに可愛いなんて、男の僕には褒め言葉じゃないんだ! 僕だってカッコ良いとか言われてみたい!」
「べつに可愛い男がいたっていいだろう! 親の決めた婚約者に顔の条件なんて付けられないだろうが! 大事なのはリリアーナの気持ちなんじゃないのか!?」
ジェインに言われ、ローリーの体がブルブルと震え始めた。
怒りなのか何なのかはわからない。
驚いて見つめたままでいると、ローリーはこぼれ落ちる涙を拭おうとせずに、両拳を握りしめてジェインを睨んだ。
そして、意味のわからない事をジェインに向かって叫んだ。
「僕は悪い男になるんだ!」
「いいかげんにしろ! お前はリリアーナの事だけ考えてればいいんだよ!」
「うるさい! 見てろよ!」
そう叫ぶと、ローリーはわざとジェインに体をぶつけて走り去っていく。
その時、ジェインにわざとぶつかったのは良いけれど、ジェインは体幹が強いのか、それともローリーの力が弱いのか、はねのけられたのはローリーだった。
走り去っていくローリーの背中を見ながら、わたしは呆然としてしまって、彼を追いかける気にもならなかった。
「……大丈夫か?」
ジェインが眉根を寄せたまま、わたしに聞いてきた。
「大丈夫じゃないわ…。というか、ジェインを巻き込んでしまって本当にごめんなさい」
「リリアーナが謝る事じゃないだろ。ローリーが勝手に暴走してるだけだ。どうして、いきなりあんな事を言い出し始めたのか全くわからないんだが、喧嘩でもしたのか?」
「喧嘩をしたという感覚はないけれど、今の状況は喧嘩している状況かもしれないわ。ローリーは女性と会う事をやめるつもりはないみたいだし」
「俺が言うと、またローリーに誤解されるかもしれないからなんだけど、一応、一意見として聞いてくれ」
「……何?」
「ローリーが勘違いして暴走して、俺に絡んでくるだけならまだいい。相手にしなければいいからな。だけど、リリアーナがいるのに女性と会う事をやめないのなら、ローリーとの事は考えた方がいい。本当に婚約解消とまではいかなくても、それくらいの話はしておいた方がいいと思う。婚約解消が嫌だから、前みたいに無害なローリーに戻るかもしれない。もちろん、簡単に婚約解消なんて出来ない事はわかってる。女性に対して貴族社会は厳しいからな」
「……そうなのよね。だけど、覚悟を決めないといけないわよね」
ジェインの言葉に、気がおもいながらも頷いた。
一度、婚約解消や破棄になった令嬢は、問題ありとみなされて次の婚約者が見つかりにくいと言われている。
貴族社会では嫁にいけない娘なんて迷惑なことこの上ないでしょうし、両親に迷惑をかけたくなかたんだけど、このままではわたしが不幸になるわよね。
きっと、お父様達だってわたしが不幸になる事は望まないはず。
覚悟を決めて、お父様とちゃんと話をする事に決めた。
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