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第6話 何か言ったりしたの?
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顔を真っ赤にしたまま教室を出ていったローリーを、私達は呆然として見送ったけれど、いち早く我に返ったジェインが口を開く。
「とにかく移動するか。ゆっくりしていたら間に合わない」
「そうだな」
ジェインの言葉に彼の友人が頷き、わたしの友人達も声を掛けてくる。
「リリアーナ、一体、何があったのかわからないけれど、とにかく移動しましょう」
「うん。ごめんなさいね、待たせちゃって」
「かまわないけど、何だったの?」
友人達には最近のローリーについて詳しい話はしていなかった。
だから、移動しながら最近の出来事を話す事にした。
ローリーはどこかへ行ってしまったわけではなく、移動場所の教室に先に着いていて、自分の席に座り、誰も話しかけるなオーラを醸し出していた。
わたしが友人達に簡単に今までの事を話し終えたところで授業が始まったので、一度、そこで話は終わり、休み時間の度に少しずつ話していくと、友人達の顔から、どんどん笑みがなくなっていった。
そして昼休み、食堂でランチをしながら話す事になり、空いていた席に着くと、友人の1人であるロミが聞いてきた。
「ローリーは、あなたがジェインを好きだと言ったわけじゃないのに、勝手にジェインにライバル意識を燃やしているという事?」
「そんな感じかしら」
頷くと、ロミはズレた眼鏡を指でなおしながら、茶色の瞳をキラキラさせて、瞳と同じ色の髪のおさげを揺らしながら興奮気味に言う。
「ローリーはジェインの事を前から気にしていたものね。恋のライバルとして認定したって事かしら?」
「……どういう事?」
「私も人から聞いた話なんだけど、ローリーはジェインの事を勝手にライバル視していて、何でも張り合っているそうなの」
「そんな事は知らなかったわ」
ローリーとはずっと一緒にいたのに、彼からそんな話を一度も聞いた事はなかった。
何より、ローリーはジェインと仲が良いと思っていた。
「リリアーナはどうしたいの?」
ロミに尋ねられたので聞き返す。
「どうしたいのって、どういう事?」
「やっぱりまだ、ローリーの事が好きなの? それとも、もう婚約を解消しちゃうの?」
ロミは好奇心をおさえきれない様な感じだった。
わたしも他人事ならロミの様になっていたかしら?
でも、ここまで来ると、デリカシーがない気もするわね…。
そういえば、ローリーをけしかける様な真似をしたのは誰なのかしら?
まさか、ロミって事はないわよね?
「……どうかしたの?」
急に黙り込んだからか、ロミが不思議そうに首を傾げる。
疑ってモヤモヤするくらいなら聞いてみましょう。
そう思って、ロミに聞いてみる。
「嫌な気分にさせてしまったらごめんなさい。ローリーにあなたから何か言ったりした?」
「え?」
ロミは驚いた顔をした後、わたしの言おうとしている事に気がついたのか、慌てて頭を下げてくる。
「ごめんなさい。面白がってしまっていたわね…」
「それよりもどうなの? 何か言ったりしたの?」
「そういわれてみれば…」
ロミが話し出そうとしたところで、他の友人達もやって来たので、その事について聞いてみると、ロミを含め、友人達は申し訳無さそうな顔をして話してくれた。
どんな内容だったかというと、以前、わたしが学園を休んだ日に、何でそんな話になったのかは彼女達も覚えていないけれど、ジェインとローリー、どっちが好みかという話になったらしい。
彼女達にとっては全く悪気はなく、ただ友人同士の他愛のない会話で、ジェインやローリーの何かを悪く言うつもりおなく、深い意味はなかったけれど盛り上がってしまったらしい。
声が大きかったせいでローリーの耳に届いてしまい、ローリーが彼女達に聞いてきたのだそう。
『君達の好みはどうでもいいんだ。聞きたいんだけど、僕とリリアーナはお似合いだよね?』
その時、友人達はもちろん、と答えはしたけれど、冗談交じりで『ローリーがジェインみたいにもうちょっと男らしかったら安心してリリアーナを任せられたんだけど』と言ってしまったんだそう。
彼女達にしてみれば冗談で、ローリーが本気に取るだなんて夢にも思っていなかった。
けれど、ローリーは本気にしてしまったらしく、他の女子生徒にも聞いて回ったらしい。
ロミ達は、もしかしたらその時に、ローリーはジェインと比較されて傷付き、ジェインの事をライバル視する様になったんじゃないかと教えてくれた。
そして、こんな事になるだなんて思ってもみなかったと、何度も何度も謝ってくれた。
彼女達に悪気があったわけじゃない事はわかるし、今更、怒る気にもならなかった。
ローリーと私の仲は思った以上にこじれてしまっていて、移動教室後の休み時間に話しかけたけれど無視されてしまったから、どうしたら良いかわからなかった。
放課後、もう一度話しかけて無視をされたら、その時は婚約解消を本当に考えなければいけないかもしれないと思い、授業終了後、ローリーが帰ってしまう前に話しかけようとすると、ローリーがジェインの席に向かって行くのが見えた。
そして、ローリーはジェインの席の前で立ち止まると叫んだ。
「ジェイン! 僕と戦え!」
「……は?」
ローリーの言葉に聞き返したジェインの顔は、今まで見た事もないくらいに呆れ返った顔をしていた。
「とにかく移動するか。ゆっくりしていたら間に合わない」
「そうだな」
ジェインの言葉に彼の友人が頷き、わたしの友人達も声を掛けてくる。
「リリアーナ、一体、何があったのかわからないけれど、とにかく移動しましょう」
「うん。ごめんなさいね、待たせちゃって」
「かまわないけど、何だったの?」
友人達には最近のローリーについて詳しい話はしていなかった。
だから、移動しながら最近の出来事を話す事にした。
ローリーはどこかへ行ってしまったわけではなく、移動場所の教室に先に着いていて、自分の席に座り、誰も話しかけるなオーラを醸し出していた。
わたしが友人達に簡単に今までの事を話し終えたところで授業が始まったので、一度、そこで話は終わり、休み時間の度に少しずつ話していくと、友人達の顔から、どんどん笑みがなくなっていった。
そして昼休み、食堂でランチをしながら話す事になり、空いていた席に着くと、友人の1人であるロミが聞いてきた。
「ローリーは、あなたがジェインを好きだと言ったわけじゃないのに、勝手にジェインにライバル意識を燃やしているという事?」
「そんな感じかしら」
頷くと、ロミはズレた眼鏡を指でなおしながら、茶色の瞳をキラキラさせて、瞳と同じ色の髪のおさげを揺らしながら興奮気味に言う。
「ローリーはジェインの事を前から気にしていたものね。恋のライバルとして認定したって事かしら?」
「……どういう事?」
「私も人から聞いた話なんだけど、ローリーはジェインの事を勝手にライバル視していて、何でも張り合っているそうなの」
「そんな事は知らなかったわ」
ローリーとはずっと一緒にいたのに、彼からそんな話を一度も聞いた事はなかった。
何より、ローリーはジェインと仲が良いと思っていた。
「リリアーナはどうしたいの?」
ロミに尋ねられたので聞き返す。
「どうしたいのって、どういう事?」
「やっぱりまだ、ローリーの事が好きなの? それとも、もう婚約を解消しちゃうの?」
ロミは好奇心をおさえきれない様な感じだった。
わたしも他人事ならロミの様になっていたかしら?
でも、ここまで来ると、デリカシーがない気もするわね…。
そういえば、ローリーをけしかける様な真似をしたのは誰なのかしら?
まさか、ロミって事はないわよね?
「……どうかしたの?」
急に黙り込んだからか、ロミが不思議そうに首を傾げる。
疑ってモヤモヤするくらいなら聞いてみましょう。
そう思って、ロミに聞いてみる。
「嫌な気分にさせてしまったらごめんなさい。ローリーにあなたから何か言ったりした?」
「え?」
ロミは驚いた顔をした後、わたしの言おうとしている事に気がついたのか、慌てて頭を下げてくる。
「ごめんなさい。面白がってしまっていたわね…」
「それよりもどうなの? 何か言ったりしたの?」
「そういわれてみれば…」
ロミが話し出そうとしたところで、他の友人達もやって来たので、その事について聞いてみると、ロミを含め、友人達は申し訳無さそうな顔をして話してくれた。
どんな内容だったかというと、以前、わたしが学園を休んだ日に、何でそんな話になったのかは彼女達も覚えていないけれど、ジェインとローリー、どっちが好みかという話になったらしい。
彼女達にとっては全く悪気はなく、ただ友人同士の他愛のない会話で、ジェインやローリーの何かを悪く言うつもりおなく、深い意味はなかったけれど盛り上がってしまったらしい。
声が大きかったせいでローリーの耳に届いてしまい、ローリーが彼女達に聞いてきたのだそう。
『君達の好みはどうでもいいんだ。聞きたいんだけど、僕とリリアーナはお似合いだよね?』
その時、友人達はもちろん、と答えはしたけれど、冗談交じりで『ローリーがジェインみたいにもうちょっと男らしかったら安心してリリアーナを任せられたんだけど』と言ってしまったんだそう。
彼女達にしてみれば冗談で、ローリーが本気に取るだなんて夢にも思っていなかった。
けれど、ローリーは本気にしてしまったらしく、他の女子生徒にも聞いて回ったらしい。
ロミ達は、もしかしたらその時に、ローリーはジェインと比較されて傷付き、ジェインの事をライバル視する様になったんじゃないかと教えてくれた。
そして、こんな事になるだなんて思ってもみなかったと、何度も何度も謝ってくれた。
彼女達に悪気があったわけじゃない事はわかるし、今更、怒る気にもならなかった。
ローリーと私の仲は思った以上にこじれてしまっていて、移動教室後の休み時間に話しかけたけれど無視されてしまったから、どうしたら良いかわからなかった。
放課後、もう一度話しかけて無視をされたら、その時は婚約解消を本当に考えなければいけないかもしれないと思い、授業終了後、ローリーが帰ってしまう前に話しかけようとすると、ローリーがジェインの席に向かって行くのが見えた。
そして、ローリーはジェインの席の前で立ち止まると叫んだ。
「ジェイン! 僕と戦え!」
「……は?」
ローリーの言葉に聞き返したジェインの顔は、今まで見た事もないくらいに呆れ返った顔をしていた。
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