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第4話 嫌われる様な事をしているのはあなたよ!
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わたしから話を聞いたお父様は、ローリーのしている事や話した内容について納得できないと言って、ローリーのご両親に抗議してくれた。
ローリーのご両親は彼が最近、頻繁にどこかに出かけている事は知っていたけれど、どこに行ったかまでは把握しておらず、馭者に関しても婚活パーティーの際はローリーに口止めされたので言えなかったし、今回のお茶会についても貴族の家に訪問したというくらいにしか思っていなかったので、当主に報告はしていなかったそうだった。
「まだ、ローリーも若いとはいえ、何を言っているのか、ご両親もさっぱりわからないんだそうだ」
お父様は大きなため息を吐いてから、そう話してくれた。
「ローリーは悪い事をしたと、本当に思っていないんですね?」
「ああ。全てはリリアーナに似合う男になるためだと言い張っている様だよ」
「お父様は、本当にそう思いますか…?」
談話室で向かい合って座るお父様に尋ねると、お父様は悲しげな表情で首を横に振った。
「私には理解できないから何とも言えない。リリアーナ、君はどうしたい? ローリーとの婚約を解消したいかい?」
「……わからないんです。本当にローリーがわたしの事を思ってくれていると言うなら…」
甘い考えかしら。
もちろん、以前ほどの愛情があるわけではないけれど、普通の考えに戻ってくれたら良いのにと思ってくれているわたしがいる。
それにしても、どうしていきなり、あんな事を言い出したのかしら?
そういえば、ジェインの事を気にしていたみたいだけど、ジェインと何かあったのかしら?
明日、ローリーに改めて聞いてみる事にしよう。
「私達としては、ローリーがこのままでいるなら、婚約の解消を考えても良いと思っている。だけどリリアーナがローリーとどうしても一緒になりたいというなら…」
お父様の表情だけ見ると、婚約を解消した方が良いと思っていらっしゃるのがよくわかった。
わたしだってそうすれば良い事くらいはわかっている。
だけど、ローリーがどうして変わってしまったのかだけは知りたかった。
次の日、学園に着いたわたしは、自分の教室に向かった。
ローリーはいつも私よりも早くに来ているので、彼の席の方を見ると、席に座って本を読んでいるローリーの姿があった。
「おはよう、ローリー」
「おはよう、僕の可愛いリリアーナ」
挨拶しながら近付くと、ローリーは本を閉じて立ち上がって挨拶してくれた。
「もう機嫌は直してくれたかな?」
「いいえ。それよりも気になる事があるから聞いても良いかしら?」
「どうしたんだい、怖い顔をして…」
ローリーはどこか不安げな眼差しでわたしを見た。
もしかしたら、彼もご両親から婚約の件で何か言われたのかもしれない。
「どうして、悪い男になろうと思ったの? しかも、ジェインみたいになりたいと言っていたわよね?」
尋ねてみると、ローリーは気まずそうな顔をして、わたしから視線をそらした。
「ねえ、ローリー、どういう事か教えて?」
「……実は、以前、僕のファンの子が、君とジェインの方がお似合いだという話をしているのを聞いたんだ」
「……どういう事?」
「僕にはもっとおしとやかな女性が似合っていて、君の様な人にはジェインの様な相手が良いって…! 僕はそれを聞いてショックだった! だから、ジェインの様な少し悪い男になろうと思ったんだ…!」
「待って! わたしの事を考えてくれたのは嬉しいけれど、ジェインは悪い人じゃないし、彼は女性と遊び歩いたりしていないわ!」
ジェインには婚約者はいないし、婚約者を求めているという話も聞いたことがない。
どうして、ジェインの様になりたいと言っているのに、彼がしていない事をしようとするのかしら?
「ジェインより目立たないといけないと思ったんだ」
「ねえ、ローリー、あなたはジェインにこだわりすぎてるわ。あなたとジェインは仲が良かったはずでしょう? それに、わたしとあなたとの婚約が決まってからは、ジェインはわたし達から距離を置くようになったわ」
最初は悲しかったけれど、婚約者のいるわたしが、異性であるジェインと仲良くしていたら、世間体が良くないと彼の方から、わたし達と離れていったのを知っているだけに、どうしてそんな事を言うのかわからなかった。
「可愛い、リリアーナ。君はわかっていない。ジェインはね、君の事が好きだったんだ。だから、僕達と離れたんだよ。だけど、僕よりも自分の方がリリアーナとお似合いだと言われている事がわかれば、ジェインは君を僕から奪おうとするかもしれない。それが怖いんだ…! だから、君に好かれる様に努力するから、僕を捨てないでくれ!」
「そう思うなら、女性ばかりいる所に出かけてほしくないわ…。嫌われる様な事をしているのはあなたよ! それに…!」
ジェインがわたしを好きかどうか、嘘か本当かはわからない。
だけど、本当だったとしたら、それはローリーが本人であるわたしに口にして良いものではないわ!
「ジェイン、おはよう!」
クラスメイトがジェインに挨拶する声で振り返ると、ジェインが教室に入ってきたところだった。
「ローリー、詳しい話は放課後にしましょう」
そう言うと、ローリーは首を大きく縦に振った。
ローリーのご両親は彼が最近、頻繁にどこかに出かけている事は知っていたけれど、どこに行ったかまでは把握しておらず、馭者に関しても婚活パーティーの際はローリーに口止めされたので言えなかったし、今回のお茶会についても貴族の家に訪問したというくらいにしか思っていなかったので、当主に報告はしていなかったそうだった。
「まだ、ローリーも若いとはいえ、何を言っているのか、ご両親もさっぱりわからないんだそうだ」
お父様は大きなため息を吐いてから、そう話してくれた。
「ローリーは悪い事をしたと、本当に思っていないんですね?」
「ああ。全てはリリアーナに似合う男になるためだと言い張っている様だよ」
「お父様は、本当にそう思いますか…?」
談話室で向かい合って座るお父様に尋ねると、お父様は悲しげな表情で首を横に振った。
「私には理解できないから何とも言えない。リリアーナ、君はどうしたい? ローリーとの婚約を解消したいかい?」
「……わからないんです。本当にローリーがわたしの事を思ってくれていると言うなら…」
甘い考えかしら。
もちろん、以前ほどの愛情があるわけではないけれど、普通の考えに戻ってくれたら良いのにと思ってくれているわたしがいる。
それにしても、どうしていきなり、あんな事を言い出したのかしら?
そういえば、ジェインの事を気にしていたみたいだけど、ジェインと何かあったのかしら?
明日、ローリーに改めて聞いてみる事にしよう。
「私達としては、ローリーがこのままでいるなら、婚約の解消を考えても良いと思っている。だけどリリアーナがローリーとどうしても一緒になりたいというなら…」
お父様の表情だけ見ると、婚約を解消した方が良いと思っていらっしゃるのがよくわかった。
わたしだってそうすれば良い事くらいはわかっている。
だけど、ローリーがどうして変わってしまったのかだけは知りたかった。
次の日、学園に着いたわたしは、自分の教室に向かった。
ローリーはいつも私よりも早くに来ているので、彼の席の方を見ると、席に座って本を読んでいるローリーの姿があった。
「おはよう、ローリー」
「おはよう、僕の可愛いリリアーナ」
挨拶しながら近付くと、ローリーは本を閉じて立ち上がって挨拶してくれた。
「もう機嫌は直してくれたかな?」
「いいえ。それよりも気になる事があるから聞いても良いかしら?」
「どうしたんだい、怖い顔をして…」
ローリーはどこか不安げな眼差しでわたしを見た。
もしかしたら、彼もご両親から婚約の件で何か言われたのかもしれない。
「どうして、悪い男になろうと思ったの? しかも、ジェインみたいになりたいと言っていたわよね?」
尋ねてみると、ローリーは気まずそうな顔をして、わたしから視線をそらした。
「ねえ、ローリー、どういう事か教えて?」
「……実は、以前、僕のファンの子が、君とジェインの方がお似合いだという話をしているのを聞いたんだ」
「……どういう事?」
「僕にはもっとおしとやかな女性が似合っていて、君の様な人にはジェインの様な相手が良いって…! 僕はそれを聞いてショックだった! だから、ジェインの様な少し悪い男になろうと思ったんだ…!」
「待って! わたしの事を考えてくれたのは嬉しいけれど、ジェインは悪い人じゃないし、彼は女性と遊び歩いたりしていないわ!」
ジェインには婚約者はいないし、婚約者を求めているという話も聞いたことがない。
どうして、ジェインの様になりたいと言っているのに、彼がしていない事をしようとするのかしら?
「ジェインより目立たないといけないと思ったんだ」
「ねえ、ローリー、あなたはジェインにこだわりすぎてるわ。あなたとジェインは仲が良かったはずでしょう? それに、わたしとあなたとの婚約が決まってからは、ジェインはわたし達から距離を置くようになったわ」
最初は悲しかったけれど、婚約者のいるわたしが、異性であるジェインと仲良くしていたら、世間体が良くないと彼の方から、わたし達と離れていったのを知っているだけに、どうしてそんな事を言うのかわからなかった。
「可愛い、リリアーナ。君はわかっていない。ジェインはね、君の事が好きだったんだ。だから、僕達と離れたんだよ。だけど、僕よりも自分の方がリリアーナとお似合いだと言われている事がわかれば、ジェインは君を僕から奪おうとするかもしれない。それが怖いんだ…! だから、君に好かれる様に努力するから、僕を捨てないでくれ!」
「そう思うなら、女性ばかりいる所に出かけてほしくないわ…。嫌われる様な事をしているのはあなたよ! それに…!」
ジェインがわたしを好きかどうか、嘘か本当かはわからない。
だけど、本当だったとしたら、それはローリーが本人であるわたしに口にして良いものではないわ!
「ジェイン、おはよう!」
クラスメイトがジェインに挨拶する声で振り返ると、ジェインが教室に入ってきたところだった。
「ローリー、詳しい話は放課後にしましょう」
そう言うと、ローリーは首を大きく縦に振った。
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