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第8話① 日記(イロアスside リンスレット死後2日目)
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ヨークスに許可を取り、リンスレットの日記帳を自分の家に持ち帰ったイロアスは、初日の内容を読んで気持ちが重くなった。
予想はしていた事だったが、やはり兄であるラシックにリンスレットとルーブンは殺されていた。
(部屋で殺されたと書いてあるけど、2人が見つかったのは湖だ。誰か2人の遺体を運んだ奴がいるな。なぜ、使用人に見つかっていない? 気付いた使用人を全て殺したのか? それから、ドリーはどうなったんだ? 殺されたのか? それとも…)
日記でリンスレットがドリーの事を心配していたので思い出したのだが、今までのイロアスは、リンスレットとルーブンの事で頭がいっぱいで、ドリーの姿が見えない、というくらいにしか思っていなかった。
(殺された使用人の中に、ドリーもいたんだろうか? こっちも確認しないと)
色々な記憶が混ざり始めたため、頭痛がし始めたイロアスはベッドに倒れ込み、頭を動かさないようにして、日記の続きを読もうとした…のだが、リンスレットが過去に戻ってからの日記は、ほとんど空白になっていて読めなかった。
読めたのは、前書きの様に書かれた、リンスレットが殺される前の記憶と、2年前に戻り、過去とは違う行動を取り、未来を変えるのだという意思表明。
そして、談話会での出来事や、イロアスに自分が2年後に殺されてしまうと伝えたという事だった。
(リンスレットが過去を変えていき、僕の記憶が変わらない限り、日記の意味がないってことか…。何にしても、リンスレット達がラシックに殺されたという事は間違いないんだよな…)
リンスレットが暴力を受けている間に見た光景などは、しっかりと書かれていた為、ラシックが殺人者であり、その場にマレフィナ、ロリアンナ、トマングがいた事もわかった。
(人が暴力を受けているのに止めもせず、助けを呼びに行く事もしない。しかも、笑ってみているだなんて恐ろしすぎるだろ)
イロアスは大きくため息を吐いた後、リンスレットやルーブンを殺してしまうほどにラシックを変えてしまった、マレフィナに対して恐怖を覚えたし、どんな理由があろうとも自分の家族を殺したラシックや、それを見て笑っていたというロリアンナ、マトングに嫌悪感を覚えた。
(マレフィナ嬢はリンスレットを殺して、何のメリットがあった? ロリアンナ嬢の場合は僕が関係している? リンスレットがいなくなれば、僕の関心が自分のものになるとでも? 残念だけど、リンスレットがいたから、ロリアンナ嬢との婚約関係を続けていた。だから、もう、婚約関係は解消する…んだが、そろそろ反応が返ってくる頃かな。断られた場合は破棄するが…)
元々、イロアスとリンスレットの両親はリンスレットが生まれた時に、イロアスとリンスレットの婚約を考えていた。
しかし、赤ん坊の頃から婚約者を決められるのは大人のエゴもすぎるだろうという事で、せめて、リンスレットがイロアスを好きか嫌いか判断できる様な年になるまで待とうという事になった。
けれど、そんな悠長な事を考えている間に、第2王子が生まれた王家から、リンスレットとの婚約を申し込まれ、断る事が出来ずに婚約は成立した。
(僕とリンスレットが婚約していたら、こんな事にはならなかったんだろうか…)
イロアスはそう考えた後、目を強く閉じてから、意を決する様に目を開けた。
(リンスレットは過去を変える為に頑張ってる。でも、今のところ、リンスレットもルーブンも生き返らない。という事は、リンスレットはまだ、未来の彼女の死を変えられていない)
イロアスがヨークスから聞いた話では、リンスレットが逆行したと知っている人間の記憶は、変えられた過去と元々の過去の記憶が混在している時もあるとの事だった。
イロアスにはその意味が理解できた。
なぜなら、談話会でリンスレットのお気に入りのドレスが汚されたという記憶と、リンスレットがそれを回避している記憶が混在するからだ。
(記憶が一本化するのは、リンスレットが死を回避できた時だろうか?)
そんな事を考えていた時だった。
アイルとロンヌがイロアスの部屋にやって来ると、アイルがイロアスに向かって難しい顔で言った。
「ポッカ家から電報が届いた。婚約解消を認めないと言っている」
「リンスレットはラシックに殺され、ロリアンナ嬢はその場にいましたが、止める様子もなく笑っていたそうです。そんな相手と結婚なんてできません」
イロアスの言葉を聞いたロンヌは両手で口を覆い、何度も首を横に振った。
「そんな…、信じられないわ」
「証拠はあるのか?」
アイルに問われ、イロアスはリンスレットの日記帳を彼らに見せた。
日記帳を見せる事は、ヨークスからアイルとロンヌにのみ許可が出ていた。
「イロアスの字ではない事は確実だし…、私はイロアスを信じるわ。何といったら良いのかわからないけれど、女の勘というやつかしら」
「……もし、これが本当の事なら、ロリアンナ嬢を我が家に迎え入れるわけにはいかない」
アイルは強い眼差しでイロアスに告げる。
「婚約破棄で話をする。だが、揉めるぞ。覚悟は出来てるな?」
「ええ。リンスレットが自分の手で生を勝ち取るまで、僕も戦います」
イロアスが強い口調で答えると、アイルは頷き、ポッカ家に婚約破棄の連絡を入れる為にイロアスの部屋から去っていった。
※次話は、リンスレット死後4日目のロリアンナになります。
予想はしていた事だったが、やはり兄であるラシックにリンスレットとルーブンは殺されていた。
(部屋で殺されたと書いてあるけど、2人が見つかったのは湖だ。誰か2人の遺体を運んだ奴がいるな。なぜ、使用人に見つかっていない? 気付いた使用人を全て殺したのか? それから、ドリーはどうなったんだ? 殺されたのか? それとも…)
日記でリンスレットがドリーの事を心配していたので思い出したのだが、今までのイロアスは、リンスレットとルーブンの事で頭がいっぱいで、ドリーの姿が見えない、というくらいにしか思っていなかった。
(殺された使用人の中に、ドリーもいたんだろうか? こっちも確認しないと)
色々な記憶が混ざり始めたため、頭痛がし始めたイロアスはベッドに倒れ込み、頭を動かさないようにして、日記の続きを読もうとした…のだが、リンスレットが過去に戻ってからの日記は、ほとんど空白になっていて読めなかった。
読めたのは、前書きの様に書かれた、リンスレットが殺される前の記憶と、2年前に戻り、過去とは違う行動を取り、未来を変えるのだという意思表明。
そして、談話会での出来事や、イロアスに自分が2年後に殺されてしまうと伝えたという事だった。
(リンスレットが過去を変えていき、僕の記憶が変わらない限り、日記の意味がないってことか…。何にしても、リンスレット達がラシックに殺されたという事は間違いないんだよな…)
リンスレットが暴力を受けている間に見た光景などは、しっかりと書かれていた為、ラシックが殺人者であり、その場にマレフィナ、ロリアンナ、トマングがいた事もわかった。
(人が暴力を受けているのに止めもせず、助けを呼びに行く事もしない。しかも、笑ってみているだなんて恐ろしすぎるだろ)
イロアスは大きくため息を吐いた後、リンスレットやルーブンを殺してしまうほどにラシックを変えてしまった、マレフィナに対して恐怖を覚えたし、どんな理由があろうとも自分の家族を殺したラシックや、それを見て笑っていたというロリアンナ、マトングに嫌悪感を覚えた。
(マレフィナ嬢はリンスレットを殺して、何のメリットがあった? ロリアンナ嬢の場合は僕が関係している? リンスレットがいなくなれば、僕の関心が自分のものになるとでも? 残念だけど、リンスレットがいたから、ロリアンナ嬢との婚約関係を続けていた。だから、もう、婚約関係は解消する…んだが、そろそろ反応が返ってくる頃かな。断られた場合は破棄するが…)
元々、イロアスとリンスレットの両親はリンスレットが生まれた時に、イロアスとリンスレットの婚約を考えていた。
しかし、赤ん坊の頃から婚約者を決められるのは大人のエゴもすぎるだろうという事で、せめて、リンスレットがイロアスを好きか嫌いか判断できる様な年になるまで待とうという事になった。
けれど、そんな悠長な事を考えている間に、第2王子が生まれた王家から、リンスレットとの婚約を申し込まれ、断る事が出来ずに婚約は成立した。
(僕とリンスレットが婚約していたら、こんな事にはならなかったんだろうか…)
イロアスはそう考えた後、目を強く閉じてから、意を決する様に目を開けた。
(リンスレットは過去を変える為に頑張ってる。でも、今のところ、リンスレットもルーブンも生き返らない。という事は、リンスレットはまだ、未来の彼女の死を変えられていない)
イロアスがヨークスから聞いた話では、リンスレットが逆行したと知っている人間の記憶は、変えられた過去と元々の過去の記憶が混在している時もあるとの事だった。
イロアスにはその意味が理解できた。
なぜなら、談話会でリンスレットのお気に入りのドレスが汚されたという記憶と、リンスレットがそれを回避している記憶が混在するからだ。
(記憶が一本化するのは、リンスレットが死を回避できた時だろうか?)
そんな事を考えていた時だった。
アイルとロンヌがイロアスの部屋にやって来ると、アイルがイロアスに向かって難しい顔で言った。
「ポッカ家から電報が届いた。婚約解消を認めないと言っている」
「リンスレットはラシックに殺され、ロリアンナ嬢はその場にいましたが、止める様子もなく笑っていたそうです。そんな相手と結婚なんてできません」
イロアスの言葉を聞いたロンヌは両手で口を覆い、何度も首を横に振った。
「そんな…、信じられないわ」
「証拠はあるのか?」
アイルに問われ、イロアスはリンスレットの日記帳を彼らに見せた。
日記帳を見せる事は、ヨークスからアイルとロンヌにのみ許可が出ていた。
「イロアスの字ではない事は確実だし…、私はイロアスを信じるわ。何といったら良いのかわからないけれど、女の勘というやつかしら」
「……もし、これが本当の事なら、ロリアンナ嬢を我が家に迎え入れるわけにはいかない」
アイルは強い眼差しでイロアスに告げる。
「婚約破棄で話をする。だが、揉めるぞ。覚悟は出来てるな?」
「ええ。リンスレットが自分の手で生を勝ち取るまで、僕も戦います」
イロアスが強い口調で答えると、アイルは頷き、ポッカ家に婚約破棄の連絡を入れる為にイロアスの部屋から去っていった。
※次話は、リンスレット死後4日目のロリアンナになります。
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