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27 言えなくなるようにしてみせるわ
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フェル殿下が予想していた通り、テグノ伯爵はプロウス王国の王家に連絡を取った。そして、王家はクランボ様に相談し、クランボ様はハピパル王国の王家に連絡を入れてきた。
といっても、プロウス王国の王太子が見つかったなどという連絡ではなく、テグノ伯爵が国家転覆を企む悪なので力を貸してほしいというような内容のものだった。
テグノ伯爵が悪なのは間違っていないけど、そこまで大したことは企んでいないことはわかるので、その知らせを聞いた時は馬鹿馬鹿しいと思った。
クランボ様って仕事ができる人かと思い込んでいたけど、そうでもないのね。彼の父親が代々、宰相を務めていたというから、賢い犬を飼っているということもあって、そのまま引き継がれただけかもしれないわ。
犬を大事にするのは良いことだけど、ここまで政治に影響が出てしまうのは良くないことだ。やっぱり、このしきたりはどうにかしなければならない。
国王陛下が動いてくれたおかげで、世界的な意見も一致した。クランボ様にはこの事実を伝えるだけ。書状じゃ納得しないでしょうから、呼び寄せて話をしたほうが良さそうね。
そう思っていた時、プロウス王国の王妃陛下から私宛に連絡がきた。
このままでは、クランボ様に国を乗っ取られてしまいかねないということや、テグノ伯爵から、子供を無事に育ててほしければ言うことを聞けと脅されていると書かれていた。
王妃陛下は私にテグノ伯爵の元へ戻ってほしいらしい。そうすれば、テグノ伯爵が大人しくなると思っている。自分の息子の尻拭いのために私を他国に追い出しておいて、よくもこんなことが言えるものだわ。
私のことなんて、もう放っておいてほしい。
難しい顔をしていたからか、リリが問いかけてくる。
『どうしたの? 嫌なことでもあったの?』
『前にいた国の王家が、私に戻ってきてほしいってうるさいのよ。大体、私個人の問題じゃないのに』
『しつこいわね! 噛みついてやろうかしら!』
『王妃陛下に噛みついたりなんかしたら、あなたが殺されてしまうかもしれないからやめて』
『……わかったわ。でも、これからどうするつもりなの?』
首を傾げるリリを撫でながら答える。
『時間がかかってしまったけれど、準備は整ったの。だから、そんなことが言えなくなるようにしてみせるわ』
決意を新たにした時、部屋の扉がノックされた。訪ねて来たのはフェル殿下とカンバーだった。中に招き入れると、フェル殿下は綺麗にラッピングされた箱を私に渡しながら話す。
「以前、ナナリーがテグノ伯爵に付きまとわれていた時に相談した人がいるんだが、その人の奥方から君にプレゼントだそうだ」
「何でしょう」
受け取った箱とフェル殿下を交互に見ながら尋ねると、フェル殿下は首を横に振る。
「俺も知らされていない。友人は開けてみてのお楽しみと手紙に書いていたんだ」
「そうなんですね。気を遣っていただけたのは有難いですし、お礼をしなくては」
『何? 食べ物? 美味しい?』
リリが尻尾を振って目をキラキラさせているけれど、食べ物だとは思えない。
胸に抱きかかえるくらいの大きさの箱から出て来たのは、取っ手のついた四角いシルバートレイだった。手紙が添えられていて『しつこい男性を追い払う際に、ぜひお使いください』と書かれていた。
といっても、プロウス王国の王太子が見つかったなどという連絡ではなく、テグノ伯爵が国家転覆を企む悪なので力を貸してほしいというような内容のものだった。
テグノ伯爵が悪なのは間違っていないけど、そこまで大したことは企んでいないことはわかるので、その知らせを聞いた時は馬鹿馬鹿しいと思った。
クランボ様って仕事ができる人かと思い込んでいたけど、そうでもないのね。彼の父親が代々、宰相を務めていたというから、賢い犬を飼っているということもあって、そのまま引き継がれただけかもしれないわ。
犬を大事にするのは良いことだけど、ここまで政治に影響が出てしまうのは良くないことだ。やっぱり、このしきたりはどうにかしなければならない。
国王陛下が動いてくれたおかげで、世界的な意見も一致した。クランボ様にはこの事実を伝えるだけ。書状じゃ納得しないでしょうから、呼び寄せて話をしたほうが良さそうね。
そう思っていた時、プロウス王国の王妃陛下から私宛に連絡がきた。
このままでは、クランボ様に国を乗っ取られてしまいかねないということや、テグノ伯爵から、子供を無事に育ててほしければ言うことを聞けと脅されていると書かれていた。
王妃陛下は私にテグノ伯爵の元へ戻ってほしいらしい。そうすれば、テグノ伯爵が大人しくなると思っている。自分の息子の尻拭いのために私を他国に追い出しておいて、よくもこんなことが言えるものだわ。
私のことなんて、もう放っておいてほしい。
難しい顔をしていたからか、リリが問いかけてくる。
『どうしたの? 嫌なことでもあったの?』
『前にいた国の王家が、私に戻ってきてほしいってうるさいのよ。大体、私個人の問題じゃないのに』
『しつこいわね! 噛みついてやろうかしら!』
『王妃陛下に噛みついたりなんかしたら、あなたが殺されてしまうかもしれないからやめて』
『……わかったわ。でも、これからどうするつもりなの?』
首を傾げるリリを撫でながら答える。
『時間がかかってしまったけれど、準備は整ったの。だから、そんなことが言えなくなるようにしてみせるわ』
決意を新たにした時、部屋の扉がノックされた。訪ねて来たのはフェル殿下とカンバーだった。中に招き入れると、フェル殿下は綺麗にラッピングされた箱を私に渡しながら話す。
「以前、ナナリーがテグノ伯爵に付きまとわれていた時に相談した人がいるんだが、その人の奥方から君にプレゼントだそうだ」
「何でしょう」
受け取った箱とフェル殿下を交互に見ながら尋ねると、フェル殿下は首を横に振る。
「俺も知らされていない。友人は開けてみてのお楽しみと手紙に書いていたんだ」
「そうなんですね。気を遣っていただけたのは有難いですし、お礼をしなくては」
『何? 食べ物? 美味しい?』
リリが尻尾を振って目をキラキラさせているけれど、食べ物だとは思えない。
胸に抱きかかえるくらいの大きさの箱から出て来たのは、取っ手のついた四角いシルバートレイだった。手紙が添えられていて『しつこい男性を追い払う際に、ぜひお使いください』と書かれていた。
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