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第27話 シルフィーの嘘

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 こんなラブラブなふりの練習はしてなかったので動揺してしまいます!

 内心はドキドキですが、演技だとバレてはいけませんので、平静を装います。

「ど、どういう事!?」

 シルフィーが声を震わせて聞くので、ライト様が答えます。

「君はリーシャが不幸だと嬉しいようだが、俺は彼女にそんな思いをさせるつもりはない」
「そ、そんな…。だって、あなたは…」

 冷酷公爵のはずだと言いたいようですが、シルフィーは何とか口を噤みました。

 驚きとドキドキが止まりませんが、とにかくライト様に話を合わせる事にします。

「シルフィー、あなたは私がライト様に大事にしてもらっていないと思いこんでいる様ですが、この通り、私はライト様に大事にしてもらっています」

 抱き寄せてくださっているライト様の胸に手を当てて言うと、シルフィーは悔しそうな顔をしました。
 
 その時、シルフィーの部屋の扉がノックされて、シルフィーの旦那様であるデイノル様が入ってきました。

「何をしているんだ、シルフィー! アーミテム公爵夫妻を立たせたままだなんて! どうぞ、こちらにお座り下さい」

 デイノル様は近くにあったソファーに座る様にすすめてこられましたが、首を横に振ってお断りします。

「病人の方の部屋に長居するつもりはありません。それから、デイノル様、あなたにお伝えしておきたい事があります」
「……何でしょうか?」

 どこか狡猾そうな顔立ちのデイノル様は不思議そうな顔をして聞き返してこられました。

「あなたがシルフィーから私と彼女の仲をどう聞いておられるかはわかりませんが、私達の関係性は最悪なものです。今日を最後に彼女に会うつもりはありません」
「ちょっ、ちょっと待ってください! どういう事ですか!?」

 デイノル様が私とシルフィーを交互に見て聞いてこられたので答えます。

「先程の言葉の通りです。シルフィーの事を私はもう姉だなんて思っておりません」
「やめてよ、リーシャ! 怒っている気持ちはわかるけれど、そんな言葉は感情的になって言うものじゃないわ!」
「感情的になっているかもしれませんが、あなたと私の縁が切れている事は確かです。どうして私に今頃連絡してきたのかはわかりませんが、アーミテム公爵家とつながりを持ちたかっただけでは…? いえ、それは、あなたの方でしょうか、デイノル様…?」

 私の言葉にデイノル様がぴくりと口元を引きつらせました。
 
 私の考えは間違っていなかったようです。
 デイノル様はシルフィーを愛したのではなく、シルフィーの後ろ盾を愛したのですね。

 私の質問には答えずに、デイノル様がシルフィーに尋ねます。

「シルフィー、僕を騙したのか?」
「騙してなんていません! リーシャはいつだって私のために犠牲になってくれて」
「シルフィー、それはいつの話の事ですか?」

 私が彼女の言葉を遮って尋ねると、シルフィーは視線を彷徨わせて答えます。

「それは…、かなり…、前の話かもしれないけど…」
「やっぱり騙したんじゃないか! 君は妹と密かに文通をしていて、妹は自分の事を許してくれていると言ったじゃないか!」
「待って、待ってください! その時は、あなたに本当に愛されたくて!」
「愛されたいからって嘘をついていいわけじゃない!」

 デイノル様はもっともな事を仰ると、私の方を見て尋ねてきます。

「失礼な事をお聞きしますが、シルフィーと夫婦になっても、あなた方とご縁をつなぐ事はできないという事ですね?」
「そうなります」
「そうなるな」

 私とライト様が頷くと、デイノル様は悔しそうな顔をした後、シルフィーに向かって言います。

「お二人が帰られた後、君には話がある」
「そんな…、デイノル様!? 私を捨てたりなんかなさいませんよね!?」
「僕を騙しておいて、そんな事を言える立場じゃないだろう!?」
「そんな! デイノル様!」

 シルフィーは立ち上がって追いかけようとしましたが、デイノル様に「近寄るな!」と叫ばれて、その場で立ち尽くしました。

 そうしている間にデイノル様は私達に頭を下げた後、部屋から出ていかれました。

 騙された事に腹を立てるのはわかりますが、堂々と愛はなかったみたいな事を言っているのを聞くと、それはそれで人としてどうなのかと思ってしまいます。

「本当に失礼な奴だな」

 ライト様が扉を見つめて吐き捨てる様に言うと、シルフィーがライト様を見て言います。

「助けて下さい! アーミテム公爵閣下! このままでは私は嘘つき扱いされて離縁されてしまいます! ここを放り出されてしまったら私はどうすれば良いのですか!」
「離縁しても君が贅沢に暮らしていける方法があるが教えてやろうか?」
「何でしょうか!? アーミテム公爵家に置いてくださるのですか!?」
「そんな訳がないだろう」

 ライト様は声を荒らげた後、私の頭を優しく撫でてから身を離すと、扉に向かって歩いていき、そしてドアノブに手をかけました。

「叶わぬ恋は諦めて、本来の婚約者と結婚なさるのはいかがでしょう。アバホカ陛下」

 ライト様が扉を開けると、そこにはアバホカ陛下が苦虫を噛み潰した顔をして立っていたのでした。

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