29 / 32
第27話 シルフィーの嘘
しおりを挟む
こんなラブラブなふりの練習はしてなかったので動揺してしまいます!
内心はドキドキですが、演技だとバレてはいけませんので、平静を装います。
「ど、どういう事!?」
シルフィーが声を震わせて聞くので、ライト様が答えます。
「君はリーシャが不幸だと嬉しいようだが、俺は彼女にそんな思いをさせるつもりはない」
「そ、そんな…。だって、あなたは…」
冷酷公爵のはずだと言いたいようですが、シルフィーは何とか口を噤みました。
驚きとドキドキが止まりませんが、とにかくライト様に話を合わせる事にします。
「シルフィー、あなたは私がライト様に大事にしてもらっていないと思いこんでいる様ですが、この通り、私はライト様に大事にしてもらっています」
抱き寄せてくださっているライト様の胸に手を当てて言うと、シルフィーは悔しそうな顔をしました。
その時、シルフィーの部屋の扉がノックされて、シルフィーの旦那様であるデイノル様が入ってきました。
「何をしているんだ、シルフィー! アーミテム公爵夫妻を立たせたままだなんて! どうぞ、こちらにお座り下さい」
デイノル様は近くにあったソファーに座る様にすすめてこられましたが、首を横に振ってお断りします。
「病人の方の部屋に長居するつもりはありません。それから、デイノル様、あなたにお伝えしておきたい事があります」
「……何でしょうか?」
どこか狡猾そうな顔立ちのデイノル様は不思議そうな顔をして聞き返してこられました。
「あなたがシルフィーから私と彼女の仲をどう聞いておられるかはわかりませんが、私達の関係性は最悪なものです。今日を最後に彼女に会うつもりはありません」
「ちょっ、ちょっと待ってください! どういう事ですか!?」
デイノル様が私とシルフィーを交互に見て聞いてこられたので答えます。
「先程の言葉の通りです。シルフィーの事を私はもう姉だなんて思っておりません」
「やめてよ、リーシャ! 怒っている気持ちはわかるけれど、そんな言葉は感情的になって言うものじゃないわ!」
「感情的になっているかもしれませんが、あなたと私の縁が切れている事は確かです。どうして私に今頃連絡してきたのかはわかりませんが、アーミテム公爵家とつながりを持ちたかっただけでは…? いえ、それは、あなたの方でしょうか、デイノル様…?」
私の言葉にデイノル様がぴくりと口元を引きつらせました。
私の考えは間違っていなかったようです。
デイノル様はシルフィーを愛したのではなく、シルフィーの後ろ盾を愛したのですね。
私の質問には答えずに、デイノル様がシルフィーに尋ねます。
「シルフィー、僕を騙したのか?」
「騙してなんていません! リーシャはいつだって私のために犠牲になってくれて」
「シルフィー、それはいつの話の事ですか?」
私が彼女の言葉を遮って尋ねると、シルフィーは視線を彷徨わせて答えます。
「それは…、かなり…、前の話かもしれないけど…」
「やっぱり騙したんじゃないか! 君は妹と密かに文通をしていて、妹は自分の事を許してくれていると言ったじゃないか!」
「待って、待ってください! その時は、あなたに本当に愛されたくて!」
「愛されたいからって嘘をついていいわけじゃない!」
デイノル様はもっともな事を仰ると、私の方を見て尋ねてきます。
「失礼な事をお聞きしますが、シルフィーと夫婦になっても、あなた方とご縁をつなぐ事はできないという事ですね?」
「そうなります」
「そうなるな」
私とライト様が頷くと、デイノル様は悔しそうな顔をした後、シルフィーに向かって言います。
「お二人が帰られた後、君には話がある」
「そんな…、デイノル様!? 私を捨てたりなんかなさいませんよね!?」
「僕を騙しておいて、そんな事を言える立場じゃないだろう!?」
「そんな! デイノル様!」
シルフィーは立ち上がって追いかけようとしましたが、デイノル様に「近寄るな!」と叫ばれて、その場で立ち尽くしました。
そうしている間にデイノル様は私達に頭を下げた後、部屋から出ていかれました。
騙された事に腹を立てるのはわかりますが、堂々と愛はなかったみたいな事を言っているのを聞くと、それはそれで人としてどうなのかと思ってしまいます。
「本当に失礼な奴だな」
ライト様が扉を見つめて吐き捨てる様に言うと、シルフィーがライト様を見て言います。
「助けて下さい! アーミテム公爵閣下! このままでは私は嘘つき扱いされて離縁されてしまいます! ここを放り出されてしまったら私はどうすれば良いのですか!」
「離縁しても君が贅沢に暮らしていける方法があるが教えてやろうか?」
「何でしょうか!? アーミテム公爵家に置いてくださるのですか!?」
「そんな訳がないだろう」
ライト様は声を荒らげた後、私の頭を優しく撫でてから身を離すと、扉に向かって歩いていき、そしてドアノブに手をかけました。
「叶わぬ恋は諦めて、本来の婚約者と結婚なさるのはいかがでしょう。アバホカ陛下」
ライト様が扉を開けると、そこにはアバホカ陛下が苦虫を噛み潰した顔をして立っていたのでした。
内心はドキドキですが、演技だとバレてはいけませんので、平静を装います。
「ど、どういう事!?」
シルフィーが声を震わせて聞くので、ライト様が答えます。
「君はリーシャが不幸だと嬉しいようだが、俺は彼女にそんな思いをさせるつもりはない」
「そ、そんな…。だって、あなたは…」
冷酷公爵のはずだと言いたいようですが、シルフィーは何とか口を噤みました。
驚きとドキドキが止まりませんが、とにかくライト様に話を合わせる事にします。
「シルフィー、あなたは私がライト様に大事にしてもらっていないと思いこんでいる様ですが、この通り、私はライト様に大事にしてもらっています」
抱き寄せてくださっているライト様の胸に手を当てて言うと、シルフィーは悔しそうな顔をしました。
その時、シルフィーの部屋の扉がノックされて、シルフィーの旦那様であるデイノル様が入ってきました。
「何をしているんだ、シルフィー! アーミテム公爵夫妻を立たせたままだなんて! どうぞ、こちらにお座り下さい」
デイノル様は近くにあったソファーに座る様にすすめてこられましたが、首を横に振ってお断りします。
「病人の方の部屋に長居するつもりはありません。それから、デイノル様、あなたにお伝えしておきたい事があります」
「……何でしょうか?」
どこか狡猾そうな顔立ちのデイノル様は不思議そうな顔をして聞き返してこられました。
「あなたがシルフィーから私と彼女の仲をどう聞いておられるかはわかりませんが、私達の関係性は最悪なものです。今日を最後に彼女に会うつもりはありません」
「ちょっ、ちょっと待ってください! どういう事ですか!?」
デイノル様が私とシルフィーを交互に見て聞いてこられたので答えます。
「先程の言葉の通りです。シルフィーの事を私はもう姉だなんて思っておりません」
「やめてよ、リーシャ! 怒っている気持ちはわかるけれど、そんな言葉は感情的になって言うものじゃないわ!」
「感情的になっているかもしれませんが、あなたと私の縁が切れている事は確かです。どうして私に今頃連絡してきたのかはわかりませんが、アーミテム公爵家とつながりを持ちたかっただけでは…? いえ、それは、あなたの方でしょうか、デイノル様…?」
私の言葉にデイノル様がぴくりと口元を引きつらせました。
私の考えは間違っていなかったようです。
デイノル様はシルフィーを愛したのではなく、シルフィーの後ろ盾を愛したのですね。
私の質問には答えずに、デイノル様がシルフィーに尋ねます。
「シルフィー、僕を騙したのか?」
「騙してなんていません! リーシャはいつだって私のために犠牲になってくれて」
「シルフィー、それはいつの話の事ですか?」
私が彼女の言葉を遮って尋ねると、シルフィーは視線を彷徨わせて答えます。
「それは…、かなり…、前の話かもしれないけど…」
「やっぱり騙したんじゃないか! 君は妹と密かに文通をしていて、妹は自分の事を許してくれていると言ったじゃないか!」
「待って、待ってください! その時は、あなたに本当に愛されたくて!」
「愛されたいからって嘘をついていいわけじゃない!」
デイノル様はもっともな事を仰ると、私の方を見て尋ねてきます。
「失礼な事をお聞きしますが、シルフィーと夫婦になっても、あなた方とご縁をつなぐ事はできないという事ですね?」
「そうなります」
「そうなるな」
私とライト様が頷くと、デイノル様は悔しそうな顔をした後、シルフィーに向かって言います。
「お二人が帰られた後、君には話がある」
「そんな…、デイノル様!? 私を捨てたりなんかなさいませんよね!?」
「僕を騙しておいて、そんな事を言える立場じゃないだろう!?」
「そんな! デイノル様!」
シルフィーは立ち上がって追いかけようとしましたが、デイノル様に「近寄るな!」と叫ばれて、その場で立ち尽くしました。
そうしている間にデイノル様は私達に頭を下げた後、部屋から出ていかれました。
騙された事に腹を立てるのはわかりますが、堂々と愛はなかったみたいな事を言っているのを聞くと、それはそれで人としてどうなのかと思ってしまいます。
「本当に失礼な奴だな」
ライト様が扉を見つめて吐き捨てる様に言うと、シルフィーがライト様を見て言います。
「助けて下さい! アーミテム公爵閣下! このままでは私は嘘つき扱いされて離縁されてしまいます! ここを放り出されてしまったら私はどうすれば良いのですか!」
「離縁しても君が贅沢に暮らしていける方法があるが教えてやろうか?」
「何でしょうか!? アーミテム公爵家に置いてくださるのですか!?」
「そんな訳がないだろう」
ライト様は声を荒らげた後、私の頭を優しく撫でてから身を離すと、扉に向かって歩いていき、そしてドアノブに手をかけました。
「叶わぬ恋は諦めて、本来の婚約者と結婚なさるのはいかがでしょう。アバホカ陛下」
ライト様が扉を開けると、そこにはアバホカ陛下が苦虫を噛み潰した顔をして立っていたのでした。
53
お気に入りに追加
4,068
あなたにおすすめの小説
つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?
蓮
恋愛
少しネガティブな天然鈍感辺境伯令嬢と目つきが悪く恋愛に関してはポンコツコミュ障公爵令息のコミュニケーションエラー必至の爆笑(?)すれ違いラブコメ!
ランツベルク辺境伯令嬢ローザリンデは優秀な兄弟姉妹に囲まれて少し自信を持てずにいた。そんなローザリンデを夜会でエスコートしたいと申し出たのはオルデンブルク公爵令息ルートヴィヒ。そして複数回のエスコートを経て、ルートヴィヒとの結婚が決まるローザリンデ。しかし、ルートヴィヒには身分違いだが恋仲の女性がいる噂をローザリンデは知っていた。
エーベルシュタイン女男爵であるハイデマリー。彼女こそ、ルートヴィヒの恋人である。しかし上級貴族と下級貴族の結婚は許されていない上、ハイデマリーは既婚者である。
ローザリンデは自分がお飾りの妻だと理解した。その上でルートヴィヒとの結婚を受け入れる。ランツベルク家としても、筆頭公爵家であるオルデンブルク家と繋がりを持てることは有益なのだ。
しかし結婚後、ルートヴィヒの様子が明らかにおかしい。ローザリンデはルートヴィヒからお菓子、花、アクセサリー、更にはドレスまでことあるごとにプレゼントされる。プレゼントの量はどんどん増える。流石にこれはおかしいと思ったローザリンデはある日の夜会で聞いてみる。
「つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?」
するとルートヴィヒからは予想外の返事があった。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
断罪されてムカついたので、その場の勢いで騎士様にプロポーズかましたら、逃げれんようなった…
甘寧
恋愛
主人公リーゼは、婚約者であるロドルフ殿下に婚約破棄を告げられた。その傍らには、アリアナと言う子爵令嬢が勝ち誇った様にほくそ笑んでいた。
身に覚えのない罪を着せられ断罪され、頭に来たリーゼはロドルフの叔父にあたる騎士団長のウィルフレッドとその場の勢いだけで婚約してしまう。
だが、それはウィルフレッドもその場の勢いだと分かってのこと。すぐにでも婚約は撤回するつもりでいたのに、ウィルフレッドはそれを許してくれなくて…!?
利用した人物は、ドSで自分勝手で最低な団長様だったと後悔するリーゼだったが、傍から見れば過保護で執着心の強い団長様と言う印象。
周りは生暖かい目で二人を応援しているが、どうにも面白くないと思う者もいて…
牢で死ぬはずだった公爵令嬢
鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。
表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。
小説家になろうさんにも投稿しています。
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
全てを諦めた令嬢の幸福
セン
恋愛
公爵令嬢シルヴィア・クロヴァンスはその奇異な外見のせいで、家族からも幼い頃からの婚約者からも嫌われていた。そして学園卒業間近、彼女は突然婚約破棄を言い渡された。
諦めてばかりいたシルヴィアが周りに支えられ成長していく物語。
※途中シリアスな話もあります。
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる