上 下
28 / 32

第26話 シルフィーとの再会

しおりを挟む
 ライト様に話をしたその日から、2人でラブラブのふりを練習する事にしたのですが、何をしたら良いのかお互いに分からず、朝は「行ってらっしゃい」と頬にキスを、寝る前にもおやすみなさいと頬にキスをする事にしました。

 夜は口にしたほうが良いのかと2人で悩みましたが、誰も見ていないなら意味がないかという結論に陥って頬になりました。

 ライト様が言うには口にしてしまうと、それだけでは済まない事になりそうだという事でした。

 私は別にかまわないのですが…。

 私の体も浮き上がるように見えていたあばら骨が見えにくくなってきましたし、って!
 なんて、はしたない事を考えているんでしょうか!?

 今までは子作りの為にとばかり考えていましたが、今の私は違う事を考えていました!

 でも、そういう関係になっていた方が良い様にも思えますし、今は実際にする事は無理ですが、そういう関係になっているという事にしておこうと思います。

 ライト様は好きな人と体を重ねたいみたいです。

 その気持ちは私にもわかります。

 ただ、そんな事を言われてしまうと、ライト様の気持ちが私にはないのだと実感してしまうのです。

 それは最初からわかりきった事なのに、どうして胸が苦しいんでしょうか。
 
「リーシャ様、どうかしたのか?」

 シルフィーに会いに行く当日の朝、緊張しながらも、そんな事を考えていた私に、ライト様が話しかけてきました。

「いえ。少し考え事をしておりました」
「……緊張してるのか?」
「それはまあ…」

 あの後、シルフィー達とは電報でやり取りし、シルフィーの旦那様であるデイノル・カサオンバ侯爵令息とも連絡を取りました。

 カサオンバ卿は私からの連絡をとても喜びましたが、その時に気付いたのです。
 彼はシルフィーを愛して結婚したのではないという事に。

 たぶんですが、彼は、シルフィーと結婚すれば、あれとのコネクションを持てると思ったのだと思います。
 だって、昔は私はあれの婚約者でしたから。
 
 隣国であれ、国王陛下と身内だなんて事になったら、彼は周りから羨ましがられるでしょう。
 たとえ、評判は悪くても、お金持ちで国王陛下ですから。

 結局、私はライト様と結婚する事になりましたが、カサオンバ卿にしてみれば、アーミテム公爵との繋がりが出来ると思い喜んだようです。

 問題はシルフィーが私の事を何と彼に伝えていたかです。
 
 彼女が逃げた事は彼も知っているでしょう。

 ただ…。

「リーシャ様、そんなに辛いなら止めておくか? 俺だけでも行ってくるが」
「大丈夫です! ご心配いただきありがとうございます。不安なわけではなく、どうすればシルフィーを撃退できるのか考えていただけですから」

 起きてすぐにそんな会話をした後、朝食を取り、身支度を整えてカサオンバ侯爵家に向かったのでした。





 カサオンバ侯爵家に着くと、シルフィー以外の家族全員が出迎えてくれました。
 よっぽど、ライト様とお近付きになりたいようです。

 シルフィーへのお見舞いの品と場所を借りるお礼の品を渡すと、シルフィーの部屋に案内してくれました。

「ありがとう、リーシャ! 来てくれたのね! 会えて本当に嬉しいわ!」

 私とは全く似ていない、亜麻色の長い髪にピンクの瞳を持つシルフィーはベッドの上で上半身を起こした状態で、笑顔で話しかけてきました。
 
 お互いに年を取ったのもあり、シルフィーには私の記憶にある若々しさは消えていました。
 といっても、少女から大人の女性になったという感じですが。

「お久しぶりですね、シルフィー様」
「嫌だわ、昔はお姉様と呼んでくれていたじゃない」

 アバホカ陛下はまだ来ていないようですので、先にシルフィーを片付ける事にします。

「昔はでしょう? もう今はお姉様だなんて思っていませんから」
「そ、そんな…! どうしてそんなに冷たい事を言うの?」
「冷たい事? あなたがやった事は何なんですか? 自分が結婚したくないからといって、私やお兄様を置いて逃げたくせに」
「しょうがないじゃないの! 結婚したくなかったんだから! 私は今、デイノル様の妻になれて幸せなの! あなたが不幸になっていたとしても、姉である私が幸せなら、あなただって幸せを感じられるでしょう!?」

 何を言っているんでしょうか。
 シルフィーが幸せなら私も幸せだなんて意味がわかりません。

 すると、私の後ろで話を聞いていたライト様が口を開きます。

「俺がリーシャを不幸にしていると言いたいのか?」
「えっ…!?」

 ライト様が怖いのでしょうか。
 シルフィーは白のネグリジェを着た、自分の体を自分で抱きしめる様にして聞き返しました。

「君の言い方だと俺がリーシャを大事にしていないという様な言い方に聞こえたが…?」
「そ、そういう訳では…。で、でも、そうではないのですか…?」

 シルフィーが怯えた表情で聞き返すと、ライト様は私を抱き寄せて、こう言ったのです。

「君にはそう見えないのかもしれないが、俺はリーシャを愛している」
「――っ!?」

 ライト様の言葉に、シルフィーだけでなく私までもが驚いてしまったのでした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。

待鳥園子
恋愛
―――申し訳ありません。実は期限付きのお飾り婚約者なんです。――― とある事情で王妃より依頼され多額の借金の返済や幼い弟の爵位を守るために、王太子ギャレットの婚約者を一時的に演じることになった貧乏侯爵令嬢ローレン。 最初はどうせ金目当てだろうと険悪な対応をしていたギャレットだったが、偶然泣いているところを目撃しローレンを気になり惹かれるように。 だが、ギャレットの本来の婚約者となるはずの令嬢や、成功報酬代わりにローレンの婚約者となる大富豪など、それぞれの思惑は様々入り乱れて!? 訳あって期限付きの婚約者を演じているはずの塩対応令嬢が、彼女を溺愛したくて堪らない脳筋王子様を悪気なく胸キュン対応でオーバーキルしていく恋物語。

離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?

ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。

待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。 妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。 ……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。 けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します! 自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

【完】ええ!?わたし当て馬じゃ無いんですか!?

112
恋愛
ショーデ侯爵家の令嬢ルイーズは、王太子殿下の婚約者候補として、王宮に上がった。 目的は王太子の婚約者となること──でなく、父からの命で、リンドゲール侯爵家のシャルロット嬢を婚約者となるように手助けする。 助けが功を奏してか、最終候補にシャルロットが選ばれるが、特に何もしていないルイーズも何故か選ばれる。

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

第二王子妃から退きますわ。せいぜい仲良くなさってくださいね

ネコ
恋愛
公爵家令嬢セシリアは、第二王子リオンに求婚され婚約まで済ませたが、なぜかいつも傍にいる女性従者が不気味だった。「これは王族の信頼の証」と言うリオンだが、実際はふたりが愛人関係なのでは? と噂が広まっている。ある宴でリオンは公衆の面前でセシリアを貶め、女性従者を擁護。もう我慢しません。王子妃なんてこちらから願い下げです。あとはご勝手に。

処理中です...